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第百四十一話 しんじゃらめー
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ファンの国の神殿跡では、凄惨な光景が広がっていた。
ケーシーは風魔法による切断で、集まっている人々を一気に二つに切り分けた。
大人の胸の下、心臓を狙った刃は、シオン、シエンの丁度首を切断した。
シオンとシエンは自分の目で、立っている自分の体を、見ながら床に落ちた。
なんでこうなったのかは、わからなかったが、自分が死ぬ事は理解していただろう。
ケーシーの風の刃は、見事にコントロールされていて、建物の壁は一切傷つけず、人間だけを切り裂いた。
「ぎゃーはっはっはー」
ケーシーは笑っていた、崩れ落ちる人々の姿は、たまらなくゆかいだった。
ゴルドが放った密偵達も、シアン、シオン、シエンの三人の切断を確認すると、満足して神殿跡を後にした。
神殿跡の床は血の海となり、切断された人々の体はまるで海を泳いでいるように見える。
床ばかり見ていたケーシーだが、異様な者を発見する。
帰り血を浴び床の色と同化しているが、この中に二人だけ立っている者がいた。
セイ女とおか様だ。
ケーシーの力を制御した魔法では倒せるわけがなかった。
「だーーー!!」
「なんであのお方が、ここにいるのだーーー!!」
ケーシーは驚愕した。
そこには風の刃の影響でフードが揺れ、少しだけ見えたあいの顔があった。
「ケーシー様」
「どうなされました」
密偵がケーシーの顔色の変化を見て、心配して声をかける。
「あれが、本当にあの方なら」
「恐ろしい光景を見ることになる」
密偵は唾を飲み込み、二人を見た。
セイ女は全身が震えていた。
丁度建物の中がケーシーの、風魔法の余韻で服が揺れているためわからないが、震えを通り越しジャンプにみえるほどだった。
それはおか様の強い怒りがつないだ手から伝わって来ているからだ。
それでもセイ女は悪い気分ではなかった。
何の感情もないおか様がここまで感情をあらわにしてくれたのだから。
「ぎゃああああああーーー」
おか様の声は、人の物ではなかった。
巨大な怪獣の声に聞こえた。
建物がビリビリ震え、天井から粉が落ちてきた。
そしておか様が手をあげると、一瞬で血の海が消える。
するとまるで何事もなかったように人々がモゾモゾ動き出した。
「す、すごい」
密偵が思わず声をあげる。
ケーシーは「恐ろしい光景を見ることになる」と自分で言っておきながら、こんな光景を見るとは思っていなかった。
ケーシーは自分と密偵が殺される光景を見る覚悟をしていたのだ。
「あの方は、これほどの数の死者をも生き返らせるのか」
「あの方は誰なのですか」
「ふふふ、あの方こそ、魔王軍最高幹部、第二席、第三席を兼任されているお方だ」
「おれは、あの方の代理で第二席を守っているだけだ」
「道理ですごいわけですね」
「ああ、これ程とは思わなかったがな」
「キヌにもこの事を伝えよ」
「そして今後はあの二人には手を出さぬよう」
「周知徹底しろ!」
「はは!!」
ケーシーはあいとセイ女がこちらに、関心がないうちにこの場からこっそり逃げ出した。
「あれ」
「わたし達どうしたのかしら」
シオンが真っ先に、気が付いた。
もう、おか様の状態は元に戻っていた。
シエンとシオンが無事ならそれでいいようだった。
「何もないです」
セイがとぼけて二人に微笑んだ。
「それなら良いのですけど」
シアンとシオン、そしてシエンが微笑んだ。
三人は自分たちの体が二つに切れたことは気が付いていた。
どうせ、この二人がなんとかしてしまったのだと思ったが、ばかばかしくって言うのを止めた。
「陛下、大丈夫ですか」
外が騒然となり神殿跡に人が集まりだした。
何でも怪獣の大声が町中に響いたと言うのである。
しばらく、状況の捜査が始まり、二人の聖女は休憩に入った。
セイ女とおか様はお気に入りの、部屋の隅にちょこんと座り込むと、珍しくおか様が二人を呼んだ。
呼んだと言っても不自由な手で手招きしただけだが、シオンとシエンは嬉しかった。
二人が近づくとおか様は二人を抱きしめた。
頭が壊れて体を満足に動かせないおか様に、抱きしめられた二人は、ぎゅーーっと締め付けられて、死にそうになっていた。
おか様は満足に力加減が出来なかったのだ。
ぐったりとした、二人に
「しんじゃらめー、しんじゃらめー」
「しなないれーー」
おか様は今のことを言っているのか、さっきのことを言っているのか泣いていた。
残っている左目から大粒の涙を流し、更にぎゅうぎゅう抱きしめた為、二人は本当に死んでしまった。
慌てて、セイ女様が治癒魔法をかけて、何とか蘇生した。
「ぷはーー」
「あーー苦しかった」
「よかったーーー」
「よかったーーー」
「しんじゃらめらからーー」
おか様が再び抱きしめようと近づいてきた。
「ぎゃーーーーー」
シオンとシエンは悲鳴を上げて逃げ出した。
この日から、おか様が少しだけ言葉を発するようになる。
そして、人の言葉をすこしだけ理解するようになった。
ほんの少しだけ人間を受け入れようとしている様に見えた。
それを見つめるセイ女の目にうっすら涙が浮かんでいた。
ケーシーは風魔法による切断で、集まっている人々を一気に二つに切り分けた。
大人の胸の下、心臓を狙った刃は、シオン、シエンの丁度首を切断した。
シオンとシエンは自分の目で、立っている自分の体を、見ながら床に落ちた。
なんでこうなったのかは、わからなかったが、自分が死ぬ事は理解していただろう。
ケーシーの風の刃は、見事にコントロールされていて、建物の壁は一切傷つけず、人間だけを切り裂いた。
「ぎゃーはっはっはー」
ケーシーは笑っていた、崩れ落ちる人々の姿は、たまらなくゆかいだった。
ゴルドが放った密偵達も、シアン、シオン、シエンの三人の切断を確認すると、満足して神殿跡を後にした。
神殿跡の床は血の海となり、切断された人々の体はまるで海を泳いでいるように見える。
床ばかり見ていたケーシーだが、異様な者を発見する。
帰り血を浴び床の色と同化しているが、この中に二人だけ立っている者がいた。
セイ女とおか様だ。
ケーシーの力を制御した魔法では倒せるわけがなかった。
「だーーー!!」
「なんであのお方が、ここにいるのだーーー!!」
ケーシーは驚愕した。
そこには風の刃の影響でフードが揺れ、少しだけ見えたあいの顔があった。
「ケーシー様」
「どうなされました」
密偵がケーシーの顔色の変化を見て、心配して声をかける。
「あれが、本当にあの方なら」
「恐ろしい光景を見ることになる」
密偵は唾を飲み込み、二人を見た。
セイ女は全身が震えていた。
丁度建物の中がケーシーの、風魔法の余韻で服が揺れているためわからないが、震えを通り越しジャンプにみえるほどだった。
それはおか様の強い怒りがつないだ手から伝わって来ているからだ。
それでもセイ女は悪い気分ではなかった。
何の感情もないおか様がここまで感情をあらわにしてくれたのだから。
「ぎゃああああああーーー」
おか様の声は、人の物ではなかった。
巨大な怪獣の声に聞こえた。
建物がビリビリ震え、天井から粉が落ちてきた。
そしておか様が手をあげると、一瞬で血の海が消える。
するとまるで何事もなかったように人々がモゾモゾ動き出した。
「す、すごい」
密偵が思わず声をあげる。
ケーシーは「恐ろしい光景を見ることになる」と自分で言っておきながら、こんな光景を見るとは思っていなかった。
ケーシーは自分と密偵が殺される光景を見る覚悟をしていたのだ。
「あの方は、これほどの数の死者をも生き返らせるのか」
「あの方は誰なのですか」
「ふふふ、あの方こそ、魔王軍最高幹部、第二席、第三席を兼任されているお方だ」
「おれは、あの方の代理で第二席を守っているだけだ」
「道理ですごいわけですね」
「ああ、これ程とは思わなかったがな」
「キヌにもこの事を伝えよ」
「そして今後はあの二人には手を出さぬよう」
「周知徹底しろ!」
「はは!!」
ケーシーはあいとセイ女がこちらに、関心がないうちにこの場からこっそり逃げ出した。
「あれ」
「わたし達どうしたのかしら」
シオンが真っ先に、気が付いた。
もう、おか様の状態は元に戻っていた。
シエンとシオンが無事ならそれでいいようだった。
「何もないです」
セイがとぼけて二人に微笑んだ。
「それなら良いのですけど」
シアンとシオン、そしてシエンが微笑んだ。
三人は自分たちの体が二つに切れたことは気が付いていた。
どうせ、この二人がなんとかしてしまったのだと思ったが、ばかばかしくって言うのを止めた。
「陛下、大丈夫ですか」
外が騒然となり神殿跡に人が集まりだした。
何でも怪獣の大声が町中に響いたと言うのである。
しばらく、状況の捜査が始まり、二人の聖女は休憩に入った。
セイ女とおか様はお気に入りの、部屋の隅にちょこんと座り込むと、珍しくおか様が二人を呼んだ。
呼んだと言っても不自由な手で手招きしただけだが、シオンとシエンは嬉しかった。
二人が近づくとおか様は二人を抱きしめた。
頭が壊れて体を満足に動かせないおか様に、抱きしめられた二人は、ぎゅーーっと締め付けられて、死にそうになっていた。
おか様は満足に力加減が出来なかったのだ。
ぐったりとした、二人に
「しんじゃらめー、しんじゃらめー」
「しなないれーー」
おか様は今のことを言っているのか、さっきのことを言っているのか泣いていた。
残っている左目から大粒の涙を流し、更にぎゅうぎゅう抱きしめた為、二人は本当に死んでしまった。
慌てて、セイ女様が治癒魔法をかけて、何とか蘇生した。
「ぷはーー」
「あーー苦しかった」
「よかったーーー」
「よかったーーー」
「しんじゃらめらからーー」
おか様が再び抱きしめようと近づいてきた。
「ぎゃーーーーー」
シオンとシエンは悲鳴を上げて逃げ出した。
この日から、おか様が少しだけ言葉を発するようになる。
そして、人の言葉をすこしだけ理解するようになった。
ほんの少しだけ人間を受け入れようとしている様に見えた。
それを見つめるセイ女の目にうっすら涙が浮かんでいた。
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