魔王

覧都

文字の大きさ
33 / 208

第三十三話 新たなる配下

しおりを挟む
「おい、ロアド領、オウブ将軍が攻めて来たらしいぞ」

僕たちはロアド領の隣、チョカイ領の街の食堂にいる。
食堂内はザワザワしだした。

「オウブさん、はやいですね。まだ四十日程しか、たっていませんよ。大丈夫でしょうか」

「うふふ、お手並み拝見ですね」

フォリスさんが笑っています。
まあ、僕たちがいるのですから、ピンチになれば助っ人します。

「おい、あんた達は行かないのか。防壁の上で見ることが出来るらしいぞ」

のんびりしていたら、おじさんが心配してくれた。

「では、僕たちも行きましょうか」

チョカイ領の街は、少し海から離れた平原に有る。
街ごとぐるりと高い壁がおおっている。
暇な町人が壁の上にゾロゾロ集まっていた。
領主チョカイは武人の様で、銀色に輝く鎧を身につけて、街の門の前に二千人程の兵を集め、オウブ軍を迎え撃つようだ。

「うわーーはっはっはーーー」

壁の上の町人から笑いが起ります。
それも、そのはずオウブ軍はオウブ将軍を含めて十人です。

「なーーーーっ」

僕はあせった、二千人対十人では、皆殺しにされて終わりです。
外壁から飛び降りようとしたら、フォリスさんに肩をつかまれた。

――な、何でっ!!

そう思って、フォリスさんを見たら、首を振っています。
そして、余裕の笑顔になりました。

「ふふふ、大丈夫ですよ。のんびり見ていましょう」



「チョカイ!! いま、降伏するなら、けがをしなくて済むぞー」

オウブさんの大きな声が聞こえます。

「ふざけるなー!! いくらお前が強くても、この数の差をどうするつもりだー、弓隊かまえー」

チョカイ軍は、軽弓兵と歩兵で編成されている。
弓隊が矢をつがえる。
射程に入れば矢の雨を降らせるつもりなのだろう。
恐らく領主チョカイはオウブの最期を、領民に見せつけようとしているのだろう。

「後悔するなよチョカーーーーーーーイ!! スザク隊全軍アスラバキだーーー!! いけーーー!!!!」

「んっ」

走り出した兵士は、スザクのようだ。
チョカイ軍の弓隊は一斉に弓を放った。だが、スザクにはあたらなかった。スザクの走る速さは、チョカイ軍の想定をはるかに越えていたのだ。
矢が上空にあるうちにスザク達はチョカイ軍の中に飛び込んだ。

「ぐわあああ!」
「うがあああ!」
「ぎゃっ!」

チョカイ軍から叫び声が次々あがる。
スザクは、チョカイ軍の攻撃をすべてはじき返している。
瞬く間にチョカイ軍は、足の骨を折られ倒れていった。
チョカイは最期に両足を折られ倒れた。
壁の上の見物人達が鎮まりかえった。

「ぐうううーー」

倒れたチョカイはオウブさんを、うなりながらにらんでいる。
オウブさんは、チョカイを一撃で殺せる位置まで近づいた。

「のああああああーーー」

僕は、背中をフォリスさんに押されて、城壁から落とされた。
最初は驚いて叫んでしまったけど、着地はしっかり風魔法を使ってふわりと降りた。
僕が着地をするとスザク達が駆け寄ってきて、まわりで楽しそうに駆け回っている。

まるで犬が飼い主のまわりを駆け回っている様だ。
ダンジョンで会ったときは、憎らしい敵モンスターだったけど、配下としてこんなになつかれると、可愛く感じる。
スザク全員を座らせて、交互になでてやった。

「見ろ、あの方が魔王様だ」

「こ、子供ではないか」

「オウブさん、もう治癒してもよろしいですか」

「いえ、まだ降伏していません」

「ふふふ、全快して向ってくるようなら、スザクに皆殺しを命じたら良いのではないですか。……治癒」

僕は、全員を治癒した。

「うっ、か、体から痛みが消えた……」

「兵士の皆さんも全快しているはずです。どうしますか」

「うぬ」

チョカイさんは、まだ迷っているようだった。
その時、僕の後ろから大きな声がした。

「何をしている。大魔王様の御前である。頭が高いぞ!!」

フォリスさんが大声を出したのだ。
その言葉にスザクとオウブさんが素早く反応し平伏した。
そして、うやうやしくチョカイさんが平伏した。
それにならって、兵士達が次々平伏した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

氷河期世代のおじさん異世界に降り立つ!

本条蒼依
ファンタジー
 氷河期世代の大野将臣(おおのまさおみ)は昭和から令和の時代を細々と生きていた。しかし、工場でいつも一人残業を頑張っていたがとうとう過労死でこの世を去る。  死んだ大野将臣は、真っ白な空間を彷徨い神様と会い、その神様の世界に誘われ色々なチート能力を貰い異世界に降り立つ。  大野将臣は異世界シンアースで将臣の将の字を取りショウと名乗る。そして、その能力の錬金術を使い今度の人生は組織や権力者の言いなりにならず、ある時は権力者に立ち向かい、又ある時は闇ギルド五竜(ウーロン)に立ち向かい、そして、神様が護衛としてつけてくれたホムンクルスを最強の戦士に成長させ、昭和の堅物オジサンが自分の人生を楽しむ物語。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

処理中です...