魔王

覧都

文字の大きさ
34 / 208

第三十四話 森の魔女

しおりを挟む
「魔王様、こちらになります」

チョカイさんに城内を案内してもらい、広い部屋に入った。
室内には、贅沢な装飾と、大きな机があった。
片側に二十名が座れるように、椅子が配置されている。
フォリスさんが、港町ドレークから、ロアドさん、バンさん、エドさんを連れてきてくれた。

「移動魔法が、僕とフォリスさんしか使えないのはつらいね」

「それならば、森の魔女を陣営に迎えてはいかがでしょうか」

チョカイさんが、提案してくれた。

「も、森の魔女ですか。あの方も難しい人なので、無理なのではないでしょうか」

ロアドさんが難色を示した。

「ふふふ、では、森の魔女には僕が会ってみます」

「き、危険です。あの魔女は強力な攻撃魔法を使うと聞いています」

ロアドさんが慌てています。
余計に会ってみたいと思いました。
ロアドさん達が席につくとチョカイさんの配下が次々席を埋め、結局全席埋まり、十数人が壁際にたっている。

メイドさんが数人入ってきて、お茶を運んでくれている。
それが、終るのも待てないで、チョカイさんが声をかけてきた。

「魔王様、あなたは何を求めてお立ちになったのですか」

「魔人の繁栄です。その後は人間の国と共存共栄です。まずは魔人の国を統一したいと思います」

「おおおおーー」

低いどよめきが起った。

「次はルチョウ領、リョウメイ領、アルアド領を攻めたいと思います。オウブさんとチョカイさんには、スザクを十体ずつ預けますので先鋒として戦ってください」

「はっ」

「ただし、オウブさん、スザクだけで攻めるのは禁止です」

「な、何故ですか」

オウブさんが疑問をぶつけてきました。
当然の疑問です。

「それは魔人の国の、未来の為です。僕は、近い未来勇者に殺されるでしょう。その後は、皆さんにこの国を託さなくてはなりません。その時の為です」

この国では、長い年月の中で、魔王が生まれ、勇者に殺されるという歴史を繰り返しています。
きっと今回もそうなるでしょう、なぜなら僕は勇者に嫌われていますから。

「そ、そのような事にはなりません。させません。うっうっう」

突然、フォリスさんが泣き出してしまった。
今日初めてあった人達ばかりなのに、顔を押さえて泣き崩れるフォリスさんを見て、涙ぐんでいる人が結構います。
意外といい人ばかりの様です。

「わがあるじ」

クザンが小声で耳元に話しかけてきた。

「何ですか?」

「はっ、スザク十体にシュザクを付けていただきたいのですが」

「なぜですか」

「スザクは人の言葉を理解するぐらいの知能はあります。ですが、細かい指示を的確に行う為には、シュザクの力が必要だからです」

「わかりました。スザク十体にシュザク一体を連れて行ってもらうことにします」

「はっ」

この後、内政についての打ち合わせなどが、行われ金貨五千枚を要求された。
要求の倍を、渡してちゃんと返却することを約束してもらった。
返してもらわなくても、いたくもかゆくもないけど、その方がいい気がしたのでそうした。
長い間会議は続いていたが、僕の心は森の魔女の事で一杯だった。



「じゃあ、行ってきます」

「くれぐれも、気を付けて下さい」

オウブさんとチョカイさんと、数名の兵士が門の前で僕達を見送ってくれた。
行き先は森の魔女の所です。
その後、僕達一行は森から一番近いルチョウ領を攻める事になった。

チョカイ領の北には深い森があり、その奥深くに魔女が住んでいるというのだ。
まあ、人里離れた森の中で暮らす人など変人に違いない。
会うのが楽しみだ。

街から続く道を進んでいくと、森の中に小さな村が有り、そこで森の魔女の事を聞くと村人は、魔女の事を知っていた。
村人の中に、魔女の事を悪く言う者はいなかった。
いくつかの村で、宿泊をしてどんどん奥深くへ入ると、とうとう道が無くなった。

普通森の中には魔獣がいるはずだが、ここまで一度も会わない。
魔女が村人の為に狩っているのだろうか。

「見つけたのじゃ」

こんな時には、ランロンが役に立ってくれます。
広く森の中を探し回ってくれたので、魔女の住みかを見つけることが出来ました。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

氷河期世代のおじさん異世界に降り立つ!

本条蒼依
ファンタジー
 氷河期世代の大野将臣(おおのまさおみ)は昭和から令和の時代を細々と生きていた。しかし、工場でいつも一人残業を頑張っていたがとうとう過労死でこの世を去る。  死んだ大野将臣は、真っ白な空間を彷徨い神様と会い、その神様の世界に誘われ色々なチート能力を貰い異世界に降り立つ。  大野将臣は異世界シンアースで将臣の将の字を取りショウと名乗る。そして、その能力の錬金術を使い今度の人生は組織や権力者の言いなりにならず、ある時は権力者に立ち向かい、又ある時は闇ギルド五竜(ウーロン)に立ち向かい、そして、神様が護衛としてつけてくれたホムンクルスを最強の戦士に成長させ、昭和の堅物オジサンが自分の人生を楽しむ物語。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

処理中です...