41 / 208
第四十一話 潜入玉座の間
しおりを挟む
「では、アスラちゃん移動するかいのう、すぐに行くのじゃろ?」
「お願いします」
僕たちは魔王国の、王都の広場の片隅に移動した。
「わーー凄い!!」
フォリスさんがニコニコしながらグルグルまわりを見ている。
「凄いじゃろう、この王都は、魔人の国の人口の半分ほどが住んでいるのじゃ」
コデルさんが自慢そうに言う。
人間の国の王都より、ギュッと詰まったように建物が建ち並び、その建物の背が高く、空が小さく見える。
なんだか、重苦しい雰囲気の街だ。
すでにいい時間だったので、早めに宿泊先を確保した。
日が暮れて、あたりが暗くなると、僕はコデルさんに話しかけた。
「コデルさん、お願いがあります」
「まあ、そう来ると思っておった。どこへ行きたいのじゃ」
コデルさんは、察してくれていたようだ。
「王城の、玉座の間です」
僕は、これからはじまる戦いの、目的地を口にした。
「ぎゃあーーはっはっはっはっー」
コデルさんは爆笑している。
「無理ですか」
「ふふふ、結界が何重にもかけられている」
「やはり、無理ですか」
「ばっかもーーん、誰が出来ないと言った。わしをみくびるなーー」
「では、大丈夫なのですね」
「ふむ、アスラちゃんは慎重なのか、大胆なのかよくわからんのう」
「ふふふ、見て見たいものは、最初に見ておいた方が、いいと思います。警戒される前じゃないと、近づくことも出来なくなりますからね」
「どうするね、全員行くかね」
フォリスさんも、シュラさんもクザンもランロンもうなずいている。
「では、全員で行くかいのう」
急に暗いところに出た。
目が慣れてくると、広い空間の中だった。
長い歴史を感じて、息苦しい感じがした。
暗い為か、よけいに広く感じる。
「どうじゃ、魔王の謁見の間じゃ。ほれ、そこが玉座じゃ。なつかしいのう。ここで、魔王が何を言い出すのか、皆、ビクビクしていた。今、思い出してもおそろしいわ!」
そういうとコデルさんは両手を、胸の前で交差して寒そうにした。
「なんだか、恐い雰囲気です」
フォリスさんが、恐怖を感じているようだ。
きっとここで、大勢の人の命が理不尽に奪われたのでは無いだろうか。
恨みの念のような、重苦しい空気がただよっている。
「こら、何をしておる。見つかれば死刑じゃぞ」
僕は、無言で玉座に向かい歩き出した。
そして、そのままストンと座ってみた。
何も感じ無い、ただの椅子だ。
「うわーーーっ、な、何をしておる。玉座に座るなど十回死刑じゃーー!!」
コデルさんにとっては、ふれる事も許されない椅子。
恐れ多い行為なのだろう。心の底からあせっていることがわかる。
「騒がしいわね、だれかいるのかしら。ロホウ! 光を」
僕が椅子に座っていると声がした。
コデルさんが大声を出した為、誰かが近づいてきたのだ。
「はっ、お嬢様」
光の魔法具があたりを照らした。
ロウソク一本程度の明かりだったが、僕たちの存在はしっかり照らし出された。
そして、自らの姿もさらした。
二人の男女だった。
「驚いたわねえ、こんな所に侵入出来る人がいるなんて」
驚いたと言いながら、驚いている様子はなかった。
どこか余裕がある。
「リコ様、気を付けて下さい」
体の大きな金髪で美形のフル武装の男が、リコという銀髪の美少女の前に仁王立ちになった。
この男が強いということなのだろう。
「ぷーーーっ」
リコという美少女は、僕の姿を見て吹き出した。
僕は、玉座に座りふんぞり返って、口をへの字にして、目だけで、リコと大男をギロリとみていたのだ。
魔王を演じている少年の姿が、可笑しかったのだろう。
「あのね、その玉座、私がネズミの糞をばらまいておいたのよ。くすくす」
「な、なにーーー!!」
僕はあせって立ち上がった。
「嘘に決まっているでしょ。いくら魔王の孫でもそんなことをすれば、ただじゃすまないわ」
「くっくっくっくっ」
僕のあせっている姿が面白かったのか、フォリスさんやコデルさん、クザンやシュラさん、ランロンまで笑っている。
しゃくに障ったので、もう一度玉座にドスンと乱暴に座り、少しだけ右手を上げた。
さすがは、大賢者のフォリスさんです。それで全てを理解してくれました。
僕の前に進み出てひざまずいた。
そして僕にしか見えない様に、少しだけ舌を出して片目をつむった。
フォリスさんにならって、クザン、シュラさん、コデルさん、ランロンまで平伏した。
ランロンは見えないから、やらなくてもいいと思いますけどね。
「ふふふ」
リコが、少し不敵な笑いを浮かべながら、平伏した。
「ロホウ、魔王様の御前である。頭が高い」
リコは何を考えているのか、配下のロホウまで平伏させた。
僕を魔王と言って平伏したということは、僕の事を魔王とわかってくれたのでしょうか。
それとも子供の魔王ごっことか思っているのでしょうか。
まあ、玉座の座り心地を確かめる事は出来ました。
長居は無用です。帰りましょう。
「では、帰りましょうか」
僕は、リコとロホウに視線を送り、移動魔法を使った。
「リコ様、あの者は誰でしょうか」
「ロホウ、わからなかったのですか。あれは、魔王ですわ」
「では、報告しないと……」
「いいえ、おもしろそうなので二人の秘密にしておきましょう。ふふふ……」
「お願いします」
僕たちは魔王国の、王都の広場の片隅に移動した。
「わーー凄い!!」
フォリスさんがニコニコしながらグルグルまわりを見ている。
「凄いじゃろう、この王都は、魔人の国の人口の半分ほどが住んでいるのじゃ」
コデルさんが自慢そうに言う。
人間の国の王都より、ギュッと詰まったように建物が建ち並び、その建物の背が高く、空が小さく見える。
なんだか、重苦しい雰囲気の街だ。
すでにいい時間だったので、早めに宿泊先を確保した。
日が暮れて、あたりが暗くなると、僕はコデルさんに話しかけた。
「コデルさん、お願いがあります」
「まあ、そう来ると思っておった。どこへ行きたいのじゃ」
コデルさんは、察してくれていたようだ。
「王城の、玉座の間です」
僕は、これからはじまる戦いの、目的地を口にした。
「ぎゃあーーはっはっはっはっー」
コデルさんは爆笑している。
「無理ですか」
「ふふふ、結界が何重にもかけられている」
「やはり、無理ですか」
「ばっかもーーん、誰が出来ないと言った。わしをみくびるなーー」
「では、大丈夫なのですね」
「ふむ、アスラちゃんは慎重なのか、大胆なのかよくわからんのう」
「ふふふ、見て見たいものは、最初に見ておいた方が、いいと思います。警戒される前じゃないと、近づくことも出来なくなりますからね」
「どうするね、全員行くかね」
フォリスさんも、シュラさんもクザンもランロンもうなずいている。
「では、全員で行くかいのう」
急に暗いところに出た。
目が慣れてくると、広い空間の中だった。
長い歴史を感じて、息苦しい感じがした。
暗い為か、よけいに広く感じる。
「どうじゃ、魔王の謁見の間じゃ。ほれ、そこが玉座じゃ。なつかしいのう。ここで、魔王が何を言い出すのか、皆、ビクビクしていた。今、思い出してもおそろしいわ!」
そういうとコデルさんは両手を、胸の前で交差して寒そうにした。
「なんだか、恐い雰囲気です」
フォリスさんが、恐怖を感じているようだ。
きっとここで、大勢の人の命が理不尽に奪われたのでは無いだろうか。
恨みの念のような、重苦しい空気がただよっている。
「こら、何をしておる。見つかれば死刑じゃぞ」
僕は、無言で玉座に向かい歩き出した。
そして、そのままストンと座ってみた。
何も感じ無い、ただの椅子だ。
「うわーーーっ、な、何をしておる。玉座に座るなど十回死刑じゃーー!!」
コデルさんにとっては、ふれる事も許されない椅子。
恐れ多い行為なのだろう。心の底からあせっていることがわかる。
「騒がしいわね、だれかいるのかしら。ロホウ! 光を」
僕が椅子に座っていると声がした。
コデルさんが大声を出した為、誰かが近づいてきたのだ。
「はっ、お嬢様」
光の魔法具があたりを照らした。
ロウソク一本程度の明かりだったが、僕たちの存在はしっかり照らし出された。
そして、自らの姿もさらした。
二人の男女だった。
「驚いたわねえ、こんな所に侵入出来る人がいるなんて」
驚いたと言いながら、驚いている様子はなかった。
どこか余裕がある。
「リコ様、気を付けて下さい」
体の大きな金髪で美形のフル武装の男が、リコという銀髪の美少女の前に仁王立ちになった。
この男が強いということなのだろう。
「ぷーーーっ」
リコという美少女は、僕の姿を見て吹き出した。
僕は、玉座に座りふんぞり返って、口をへの字にして、目だけで、リコと大男をギロリとみていたのだ。
魔王を演じている少年の姿が、可笑しかったのだろう。
「あのね、その玉座、私がネズミの糞をばらまいておいたのよ。くすくす」
「な、なにーーー!!」
僕はあせって立ち上がった。
「嘘に決まっているでしょ。いくら魔王の孫でもそんなことをすれば、ただじゃすまないわ」
「くっくっくっくっ」
僕のあせっている姿が面白かったのか、フォリスさんやコデルさん、クザンやシュラさん、ランロンまで笑っている。
しゃくに障ったので、もう一度玉座にドスンと乱暴に座り、少しだけ右手を上げた。
さすがは、大賢者のフォリスさんです。それで全てを理解してくれました。
僕の前に進み出てひざまずいた。
そして僕にしか見えない様に、少しだけ舌を出して片目をつむった。
フォリスさんにならって、クザン、シュラさん、コデルさん、ランロンまで平伏した。
ランロンは見えないから、やらなくてもいいと思いますけどね。
「ふふふ」
リコが、少し不敵な笑いを浮かべながら、平伏した。
「ロホウ、魔王様の御前である。頭が高い」
リコは何を考えているのか、配下のロホウまで平伏させた。
僕を魔王と言って平伏したということは、僕の事を魔王とわかってくれたのでしょうか。
それとも子供の魔王ごっことか思っているのでしょうか。
まあ、玉座の座り心地を確かめる事は出来ました。
長居は無用です。帰りましょう。
「では、帰りましょうか」
僕は、リコとロホウに視線を送り、移動魔法を使った。
「リコ様、あの者は誰でしょうか」
「ロホウ、わからなかったのですか。あれは、魔王ですわ」
「では、報告しないと……」
「いいえ、おもしろそうなので二人の秘密にしておきましょう。ふふふ……」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
氷河期世代のおじさん異世界に降り立つ!
本条蒼依
ファンタジー
氷河期世代の大野将臣(おおのまさおみ)は昭和から令和の時代を細々と生きていた。しかし、工場でいつも一人残業を頑張っていたがとうとう過労死でこの世を去る。
死んだ大野将臣は、真っ白な空間を彷徨い神様と会い、その神様の世界に誘われ色々なチート能力を貰い異世界に降り立つ。
大野将臣は異世界シンアースで将臣の将の字を取りショウと名乗る。そして、その能力の錬金術を使い今度の人生は組織や権力者の言いなりにならず、ある時は権力者に立ち向かい、又ある時は闇ギルド五竜(ウーロン)に立ち向かい、そして、神様が護衛としてつけてくれたホムンクルスを最強の戦士に成長させ、昭和の堅物オジサンが自分の人生を楽しむ物語。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる