48 / 208
第四十八話 魔王軍
しおりを挟む
やはり持つものは人脈ですね。
反乱軍討伐隊の兵士枠には入れませんでしたが、補給隊の荷物運びに紛れ込ましてもらうことが出来ました。
商会は、チッカさんとシュカさんスザク十人で守ってもらうことにしました。
スザクは、倉庫で助けた女性達の姿にヘンシンしてもらい、全員メイド姿です。
魔王都の中央広場の集合場所に、約束時間に会わせて出かけたら、すでに大勢の人が集まっています。
「おい、さっさと運ばねえか」
「てめーー、俺たちを誰だと思っているんだ」
補給隊の隊長に、凄んでいる人がいます。
腕をまくって入れ墨を見せているようです。
「ひっ」
あららら、小さく隊長が悲鳴を上げました。
どんな入れ墨かと思って目をこらしたら、どこかで見た入れ墨です。
双龍の入れ墨。
死刑にならずに、こんなところで懲役のようですね。
「おはようございます。あなた達に、こんなところで出会うとは、不思議な縁を感じます」
フォリスさんが丁寧にあいさつをした。
「ひっ、ひーーっ」
人相の悪い人達が、悲鳴を上げて尻餅をつきました。
「な、なに、その態度。失礼しちゃうわ」
フォリスさんが可愛い顔して、ちょっとむくれた表情をします。すげー、がわいいんだけど……。
「か、勘弁して下さい」
「勘弁してください」
「ゆ、許して下さい」
「許して下さい」
この人達は、恐さしか感じないようです。
もう、頭の上で手を合わせている人までいます。
「ちゃんと、隊長さんの言うことを聞いて、一生懸命働けばなにもしませんよ」
「わ、わかりました」
「わかりました」
全員がわかってくれたみたいです。
「あ、あのう、あなた達は何者なのですか」
「うふふ、隊長さんの下で働かせていただく、下働きのものです。よろしくお願いします」
隊長さんが不審がって聞いて来ますが、フォリスさんははぐらかしました。
「おい、お前ら、さっさと荷物を積み込め、じきに出発だ」
隊長さんがちらちらフォリスさんを見ながら、人相の悪い男達に命令をします。
隊長さんの後ろでフォリスさんが、天使のようなとても可愛い笑顔をしています。
その顔を見て人相の悪い男達は、テキパキ働き出しました。
魔王都を出ていくつかの町と村を抜け、二日目に大きめの城塞都市に付き、物資の入れ替えをしました。
ここで五千人ほどの兵士と合流し、再び行軍がはじまりました。
草原の中を3日ほど歩くと、荒れ地になり、あたりは黄色い地面だけになります。
そして、補給隊に待機命令がでました。
ここまでの行程、隊長さんのはからいで、随分楽をさせてもらいました。
僕たち七人、フォリスさん、ランロン、コデルさん、リコさん、クザン、シュラさんは、兵士の背中を見えなくなるまで見つめていました。
簡単な昼食をとっていると、喚声が聞こえてきました。
それが、だんだん近くなると、早馬が来て
「全軍、撤退、撤退だーー―っ」
「うわあーーーーっ」
撤退の声を聞くと、補給部隊の兵士と、人足が悲鳴を上げて逃げ出しました。
「に、逃げましょう。危険です。逃げましょう」
リコさんがあわてて、僕の手を引っ張ります。
僕がにこりと笑って。
「大丈夫です。落ち着いて下さい」
たったこれだけで、リコさんは頬を赤らめて落ち着きを取り戻してくれました。
「そこの岩の上の方が安全ですね。移動しておきましょう」
荷車四台分ほどの岩があったので、その上に移動しました。
移動を済ませるとすぐに砂ボコリと共に騎馬隊が走ってくるのが見えました。
「おい、お前達何をしている。危険だ、逃げるんだ。前戦は崩壊した。我軍の敗北だーー」
言いながら走り抜けました。
その後、騎馬隊が横を走り抜けますが、皆泣きそうな青い顔をして逃げて行きます。
リコさんの手が再び震え出しました。
リコさんの正面にまわって、しっかりと目を見て
「大丈夫です!!」
きぜんと言ってあげました。
リコさんの顔が真っ赤になり、ペタンと座ってしまいました。
そして、両手で僕の手を強く握ってきました。
相当恐かったようです。
「ぐわあああーー」
「ぎゃああーーー」
赤黒い、鎧を着たような体が、ぴょこぴょこ兵士の間から見えました。
「スザク……かな?」
僕がつぶやいたら、スザクはそれが聞こえたのか、恐ろしい勢いで岩の下に駆けつけます。
そして、何十周も岩のまわりを回り始めました。
「おお、蛾のさなぎのゴーレムか」
コデルさんがつぶやきます。
違いますよー、スザクです。
「可愛いもんじゃのう、犬のようにはしゃいでおるわ。蛾のさなぎのゴーレム」
そのうち、スザクがどんどん集まってきて、大変な事になりました。
「こらーー、お前達、勝手に行動するなー―」
シュザクが駆けつけました。
でも、変です、何だか可愛い服を着ています。
あまりにも速く走ってきて急にたち止った為、スカートがまくれ上がっています。
――だ、だれですか、シュザクにパンツをはかせたのわーー
「はっ、ア、アスラ様。スザクはアスラ様を見つけたのですか、それでは命令を忘れてもしょうがありませんね」
「シュカイちゃーーーん、あまり離れちゃーーだめだーー」
「やあ、チョカイさん」
「おおーー、魔王様、こんなところで何をしているのですか」
「ふふふ、荷物運びを少し」
「な、なにーーっ。魔王様に荷物運びだとーー。皆殺しにして参ります。ごめん」
「チョカイさん、もう良いです。皆がそろうまでここにいてください」
僕は、ここに魔王軍が集まるのを待つことにした。
反乱軍討伐隊の兵士枠には入れませんでしたが、補給隊の荷物運びに紛れ込ましてもらうことが出来ました。
商会は、チッカさんとシュカさんスザク十人で守ってもらうことにしました。
スザクは、倉庫で助けた女性達の姿にヘンシンしてもらい、全員メイド姿です。
魔王都の中央広場の集合場所に、約束時間に会わせて出かけたら、すでに大勢の人が集まっています。
「おい、さっさと運ばねえか」
「てめーー、俺たちを誰だと思っているんだ」
補給隊の隊長に、凄んでいる人がいます。
腕をまくって入れ墨を見せているようです。
「ひっ」
あららら、小さく隊長が悲鳴を上げました。
どんな入れ墨かと思って目をこらしたら、どこかで見た入れ墨です。
双龍の入れ墨。
死刑にならずに、こんなところで懲役のようですね。
「おはようございます。あなた達に、こんなところで出会うとは、不思議な縁を感じます」
フォリスさんが丁寧にあいさつをした。
「ひっ、ひーーっ」
人相の悪い人達が、悲鳴を上げて尻餅をつきました。
「な、なに、その態度。失礼しちゃうわ」
フォリスさんが可愛い顔して、ちょっとむくれた表情をします。すげー、がわいいんだけど……。
「か、勘弁して下さい」
「勘弁してください」
「ゆ、許して下さい」
「許して下さい」
この人達は、恐さしか感じないようです。
もう、頭の上で手を合わせている人までいます。
「ちゃんと、隊長さんの言うことを聞いて、一生懸命働けばなにもしませんよ」
「わ、わかりました」
「わかりました」
全員がわかってくれたみたいです。
「あ、あのう、あなた達は何者なのですか」
「うふふ、隊長さんの下で働かせていただく、下働きのものです。よろしくお願いします」
隊長さんが不審がって聞いて来ますが、フォリスさんははぐらかしました。
「おい、お前ら、さっさと荷物を積み込め、じきに出発だ」
隊長さんがちらちらフォリスさんを見ながら、人相の悪い男達に命令をします。
隊長さんの後ろでフォリスさんが、天使のようなとても可愛い笑顔をしています。
その顔を見て人相の悪い男達は、テキパキ働き出しました。
魔王都を出ていくつかの町と村を抜け、二日目に大きめの城塞都市に付き、物資の入れ替えをしました。
ここで五千人ほどの兵士と合流し、再び行軍がはじまりました。
草原の中を3日ほど歩くと、荒れ地になり、あたりは黄色い地面だけになります。
そして、補給隊に待機命令がでました。
ここまでの行程、隊長さんのはからいで、随分楽をさせてもらいました。
僕たち七人、フォリスさん、ランロン、コデルさん、リコさん、クザン、シュラさんは、兵士の背中を見えなくなるまで見つめていました。
簡単な昼食をとっていると、喚声が聞こえてきました。
それが、だんだん近くなると、早馬が来て
「全軍、撤退、撤退だーー―っ」
「うわあーーーーっ」
撤退の声を聞くと、補給部隊の兵士と、人足が悲鳴を上げて逃げ出しました。
「に、逃げましょう。危険です。逃げましょう」
リコさんがあわてて、僕の手を引っ張ります。
僕がにこりと笑って。
「大丈夫です。落ち着いて下さい」
たったこれだけで、リコさんは頬を赤らめて落ち着きを取り戻してくれました。
「そこの岩の上の方が安全ですね。移動しておきましょう」
荷車四台分ほどの岩があったので、その上に移動しました。
移動を済ませるとすぐに砂ボコリと共に騎馬隊が走ってくるのが見えました。
「おい、お前達何をしている。危険だ、逃げるんだ。前戦は崩壊した。我軍の敗北だーー」
言いながら走り抜けました。
その後、騎馬隊が横を走り抜けますが、皆泣きそうな青い顔をして逃げて行きます。
リコさんの手が再び震え出しました。
リコさんの正面にまわって、しっかりと目を見て
「大丈夫です!!」
きぜんと言ってあげました。
リコさんの顔が真っ赤になり、ペタンと座ってしまいました。
そして、両手で僕の手を強く握ってきました。
相当恐かったようです。
「ぐわあああーー」
「ぎゃああーーー」
赤黒い、鎧を着たような体が、ぴょこぴょこ兵士の間から見えました。
「スザク……かな?」
僕がつぶやいたら、スザクはそれが聞こえたのか、恐ろしい勢いで岩の下に駆けつけます。
そして、何十周も岩のまわりを回り始めました。
「おお、蛾のさなぎのゴーレムか」
コデルさんがつぶやきます。
違いますよー、スザクです。
「可愛いもんじゃのう、犬のようにはしゃいでおるわ。蛾のさなぎのゴーレム」
そのうち、スザクがどんどん集まってきて、大変な事になりました。
「こらーー、お前達、勝手に行動するなー―」
シュザクが駆けつけました。
でも、変です、何だか可愛い服を着ています。
あまりにも速く走ってきて急にたち止った為、スカートがまくれ上がっています。
――だ、だれですか、シュザクにパンツをはかせたのわーー
「はっ、ア、アスラ様。スザクはアスラ様を見つけたのですか、それでは命令を忘れてもしょうがありませんね」
「シュカイちゃーーーん、あまり離れちゃーーだめだーー」
「やあ、チョカイさん」
「おおーー、魔王様、こんなところで何をしているのですか」
「ふふふ、荷物運びを少し」
「な、なにーーっ。魔王様に荷物運びだとーー。皆殺しにして参ります。ごめん」
「チョカイさん、もう良いです。皆がそろうまでここにいてください」
僕は、ここに魔王軍が集まるのを待つことにした。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
氷河期世代のおじさん異世界に降り立つ!
本条蒼依
ファンタジー
氷河期世代の大野将臣(おおのまさおみ)は昭和から令和の時代を細々と生きていた。しかし、工場でいつも一人残業を頑張っていたがとうとう過労死でこの世を去る。
死んだ大野将臣は、真っ白な空間を彷徨い神様と会い、その神様の世界に誘われ色々なチート能力を貰い異世界に降り立つ。
大野将臣は異世界シンアースで将臣の将の字を取りショウと名乗る。そして、その能力の錬金術を使い今度の人生は組織や権力者の言いなりにならず、ある時は権力者に立ち向かい、又ある時は闇ギルド五竜(ウーロン)に立ち向かい、そして、神様が護衛としてつけてくれたホムンクルスを最強の戦士に成長させ、昭和の堅物オジサンが自分の人生を楽しむ物語。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる