魔王

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第七十話 素性を隠して

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「皆さんの中にはすでに、知っている人もいると思いますが、魔人の国が統一出来たあかつきには、人間の国へ攻め込みます……」

僕はオウブさんの顔を見て、その後、横に並ぶ猛将達の顔をゆっくり見ていきます。
僕の言葉に、皆が少し興奮して顔が赤くなっています。

「攻めるのは、前魔王の時に治めていた国土を取り返すまでです。魔人の領地を奪還した後は、共存共栄を目指します。ですが人間の国を攻めると、勇者が魔王を殺す為出てくるでしょう……」

僕はここで、少し間を取りました。
僕の強さを知る、三人の魔将軍は、僕が何を言おうとしているのか分からないようです。

「勇者は、究極の魔法があります。自分より相手の方が強い場合、自分の命を失う代わりに、どれだけ相手が強くても命を奪うことが出来るという魔法を持っています。この魔法の他にも、全ステータスを魔王攻撃に全振り出来る魔法もあり、これも強力な魔法です。この魔法がある為に、僕は勇者に殺されるでしょう。それだけは知っておいてください」

僕は勇者の時にはこの魔法を持っていました。
この二つの魔法だけは魔王になった時消えてしまいました。
勇者固有の魔法で、勇者以外は使用できない究極魔法ということでしょう。

僕が言い終ると、少しザワザワしました。
僕は玉座の座り心地を楽しんで、目の前にいる大勢の重臣の顔を見ていると、もう色々満足出来てしまいました。「もう死んでもいい!!」などと思っています。

「さて、つまらない話しは、ここまでです」

僕はできる限りの笑顔をつくり、ゆっくり右から左へ顔を動かします。

「みな、よくやってくれた。これより宴を行う。英気を養ってくれ」

「うおおおおおおおーーーーー」

全員から歓声があがった。
それと共に部屋に料理が運ばれてきた。
少しおくれて城外でも歓声が上がり、宴がはじまったようだ。

「魔王様、影武者をたててはどうだろうか」

オウブさんが、真っ先に駆け寄って来て提案してきた。

「うふふふ、クザンを影武者にしましょう」

フォリスさんが、言ってきた。

「そして、アスラ様は、アズサとして素性を隠してしまいましょう」

リコさんです。
僕は、それも良い考えだと思い始めていた。
その後、宴は三日三晩続いた。





「王都ほどではありませんが、ウーリエも大きな街ですね」

僕と、フォリスさんとジュウドウの三人は、宴から四日後にウーリエの様子を探りに来ました。
素性を隠す為、僕はアズサの格好をしてフォリスさんは、男の姿に変装しています。
名前はフォルスと名乗る予定です。

「てめーーら、俺たちを誰だと思っているんだ!!」

数人の兵士が、怒鳴っている。
王都からの避難民が、到着して街は混乱しているみたいです
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