魔王

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第九十三話 敵のアジト

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軽く朝食を済まして村長の家の外に出た。
僕たちの気配を感じて、わんちゃんが怯えきっている。
尻尾は股に入り、耳は倒れてしまっている。
足が折れている為、昨日と同じ場所でじっとしていたようだ。

「さて、わんちゃん質問をしたいのですが良いですか」

「……」

わんちゃんが涙目になっています。

「あなたのご主人の居場所についてです。教えていただけませんか?」

僕は優しく聞いて見た。
ワンちゃんはこれだけ怯えているのに、何も答えません。
質問の矛先を変えてみました。

「ジュウドウ、あなたは自分より強い敵に捕まり、私の事を聞かれたら答えますか?」

「いいえ、一ミリずつスライスされても答えることはありません」

「では、このわんちゃんも答えるはずがありませんね」

「はい」

僕はわんちゃんに抱きついて、頭を撫でた。
殺されるのでは無いかと、わんちゃんの体は大きくビクンと反応した。

「済みませんね。忠犬は逃がしてあげましょう」

僕は、わんちゃんのあごを撫でて、背中を撫でて、腹を撫でた。

「よしよし」

僕は、怯えるわんちゃんの体を撫でまわした。
大人しくしているわんちゃんは、やっぱりかわいい。
そして治癒をかけてあげた。

「さあ、もう自由に動けるでしょう。帰って良いですよ」

ワンちゃんは不思議そうな顔をすると、立ち上がりゆっくり歩き出した。
そして、少し離れるとこっちを振り返った。
僕はとびきりの笑顔で手を振った。
それを確認すると、わんちゃんは猛スピードで走りだした。

僕はわんちゃんが見えなくなると、後ろを振り返った。
後ろには、恐ろしい邪悪な顔をした人達がいた。
どうやら、わんちゃんの追っ手にシャドウをつけたようだ。抜かりがない。
わんちゃんは、恐ろしく遠回りをしているようです。頭の良い子ですね。
しばらく家には帰らないでしょう。

「こんな所にも、骨がある」

暇なので村の片付けを始めた。
村には無数の白骨が転がっている。
モンスターに襲われて、皆殺しになったようだ。
可哀想な村人を、丁寧に弔うとすでに大きく日が傾いていた。

「どうやら。アジトに着いたようです」

ジュウドウが僕に話しかけてきた。

「では、参りましょう」

モンスターを使って、村人の命を奪っていた人はどんな人でしょうか?
会うのが楽しみです。

シャドウの移動魔法でわんちゃんの根城に着いた。
根城はドワーフ国の東、エルフの国との国境近くの、深い森の中にあるダンジョンだった。

「へー、こんな所にもダンジョンがあるのですね」

僕たちは警戒しながら、ダンジョンに入った。
ダンジョンの中のモンスターはすごく弱い、恐らくレベル1ダンジョンだろう。
十階層、二十階層、三十階層の階層ボスとモンスターが留守になっている。
外で暴れているモンスターは、このダンジョンのモンスターで間違いないようです。

四十階層のボス部屋に着くと、わんちゃんと一人の男がいた。
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