魔王

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第百六話 戦いへ

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「アズサ様、こちらです」

僕はメイドさんに、あれよ、あれよと服を変えられて、化粧をいつもより時間をかけて施された。
部屋の扉が開くと中に、ファージさんとコウケンさんが座っている。
僕は、テーブルの端、二人の間に座らされた。

「何かお飲みになりますか?」

「僕はワイン」

「俺はビール」

ファージさんがワイン、コウケンさんがビールを頼んだ。

「僕はビール」

「はっ?」

僕はビールを頼んだのですけど、聞き直された。

「あ、あの僕はビールです」

「アズサ様、僕ではありませんよね」

メイドさんが鬼の様な形相で言ってきます。
いやいや僕は、アスラですよ。
ここの人は全員知っているでしょ。
でも、ここは素直に従いましょう。

「わ、わたしはおビールで」

笑顔で答えます。
注文を取ったメイドさんが出て行くと、部屋は静かになった。
ファージさんもコウケンさんも難しい顔をして、黙っています。正直、顔が恐いのですけど。
僕はなんでこんな格好でここにいるのでしょうか。全くわかりません。
二人にとびきりの笑顔を向けてみます。
余計に恐い顔になりました。恐いって!!

「失礼します」

メイドさんが、ファージさんにワインを、コウケンさんの前にビールを置いた。
僕には何故かホットのお紅茶が置かれた。

「あの、これビールじゃないですよ」

「アズサ様がビールをグビグビ飲んではいけません。紅茶の方が似合います」

「えーーーっ」

あっ、このやりとりを見て、少しファージさんとコウケンさんの顔が笑顔になりかけた。
でも、笑わないようにする為か、余計に恐い顔になった。
そして、ファージさんはワインを一気に飲むと口を開いた。

「3ヶ月後、人間の国へ、攻めることになった」

「そうですか」

僕は紅茶を一口飲んで答えた。

「勝手に決めてしまったがよかったのか」

「あの人達に会えば、そうなると思っていました」

「あいつらは、酷いな」

僕は、それには返事をせず、苦笑いで答えた。

「では、コウケンさんとファージさんで総大将をお願いします」

「やーーここだ、ここだ。ずるいぞ、内緒でアズサちゃんと食事をするなんて」

ドワードさんがドアを開けて入ってきた。
それに続いて前魔王の息子のサダルさん、ジセイさんが入ってきた。
続いて魔将軍、リゴウさん、バーツさん、エイグさんがはいってきた。

「ふおっ」

入ってきた人達がアズサを見て、変な声を出して恐い顔になった。
もしかしてこの人達、その顔をしていないと、にやけてしまうということなのでしょうか。
それはいいのですが、顔が恐いんだってー。

「皆さん丁度よかったです。席について下さい」

僕は立ち上がり、席についた人達の顔をゆっくり一人一人見ていきます。
僕は小さいので椅子の上に乗り大きな声を出します。

「これより、コモンドニス王国との戦争に入ります。準備期限は3ヶ月。総大将はコウケン、第一軍をドワード、第二軍をリゴウ、第三軍をバーツ、第四軍をエイグとします。存分に戦って下さい」

「おーーーーっ」

体のでかい魔人の声は大きかった。
耳がじんじんします。

……?

全員の頬が赤くなっています。
恐ろしい表情が更に恐ろしくなっているのに、頬が赤くて気持ち悪いです。
良く見たら、僕は可愛らしいミニスカートをはいていて、パンツが丸見えになっています。
僕は真っ赤になって椅子から飛び降りました。
飛び降りたら、スカートがまくれ上がり余計にパンツが丸出しになりました。

「ふっふぉ」

恐ろしい顔をした魔人から、変な声が漏れた。
ぼ、僕は男ですからね。

「あのー、あんまり挑発しないで下さい。魔人はかわいい男の子も好きですから」

メイドさんが耳元で恐ろしい事をささやきます。
ちょ、挑発なんか、これっぽっちもしていませんからーー!!!

その後全員で、静かに食事をした。
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