魔王

覧都

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第百十三話 のろいの装備

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「ひーひっひ、オウブ、おめー震えているじゃねえかー」

「そういうチョカイこそ俺より震えているじゃねーか!」

「ば、馬鹿やろー! 俺のは武者震いだーー!!」

くすくす、オウブさんとチョカイさんより、私の方が震えていますよ。
全身震えて、最早ジャンプしているみたいです。

目の前には十五万人の兵士が並んでいます。
領都の防壁の端から端までびっしりと、兵士で埋まり、いつでも襲いかかれるように準備万端で武器を構えています。
恐いですね。体の芯から震えが湧いてきます。

「そろそろです、準備はいいですか?」

アスラ様が、私達に笑顔で声をかけてくれます。
アスラ様の横にはクザンさんが転送されて、黒い貫禄のある服を着て魔王然としています。影武者になっているようです。

「ああ、忘れていました。皆さんに渡す物があります」

アスラ様は収納魔法で収納してある武器を出しました。
真っ黒な武器に、黒いまがまがしい霧が大量にまとわりついています。
太い棍に大刀がつけられた武器を、オウブさん、チョカイさん、リョウメイさん、シジセイさん、ロホウに渡しました。

「アドはこれです」

アドさんには真っ黒な爪に、まがまがしい黒い大量の霧が付いている物を渡しました。

「そして、リコさんにはこれを」

私には、長いそりのある剣を渡してくれました。
もちろん真っ黒で、まがまがしい霧付です。

「武器は全部アダマンタイト製で、ドワーフに作って貰った特別製です。後は……、皆さん近づいて下さい」

私達が近づくと防具に付与を付けてくれました。
当然、防具にまがまがしい霧がまとわりつきました。
もう全員、のろいの装備を付けているみたいです。

「ふふふ、アドだけは素早さの付与、後の皆さんは防御力増々です」

「やったニャー、のろいの装備で負ける気しないニャー」

「呪ってなんかいませんよ、むしろ愛です。愛ですからー!!」

アドさんが私の思っている事を言ってくれました。
でも、それをアスラ様は一生懸命否定しています。
少し可愛いです。

「魔人共ーー!!! 俺は王国騎士団、第一隊隊長ヘルだーー!! 貴様らには勝ち目は無い、降伏したらどうだーー!!」

騎馬に乗りトコトコ前に出て来たヘル隊長が叫びました。
その声を聞くと、敵兵から蔑むような下卑た笑い声が上がりました。

「今回の戦いは、スザクは盾を持ち敵の壁になってもらいます」

「で、では援軍が来るのですか」

オウブさんが質問した。
移動魔法で魔人の兵士が援軍で移動してくるのでしょうか。
まだ十二万人の魔人兵が、国境に待機しています。

「ふふふ、いいえ。戦うのは魔王の大将軍七人だけです。七人で敵を撤退させて下さい」

その言葉を聞いたオウブさんの体から震えが止り、雰囲気ががらりと変わりました。
背中から、黄色い光の湯気の様な物がゆらゆら立ち上っています。
少し離れた私にまで、その恐ろしい雰囲気が襲いかかります。
そういう私の中にも、強いやる気のような物がみなぎってきます。

「ふふふ、リコさんが一番黄色い湯気が立ち上っていますね」

アスラ様がそう言うと、皆がこっちを見ました。
そして、目を見開き驚いた顔をしています。
そういえばいつの間にか震えが止っています。

私達は、十五万人の兵士の方に歩き出し、等間隔で並びました。
私達の後ろにはそれぞれ大盾を持ったシュザク五十人とスザクが五百人並びました。

「そろそろ行きましょうか。クザンお願いします」

アスラ様がそう言うとクザンさんが、低い遠くまで届く声で叫びました。

「じゅうりんせよ!!!!!」

「ぎゃーー、何てこと言うんですかーー!! かかれーー!! で良いんですよ、かかれーー!! で」

アスラ様が、叫んでいます。
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