魔王

覧都

文字の大きさ
114 / 208

第百十四話 行く手を阻む壁

しおりを挟む
「全軍、ふみつぶせーーーー!!!」

「うおおおおおおおーーーーー!!!!!」

王国軍が喚声を上げます。
その喚声は、大地を振るわすような大きさで、魔王軍を圧倒します。

オウブさんが魔王軍の中央で先頭を走ります。
敵の先頭の、王国騎士団一番隊隊長のヘルさんが、笑いながら騎馬で進んで来ます。
ヘルさんはすれ違いざまオウブさんの頭上に戟を打ち下ろしました。
オウブさんがそれを軽く払うと、戟が凄い勢いで回転しながら飛んで行きます。
その勢いが強すぎる為、ヘルさんの体も宙に浮きオウブさんの後ろに吹き飛ばされて地面にドスンと落ちました。

オウブさんに遅れまいとするスザク達は、落ちたヘルさんを無視して横を走り抜けます。
ヘルさんは、少し上体を起こしましたが、すぐに大の字に倒れ気を失ったようです。横に優しく騎馬が立ち、見守っています。

「クザン! 全てはスザクにかかっています。指揮を頼みますよ」

「はっ、我あるじ!!」

僕がクザンを呼んだのは影武者にする為だけでは無く、シュザクとスザクの指揮をしてもらう為です。
この戦いの勝敗は、全てスザクにかかっていると僕は考えています。
だからこその、クザンなのです。

スザクは現在七人の将軍の後ろを遅れないように、重い大盾を持って走っています。この大盾は、盾と言うより壁と行った方がいい代物です。
これを、七人の将軍の後ろに隙間無く立てて、どんどん押し出そうと考えています。隙間があっては、何にもなりません。
連携を取り、隙間無くグイグイ押す。

人間では考えられない作戦ですが。スザクだから出来ると信じています。

「うおおおおおおーーーー」

オウブさんが敵、歩兵隊にぶつかりました。
大刀付の棍を右へ、左へ振り回します。
その後ろにスザクが重く大きい盾で壁を作りました。

「うりゃああああああーーーーー」

今度はチョカイさんが、敵歩兵隊とぶつかります。
当然、その後ろにスザクが壁を作ります。
そしてオウブさんの後ろの壁と連結します。
同じように残り五人の後ろに壁が出来て、全て連結しました。

「クザン、いよいよです。スザクを前に押し出して下さい」

スザクの盾の幅は一メートルあります。それが横に並ぶと約四キロの長い壁になります。敵王国軍は十五万人の大軍が、四千弱の魔王軍を踏み潰そうと恐ろしい勢いで走り込んできます。
不意に現れた壁が王国軍の行く手をさえぎります。

それは、激流に突然現れたダムのように、兵士の行く手を閉ざし、壁の前で兵士が押しつぶされ、身動きが出来なくなります。
先頭がそんな状態とも知らず後ろは、どんどん前に押し出してきます。

「ぎゃあああああああーーーーー」

そんな、身動きの出来ない敵兵をものともせず、僕の配下の七大将軍は武器を振り回します。
あちこちで、武器を構えることも出来ずに、敵兵は切り刻まれます。

「お、押すなーーー!!」
「か、壁を何とかしろーーーー!!!」

部隊長でしょうか、指示をし始めました。
壁を必死で押す者が現れます。
何十人かで押しているようですが、さすがスザクです。びくともしません。
そんなことをしていて大丈夫でしょうか。

「ぎゃああああああーーーーー!!」

ほら、後ろから大将軍に切り刻まれました。
そして、大将軍の回りに敵兵がいなくなると、壁が押し上がります。

「やめろーーーー、身動きが取れない。さがれーーー。さがれーーー」

まだ、敵兵の全体の流れは前進です。
先頭だけが、後ろに下がろうとしても、混乱が広がるだけです。

「ぎゃあああああーーーーー!!!!」

断末魔の悲鳴が途切れません。
スザクの壁の後ろに無残な敵兵の体が大量に横たわっています。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

氷河期世代のおじさん異世界に降り立つ!

本条蒼依
ファンタジー
 氷河期世代の大野将臣(おおのまさおみ)は昭和から令和の時代を細々と生きていた。しかし、工場でいつも一人残業を頑張っていたがとうとう過労死でこの世を去る。  死んだ大野将臣は、真っ白な空間を彷徨い神様と会い、その神様の世界に誘われ色々なチート能力を貰い異世界に降り立つ。  大野将臣は異世界シンアースで将臣の将の字を取りショウと名乗る。そして、その能力の錬金術を使い今度の人生は組織や権力者の言いなりにならず、ある時は権力者に立ち向かい、又ある時は闇ギルド五竜(ウーロン)に立ち向かい、そして、神様が護衛としてつけてくれたホムンクルスを最強の戦士に成長させ、昭和の堅物オジサンが自分の人生を楽しむ物語。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

処理中です...