魔王

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第百十五話 伝説の大将軍

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「チョカイ!!! すごすぎるだろう、これ!! 俺たちは身動きの出来ない敵兵士を、攻撃しているだけだ」

「うむ、こんなことを考え付くとは、魔王様というのはどういうお方なのかと思うぞ!」

「それに、防具の呪いの付与のおかげでかすり傷一つ付かねえ」

「ああ、呪いのエリクサーで疲れもすぐに回復出来るしな!!」

オウブさんとチョカイさんが、敵を切り倒しながら進んでいるうちに、近づき会話をしています。
そんなのは、スザクがいなければ考え付きません。すごいのはスザクですよ。
それにすごいのは、皆さんも同じですよ。
たった七人で、数万の敵を倒していますよ。

特にすごいのはアドだ、敵兵の中を低い姿勢で走り回り、一走りで千人ほど倒している。
その代わり、スザクが見失って、慌てていますけどね。
防御を高めるのも良いですが、素早さを高めるのも、攻守の能力を高めるので、身軽な人には合うみたいです。

「ひけーーー!! ひけーーー!!」

この戦いの総指揮をとっているヘルさんの代わりに、総指揮が入れ代わり、兵士に後退を指示したようです。
僕は、先日の戦いで魔人兵の命を3万も失いました。
今回の戦いは、その弔い合戦と考えています。
3万は命を置いて行ってもらいますよ。

……
どうやら、その数はすでに大幅に超えているようです。
後ろの兵が下がると、前衛の兵士達がやっと動けるようになりました。
それでもうちの七大将軍の攻撃の手は止りません。
背中を向けて逃げて行く敵兵を、バサバサ切り倒していきます。

敵兵は、ロウロの街に逃げ込もうとしましたが、門の前に僕はスザクの壁を作って置きました。
王国騎士団は、ロウロ領を諦めて隣の領地デイラへ撤退をするようです。

僕は、今回の戦いで一番の目的がやっと達成出来ました。
今回の一番の目的とは、伝説を作ることです。
たった七人で王国の十五万の兵士を撤退させたという伝説です。
今後、前戦が拡大すれば、苦戦するところも出てくるでしょう。そんなとき一人の大将軍の部隊が、援軍に来たというだけで味方の士気が上がり、戦局がひっくり返せることもあると思います。そのために伝説が欲しかったのです。

七人の将軍は、逃げる敵兵の掃討戦に入っています。
おおいに敵軍に恐怖を植え付けて下さい。

「フォリスさん、僕たちは魔王城に戻って変装してきましょう」

僕は、この国の使者と会うことを想定して変装することにしました。
敵国の人間に魔王の正体を教えてやる必要はありませんからね。



僕たちが、ロウロ領の魔王軍の本陣に戻ると城の門が開き、一台の馬車が近づいてきた。
馬車には、大きく目立つように使者の旗が上がっている。
馬車が陣の前で止ると、中から三十歳後半くらいの上品な女性が降りてきた。
降りてきた女性は、僕たち全員の顔をサッと見回して、クザンに話しかけた。

「私は、ロウロ領主、ロウロ三世です」

「その領主様が何の用だ」

フォリスさんが、フォルス姿でクザンと領主様の間に入って言った。

「はい、降伏のお願いに参りました。私はどうなっても構いません。領民だけはお許し下さい」

ロウロさんが、地面にひれ伏して、額を地面に付けた。

「もし断ればどうする」

「そんなことは無いとは思いますが、山にはまだ二十四万の兵士が、城にも数万の兵士がいます。領民の命の為なら徹底的に戦います」

良い返事ですね。
フォリスさんがもう感動して、僕の顔を見つめちゃっています。
失敗しました。領主さんが一人で来るなら、変装はやりすぎましたね。

「顔を上げて下さい。僕が魔王です」

「え、女の子なのですか?」

何だか、領主様の目がキラキラ輝いています。
僕はメイドさんが頑張ってくれたおかげで、きっと滅茶苦茶可愛くなっていると思います。
でも、それでも、それだからと言っても、この領主さんのキラキラが気持ち悪いです。
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