魔王

覧都

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第百三十五話 帰還

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「きゃーーっ!!」

なんか久しぶりの朝の始まりです。
フォリスさんの悲鳴です。
六日ぶりにアドが帰還しました。
今日のお土産は犬くらいの大きさの、手足を折って動けなくしたネズミです。
フォリスさんの体の上に置いて、鼻の穴をヒクヒクさせて尻尾が嬉しそうに揺れています。

「ふふふ」

アドは褒められたいと思っていますね。これは。

「治癒!」

フォリスさんに、治癒をかけてもらったネズミが、狂ったような勢いで走り出しました。
牢の鉄格子に恐ろしい勢いで一回ぶつかり、外へ逃げて行きました。
だ、大丈夫でしょうか。

「アドちゃーん、二度とやらないでーー!!」

アドがすごく嬉しそうです。
それ、少しも褒められていませんから。
アドは僕の方に走ってきました。
そして、抱きつこうとします。

「ちっ、アズサにゃ」

すごく嫌な顔をして急停止しました。
どうやらアドには、アズサがアスラと同一人物には見えていないようです。

「さて。アドちゃんもそろったし、朝ご飯を食べたら砦に行きましょうか」

「えーーーっ」

ジュウベイさんとツヅルさんが驚いています。

「そ、そんな、お散歩に出かけるような軽い感じで……」

ジュウベイさんが少し、涙ぐんでいる様に見えます。
普通に考えれば、恐怖ですよね。

「そうですね。危険なので三人はここにいた方が良いかもしれません」

「はわわわーー、ち、違います。行かないとは言っていません。ちょっと恐かっただけです」

ジュウベイさんが慌てています。
逆に僕の方が驚きました。

「よいのですか。まあ、近くの方が守りやすいです。ジュウベイさんの安全は私が保証します」

「はい、ありがとうございます。アズサ様にそう言ってもらうと、何が来ても守ってもらえそうな安心感があります」

「うふふ、ジュウベイさんは、もはや魔王様の宝物です。誰の命より優先してお守りしますよ」

「あの、アズサ様。私はアズサ様にお仕えしたいのですが、お許し頂けませんか? さすがに直接魔王様は恐れ多いです」

「うふふ、よろしいですが、苦労すると思いますよ」

フォリスさんとアドの肩が震えています。

「わーわーーっ!!」

外が騒がしくなりました。

「隊長はいるかーー!!」

「あれは、親衛隊長のチガー様です」

牢の小窓から入ってきた声を聞いてツヅルさんが言いました。
ツヅルさんの目がキラキラ輝いています。

「くそーー、ここまで馬を飛ばしてきたはずなのに、わが、あるじ様に出会うことが出来なかった。いったいどこに行ったんだ」

「あ、あれは、親衛隊副隊長のレオナ様です。私の憧れのお方です」

ツヅルさんの目がウルウルしています。

「き、聞いて下さい。あの二人はこの国で五本の指に入る強さなのです。はーっ素敵です」

ツヅルさんが子供の様にはしゃいでいます。

「おお、隊長! 人を探している。滅茶苦茶可愛い男の子と女の子だ。知らんか?」

「……」

ここの守備隊長はすぐに僕たちの事と気が付いた様だ。
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