魔王

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第百四十一話 帰還

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獣王様へのあいさつが終わり、別室で獣人の国の、事務方との話し合いがはじまった。
実は、僕たちはこのために来た。
当然フォリスさんに全て任せている。

退屈なのでピギーちゃんを膝に乗せて頭を撫でている。
アドは平気なようだ。

「アズサは気を付けた方がいいニャ」

「えっ」

「……」

アドがいつもの恐ろしい笑顔でニヤリとする。

「まさか……」

僕は基本、鑑定を使わないようにしている。理由はいうまでも無いでしょう。
でも今回は、ピギーちゃんの鑑定をしました。

天神の獣王、名前バウルス・ピギー、レベル55、年齢二十歳

きました。見た目幼児の二十歳。
ピギーちゃんも恐ろしい子。
でも、この子も天神を冠に持っている。
僕の元へ来るべき運命の子だったのでしょうか。

「ふふふ、二十歳と言っても、きっとそれだけじゃないニャ」

「どういうこと?」

「アドは八年に一歳しか歳を取らないニャ」

「?! どういうこと」

「ピギーは九年に一歳クマ」

「えーーーっ!!!」

僕は大声を出してしまった。
おかげで、フォリスさんにすごい目でにらまれた。
僕はフォリスさんに頭を下げて、ごめんなさいの意を示した。

ちょっと待って下さい。
ピギーちゃんの語尾はクマですか。
違う違う。そこじゃ無い。
八年に一歳しか歳を取らないって事は、実質百六十年以上生きているって事ですか。
ピギーちゃんにいたっては、百八十年!!

いけない、ピギーちゃんが白髪のおばーちゃんに見えてきた。
この世界には、僕の知らないことが一杯あるようです。
フォリスさんの話し合いは終盤に入っているようです。

「そろそろ、わしも一つ良いかのう」

ショートさんが、商談に割り込んでいるようだ。

「どうぞ、私の方はもう終りました」

ショートさんはフォリスさんの商談が終ったのを見て、声を出したようだ。

「これを見てくれ」

ショート爺さんはテーブルの上に黒い刃の鎌をだした。

「こ、これは」

「ふふふ、アダマンタイトの鎌じゃ。ドワーフ国の新たな農具じゃ。希望の物を作る用意もある。わが国も米との交換を希望する」

ショート爺さんはちゃっかり、商談をはじめた。
あのアダマンタイトは、魔王国の輸出品だ。
最初から僕たちに同行しているのは、これが目的だったのだろう。
しかも米を対価に希望している。抜け目が無い。

獣人の国とは、同盟を組む事が出来て、醤油や味噌等の交換条件も決めることが出来た。
収穫の多い外遊が出来て、フォリスさんも満足しているようです。

「では、約一名、帰りたくてしょうが無い人がいるみたいですので、ここで失礼いたしましょうか」

フォリスさんのいう、約一名とは僕の事ですね。

「お、お待ち下さい!!」

「!?」

全員が驚いて扉の方を見た。
レオナさんが息を切らして、部屋に入ってきます。

「どういたしました」

フォリスさんが、レオナさんと確認し声をかけました。
レオナさんが、その視線に気が付くと、頬が赤くなります。

「あの、私がピギー様の護衛として同行する事になりました」

とても嬉しそうです。

こうして僕たちは、王城の外までは徒歩で、その後は移動魔法で魔王国へ帰還しました。
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