魔王

覧都

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第百四十二話 最高の夕食

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僕は魔王城に帰るとすぐに最高幹部に招集をかけた。
今晩の夕食を共にする為です。
うちの幹部達は真面目です。
全員が参加との返事をもらいました。

「アズサさん、どうですか」

ジュウベイさんが必死で見学している僕に声をかけてくれた。
僕は厨房で調理を手伝っている振りをして、見学だけしています。
あの美味しい物が、どうやって出来るのか、興味津々です。

「アズサは、邪魔なだけニャ。その皿を運ぶニャ」

でしょうね。忙しく働いている人達には邪魔なだけです。
アドに言われて僕は皿運びを手伝うことになった。
皿を持って今日の会場の広間に入ると、集合の二時間前だというのに全員そろっています。
僕が部屋に入ったのに気が付くと、男の幹部達の顔付きが変わり、恐い顔付きになった。今日初めて招かれている、ジグリオさん達が怯えている。

「皆さんもうそろっているのですか。それなら始めても良さそうですね」

僕は、もう全員が料理に驚く顔が見たくてしょうがありません。
予定より早く始めることにしました。
急いで部屋を出ると、魔王の衣装に着替え、フォリスさんとアドと共に広間に入った。

広間の扉を開けてもらい、中に入ると全員が席を立とうとした。

「そのままで良いですよ。今日は堅苦しい席ではありません。単なるお食事会です」

「そんなわけに行くかよう!! 久しぶりだ頭の一つも下げさせてくれ!!」

ファージさんが言うと全員が深くお辞儀をしてくれた。
今日は、懐かしい顔まで全部集まってくれています。
これが、アスラ一家と言っていい顔ぶれです。
テーブルの上座には、僕とフォリスさんが座り、後ろにクザン、ジュウドウ、シュラさんがたっている。
目には見えませんがランロンも僕の横にいます。

向って左の席に五代目魔王の息子の、サダルさん、ドワードさん、ジセイさん、ファージさん、続いて五大魔将軍コウケンさん、リゴウさん、バーツさん、エイグさん、コデルさんがいます。
その向かいに魔王国七大将軍、オウブさん、チョカイさん、リョウメイさん、シジセイさん、ロホウさん、リコさん、アドが座ります。
その横に、領主ロアドさん、ルチョウさん、アルアドさんもいます。
続いて大商人、エドさん、バンさん、チッカさんがいますね。
領主さんの向い側、コデルさんの横にロウロさん、ピギーさんとレオナさんがここにいます。
最後にドラゴンのジグリオさんです。

「よろしいですか?」

ジュウベイさんが料理と共に入ってきた。

「紹介します。ジュウベイさんです。今日の調理を指揮してもらいました。僕はジュウベイさんを国宝に指定します。魔王の命より重要と考えて下さい」

「ジュ、ジュウベイです。よろしくお願いします。最初の料理は牛肉のお寿司です」

一人に二個ずつ真っ赤なお寿司が出された。
フォリスさんが、間髪入れずに、醤油につけて食べた。

「ふふふ、国宝というからすごい料理を期待したが、案外しょぼい料理だな」

ファージさんが、ジュウベイさんを国宝と言ったのが気に入らないのか、ぶつくさ言っている。
相変わらず口が悪い。
そして、フォリスさんのまねをして、醤油につけて口に運んだ。

視線を横に移すと、フォリスさんの目が飛び出している。
そしてジュウベイさんの顔を見ている。
良く見ると、最高幹部達が全員同じ顔になって、ジュウベイさんを見つめている。

あまりに気持ち悪かったのか、ジュウベイさんがよろけて二歩ほど後ろに下がった。
どんな顔をするのかと、僕は少し可笑しくなった。
料理を食べてそんな顔になるかねーー。
僕も醤油につけて、口に入れた。

ぐああああーーーー!!!!
な、なんじゃこりゃーー。
く、口の中で肉が溶ける。
ビックリして、ジュウベイさんの顔を見てしまった。

あーー、これが皆の顔なんですね。
恐らく僕の目玉も飛び出していたと思います。

「うめーーーーっ!!!!」

全員が最早叫んでいた。

「この前と、違うメニューですね」

「はい、食材の中にとても良いお肉があったので、作ってみました」

「あんたは、国宝だ。間違いない」

あの口の悪いファージさんを料理で黙らせました。
最高の料理人です。
全員がお替わりを要求して、次の料理が運べなくてジュウベイさんが困っています。

「次の料理は、ブリしゃぶです。おいしいブリをジグリオさんが提供してくれました」

青龍は、海龍と言うことで、海の幸を取ってきてくれたようです。
見たことの無い料理が続きましたが、最高に美味しかったです。
その後もいくつか料理が出ましたが、最後の締めのうな重はやはり最高でした。

「私の食べた物の、一番がまた増えてしまいました」

フォリスさんがうっとりしています。
毎日、全員過酷な仕事が続いていると思います。
少しは、ねぎらう事が出来たでしょうか。
僕は、皆の驚く顔が見られて最高の夕食になりました。
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