魔王

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第百六十九話 領主の過去

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「あれー、なんだか、同じようなやりとりをした記憶があります」

勘違いでしょうか。

「ふふふ、私も思い出しました。私がまだ少女だった頃に誘拐されて身代金を要求された時、天神の勇者様に助けていただいたことを」

「そうか、君はあの時のフランちゃんか! 僕が天神の勇者アスラのなれの果て魔王アスラです」

「アスラ様!? うっうっ、本当にアスラ様! ずっとお会いしたかった。……私の初こ…………、コホン、二度も助けていただき、ありがとうございます」

フランちゃんは泣き出しました。

「その目はあの時失ったのですよね」

「はい、目だけでは無く、体も使い物になりません。子供も産めない体です。でも、頑張って強く生きていますよ」

「うん、苦労したのですね。海賊の親玉みたいな姿になっています」

「はああーーーっ!!!」

フォリスさんが凄い顔をしてにらんできました。
やばい、なんだかわかりませんが怒らせてしまったようです。

「あの、一杯けがをしていますね。これを飲んで下さい」

僕はあの、魔王の加護のついたエリクサーを出しました。
いつもの素早さの加護では無く、美容の効果を上書きした物です。

「ふーーーっ」

フランちゃんは何も、ちゅうちょせず、一気に飲み干しました。
全身が金色に輝き、ケガが治っていく。

「……!?」

僕は驚いた。
体中に付いていた、古傷の痕まで消えている。

「うわあああーーーーっ」

フランちゃんが大声で泣き出した。

「ど、どうしました? どこか痛いのですか」

「ち、違います。目が……、目が……、見えるようになりました」

お、驚きました、僕のエリクサーにはそんな効果もあるのですね。
はじめて知りました。

「そ、それは良かったです」

フランちゃんは僕に抱きついて来ました。
容姿がシュッとして、海賊から淑女に変わっています。
こんな経験は無いのでドキドキしています。

「アスラ様ーー!! ありがとうございます」

ウルウルした目で僕を見つめてきます。
少しおばさんになっていますが、あの時のフランちゃんのおもかげがあります。
なんか可愛いです。
気が付くと僕は、フランちゃんの頭をなでなでしていました

「フランちゃん、街の人を助け出したいと思います。協力して下さい」

「はい!!!」

「フォリスさん、天帝の悪党共の残党を退治しましょう」

「はい!」

「ジュウドウ!!」

「はっ!」

「アスラバキの終った、天帝の悪党共は次々と天帝の勇者の、頭のうえに落としてやれ」

「はっ!!」

「ま、待ってくれ、許してくれ」

胸毛野郎が、許しを乞うてきた。

「俺は、許しを求める者は基本許してきた。だがお前達が許しを求めるのは、俺じゃ無いだろう。お前達は必死で、大好きな天帝の勇者に助けを求めたらいい!!」

それを聞くと、胸毛野郎も、手下も下を向き何も言わなくなった。
横でフォリスさんも厳しい顔で胸毛野郎をにらみ付けている。
僕とフォリスさんは、それぞれ残党狩りに走り出した。
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