底辺おじさん、助けた異世界転生美少女の異世界魔法と異世界アイテムそして特殊能力ゴミ処理で世界を救う

覧都

文字の大きさ
50 / 428

第五十話 見渡す限りの小麦畑

しおりを挟む
「始まりは、食糧が街から消えたことが発端でした。食糧の奪い合いでしゅ。暴動は次々連鎖して暴動の渦が国中を襲いましゅ。大勢が亡くなりました。遺体は放置され、見るも無惨な状態になりました。それだけでも大変な状態なのに、本当の恐怖の始まりはそこからだったのでしゅ。放置された遺体が動き出したのでしゅ」

 アメリは、長い金髪を手で後ろになおして、あずさが渡したコーヒーを一口飲んだ。

「とても、美味しいでしゅ。皆さんはゾンビ映画を見たことがありましゅか?」

「はい」

「怖いですよね」

「はい」

「でも、動き出したゾンビは、映画のゾンビとは見た目は同じでしゅが、恐さがまるで違いましゅ。ゾンビは、生きている人を探して動き回りましゅ。どこに隠れても、何故わかるのか不思議でしゅが、必ず見つけましゅ。しょして、必要にしつこく狙い続けましゅ。映画のゾンビは、頭を撃てば止まりましたが、そんなことでは止まりましぇん。そして、力がとても強い。人間は脳が力を七割セーブしていると言いましゅが、ゾンビはフルパワーなのでしょうか、力が強い。どこでもつかまれれば、それだけで致命傷になりお終いでしゅ。例えば、腹をつかまれれば、腹の肉がちぎられて内臓が出てしまいます。足をつかまれれば、肉がちぎられて歩けなくなります」

 そこまで聞いて、愛美ちゃんが「うっ」と言って、手で口を押さえました。
 坂本さんが、手を引いて場所を変えようとしましたが、首を振ってまだ聞くことを意思表示します。

「映画のゾンビからは、少しの傷でゾンビになる恐ろしさがありましゅが、このゾンビからは、そんなことはありませんでした。でも、最初の頃は、ゾンビに傷を負わされた人達が、銃で自殺をしました。そして、命を失うとゾンビになります。食糧も無く、ゾンビであふれる世界に夢も希望も無く、自殺者が後を絶ちません。ゾンビは増えるばかりでしゅ」

「それで、今はどうなっているのですか」

 あずさが不安そうな表情で聞いた。

「コロンブスがこの大陸を見つけた時より、生きている人は少ないかもしれましぇん。私はゾンビから人間判定を受けなかったのか、ゾンビにおそわれましぇんでした。大勢のゾンビの手足をちぎり、動けなくしました。でも、一日三分では、何も出来ないのと同じでしゅ。私は、せめて食糧を必要とする人のために、ここを守ろうと考えを変えてここに来て、毎日空を見つめていました」

 アメリの目から一粒涙がこぼれた。

「……」

 俺たちは言葉を無くしてしまった。

「おかげで、あなた達に出会う事ができました。日本はどうなんでしゅか?」

 ミサが日本の現状を説明した。

「アンナメーダーマン、あなたは神から使わされたお方なのかもしれましぇんね」

「そ、そんなたいそうなもんじゃないよ。本当に……」

 俺は、過去の自分を見つめ直した。
 どう考えても、暇さえあればゲームをする底辺のダメダメおじさんだ。
 本当にすごいのは、俺の横で涙ぐんでいるあずさだ。
 今日も絶好調に可愛らしいあずさに他ならない。
 この子がいなければ、俺は恐らくアンタダメ―ダマンのままだったはずだ。

「ところで、小麦を見つけたのはいいけど、どうやって収穫するつもり?」

「さすがはミサだ、いい質問だ!」

「……」

「あんた、それを言いたかっただけでしょ!」

 図星だ。鋭い。

「あずさ、聞いてくれ。新事実がわかった。収納魔法だが、これは恐らく一定の魔力が無いと使えない高位魔法じゃないか」

「はい、そうです」

「そして、その収納魔法が、俺は使えるようになっている」

「えっ!?」

「だから俺は、こんなことが出来る」

 俺は、アメリの話しの最中に、体の一部を糸のようにして小麦畑中に潜ませていた。
 そして、その体でゴミになる部分を蜂蜜さんに吸収してもらう。
 一瞬で畑が小麦だけになる。
 それを収納魔法で、地面に落ちる前に収納する。

「なーーーーっ!!!!!」

 全員が驚いてくれた。

「すごーーい。無詠唱でこんな魔法が……」

 言ってみたかったこの言葉。
 あー、これは、俺が自分で言いました。
 どうせ、だれも言ってくれないもんね。

「アンナメーダーマン。あなたは、ほんとーにアメージングでしゅ」

 アメリがギュウギュウ抱きしめてくる。
 可愛すぎるなーこの生き物。昔のあずさみたいだ。
 と、思ったら、皆が抱きしめてきた。
 愛美ちゃんまで抱きついている。
 巨木に群がる蝉みたいだ。

 地平の彼方まで、地面が顔を出している。
 この国はすごい国です。
 世界最高の工業技術に、これ程の農産物。
 小麦は大切に使わせていただきます。俺は感謝を込め畑に一礼した。

「よかった! 大量の小麦は、入手出来た。今の木田家の人だけなら、消費するまでに何十年もかかるだろう」

「アンナメーダーマン喜ぶのはまだはやい、あと二ヶ月でコーンが、収穫時期を迎える。日本列島よりすごい量だぞ」

「なっ、なにーー!!」

「そっちは、フォード教授が面倒を見てくれている」

「フォード教授?」

 俺が、変な声で質問をすると、ミサが写真で教えてくれた。

「ふふふ、物理と数学が専門ですが、スーパーヒーローでもある。そして、隕石の衝突をばらした一人でもある。変わったお方でしゅ。二ヶ月後に会うとしましょう」

 そう言うとアメリは、UFOに乗ろうとした。
 小声で、うな重、うな重、と言っている。

「ああ、帰りはあずさの移動魔法だから、それは使わないよ。って、いうか、アメリも来てくれるのか?」

「行くに決まっていましゅ。もう、ここに用はないでしゅからね」

 こうして、目的を果たして俺たちは日本に帰ることにした。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

荷物持ちの代名詞『カード収納スキル』を極めたら異世界最強の運び屋になりました

夢幻の翼
ファンタジー
使い勝手が悪くて虐げられている『カード収納スキル』をメインスキルとして与えられた転生系主人公の成り上がり物語になります。 スキルがレベルアップする度に出来る事が増えて周りを巻き込んで世の中の発展に貢献します。 ハーレムものではなく正ヒロインとのイチャラブシーンもあるかも。 驚きあり感動ありニヤニヤありの物語、是非一読ください。 ※カクヨムで先行配信をしています。

魔道具頼みの異世界でモブ転生したのだがチート魔法がハンパない!~できればスローライフを楽しみたいんだけど周りがほっといてくれません!~

トモモト ヨシユキ
ファンタジー
10才の誕生日に女神に与えられた本。 それは、最強の魔道具だった。 魔道具頼みの異世界で『魔法』を武器に成り上がっていく! すべては、憧れのスローライフのために! エブリスタにも掲載しています。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

処理中です...