底辺おじさん、助けた異世界転生美少女の異世界魔法と異世界アイテムそして特殊能力ゴミ処理で世界を救う

覧都

文字の大きさ
63 / 428

第六十三話 逃走

しおりを挟む
「旅館にはいません!!」

「なにーーっ!! 誰か見たものがいねえか聞き込みをしろー。話しじゃあ見た事もねえような妖精のような美少女って事だ。三百万は下らねえ上玉だってよ。ぜってーに探し出せー!」

 男達の真剣さが伝わってくる。
 見つかっては、ただですまないだろう。
 かわいそうに。

「すげーー、妖精のような美少女かー。俺も見てみたいぜ」

 俺は密偵だから、目立てない。
 でも、助けられるものなら助けてやりたいと思った。
 そう思っていたが、それは言えない。茶化しておいた。

「あんた、本気で言ってるのかい」

「当たり前だ。おっさんは大体ロリコンだ。美少女と聞いたら黙っていられねー」

 茶化して言ったが本気かどうかなら、超本気だ。

「ふふふ、あんたって人は、あきれてしまうわ。この子に決まっているじゃないか」

 優しそうな目で、あずさを見つめた。

「あ、あずさのことなのか? あずさを売るってことか」

「そうだよ。普通わかるだろー!!」

 そうか、考えてみればそうだな。
 ここまで整っている美少女はそうはいない。
 だがおかしい、橋の見張りは清水連合のはずだ、あんなにいい人達がそんな事をするのか?

「橋の警備隊は出来た人達だった。清水連合の人が人さらいをやっているとは思えない」

 俺は、疑問をぶつけた。

「橋の警備は清水連合の今川家が任されている。ここいら一帯は保井家のものなのさ」

「なるほど、保井家が人さらいをするような悪党って事か」

「まあ、そういう事さ。わかったら、裏口からこっそり逃げるんだ」

「そんなことをしたら、あんたに被害が及ぶんじゃねえのか」

「そんなことは、もうどうでもいいのさ。あたしはこの子に情が移っちまったんだよ。わかったら、気付かれていない今のうちに、さっさと行くんだよ!」

「そうは、行かなくなった」

「えっ!?」

「俺も、あんたに情が移っちまった。おい、あずさ! あずさ! 起きるんだ!」

「おかあさん!? ふにゃあ」

「あずさ、寝ぼけてねえでシャンとしろ」

「そうだよ。あたしはお母さんじゃない! おかみさんだ!」

「あっ、とうさんだー!!」

 あずさは、思い切り抱きついて来た。
 そしてチューをしようとしてきた。

「こ、こらー! もう夢じゃないからな。現実だぞー!!」

「えっ!? と、とうさん? 本物?! とうさんのエッチー! 何をするのよー!!」

「いやいや、俺じゃなくて、お前が抱きついて来たんだからな!」

「ふふふ、見ていて飽きない親子だねえ。さあ裏口から逃げるんだ。こっちなら、表通りからは見えないからね」

「何があったの?」

「説明は後だ、逃げるぞ。そしておかみ、あんたも来るんだ。普通の暮らしに戻るぞ」

「えっ?! それってプロポーズかい? あたしは、デブはきらいなんだがねえ」

「そ、そんなわけあるかー!! いいから二人ともついてくるんだー!!」

 くそー。まったく、なんて面倒くせーんだ。
 俺はとりあえず建物の中のものを収納して、二人の手を引っ張って裏口から外に出た。
 外に出ると、松明がおかみの家に近づいていく。

「おい、誰もいないぞ! さがせーー!! まだ近くにいるかもしれねーー!!」

 俺たちは光から遠ざかる為、北に逃げた。
 しばらく歩くと、線路に出た。
 俺たち三人は線路の上を駿府へ向って歩き出した。

「おかみ、すまない。迷惑をかけた。このうめあわせは必ずさせてもらう」

「ふふふ、気にしなくていいさ。あんた達は貧乏なんだろ。それより慌てて出て来てしまったけど、タンスにお金がしまってあった。それくらいは持ってくれば良かったねー」

「そうか、それなら家の中のものは、大体持って来た。このタンスか?」

 俺は、収納してあった、それらしいタンスを出した。

「そ、そうだ、これだよ。これだけど、どこから出したんだい、こんなもの」

 おかみは引き出しから少しお金を出すと、後はしまい聞いて来た。

「あまり気にしないでくれ、俺たちは超能力者なんだ」

 まさか、魔法とも言えないので、超能力と言っておいた。

「へーー、不思議な力だねえ。口で言われただけなら信じられない力だよ」

「タンスはもういいのか?」

「もういいよ。それより、あんた達は、こんな所へ何をしに来たんだい」

 まさか、密偵に来ましたとも言えない。

「俺達は小田原から逃げてきたんだ。駿府で商売が出来ないかと考えている」

「そうかい。あの不思議な力で、食べ物を持っているんだね」

「食べ物?」

「そうだよ。今の日本じゃあ食糧不足だ。食べ物ならたいてい売れる。逆にそれ以外はあんまり売れないよ」

「そうか……」

 俺は、考えた。
 商売をするなら売るものを考えないと。

「とうさ……ん」

 呼ばれて後ろを見ると、あずさが少し遅れている。
 無理もない、気持ちよく寝ているところを起こされたんだ。
 疲れているのだろう。

「ほら」

 俺はあずさの前でしゃがんで、おんぶをしようとした。

「……」

 あずさはゆっくり首を振った。
 ……まさか!?
 俺はお姫様抱っこの形をした。
 あずさはコクコクうなずいている。

「やれやれだぜ!!」

「にひひ」

 まったく、あずさの奴、すげーー嬉しそうだ。
 俺は、時々おかみの様子を気にしながら、こまめの休憩を取りながら歩いた。
 それでも、夜明けと共に開けた町が見えてきた。

「ここまで来れば、安心だよ。保井家は追って来れない」

 どうやら、保井家の縄張りは抜けたようだ。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

荷物持ちの代名詞『カード収納スキル』を極めたら異世界最強の運び屋になりました

夢幻の翼
ファンタジー
使い勝手が悪くて虐げられている『カード収納スキル』をメインスキルとして与えられた転生系主人公の成り上がり物語になります。 スキルがレベルアップする度に出来る事が増えて周りを巻き込んで世の中の発展に貢献します。 ハーレムものではなく正ヒロインとのイチャラブシーンもあるかも。 驚きあり感動ありニヤニヤありの物語、是非一読ください。 ※カクヨムで先行配信をしています。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

魔道具頼みの異世界でモブ転生したのだがチート魔法がハンパない!~できればスローライフを楽しみたいんだけど周りがほっといてくれません!~

トモモト ヨシユキ
ファンタジー
10才の誕生日に女神に与えられた本。 それは、最強の魔道具だった。 魔道具頼みの異世界で『魔法』を武器に成り上がっていく! すべては、憧れのスローライフのために! エブリスタにも掲載しています。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

処理中です...