底辺おじさん、助けた異世界転生美少女の異世界魔法と異世界アイテムそして特殊能力ゴミ処理で世界を救う

覧都

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第七十話 駐車場のアイドル

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 逃げる兵士がいなくなると、少し遅れて賊が俺の前を通りすぎる。
 俺に気が付かないのか、どんどん通り過ぎる。
 三十人ほど通り過ぎた時、気付いてくれそうも無いので声をかけた。

「おい、おまえら!!」

 その声を聞くと、賊達はSNSで見た子猫が驚いた時のように数メートル飛び上がった。

「うわあああああああーーーーーーーー!!!!!!」

 そして、大声を上げた。
 まるで、俺の存在に気が付いていなかったようだ。

「おいおい、そんなに驚かなくても良いだろう」

 少し笑いそうになったが、我慢してつぶやいた。

「て、てめーは何もんだー!!」

「俺かい、俺は……」

 じらそうと思って、少しためて名乗ろうとした。

「お、お前は、アンナメーダーマン! 何でこんなところにいるんだ?」

 おーい、俺が名乗る前に言うんじゃねーよー。
 でも何で俺の名前を知っているんだ。
 まさか俺はすでに有名人なのか。
 そんなわけは無いわな。
 良く見ると俺の名前を言ったのは、迷彩服の武装した男だった。

 恐らく小田原で逃がしてやった兵士の様だ。
 隠してあった武器を持って、保井家を襲ったというところか。
 その時、近所の賊を配下にしたのだろう。

「ぎゃはは、アンナメーダーマン。なんだそりゃあ、変な名前だなあおい。死ねー!」

 迷彩服を着ていないガラの悪い男達が、銃を向けてきた。

「やめろ、そいつに攻撃するんじゃねえ! 俺たちでは勝てねえ!!」

 迷彩服の男が止めた。

「あ、あんた、こんな所で何をしているんだ?」

 別の迷彩服が聞いて来た。

「俺かい、賊が暴れているって聞いてね。賊退治だ」

「ちっ! 俺たちは、これで部隊を引き上げる。それで見逃してくれないだろうか」

 賊は、ここで見逃せば部隊を引き上げてくれるようだ。
 少し、駿府へ向っている得体の知れない者が気になっている。
 ここらで、妥協するのが得策と考えた。

「わかった。見逃してやる。さっさと行け」

 そう言うと賊は,素直に引き返していった。
 俺は、荷物を持つと空を飛び、誰にも見つからないように駿府の大田大商店を目指した。



「シュッラちゃーーん!!!」

 空を飛んで行けば、大田大商店など三十分もかからない。
 戻ってみると、店の一階の駐車場から大きな声がする。
 何やら駐車場に簡単なステージのような物が作られて、シュラが踊っている。
 まわりの男達は、俺の作った光るミスリルロッドをサイリウムのように使い、オタ芸を披露して、声援を送っている。

「ありがとうございました。次はアスラちゃんのステージです」

 そう言うと、シュラは小さく手を振り可愛くステージを降りた。
 おーーい、なんだか地下アイドルのステージのようになっとるぞー。
 面白そうなので黙って見ていると、あずさがミニスカートのメイド服でステージに上がって、パフォーマンスを始めた。

「アッスラちゃーーん!!」

 また、オタ芸が始まった。
 ステージ上では、メイド服からチラチラ白い物を出してあずさが踊って、歌っている。

「殿ーー!!」

 道路にバイクを止めて、男が叫びながら走ってきた。

「バカヤロー、せっかくのステージを邪魔するんじゃねえ。それと、殿はやめろって、言っているだろー。殿と呼んで良いのは、ビートたけしだけなんだよ!」

 うん、うん、よくわかる。
 殿と呼ぶ方は良いかもしれないが、呼ばれる方は嫌なもんだ。
 ……
 まさか、あの男、今川家の当主様なのか。
 見た目はちょい悪、イケおやじだ。すげーもてそうだ。
 俺と大違いだ。
 だが、最前列にいた殿は、手に光るミスリルロッドを持って、オタ芸をやっていたようだ。
 オタクなのか?

「例の奴らがあと二十分程の所に来ています。城に戻ってください」

「ふむ、わかった。尾野上行くぞ」

「あっ、尾野上隊長!!」

「おお、大田さん。……なんでここにいるのですか」

「そういう、尾野上隊長こそ、はやいですね」

「俺は伝令のバイクを借りて、ぶっ飛ばしてきました。大田さんはどうやってここまで帰って来たのですか?」

 やばい、どう誤魔化そう。

「おい、尾野上行くぞ、何をしている」

「はっ、今行きます。では、大田さん話しは後ほど」

 尾野上隊長は、一礼すると走って行った。

「では、これでステージは終了でーす」

 どうやらあまり見ていないうちにあずさのステージは終ってしまったようだ。

「と、ととと、とうさん?! いつからいたのですか」

 あずさが俺の存在に気が付いた。

「ふふふ、シュラが『次はアスラちゃんのステージです』と言ったところかな」

「うーー、最初からじゃないですかー」

 あずさが顔を押さえ耳まで真っ赤になっている。

「あずき、なにやら、大変な事が起きている様だ。城に行くぞ。シュラとはるさんは留守番を頼む」

「ハイ、マスター」

「何をいっているのさ、あたしはついて行くよ」

 おかみさんは、ついてくる気満々だ。

「出来れば来ない方がいいと思うのだが、言っても無駄そうだな。仕方がない。じゃあ行こうか」

 あずさのステージを囲んでいた者も今川家の者だったらしく、殿に同行したために、駐車場は静かになっていた。



 俺たちが城に着くと、城のまわりには大勢の人だかりが出来ていた。
 街中の人が集まっているようだ。
 その視線は駅ロータリーにむいている。国道一号線を進んでくる、得体の知れない者の来るのを、全員が固唾を呑んで待っている。
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