107 / 428
第百七話 使者来訪
しおりを挟む
「とのーー!! うおっ!」
くそーーっ! 何てタイミングだーー!!
俺は今、名古屋城天守閣最上階を自分のプライベートルームにしている。
窓にコインを入れると、遠くが見える双眼鏡が設置されている。
中央に土産物屋の残骸があったので、蜂蜜さんに吸収してもらった。後に残ったのはガランとした空間だ。
部屋は、下から見るより広く感じない。その中央で俺は、俺史上最高傑作のフィギュア、シュラに新しい白い下着をはかせてじっと見つめていたのだ。
シュラとはオリハルコンで作った八頭身スレンダーで、美しい理想の女性型実物大フィギュアで、ゴーレム化して命を吹き込んだメイドだ。
シュラはメイド服のロングのスカートを胸まで上げて、パンツを丸出しにしていた。
シュラは加藤の視線を感じて、恥ずかしそうにスカートを下ろした。
「ば、ばか、おめー! ノックをしねーか!!」
「ノ、ノックと言われましても、ドアがありません」
そうだった。ここは展望室だから、階段を上がるとそのまま部屋の中だ。ドアなどない。
「こんな所で、シュラちゃんのパンツを見つめている人が悪いです」
後ろから、あずさの声がした。
「うわあ!! あずき、いつからいたんだー?」
「そうですねー。やっぱり、パンツは白が美しいの所からです」
「最初からじゃねえかー」
「うふふ」
あずさが悪戯っぽく、とても嬉しそうに笑った。
滅茶苦茶可愛いはずなのだが、今は髪で顔を半分隠しているので、その可愛い顔は見ることが出来なかった。
「で、加藤何の用だ」
「はっ、関東木田家の使者を名乗る者が訪問してきました」
「ふむ、どんな奴だ」
「はっ、鋭い吊り上がった目にメガネをかけて、インテリ風を装っていますが、あれはやばいです。何人も残忍に人殺しをした、殺人鬼のような男です。何人もワルを見てきましたが、ありゃあ格が違います」
柳川だ。
柳川しかいねえ。
「使者ならば、殺人鬼だろうと丁重にお迎えしろ!! 丁重とはそういう意味じゃねえからな」
「分かっていますとも」
殺人鬼がつぼだったのか、あずさが声を出さないように我慢して笑っている。あずさも柳川と気が付いているようだ。
肩がガタガタ震えている。
やはり柳川だった。
榎本、加藤、東、そして胴丸具足にアダマンタイトの剣を装備した護衛が四人で、柳川を囲み天守へ入ってきた。
「ほう、良い眺めですな。あっ、失礼しました。私は関東木田家の柳川と申します」
柳川は、すました表情で名乗ると深々と頭を下げた。
しばらく頭をさげたまま止まると、ゆっくり頭を上げ、もう一度景色を楽しんでいる。
「俺が、尾張大田家の大田だ! なんの御用でしょうか」
俺は話しを合せるようにと、柳川に目配せをした。
柳川は分かっていますよと、誰にも分からない程度に頭を少しだけ動かした。
「まあ、単刀直入に申し上げます。木田家の傘下にお入り下さい」
「な、なにーーーっ!!!」
加藤達の顔色が変わった。
後ろの護衛の男達が、剣に手をかけた。
部屋が一瞬で緊迫感に包まれた。
「控えろ!! 護衛はもういい階下へ下がれ!!!」
俺は素早く強く言った。
具足を装備した護衛が、加藤の顔を見た。
加藤はゆっくりと、うなずいた。
それを見て、護衛は階段を降りていく。
「柳川殿、少し木田家について教えてもらえませんか」
「分かりました……」
柳川は、しばらく木田家について語った。
驚いたのは、加藤達でさえゲン一家の事を知っていたことだ。
そして、柳川がゲン一家の柳川と分かると、加藤達の態度が急変した。
俺の方が柳川の事を知っているつもりだったのに、こいつらの方が柳川の事をよく知っているようだった。
「あのゲン一家を配下にしておられるのか。木田の大殿とは恐ろしいお方のようですなあ」
加藤達が、木田家の事を認めたようだ。
「誠に、すごいお方でございます。まあ、至高の殿様とはあの方を置いて他にはございません」
「や、柳川殿がその様に言われるなら、素晴らしいお方なのでしょう。ですが、我らが殿も、至高のお方です。我らが命をかけるに値するお方です。たとえ木田家と言えども、殿なら戦えば勝ちを収めることでしょう」
「ふふふ、大田様は良い家臣を持たれているようだ。羨ましい」
「加藤、榎本、東。俺は木田家の傘下に入ることに疑問を持たねえ。もともと俺は駿河の商人だ。駿河はすでに木田家の傘下に入っている。皆よろしくやっている。むしろ暮らしやすくなっているくらいだ。おめえ達は反対なのか」
「はい、俺達は、殿こそ天下を取るにふさわしいお方と思っています。木田家こそ殿の傘下に入るべきだと思います」
「ははは、買いかぶりすぎだ。加藤、さっき見ただろう。俺はオタクで変態の豚野郎だ。小心者で底辺根性の抜けない男だぜ」
「……」
加藤達は、熱のこもった視線を俺に向けて、無言で首を振った。
俺は頭を掻いた。
「柳川殿、俺は木田家の傘下に入ることを拒まねえ。それが尾張の為ならな、だが、尾張に住む人が少しでも悲しむようなことがあるのなら、木田家といえども断固戦う、それでも良いのだろうか」
俺は、柳川の顔では無く、加藤達の顔を見て答えた。
「……」
加藤達は無言で俺の顔を見つめる。
「ふふふ、決りですね」
柳川が、笑いながら……。顔は少しも笑顔を作らず、加藤達に視線を向けた。
これ以上、お前達程度がガタガタ言ううんじゃねえ。
そんな迫力があった。
加藤達はその迫力に気圧された。
俺はそれを見てすかさず言った。
「柳川殿、よろしくお願いします」
「よかった。これで使者の役目を無事、はたすことが出来ました。それでは太田殿、木田家が持つ極秘の情報をお話しします。情報の共有ということです……」
柳川が今度は本当の敵意の無い笑顔を俺に向けた。
「うむ、皆、少し席を外してくれ、柳川殿が何やら二人で話したいことがあるらしい」
俺は、加藤達に階下に行くように視線を送った。
三人は心配そうにしていたが、俺が心配はいらないと表情を作ると、ゆっくり階段を降りていった。
くそーーっ! 何てタイミングだーー!!
俺は今、名古屋城天守閣最上階を自分のプライベートルームにしている。
窓にコインを入れると、遠くが見える双眼鏡が設置されている。
中央に土産物屋の残骸があったので、蜂蜜さんに吸収してもらった。後に残ったのはガランとした空間だ。
部屋は、下から見るより広く感じない。その中央で俺は、俺史上最高傑作のフィギュア、シュラに新しい白い下着をはかせてじっと見つめていたのだ。
シュラとはオリハルコンで作った八頭身スレンダーで、美しい理想の女性型実物大フィギュアで、ゴーレム化して命を吹き込んだメイドだ。
シュラはメイド服のロングのスカートを胸まで上げて、パンツを丸出しにしていた。
シュラは加藤の視線を感じて、恥ずかしそうにスカートを下ろした。
「ば、ばか、おめー! ノックをしねーか!!」
「ノ、ノックと言われましても、ドアがありません」
そうだった。ここは展望室だから、階段を上がるとそのまま部屋の中だ。ドアなどない。
「こんな所で、シュラちゃんのパンツを見つめている人が悪いです」
後ろから、あずさの声がした。
「うわあ!! あずき、いつからいたんだー?」
「そうですねー。やっぱり、パンツは白が美しいの所からです」
「最初からじゃねえかー」
「うふふ」
あずさが悪戯っぽく、とても嬉しそうに笑った。
滅茶苦茶可愛いはずなのだが、今は髪で顔を半分隠しているので、その可愛い顔は見ることが出来なかった。
「で、加藤何の用だ」
「はっ、関東木田家の使者を名乗る者が訪問してきました」
「ふむ、どんな奴だ」
「はっ、鋭い吊り上がった目にメガネをかけて、インテリ風を装っていますが、あれはやばいです。何人も残忍に人殺しをした、殺人鬼のような男です。何人もワルを見てきましたが、ありゃあ格が違います」
柳川だ。
柳川しかいねえ。
「使者ならば、殺人鬼だろうと丁重にお迎えしろ!! 丁重とはそういう意味じゃねえからな」
「分かっていますとも」
殺人鬼がつぼだったのか、あずさが声を出さないように我慢して笑っている。あずさも柳川と気が付いているようだ。
肩がガタガタ震えている。
やはり柳川だった。
榎本、加藤、東、そして胴丸具足にアダマンタイトの剣を装備した護衛が四人で、柳川を囲み天守へ入ってきた。
「ほう、良い眺めですな。あっ、失礼しました。私は関東木田家の柳川と申します」
柳川は、すました表情で名乗ると深々と頭を下げた。
しばらく頭をさげたまま止まると、ゆっくり頭を上げ、もう一度景色を楽しんでいる。
「俺が、尾張大田家の大田だ! なんの御用でしょうか」
俺は話しを合せるようにと、柳川に目配せをした。
柳川は分かっていますよと、誰にも分からない程度に頭を少しだけ動かした。
「まあ、単刀直入に申し上げます。木田家の傘下にお入り下さい」
「な、なにーーーっ!!!」
加藤達の顔色が変わった。
後ろの護衛の男達が、剣に手をかけた。
部屋が一瞬で緊迫感に包まれた。
「控えろ!! 護衛はもういい階下へ下がれ!!!」
俺は素早く強く言った。
具足を装備した護衛が、加藤の顔を見た。
加藤はゆっくりと、うなずいた。
それを見て、護衛は階段を降りていく。
「柳川殿、少し木田家について教えてもらえませんか」
「分かりました……」
柳川は、しばらく木田家について語った。
驚いたのは、加藤達でさえゲン一家の事を知っていたことだ。
そして、柳川がゲン一家の柳川と分かると、加藤達の態度が急変した。
俺の方が柳川の事を知っているつもりだったのに、こいつらの方が柳川の事をよく知っているようだった。
「あのゲン一家を配下にしておられるのか。木田の大殿とは恐ろしいお方のようですなあ」
加藤達が、木田家の事を認めたようだ。
「誠に、すごいお方でございます。まあ、至高の殿様とはあの方を置いて他にはございません」
「や、柳川殿がその様に言われるなら、素晴らしいお方なのでしょう。ですが、我らが殿も、至高のお方です。我らが命をかけるに値するお方です。たとえ木田家と言えども、殿なら戦えば勝ちを収めることでしょう」
「ふふふ、大田様は良い家臣を持たれているようだ。羨ましい」
「加藤、榎本、東。俺は木田家の傘下に入ることに疑問を持たねえ。もともと俺は駿河の商人だ。駿河はすでに木田家の傘下に入っている。皆よろしくやっている。むしろ暮らしやすくなっているくらいだ。おめえ達は反対なのか」
「はい、俺達は、殿こそ天下を取るにふさわしいお方と思っています。木田家こそ殿の傘下に入るべきだと思います」
「ははは、買いかぶりすぎだ。加藤、さっき見ただろう。俺はオタクで変態の豚野郎だ。小心者で底辺根性の抜けない男だぜ」
「……」
加藤達は、熱のこもった視線を俺に向けて、無言で首を振った。
俺は頭を掻いた。
「柳川殿、俺は木田家の傘下に入ることを拒まねえ。それが尾張の為ならな、だが、尾張に住む人が少しでも悲しむようなことがあるのなら、木田家といえども断固戦う、それでも良いのだろうか」
俺は、柳川の顔では無く、加藤達の顔を見て答えた。
「……」
加藤達は無言で俺の顔を見つめる。
「ふふふ、決りですね」
柳川が、笑いながら……。顔は少しも笑顔を作らず、加藤達に視線を向けた。
これ以上、お前達程度がガタガタ言ううんじゃねえ。
そんな迫力があった。
加藤達はその迫力に気圧された。
俺はそれを見てすかさず言った。
「柳川殿、よろしくお願いします」
「よかった。これで使者の役目を無事、はたすことが出来ました。それでは太田殿、木田家が持つ極秘の情報をお話しします。情報の共有ということです……」
柳川が今度は本当の敵意の無い笑顔を俺に向けた。
「うむ、皆、少し席を外してくれ、柳川殿が何やら二人で話したいことがあるらしい」
俺は、加藤達に階下に行くように視線を送った。
三人は心配そうにしていたが、俺が心配はいらないと表情を作ると、ゆっくり階段を降りていった。
0
あなたにおすすめの小説
魔道具頼みの異世界でモブ転生したのだがチート魔法がハンパない!~できればスローライフを楽しみたいんだけど周りがほっといてくれません!~
トモモト ヨシユキ
ファンタジー
10才の誕生日に女神に与えられた本。
それは、最強の魔道具だった。
魔道具頼みの異世界で『魔法』を武器に成り上がっていく!
すべては、憧れのスローライフのために!
エブリスタにも掲載しています。
スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~
深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】
異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活
シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
荷物持ちの代名詞『カード収納スキル』を極めたら異世界最強の運び屋になりました
夢幻の翼
ファンタジー
使い勝手が悪くて虐げられている『カード収納スキル』をメインスキルとして与えられた転生系主人公の成り上がり物語になります。
スキルがレベルアップする度に出来る事が増えて周りを巻き込んで世の中の発展に貢献します。
ハーレムものではなく正ヒロインとのイチャラブシーンもあるかも。
驚きあり感動ありニヤニヤありの物語、是非一読ください。
※カクヨムで先行配信をしています。
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる