底辺おじさん、助けた異世界転生美少女の異世界魔法と異世界アイテムそして特殊能力ゴミ処理で世界を救う

覧都

文字の大きさ
121 / 428

第百二十一話 懐かしの部屋

しおりを挟む
 まずは、木田産業本社ですね。
 とうさんが、私の為に残してくれたクザンと一緒に移動します。
 木田産業の中庭は、静かでした。
 北側に旧社屋、南側に巨大な新社屋があります。
 旧社屋は、三階建てで二階が会社事務所で、その中の社長室が私と、とうさんの生活の場所でした。一階は駐車場です。

「懐かしい、いるとは思えないけど、寄り道をしましょう」

「……」

 クザンは会話が出来ませんが、うなずいてくれました。
 階段は東西にあります。東は二階までで会社用。
 西は、三階までありますが、一階に鍵が必要な扉があります。こちらは自宅用です。
 トントンと軽い足取りで階段を上り、会社のドアをノックもせず開けます。

「だれだ!!! ノックもしねえで! ここがどこだか分かっているのか!!」

 いきなり怒鳴られました。

「分かっているわ! 私のうちよ。自分の家に帰るのにノックをする人はいないわ!」

 楽しい気分を台無しにされたので、少し言い方が乱暴になりました。

「おおおーー!! あずさちゃーん!! 滅茶苦茶かわいいー!!」

 私の事を知っているゲン一家の幹部の人がいるみたいです。

「すこし、私の部屋を見てもいいですか?」

「ふふふ、どうぞ、どうぞ。社長室だけは何もさわっていません」

 扉を開けると、本当に当時のままでした。
 私は中に入るとすぐに扉を閉めました。
 だって、すでに泣きそうなんですもの。

「うふふ、ゲームモニターとしてしか使っていないテレビ。とうさんはいつも言っていました。『テレビも見ねえのに、受信料を払うっておかしいよなー。貧乏人いじめだよなー。でかいテレビでも小さいテレビでも同じ値段だしよー。せめて払う人間の気持ちを考えた制度にしてもらいてーもんだ』っていってました。私にはよくわかりませんが、どうなんでしょう」

 とうさんは、ガリガリにやせて、頭には大きな脱毛症が五ヶ所もあるみすぼらしい私を、いつもヒザの上にのせていてくれました。
 そのときの私は、まるでミイラでした。
 当時の自分の写真を見た時「なにこの汚いみすぼらしい子供わ!」と、自分で自分に気持ち悪さと恐怖を感じるほどでした。

 そんな私をとうさんは、いつも大切に優しく、肌身離さず一緒にいてくれました。
 私は、とうさんがここにいないと、捨てられたと思って、よくパニックになりましたよね。
 それに失敗した時も、パニックになりました。
 とうさんは、治まるまでずっと優しく抱きしめてくれました。
 そういえば、とうさんに怒られた記憶がありません。甘やかしすぎです。

「とうさん、どこにいるの。会いたい……」

 私は何年も会っていない子供のような気持ちになっています。
 そして、とうさんの座っていた、応接のソファーに座って、何も写っていないテレビを見ました。

 ――うそ!!

 テレビの画面にとうさんに抱っこをされている私と、ニコニコ顔のとうさんの姿がうつっています。
 画面の私の顔は、何の表情もなく無表情、可愛げの無い子供です。
 生き霊でしょうか。
 私は、とうさんに抱っこされている時、こんな顔をしていたのでしょうか。
 あんな子供を、ニコニコ顔でかわいがって、ここまでにしてくれたのですね。
 感謝しかありません。

 私はとうさんの思い出が、次から次へと映る画面をじっと見つめ、しばらくそこから動けなくなりました。
 気が付くと涙がポタポタとこぼれていました。
 よかった。水着で。

「あの、とうさんを見ませんでしたか?」

 私は、涙がかれるのを待って、ドアを開け、聞いて見ました。

「知りませんねえ。本社に藤吉さんがいます。聞いて見たらどうですか」

「わかりました。ありがとうございます」

 御礼を言うと、走って大きな白い新社屋の二階へ向いました。
 扉を開けるなり大声で。

「藤吉さーーん!!!」

 叫んでいました。
 中にいた人が驚いて、全員こっちを見ました。

「まあ、あずさちゃん久しぶり」

 ここで事務処理をしている、お姉さん達が集まってくれました。

「あの、とうさんを見ませんでしたか?」

 お姉さん達は、首を振ります。

「やあ、あずさちゃん」

「あの、藤吉さん。とうさんを見ませんでしたか?」

「マグロを倉庫に置いて行くときに見たけど、それは一週間ほど前だな。どこへ行ったのかは、聞かされていない」

「ありがとうございます」

 それだけ聞くと、私はクザンと駿府へ向った。

「あらあら、まあまあ、せっかくお茶を入れていたのにもう行ってしまった。まったく大殿と同じで慌ただしいねえ」

 お姉さんの声が聞こえました。
 ごめんなさい、先を急ぐものですから。
 私は、クザンと駿府の大田大商店に移動しました。
 もと四階建ての静岡駅に近い国道沿いのスポーツショップです。
 一階が駐車場で、二階と三階が店舗、四階が寮と事務所兼倉庫になっています。

 私は、ここでは大田大の娘あずきです。
 セーラー服を着て目立たないように、髪で顔を半分隠します。
 目立たない通りの影に移動すると、何やら騒がしいです。
 いったい何をやっているのでしょうか。

 声のする先は、一階の駐車場からです。
 私は興味津々でのぞき込みました。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

荷物持ちの代名詞『カード収納スキル』を極めたら異世界最強の運び屋になりました

夢幻の翼
ファンタジー
使い勝手が悪くて虐げられている『カード収納スキル』をメインスキルとして与えられた転生系主人公の成り上がり物語になります。 スキルがレベルアップする度に出来る事が増えて周りを巻き込んで世の中の発展に貢献します。 ハーレムものではなく正ヒロインとのイチャラブシーンもあるかも。 驚きあり感動ありニヤニヤありの物語、是非一読ください。 ※カクヨムで先行配信をしています。

魔道具頼みの異世界でモブ転生したのだがチート魔法がハンパない!~できればスローライフを楽しみたいんだけど周りがほっといてくれません!~

トモモト ヨシユキ
ファンタジー
10才の誕生日に女神に与えられた本。 それは、最強の魔道具だった。 魔道具頼みの異世界で『魔法』を武器に成り上がっていく! すべては、憧れのスローライフのために! エブリスタにも掲載しています。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

処理中です...