148 / 428
第百四十八話 すごすぎます
しおりを挟む
「上杉殿、こちらです。ゆっくり行きますので、ついてきてください」
ほっぺたが落ちそうな位、美味しいマグロ丼を食べ終わると、黄色いジャージを着た豚顔の木田家の当主様が案内を始めました。
センスの欠片も無い、黄色いジャージに、変な大きな白いポケットのついたジャージを着ています。しかも、誰が縫ったのか、ポケットは縫い目がまばらで歪んでいます。飴ちゃんなら全部落ちそうな程、まばらな縫い目です。そんな男を私は、初見で正直気持ちが悪いとさえ思いました。
顔が豚なら、声は森山さんのような渋い声なら良かったのに、少し高いデブ声です。当然体はブヨブヨのデブです。
私はこの男を豚カレーと呼ぶ事にして、当主候補から外したのです。
それがまさかの木田家の大殿様とは。
「大殿、我らもお供してよろしいですか」
「馬鹿もーん、俺が黄色いジャージの時は、駿河の商人大田だ。皆さんの方が偉いので、ちゃんとして下さい」
「はっ、も、申し訳ありません」
「だからー、ま、いいです。でも外では気をつけて下さい」
「はっ」
伊達の赤鬼が、頭を下げました。いつもと、まるで雰囲気が違う。
私達上杉家の者は、この茶髪の暴れん坊、独眼竜を赤鬼と呼んでいます。
それが、大人しく言う事を聞いています。
不思議な感じがします。
いったい豚カレーは、この暴れん坊をどうやって手なずけたのでしょうか。
「この駅は地下鉄なのに地上なんですよね。昼間はライトが入りません」
特に会話もないまま、駅に着いた。
「あ、あの仙台は電気があるのですか」
私が驚いていると、同行してきた男達が笑っている。
一人だけ、メイド服を着た赤いロボットコスの女性が混じっている。
「いいえ、ハンドパワーです」
「はあー?」
「ふふふ、魔法と言っても信じてもらえなさそうですし、見ていてください」
そう言うと豚カレーは、ポケットに手を突っ込んだ。
「ウォータークーラー!」
大山さんの様な声で、ポケットから大きな物を出した。
ポケットには収まりきらない大きな物だ。
いやいや、その前に豚カレーは、どう見てもその妹の方のコスプレでしょう。
しかも、声が似すぎています。
どこから突っ込んで良いのか分かりません。
「相変わらず、大田さんはすごいですなー」
人相の悪い詐欺師の様な男が言った。
「ふふふ、藤吉様、飲んでみてください」
「かー!! うまい。よく冷えた富士の湧水ですな」
この男は藤吉と言う名前のようです。
「ふふふ、ここに欲しいと思っていたのですよ。上杉様もどうぞ」
「えっ、あっ、はい」
私に振ってきたので、飲むことにした。
青く美しい金属の筐体に、金色の模様が美しいウォータークーラーだ。
うわっ、うまい。
「どうですか」
豚カレーが私の顔を嬉しそうに見てきました。
「う、うまいです。この水はどの位出てくるのですか」
「ふふふ、この大田の生きている限り出続けます。どうですか上杉様これが駿河大田商店の商品で、私の力です」
「す、すごい!! すごすぎます!!」
私は驚いていた。
これが、未来のアイテムでも、魔法のアイテムでも、どちらにしてもすごすぎる。
「あ、良いタイミングで来ました」
豚カレーが言うと列車が入ってきました。
さっきのウォータークーラーと同じようなデザインが先頭で、客車は銀色の鉄製の列車だった。
この列車もあのポケットから出したのでしょうか?
だとしたら、すごい! すごすぎです!!
ホームの端に移動して、扉の無い先頭の機関車の横に来た。
「さあ乗りましょう。扉を開いてください」
豚カレーが列車をさすりながら言うと、何も無い機関車に乗り口が出来た。
中に乗り込むと、ふたたび豚カレーが機関車をさすり言った。
「外を見せて下さい」
すると、機関車が消えてしまった。
私達がまるで、宙に浮いているような気持ちの悪い感じになっている。
「これじゃあ、宙に浮いているようで気持ち悪いから、横の半分だけでいいですよ」
豚カレーが言うと、窓の所だけ透明になった。
「すごいですね。古賀さんはこれを使って、透明になっているのですねえ。さすがです。あっ、古賀さんというのは駿河忍軍の首領です」
「す、駿河忍軍! 透明?」
上杉家でも、情報収集はしていますが、忍者と呼べる者はいません。
しかも、この口ぶりでは透明になれるらしい。
透明の忍者なんて恐ろしすぎる。
「どうせ、ここにも一人くらい、いるのでしょう。姿を見せて下さい」
「はっ」
声と共に、黒い忍者服の者が四人現れた。
忍者は全員女性のようで胸にふくらみが有り、ミニスカートをはいている。
「じょ、女性ですか? 危険ではありませんか」
この崩壊した世界では、女性は危険が多い、いや、危険しか有りません。私も女ですが、男装をして女性と言う事を隠しています。
「大丈夫です。この忍者服が優秀なので、おおよそ危険は回避できます。銃弾でもなんともありません」
「ふっ、ふっ、ふっ。何を隠そう、この忍者服も大田商店の商品です」
「す、すごい。すごすぎる」
私は、またしても驚いている。
すでに何度驚いたかわかりません。
「安全確認がすんだら、出発して下さい」
豚カレーが言うと列車が動き出した。
まっ、まさか、この列車は、機関車がそのまま動いているのでしょうか?
きっと、この列車も豚カレーが生きている間中走り続けるのでしょう。
ふふふふ、すごすぎます!!!!
ほっぺたが落ちそうな位、美味しいマグロ丼を食べ終わると、黄色いジャージを着た豚顔の木田家の当主様が案内を始めました。
センスの欠片も無い、黄色いジャージに、変な大きな白いポケットのついたジャージを着ています。しかも、誰が縫ったのか、ポケットは縫い目がまばらで歪んでいます。飴ちゃんなら全部落ちそうな程、まばらな縫い目です。そんな男を私は、初見で正直気持ちが悪いとさえ思いました。
顔が豚なら、声は森山さんのような渋い声なら良かったのに、少し高いデブ声です。当然体はブヨブヨのデブです。
私はこの男を豚カレーと呼ぶ事にして、当主候補から外したのです。
それがまさかの木田家の大殿様とは。
「大殿、我らもお供してよろしいですか」
「馬鹿もーん、俺が黄色いジャージの時は、駿河の商人大田だ。皆さんの方が偉いので、ちゃんとして下さい」
「はっ、も、申し訳ありません」
「だからー、ま、いいです。でも外では気をつけて下さい」
「はっ」
伊達の赤鬼が、頭を下げました。いつもと、まるで雰囲気が違う。
私達上杉家の者は、この茶髪の暴れん坊、独眼竜を赤鬼と呼んでいます。
それが、大人しく言う事を聞いています。
不思議な感じがします。
いったい豚カレーは、この暴れん坊をどうやって手なずけたのでしょうか。
「この駅は地下鉄なのに地上なんですよね。昼間はライトが入りません」
特に会話もないまま、駅に着いた。
「あ、あの仙台は電気があるのですか」
私が驚いていると、同行してきた男達が笑っている。
一人だけ、メイド服を着た赤いロボットコスの女性が混じっている。
「いいえ、ハンドパワーです」
「はあー?」
「ふふふ、魔法と言っても信じてもらえなさそうですし、見ていてください」
そう言うと豚カレーは、ポケットに手を突っ込んだ。
「ウォータークーラー!」
大山さんの様な声で、ポケットから大きな物を出した。
ポケットには収まりきらない大きな物だ。
いやいや、その前に豚カレーは、どう見てもその妹の方のコスプレでしょう。
しかも、声が似すぎています。
どこから突っ込んで良いのか分かりません。
「相変わらず、大田さんはすごいですなー」
人相の悪い詐欺師の様な男が言った。
「ふふふ、藤吉様、飲んでみてください」
「かー!! うまい。よく冷えた富士の湧水ですな」
この男は藤吉と言う名前のようです。
「ふふふ、ここに欲しいと思っていたのですよ。上杉様もどうぞ」
「えっ、あっ、はい」
私に振ってきたので、飲むことにした。
青く美しい金属の筐体に、金色の模様が美しいウォータークーラーだ。
うわっ、うまい。
「どうですか」
豚カレーが私の顔を嬉しそうに見てきました。
「う、うまいです。この水はどの位出てくるのですか」
「ふふふ、この大田の生きている限り出続けます。どうですか上杉様これが駿河大田商店の商品で、私の力です」
「す、すごい!! すごすぎます!!」
私は驚いていた。
これが、未来のアイテムでも、魔法のアイテムでも、どちらにしてもすごすぎる。
「あ、良いタイミングで来ました」
豚カレーが言うと列車が入ってきました。
さっきのウォータークーラーと同じようなデザインが先頭で、客車は銀色の鉄製の列車だった。
この列車もあのポケットから出したのでしょうか?
だとしたら、すごい! すごすぎです!!
ホームの端に移動して、扉の無い先頭の機関車の横に来た。
「さあ乗りましょう。扉を開いてください」
豚カレーが列車をさすりながら言うと、何も無い機関車に乗り口が出来た。
中に乗り込むと、ふたたび豚カレーが機関車をさすり言った。
「外を見せて下さい」
すると、機関車が消えてしまった。
私達がまるで、宙に浮いているような気持ちの悪い感じになっている。
「これじゃあ、宙に浮いているようで気持ち悪いから、横の半分だけでいいですよ」
豚カレーが言うと、窓の所だけ透明になった。
「すごいですね。古賀さんはこれを使って、透明になっているのですねえ。さすがです。あっ、古賀さんというのは駿河忍軍の首領です」
「す、駿河忍軍! 透明?」
上杉家でも、情報収集はしていますが、忍者と呼べる者はいません。
しかも、この口ぶりでは透明になれるらしい。
透明の忍者なんて恐ろしすぎる。
「どうせ、ここにも一人くらい、いるのでしょう。姿を見せて下さい」
「はっ」
声と共に、黒い忍者服の者が四人現れた。
忍者は全員女性のようで胸にふくらみが有り、ミニスカートをはいている。
「じょ、女性ですか? 危険ではありませんか」
この崩壊した世界では、女性は危険が多い、いや、危険しか有りません。私も女ですが、男装をして女性と言う事を隠しています。
「大丈夫です。この忍者服が優秀なので、おおよそ危険は回避できます。銃弾でもなんともありません」
「ふっ、ふっ、ふっ。何を隠そう、この忍者服も大田商店の商品です」
「す、すごい。すごすぎる」
私は、またしても驚いている。
すでに何度驚いたかわかりません。
「安全確認がすんだら、出発して下さい」
豚カレーが言うと列車が動き出した。
まっ、まさか、この列車は、機関車がそのまま動いているのでしょうか?
きっと、この列車も豚カレーが生きている間中走り続けるのでしょう。
ふふふふ、すごすぎます!!!!
0
あなたにおすすめの小説
スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~
深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】
異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活
シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
荷物持ちの代名詞『カード収納スキル』を極めたら異世界最強の運び屋になりました
夢幻の翼
ファンタジー
使い勝手が悪くて虐げられている『カード収納スキル』をメインスキルとして与えられた転生系主人公の成り上がり物語になります。
スキルがレベルアップする度に出来る事が増えて周りを巻き込んで世の中の発展に貢献します。
ハーレムものではなく正ヒロインとのイチャラブシーンもあるかも。
驚きあり感動ありニヤニヤありの物語、是非一読ください。
※カクヨムで先行配信をしています。
魔道具頼みの異世界でモブ転生したのだがチート魔法がハンパない!~できればスローライフを楽しみたいんだけど周りがほっといてくれません!~
トモモト ヨシユキ
ファンタジー
10才の誕生日に女神に与えられた本。
それは、最強の魔道具だった。
魔道具頼みの異世界で『魔法』を武器に成り上がっていく!
すべては、憧れのスローライフのために!
エブリスタにも掲載しています。
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる