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第二百五十二話 罪悪感
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翌日の朝は、お城から朝ご飯の用意の煙が上がりませんでした。
「せっかく結界の上を開けておいたのに、火を使わないのでしょうか」
ミサさんが首をかしげています。
お米が無くなりかけていると、のどまで出かかりましたが言うのをやめました。
言ってしまうと、「なんで知っているの?」と、こういうときばかり頭の回転の速いあずさちゃんに突っ込まれるからです。
黙って朝食を食べます。朝食が終ればお祭りの準備です。
「おのれ、見せしめに数人ぶっ殺せー」
私達が、駿河公認アイドル、ピーツインのステージのセッティングをしていると、城から大声が聞こえました。
昨日の夜に見た、ひげもじゃのおかしらです。
銃声があたりに響きました。
「やめろー! 撃つなーー!! 見えない壁があるー! うわあ、跳弾が当たる! やめるんだーー!! な、なんなんだこれはー?」
跳弾がおかしらの足先に当たりました。いい気味です。
でも、残念な事にケガはしなかったようです。
「お、おかしらー。壁におおわれていて、城への出入りが出来ません」
「ぬうう、清水めーー。何をしやあがった」
「おかしら! 目を細めて、首を傾けるとキラキラ虹色に光って何かが見えます」
城の男達がそろって、目を細めて首を傾けています。
「ぷっ!!」
笑っては失礼ですが、少し滑稽で全員が吹き出してしまいました。
「ちくしょう!! 全体を覆っていやあがる。これじゃあ、城からの銃撃は無理だ。くそやろー!!」
お祭りの準備は順調です。
少し暗くなってきたので、今日の祭りの準備は早めに終る事にしました。
美術館へ戻る途中、お城から夕食の準備の煙が上がりました。
「少し様子を見てみましょうか」
古賀さんの言葉に全員が賛成し、城をよく観察できるビルの屋上へ移動しました。
炊かれたご飯のまわりに女性が集りました。
「うわあ、美味しそう。炊き込みご飯だ」
あずさちゃんが、無邪気に言います。
「あずさちゃん、あれは炊き込みご飯ではありません。泥水で炊いたので黄ばんでいるのですよ」
坂本さんが悲痛な表情で言いました。
「私が想像していたのとは違って、城はずいぶん疲弊していますね。かわいそうに。非戦闘員だけでも先に解放してくれるといいのですが」
ミサさんが悲しそうに言います。
きっと、今はおかしらが激怒していますので、交渉には応じてもらえないでしょう。
「おにぎりにしていますが、数が少ないですね。あれでは、一人一個ですね。しかも、小さい」
古賀さんが冷静に言いました。
全員無言になり、おにぎりが配られるところを真剣な表情で見つめます。
「朝飯もねえのに、これだけかよー!!」
不満を言う人が何人かいます。
「文句を言うな。おかしらもおなじ物で我慢しているんだー」
「いつまで、我慢すりゃあいいんだ」
「もう少しだ、もう少し我慢すりゃあ、カンリ一族が敵にスキを作る。そしたら、一気に打って出て清水など皆殺しだー」
「……」
すでに、城の士気は無くなりかけているようです。
「あの、これなら祭りをしなくても兵糧切れで勝てそうに思えますが……」
私が言うと、全員が大きく目を見開いて私の方を見ました。
「さあ、帰りましょう」
四人が、何も無かったように声をそろえて言いました。
私の言ったことは無かった事になったようです。
美術館にもどり、ロビーの大テーブルに座ると、フォリスさんが食事を運んで来てくれました。
外は寒いのですが、美術館の中は暖房設備がセットされて快適です。
仙台のアーケードで威力を発揮したミスリル製の空調ゴーレムです。
私の前に置かれたのは、熱々の鉄板に乗せられた、サーロインステーキと大きなハンバーグです。鉄板の上でジュージュー言っています。
そして、真っ白なご飯。湯気まで真っ白です。
とても美味しそうですが、さっきの情景が目に浮かび手が出せません。
「おいひいーー!!」
あーー、あずさちゃんが口一杯に頬張っています。
「本当ですね」
三人の大人も、あずさちゃんが食べ始めると、一口目を口に入れました。
おそらく、これは祭りに出されるメニューです。
試食という事なのでしょう。
そういうことなら、私も食べないわけにはいきません。
一口だけ口に運びました。
あーーっ、駄目だ。
一口で済むわけがありませんでした。
あっという間に、サーロインステーキが消えました。
次はハンバーグです。
「おかわりーー!!!」
あずさちゃんと、三人の大人の声がそろいました。
見ると全員のご飯とお肉が消えています。
私はまだ、ステーキしか食べていないのにーー。速すぎです。
私は大きくて、まん丸に膨らんだハンバーグを一口食べました。
あーーーーっ!!
美味しい。私は子供なので、ハンバーグの方が美味しいです。
でも、そんなことは言ってはいけませんよね。
だって、どう見てもサーロインステーキの方が高そうですもの。
「おいしーーー!! でも、やっぱりハンバーグの方がおいしいー!」
「あっ、私もです」
はっ! しまった。あずさちゃんにつられて言ってしまいました。
あずさちゃんめーー!!
私も、お替わりをしてしまいました。
食べ終わると、罪悪感です。
お城では、おなかを空かした人達が大勢いるのに、私と来たらこんなに美味しい物を食べてしまって……。
「私は、ハンバーグだけお替りーー」
「あーっ、私もーー」
はっ! あずさちゃんに、つい、つられて言ってしまいました。
久しぶりの牛肉は美味しすぎます。
罪悪感とは裏腹に、ハンバーグは最高でした。
「せっかく結界の上を開けておいたのに、火を使わないのでしょうか」
ミサさんが首をかしげています。
お米が無くなりかけていると、のどまで出かかりましたが言うのをやめました。
言ってしまうと、「なんで知っているの?」と、こういうときばかり頭の回転の速いあずさちゃんに突っ込まれるからです。
黙って朝食を食べます。朝食が終ればお祭りの準備です。
「おのれ、見せしめに数人ぶっ殺せー」
私達が、駿河公認アイドル、ピーツインのステージのセッティングをしていると、城から大声が聞こえました。
昨日の夜に見た、ひげもじゃのおかしらです。
銃声があたりに響きました。
「やめろー! 撃つなーー!! 見えない壁があるー! うわあ、跳弾が当たる! やめるんだーー!! な、なんなんだこれはー?」
跳弾がおかしらの足先に当たりました。いい気味です。
でも、残念な事にケガはしなかったようです。
「お、おかしらー。壁におおわれていて、城への出入りが出来ません」
「ぬうう、清水めーー。何をしやあがった」
「おかしら! 目を細めて、首を傾けるとキラキラ虹色に光って何かが見えます」
城の男達がそろって、目を細めて首を傾けています。
「ぷっ!!」
笑っては失礼ですが、少し滑稽で全員が吹き出してしまいました。
「ちくしょう!! 全体を覆っていやあがる。これじゃあ、城からの銃撃は無理だ。くそやろー!!」
お祭りの準備は順調です。
少し暗くなってきたので、今日の祭りの準備は早めに終る事にしました。
美術館へ戻る途中、お城から夕食の準備の煙が上がりました。
「少し様子を見てみましょうか」
古賀さんの言葉に全員が賛成し、城をよく観察できるビルの屋上へ移動しました。
炊かれたご飯のまわりに女性が集りました。
「うわあ、美味しそう。炊き込みご飯だ」
あずさちゃんが、無邪気に言います。
「あずさちゃん、あれは炊き込みご飯ではありません。泥水で炊いたので黄ばんでいるのですよ」
坂本さんが悲痛な表情で言いました。
「私が想像していたのとは違って、城はずいぶん疲弊していますね。かわいそうに。非戦闘員だけでも先に解放してくれるといいのですが」
ミサさんが悲しそうに言います。
きっと、今はおかしらが激怒していますので、交渉には応じてもらえないでしょう。
「おにぎりにしていますが、数が少ないですね。あれでは、一人一個ですね。しかも、小さい」
古賀さんが冷静に言いました。
全員無言になり、おにぎりが配られるところを真剣な表情で見つめます。
「朝飯もねえのに、これだけかよー!!」
不満を言う人が何人かいます。
「文句を言うな。おかしらもおなじ物で我慢しているんだー」
「いつまで、我慢すりゃあいいんだ」
「もう少しだ、もう少し我慢すりゃあ、カンリ一族が敵にスキを作る。そしたら、一気に打って出て清水など皆殺しだー」
「……」
すでに、城の士気は無くなりかけているようです。
「あの、これなら祭りをしなくても兵糧切れで勝てそうに思えますが……」
私が言うと、全員が大きく目を見開いて私の方を見ました。
「さあ、帰りましょう」
四人が、何も無かったように声をそろえて言いました。
私の言ったことは無かった事になったようです。
美術館にもどり、ロビーの大テーブルに座ると、フォリスさんが食事を運んで来てくれました。
外は寒いのですが、美術館の中は暖房設備がセットされて快適です。
仙台のアーケードで威力を発揮したミスリル製の空調ゴーレムです。
私の前に置かれたのは、熱々の鉄板に乗せられた、サーロインステーキと大きなハンバーグです。鉄板の上でジュージュー言っています。
そして、真っ白なご飯。湯気まで真っ白です。
とても美味しそうですが、さっきの情景が目に浮かび手が出せません。
「おいひいーー!!」
あーー、あずさちゃんが口一杯に頬張っています。
「本当ですね」
三人の大人も、あずさちゃんが食べ始めると、一口目を口に入れました。
おそらく、これは祭りに出されるメニューです。
試食という事なのでしょう。
そういうことなら、私も食べないわけにはいきません。
一口だけ口に運びました。
あーーっ、駄目だ。
一口で済むわけがありませんでした。
あっという間に、サーロインステーキが消えました。
次はハンバーグです。
「おかわりーー!!!」
あずさちゃんと、三人の大人の声がそろいました。
見ると全員のご飯とお肉が消えています。
私はまだ、ステーキしか食べていないのにーー。速すぎです。
私は大きくて、まん丸に膨らんだハンバーグを一口食べました。
あーーーーっ!!
美味しい。私は子供なので、ハンバーグの方が美味しいです。
でも、そんなことは言ってはいけませんよね。
だって、どう見てもサーロインステーキの方が高そうですもの。
「おいしーーー!! でも、やっぱりハンバーグの方がおいしいー!」
「あっ、私もです」
はっ! しまった。あずさちゃんにつられて言ってしまいました。
あずさちゃんめーー!!
私も、お替わりをしてしまいました。
食べ終わると、罪悪感です。
お城では、おなかを空かした人達が大勢いるのに、私と来たらこんなに美味しい物を食べてしまって……。
「私は、ハンバーグだけお替りーー」
「あーっ、私もーー」
はっ! あずさちゃんに、つい、つられて言ってしまいました。
久しぶりの牛肉は美味しすぎます。
罪悪感とは裏腹に、ハンバーグは最高でした。
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