底辺おじさん、助けた異世界転生美少女の異世界魔法と異世界アイテムそして特殊能力ゴミ処理で世界を救う

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第二百六十二話 薩摩からの使者

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 翌朝、朝食と片付けを済ますと大阪城へ行く事になりました。

「ヒマリちゃん行くよ」

 名残惜しそうに和歌山城を見つめる私を、あずさちゃんが呼んでくれました。

「はい」

 あずさちゃんの横に行くと、そっと手をつないでくれました。



 大阪城の全景が見える荒野に、私達は移動しました。
 いきなり真正面にしなかったのは、初めての人が大勢いたからでしょうか。
 清水様と熊野衆、カンリ一族の代表者が初めて大阪城を見る方々です。

「な、な、なっ、なんじゃこりゃあ!!!!!」

 巨大な暗黒の大阪城が、荒野の真ん中に堂々と異様な姿を現しました。
 初めて見た人達が、大きな目をしてまばたきを忘れています。
 全員少し目玉が飛び出しています。

「この城は夜中に一晩で出現したニャ」

 アドちゃんがカンリ一族に説明をしました。

「こここ、これを一晩で。すごすぎる」

「そうニャ。すごいニャ。中はもっとすごいニャ」

 アドちゃんが自慢そうです。

「……」

 カンリ一族も熊野衆も清水様も、もう声を出せなくなって呆然と見つめています。

「すごいけど、大阪の街をこんなに破壊するなんて何を考えているのかしら」

 聞き慣れない声がします。
 それは、とうさんがやったのじゃ無くて、新政府がやったのですけど。

「あなた達は誰ですか?」

 あずさちゃんが、落ち着いた口調で少し冷たく聞きました。
 大阪城の全景を見せる意味もあったようですが、この人達と会うのも目的で、あずさちゃんはこの場所に移動したようです。

「私は、九州雄藩連合の使者です。島津家の島津久美子と申します」

 島津久美子と名乗った女性は、顔が古賀さんのように優しげで少しだけ坂本さんの様にキリッとしています。体はミサさんを少し小ぶりにした感じですが、普通の人と比べれば圧倒的にダイナマイトな感じです。
 安心してください。とうさんが。美しいと思う理想の女性のスタイルとは少しずれています。よかった。
 久美子さんのまわりには十人ほどのお供の人が立っています。

「まあ、立ち話も何ですから、そこの家に入りましょう」

「うわっ、大きな家がある!? さっきまではなかったはず」

 大阪城と同じような黒い建物が出現しました。
 きっと、とうさんが今、即席で造って出したのだと思います。
 久美子さんとお供の方が驚いています。

「ああ、この家は透明になりますから」

 とうさんが手を上げると、透明になって見えなくなりました。
 得意のゴーレム屋敷という事でしょう。

「きっ、消えた!!」

「シュラ、清水家と熊野衆、カンリの家臣の方達を先に大阪城へ案内してくれ」

「ハイ、オトウサン」

 とうさんは、ここで大勢来ている家臣団を大阪城に行かせました。
 私達は、再び姿を現した目の前の大きな家に入ります。
 照明も空調も、しっかり完備されています。
 きっと、台所もトイレも完璧な物が用意されているとおもいます。
 玄関を入るとすぐに大きな部屋があり、テーブルと椅子が用意されていました。

「どうぞこちらへ。ここは、薩摩島津家の藩邸として自由にお使いください。おなかは減っていませんか?」

 とうさんが質問すると、久美子さんのおなかが鳴りました。
 お供の方からも聞こえます。

「……」

 久美子さんが顔を赤くして、うつむきました。
 やばい、かわいい。
 歳は二十歳くらいに見えます。
 あずさちゃんが、鉄板の上に熱々のサーロインステーキをジュウジュウいわせて持って来ました。
 ミサさんと古賀さんと坂本さんが続きます。私も台所へ急ぎました。
 そして、響子お母様とカノンお姉様と私が真っ白なご飯を運びます。

「残り物ですがどうぞ」

「ええっ!? これが残り物!?」

 ですよねー。
 とうさん、確かに祭りの残り物ですが言う必要があるのでしょうか。

「ああ、済みません。朝からステーキは駄目でしたか?」

「い、いいえ。むしろ食べたいです」

「それは、よかった。どうぞ食べてください」

 それぞれの席に水の用意が終ると、全員席につきました。
 大きな四角いテーブルの上座の中央にとうさんが座り、その両横にあずさちゃんと私が座りました。後ろにクザンが直立不動です。
 そして、九州からのお客様の久美子さんとお供の人が座ります。
 続いて、ミサさんと古賀さん坂本さんが座り、向かい側に上杉家とその側近、清水様、熊野衆の御頭、オオエさんと左近さんが座りました。

 どうやら、アドちゃんはちゃっかり透明になって、とうさんのヒザの上にいるようです。
 いたずら小娘のあずさちゃんは、とうさんの横でサーロインステーキをモグモグ食べています。
 あなたはさっき朝食を食べたばかりでしょうに!

 ――あれーーっ!!

 どうしたことでしょう。私の前にもサーロインステーキが、ジュウジュウいっています。
 これは、食べないという選択肢は無いですよね。

「この時間を利用して、自己紹介をさせてもらおう。俺が木田家当主、木田とうだ」

 その言葉を聞いたとたん、久美子さんが口からステーキをペロンと、はみだしたまま床に平伏しようとしました。

「あーー、いいから、いいから。平伏なんか必要無いよ。俺なんざたいしたもんじゃねえ。ただの底辺おじさんだ」

「……」

 ここにいる人達が、驚いてとうさんを見ています。
 それを聞いて、あずさちゃんだけは満面の笑みです。
 心から嬉しそうです。

 ――はっ!!

 私は、自分の顔を手で触ってみました。
 私の顔も目を見開き口が開いています。
 どうやら、驚きの表情です。
 あずさちゃんには敵わないと、悲しくなりました。
 はーーっ、ほんと、やれやれです。
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