底辺おじさん、助けた異世界転生美少女の異世界魔法と異世界アイテムそして特殊能力ゴミ処理で世界を救う

覧都

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激闘編

第二百七十二話 月光の下の戦い

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 食事が終るとすぐに陽が落ちました。
 私達古賀忍軍は、襲われるといけないので船の上に戻ります。
 大型船なので、ギャングウェイを外せば誰も乗り込めません。
 安全スペースになっています。

「おかしいですね」

 私は、島と大陸をつなぐ橋を見ながら異変を感じました。

「廣瀬様、どうしたのですか?」

「皆は気が付きませんか」

「……」

 全員首をかしげ、隣同士で顔を見合わせます。
 私の部下は皆優秀です。
 ですが、気が付く者はいません。
 気が付いているのは、橋の前で槍を持って座っている柴田様と前田様だけかもしれません。

「船のライトを橋に集中して下さい」

「は、はい」

「皆はここから動かないで下さい。万が一の事があった時は私を見捨てて、このまま船で帰り大殿に報告してください」

「!? そんなことは出来ません」

 皆、深刻な顔をして首を振ります。

「愚かなことを言わないで!! 私達は忍びですよ。昔から忍びの使命は、命を捨ててでも情報を持ち帰ることです。私の犠牲で貴重な情報を持ち帰ることが出来るのなら本望です。いいですね。お願いしますよ」

「は、はい。ところで何がおかしいのですか?」

「そうね。気のせいかもしれないのですが、橋をゾンビが渡らないのが、不自然に感じます」

「と、言われますと?」

「対岸には、生きた人間の気配を感じてゾンビが集っています。ゾンビ達は知能が低いのでしょう、海に阻まれて島に渡れません。でも、あれだけのゾンビが集っていれば、橋を偶然渡る者が出てくるはずです」

「本当ですね。橋に近づきません」

「私は、柴田様と前田様のところへ行きます。後は、頼みますよ」

 全員不安な顔でうなずきました。

 私は、船の上からジャンプをして、数度回転すると着地し、柴田様のところへ急ぎました。

「柴田様!」

「おお、廣瀬殿。そろそろ来る頃だと思っていましたぞ」

 そう言いながら少し顔が赤くなっています。

 ――だーー!! しまったーー!!

 姿を消していなかったので、パンツが丸出しでした。
 い、いいえ。
 この人は、きっとゆれる私の胸を見ていたのではないでしょうか。全くおとこってやつわあぁーー!!

「ふふふっ、柴田様来ましたよ!」

「おおっ!!」

 二人は槍を握る手に力を入れました。
 そして、私の胸をチラリと見ました。
 馬鹿なのでしょうか、少しは顔も見てください。
 二人の視線は橋の中央に戻り、まばたきを忘れています。

 橋は暗闇に白く浮かび上がっています。
 船からの光と、月光に照らされてアスファルトまで白く浮かび上がります。
 その橋の中央に黒い人影です。
 ゆっくり歩いて来ます。

 だんだん姿がはっきりしてきました。
 服は、ボロボロに破れ、最早ぼろ切れを体に巻き付けているようにしか見えません。
 顔は黒く変色し、鼻がとれてすでに窪みだけになっています。
 まるで、幽霊海賊船の船長です。

「でかいなー、あれは俺よりでかいですね」

 前田様も大きいですが、確かに船長ゾンビの方が大きく見えます。
 柴田様よりは、少し小さいようです。

「野郎! 笑っているぜ」

 嘘でしょう。
 ゾンビに表情があるなんて!!
 どういうことでしょうか?
 そう見えているだけ。
 いいえ、動いています。
 あきらかに表情を作っています。

「奴は、別格ということでしょうか」

「そのようだ。自信に満ちあふれている。恐らく強いのだろうな。どれ、一丁手合わせを……」

「お待ち下さい。敵からの情報集めは忍びの仕事です。私にお任せください。私の戦いを見て、対策を考えて下さい」

 私は柴田様の言葉をさえぎって、一歩前に出ました。

「ほう、廣瀬殿も血の気が多いようだのう」

 柴田様は、私の顔を見るとニヤリと笑いました。
 槍をつかむ手の力はそのままに、ふくらはぎに力が入ります。
 私に行かせるつもりになってくれたようですが、何かあれば駆けつける気満々です。

 私は、頭は出したままゾンビ船長の前に歩きます。
 頭を保護しないのは、全身を忍者装備で包むと、ゾンビから人間判定をして貰えないからです。

「ゴコォコ、グオコォ」

 ゾンビ船長が動くと、口から変な音が出ます。
 きっと、体の動きに合せて、昔、肺だった所から空気が漏れて気道で音が出るのでしょう。

「気持ち悪い」

 思わず、顔をしかめて言ってしまいました。

「ゴオオオオオオォォォー」

 怒った?
 ゾンビ船長が口を開けて、肺を動かしたのでしょうか。
 叫び声のような音を出しました。
 さっきの笑顔といい、この怒りといい、どうやら船長は知性の様なものがあるようです。

 音と共に動きが速くなりました。
 でも、そのスピードは、普通のゾンビより少し速い程度。
 普通の人間程度です。
 船長は私に近づくと、私を捕まえようと手を伸ばします。
 何度も何度ものばします。

 私は、コスチュームのアシストで船長の攻撃を軽々とよけることが出来ます。

「廣瀬殿、もういい。わかった。わかった! 次は俺の出番だ!」

 橋の中央を長くて太い槍を持ち、赤鬼の様な柴田様が近づいてきます。その顔には不気味な笑顔があります。
 白い光が、柴田様の足下に長い影を作り出します。
 私は、バク転を数回すると、柴田様の横に立ちました。

 柴田様は、船長を見ていません。
 視線の先は……
 視線の先は……
 私のゆれる胸を見ています。
 せっかく、かっこいいと思っていたのにー!!
 台無しです。
 あれ、船長まで見ているような気がします。
 まさかね。

「パユンパユンだ!」

 赤い顔をして、柴田様が言いました。

「プリンプリンです!!」

 前田様が訂正します。
 はああぁぁーー! どっちでもいいわ!! です。
 まあ、その位余裕という事でしょうか。

「さて、我らがヒロインの出番は終わりだ。手下の柴田がお相手仕る。いくぞーーー!!」

 柴田様が槍を目一杯ふりかぶります。
 船長は馬鹿なのでしょうか、まだ私の胸を見ています。
 私の胸ってそんなにすごいのかしら。
 大殿は全然見てくれませんよ。

「どりゃああぁぁーーー!!!!」

 船長を、柴田様の槍が一刀両断しました。
 船長の体が二つに分かれます。
 ですが、船長の体からは汁は出ません。
 二つに別れた顔が、ニタリと笑いました。
 あきらかに笑っています。

 そして両手の指を組みました。
 腕に力が入りました。
 二つに分かれていた体が、ピタリとくっつきます。
 すると、切れ目が一瞬で消えて元通りになりました。

「な、なにーー!?」

 柴田様が、驚きの声を上げました。
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