309 / 428
北と南の戦い
第三百九話 九州での再会
しおりを挟む
「ぐあああーーー」
兵士が住民に剣を刺した。
「おい、やめねえか!! 俺達の仕事は食糧調達だ! 住民を無駄に殺すんじゃねえ! 全くよう、四国の連中は自分たちがやられた事を九州で仕返しをしやあがる。仕方がねえ奴らだ」
どうやら俺達は、新政府軍の乱取りの連中に出会ったようだ。
俺は、田植えのめどが立ったので久美子さんの案内で九州の前線に来ている。
前線には雄藩連合軍として、島津家の歳久、家久兄弟が兵千五百人ずつで参加している。
この島津家久殿が久美子さんの父親なので、その手助けをするつもりで来たのだ。
「よーし、リヤカーが一杯になったらすぐに運べーー!! ふふふ、今回も大量だなあ。他の者はリヤカーが帰って来るまで休憩だーー!! 暇なら次の分を探しておけーー!! 住民は殺すなよ! 逃がしてやれ!」
この声はどこかで聞いた事がある。
俺達は、町の建物の屋根に隠れてこの様子を見ている。
俺以外は姿を消しているが、俺だけは黒いジャージと黒いヘルメットで、夜の闇に紛れている。
「おおと……シュウさん、あれは……」
どうやら、カクさんも気が付いたようだ。
いや、響子さんもカノンちゃんもスケさんも気が付いたようだ。目がウルウルしている。懐かしい。
同行者はこの他に、上杉謙信、ミサ、フォリスさん、久美子さんだ。
フォリスさんは見た目がアンドロイドなので、目立ちすぎるため普段は姿を消してもらっている。
アドとオオエも古賀忍軍も数名は来ているはずだが、この人達は隠密だ。俺達の前ですら呼ばないと姿を現わさない。
そして九州では、木田とう、というのを隠すため、久美子さんの家来の十田シュウという名で通す事にした。
そのため、全員名字を十田として、上杉謙信だけは、十田謙之信と言う名前にした。
「爺さん!! まだしぶとく生きていたのか?」
俺は新政府軍の乱取りの隊長に声をかけた。
配下の若い兵士が武器をかまえ、俺に襲いかかろうとした。
「やめねえか!! この人は俺達の命の恩人だ!!」
ブルが武器を構える兵士達の頭を軽く叩いた。
ブルはすぐに俺が誰だかわかった様だ。目に涙をためて一礼した。
配下の兵士が数十人いる。
「うおおおおおおおおおーーーーーーーー!!!!! あんちゃん!! そ、それは、こっちのセリフだーーーー!!!! 生きていたのかーー!!」
「金城爺さん!! お久しぶり!!」
「お爺さん!! お久しぶりです!!」
四人がそれぞれ爺さんにあいさつをした。
「おお、スケさん、カクさん、カノンちゃん?? この子は誰じゃ?」
「嫌ですわ。私が響子で、カノンがこの子です」
爺さんは響子さんをカノンちゃんと間違えていたようだ。
「この子がカノンちゃんだと!? こんなに小さかったかのう?」
スケさんもカクさんも響子さん、カノンちゃん、そしてミサも、熊野の神域の力で5~6才ほど若返っている。
カノンちゃんは今や中学一年生か小学六年生くらいの美少女にしか見えない。
「うふふ、女は三日会わなければ、若返るといいますわ」
「そうか、そうじゃのう。爺になってボケたのかもしれん。爺は三日で何でも忘れてしまうからなあ」
「爺さんは、相変わらず食糧調達か?」
「おお、そうじゃ。九州は豊だ。大量に調達出来る。おかげで出世して、今や中尉様じゃ! こいつらは四国で徴兵した新兵達だ。全員十二才と言っているがそれ以下の子供達だろう。可哀想だからわしが配下にした」
新政府は、男は兵隊、女は城へ、子供は放置する。
新政府は十二才から成人として扱うため、男は十二才にならない子供が十二才と言って兵士になり、女は十二才を越えていても十一才と言って連れて行かれないようにする。
「そうか、爺さんが新政府軍にいてよかった」
爺さんは、あきらかに若い子供達を自分の隊に拾い上げているようだ。
「あんちゃんは、こんな所で何をしているのじゃ?」
「話せば長くなります」
俺は、目で兵士を見て人払いをしてほしいと伝えた。
「うむ、そうじゃのう。立ち話もなんじゃ、茶でも出そう。こっちじゃ」
一軒の立派なビルの応接室に案内された。
爺さんは椅子に座り、全員の前にお茶が出そろうと、人払いをして俺達だけにしてくれた。
「俺は、逃げる途中大けがをおって川に落ちたんだ。そのおかげか、見つかる事無く生き延びた。そして、たまたま居合わせた、この女性久美子さんに助けられたんだ。それから、久美子さんの使用人になっている」
「ほお、そうだったのか」
爺さんはさっきから上の空だ。俺の話はどうでもいいようだ。
視線が、ミサの胸しか見ていない。完全に固定されている。
ミサはそれが分っているのか、何この爺!! という表情をしている。
「この人は、ミサさんだ」
「おおっ!! 美しいのう。金はある。どうじゃ?」
だめだーー!!
この爺、エロ爺だったーー。
爺さん胸じゃ無くて、顔、顔を見るんだー。
こえー顔をしているぞー鬼の顔だ。
「申し訳ありませーーん。今晩のお相手はすでに決まっていまーーす。ねえシュウさん」
ミサの目が冷たい。
嫌悪の目だ。ミサがこわーい。
あっ、ミサがこっちを見た。しまった!! こいつ心の声を聞く事が出来るんだった。俺にも怒っているようだ。とんだとばっちりだよー。
「な、なにっ! シュウというのが相手か! うらやましいのう」
シュ、シュウって俺じゃねえか。やめろよなーそういう冗談。
爺さんの視線が久美子さんに移った。
顔がやらしい。
こ、この爺、恥も外聞もないなー。
いっそ、清々しい。うらやましいぜ。
「この方は、島津久美子さんだ!」
「なに! 島津だと!!」
爺さんの顔が一瞬で険しくなった。
「はい」
久美子さんが、返事をした。
「まさか、雄藩連合軍の薩摩島津家の家中の者か?」
「そうだ。家中どころか島津家久様の娘さんだ」
「なんと!!」
「爺さんどうする」
「どうもせんさ。あんちゃんの命の恩人なら、わしの恩人と同じだ。ありがとう」
爺さんはここがチャンスと、久美子さんの右手を両手で握った。
そして、鼻の下をのばして赤い顔をしている。
久美子さんの顔がみるみる嫌悪の表情に変わる。
やめろよなー、じゃじゃ馬を怒らすのはよう。
「お爺さま……」
久美子さんが爺さんの手のひらを左手でつねった。
「いだだだだ! おおそうだ!! こんなことをしている場合じゃ無いぞ。大変じゃ!!」
爺さんが真面目な顔をして俺達を見た。
兵士が住民に剣を刺した。
「おい、やめねえか!! 俺達の仕事は食糧調達だ! 住民を無駄に殺すんじゃねえ! 全くよう、四国の連中は自分たちがやられた事を九州で仕返しをしやあがる。仕方がねえ奴らだ」
どうやら俺達は、新政府軍の乱取りの連中に出会ったようだ。
俺は、田植えのめどが立ったので久美子さんの案内で九州の前線に来ている。
前線には雄藩連合軍として、島津家の歳久、家久兄弟が兵千五百人ずつで参加している。
この島津家久殿が久美子さんの父親なので、その手助けをするつもりで来たのだ。
「よーし、リヤカーが一杯になったらすぐに運べーー!! ふふふ、今回も大量だなあ。他の者はリヤカーが帰って来るまで休憩だーー!! 暇なら次の分を探しておけーー!! 住民は殺すなよ! 逃がしてやれ!」
この声はどこかで聞いた事がある。
俺達は、町の建物の屋根に隠れてこの様子を見ている。
俺以外は姿を消しているが、俺だけは黒いジャージと黒いヘルメットで、夜の闇に紛れている。
「おおと……シュウさん、あれは……」
どうやら、カクさんも気が付いたようだ。
いや、響子さんもカノンちゃんもスケさんも気が付いたようだ。目がウルウルしている。懐かしい。
同行者はこの他に、上杉謙信、ミサ、フォリスさん、久美子さんだ。
フォリスさんは見た目がアンドロイドなので、目立ちすぎるため普段は姿を消してもらっている。
アドとオオエも古賀忍軍も数名は来ているはずだが、この人達は隠密だ。俺達の前ですら呼ばないと姿を現わさない。
そして九州では、木田とう、というのを隠すため、久美子さんの家来の十田シュウという名で通す事にした。
そのため、全員名字を十田として、上杉謙信だけは、十田謙之信と言う名前にした。
「爺さん!! まだしぶとく生きていたのか?」
俺は新政府軍の乱取りの隊長に声をかけた。
配下の若い兵士が武器をかまえ、俺に襲いかかろうとした。
「やめねえか!! この人は俺達の命の恩人だ!!」
ブルが武器を構える兵士達の頭を軽く叩いた。
ブルはすぐに俺が誰だかわかった様だ。目に涙をためて一礼した。
配下の兵士が数十人いる。
「うおおおおおおおおおーーーーーーーー!!!!! あんちゃん!! そ、それは、こっちのセリフだーーーー!!!! 生きていたのかーー!!」
「金城爺さん!! お久しぶり!!」
「お爺さん!! お久しぶりです!!」
四人がそれぞれ爺さんにあいさつをした。
「おお、スケさん、カクさん、カノンちゃん?? この子は誰じゃ?」
「嫌ですわ。私が響子で、カノンがこの子です」
爺さんは響子さんをカノンちゃんと間違えていたようだ。
「この子がカノンちゃんだと!? こんなに小さかったかのう?」
スケさんもカクさんも響子さん、カノンちゃん、そしてミサも、熊野の神域の力で5~6才ほど若返っている。
カノンちゃんは今や中学一年生か小学六年生くらいの美少女にしか見えない。
「うふふ、女は三日会わなければ、若返るといいますわ」
「そうか、そうじゃのう。爺になってボケたのかもしれん。爺は三日で何でも忘れてしまうからなあ」
「爺さんは、相変わらず食糧調達か?」
「おお、そうじゃ。九州は豊だ。大量に調達出来る。おかげで出世して、今や中尉様じゃ! こいつらは四国で徴兵した新兵達だ。全員十二才と言っているがそれ以下の子供達だろう。可哀想だからわしが配下にした」
新政府は、男は兵隊、女は城へ、子供は放置する。
新政府は十二才から成人として扱うため、男は十二才にならない子供が十二才と言って兵士になり、女は十二才を越えていても十一才と言って連れて行かれないようにする。
「そうか、爺さんが新政府軍にいてよかった」
爺さんは、あきらかに若い子供達を自分の隊に拾い上げているようだ。
「あんちゃんは、こんな所で何をしているのじゃ?」
「話せば長くなります」
俺は、目で兵士を見て人払いをしてほしいと伝えた。
「うむ、そうじゃのう。立ち話もなんじゃ、茶でも出そう。こっちじゃ」
一軒の立派なビルの応接室に案内された。
爺さんは椅子に座り、全員の前にお茶が出そろうと、人払いをして俺達だけにしてくれた。
「俺は、逃げる途中大けがをおって川に落ちたんだ。そのおかげか、見つかる事無く生き延びた。そして、たまたま居合わせた、この女性久美子さんに助けられたんだ。それから、久美子さんの使用人になっている」
「ほお、そうだったのか」
爺さんはさっきから上の空だ。俺の話はどうでもいいようだ。
視線が、ミサの胸しか見ていない。完全に固定されている。
ミサはそれが分っているのか、何この爺!! という表情をしている。
「この人は、ミサさんだ」
「おおっ!! 美しいのう。金はある。どうじゃ?」
だめだーー!!
この爺、エロ爺だったーー。
爺さん胸じゃ無くて、顔、顔を見るんだー。
こえー顔をしているぞー鬼の顔だ。
「申し訳ありませーーん。今晩のお相手はすでに決まっていまーーす。ねえシュウさん」
ミサの目が冷たい。
嫌悪の目だ。ミサがこわーい。
あっ、ミサがこっちを見た。しまった!! こいつ心の声を聞く事が出来るんだった。俺にも怒っているようだ。とんだとばっちりだよー。
「な、なにっ! シュウというのが相手か! うらやましいのう」
シュ、シュウって俺じゃねえか。やめろよなーそういう冗談。
爺さんの視線が久美子さんに移った。
顔がやらしい。
こ、この爺、恥も外聞もないなー。
いっそ、清々しい。うらやましいぜ。
「この方は、島津久美子さんだ!」
「なに! 島津だと!!」
爺さんの顔が一瞬で険しくなった。
「はい」
久美子さんが、返事をした。
「まさか、雄藩連合軍の薩摩島津家の家中の者か?」
「そうだ。家中どころか島津家久様の娘さんだ」
「なんと!!」
「爺さんどうする」
「どうもせんさ。あんちゃんの命の恩人なら、わしの恩人と同じだ。ありがとう」
爺さんはここがチャンスと、久美子さんの右手を両手で握った。
そして、鼻の下をのばして赤い顔をしている。
久美子さんの顔がみるみる嫌悪の表情に変わる。
やめろよなー、じゃじゃ馬を怒らすのはよう。
「お爺さま……」
久美子さんが爺さんの手のひらを左手でつねった。
「いだだだだ! おおそうだ!! こんなことをしている場合じゃ無いぞ。大変じゃ!!」
爺さんが真面目な顔をして俺達を見た。
0
あなたにおすすめの小説
スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~
深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】
異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活
シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
荷物持ちの代名詞『カード収納スキル』を極めたら異世界最強の運び屋になりました
夢幻の翼
ファンタジー
使い勝手が悪くて虐げられている『カード収納スキル』をメインスキルとして与えられた転生系主人公の成り上がり物語になります。
スキルがレベルアップする度に出来る事が増えて周りを巻き込んで世の中の発展に貢献します。
ハーレムものではなく正ヒロインとのイチャラブシーンもあるかも。
驚きあり感動ありニヤニヤありの物語、是非一読ください。
※カクヨムで先行配信をしています。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
魔道具頼みの異世界でモブ転生したのだがチート魔法がハンパない!~できればスローライフを楽しみたいんだけど周りがほっといてくれません!~
トモモト ヨシユキ
ファンタジー
10才の誕生日に女神に与えられた本。
それは、最強の魔道具だった。
魔道具頼みの異世界で『魔法』を武器に成り上がっていく!
すべては、憧れのスローライフのために!
エブリスタにも掲載しています。
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる