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九州漫遊編
第三百三十一話 講談豊前の戦い
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日向の伊藤義祐様は延岡の北部の田園地帯で、新政府軍を待ち受けようと準備をしているようです。
田園地帯を一望出来る高台の学校を拠点にして会議を始めました。
「義祐様、私で最後ですか」
体の大きな、男が室内を見回して言いました。
「うむ、宗幸良く来てくれた。皆に集ってもらったのは情報の共有だ。そして今後の身の振り方を決定したい」
伊藤様が、立ち上がり扉に向って手招きをしました。
「ほ、報告します」
入って来た男は、少し緊張しているようです。
ここには、伊藤家の重臣が勢揃いしているので無理もありません。
私は、全員を知っているわけではありませんが、ここが伊藤家の最高会議の場である事は雰囲気で分ります。
「まあ、そんなに緊張するな。見たままを報告してくれ」
「はっ! 私は豊前の前線を見てきました。
敵は新政府軍五番隊五千です。
対する雄藩連合軍は八千で数的には有利でありましたが、合戦が始まると肝属家千五百が即時に撤退、ほぼ敵前逃亡気味な撤退でした。
雄藩連合は一気に総崩れとなりましたが、島津歳久様率いる島津軍は奮戦していました。
ですが、同調して戦う部隊は無く、瞬く間に新政府軍に包囲されて殲滅されました。
歳久様の生死すら不明です。
新政府軍は、ほとんど無傷のまま緒戦において勝利を収めました」
豊前の前線を見てきた配下の間者は、一礼するとそそくさと出て行きました。
「なっ、なんと無傷だと!! ふがいない」
宗幸様は猛将なのでしょう。怒りをあらわにしました。
「まあ、仕方が無いだろう。どの勢力も他人事だ」
「し、しかし、状況を見ると、必死で戦う島津軍を雄藩連合が見捨てて逃げたようにも見える。いや、島津はそう思い込むだろう。俺なら、怒る! 激怒する! ひょっとすると恨みに思い、雄藩連合を脱退するかもしれねーぞ。せめて歳久殿が無事なら良いが……」
「うむ、よし次の者」
「はっ! も、申し上げます。
わ、わた、私は、筑前方面の様子を見てまいりました。
新政府軍は、六番隊、七番隊が二部隊で二方面に別れ各五千人の部隊で攻めてきました。
海側と、山側に別れて進軍しました。
六番隊は山側を進み、七番隊は海沿いを進軍。
七番隊に対した雄藩連合軍は、まともにたたかう事も無く撤退。
六番隊には、筑前に領地を持つ安東常久様率いる二千の部隊が先陣に立ち奮戦しました。
ですが、雄藩連合は、次々撤退を開始し戦場には安東常久殿の部隊だけが取り残される形となりました」
「ふむ、さすがは常久殿だ。だが雄藩連合とは名ばかりで、頼みにならんなあ」
宗幸様が独り言のように言います。
「ご存じの通り、この前線が破られれば安東常久様の領地です。
七番隊は雄藩連合軍を追撃しながら、安東様の領地へ侵入。
侵入すると追撃をやめ、安東様の領地の守備部隊と戦闘を始めます。
雄藩連合軍はそれを幸いと全軍立花山城の砦へ撤退してしまいました」
「な、何だと。守備隊に協力しなかったのか!! 何と言う事だ」
これには、この場にいる人全員が驚きの声を上げた。
「安東様は居城からの知らせで、全軍を新政府軍七番隊と戦うべく筑前へ撤退を開始します。ですがそれは七番隊と六番隊に挟み撃ちに遭うと言う事です」
「ふーーむ!!」
ため息と共に、会議室の空気が一気に重くなりました。
「安東様の部隊は、それでも敵中を突破して居城にたどり着きました。
ですが、目の前にあったのは燃える居城です。
家族は全員新政府軍に捕まり生死すらわかりません。
安東常久様の生死も不明です」
筑前を見てきた配下も一礼をすると、部屋を出て行った。
「……」
安東常久様の最期を聞いて、全員無言になりました。
まあ、私は常久様が大殿のもとにいる事を知っていますけどね。
「次!!」
「はっ、も、申し上げます。私は、豊前の五番隊に対する、雄藩連合軍の後詰めを見てまいりました」
「うむ、続けよ」
「はっ! 後詰めは、島津家、肝属家、伊藤家、大友家からなる雄藩連合軍ですが、新政府軍五番隊が無傷で前線が崩壊したのを聞くと、早々に撤退を決定し撤退を始めました。
ですが、島津家久様率いる島津軍は撤退をしませんでした」
「ふむ、生死不明の歳久殿の帰還を信じていたのであろう」
宗幸様が少し晴れやかな顔になっています。
美しい兄弟愛に感動しているのでしょうか。
「島津家久様のもとには、前線で逃げ遅れた者達が集まり最期の砦となっておりました。
そこに新政府軍五番隊がやって来ます。
千数百人の島津家久軍と新政府軍五千はにらみ合いとなりました」
「ふむ」
宗幸様がゴクリと唾を飲みました。
「うわあーーー!!!」
配下の間者は突然大声を出しました。
「うおっ!!!!」
集中して聞いていた重臣達が驚きの声を上げると、全員ガタガタ音を立てて椅子から飛び上がりました。
「喚声が上がると、新政府軍の一角が騒然となります。
島津歳久様の部隊が突撃してきたのです。
三百ほどの少数でしたが、新政府軍を突き破り家久様の陣に合流を果たします」
「おお、さすがは歳久様じゃ!! やるのう!!」
配下の間者は一同を見回します。
何だかこの人が、講談師のように見えてきました。
田園地帯を一望出来る高台の学校を拠点にして会議を始めました。
「義祐様、私で最後ですか」
体の大きな、男が室内を見回して言いました。
「うむ、宗幸良く来てくれた。皆に集ってもらったのは情報の共有だ。そして今後の身の振り方を決定したい」
伊藤様が、立ち上がり扉に向って手招きをしました。
「ほ、報告します」
入って来た男は、少し緊張しているようです。
ここには、伊藤家の重臣が勢揃いしているので無理もありません。
私は、全員を知っているわけではありませんが、ここが伊藤家の最高会議の場である事は雰囲気で分ります。
「まあ、そんなに緊張するな。見たままを報告してくれ」
「はっ! 私は豊前の前線を見てきました。
敵は新政府軍五番隊五千です。
対する雄藩連合軍は八千で数的には有利でありましたが、合戦が始まると肝属家千五百が即時に撤退、ほぼ敵前逃亡気味な撤退でした。
雄藩連合は一気に総崩れとなりましたが、島津歳久様率いる島津軍は奮戦していました。
ですが、同調して戦う部隊は無く、瞬く間に新政府軍に包囲されて殲滅されました。
歳久様の生死すら不明です。
新政府軍は、ほとんど無傷のまま緒戦において勝利を収めました」
豊前の前線を見てきた配下の間者は、一礼するとそそくさと出て行きました。
「なっ、なんと無傷だと!! ふがいない」
宗幸様は猛将なのでしょう。怒りをあらわにしました。
「まあ、仕方が無いだろう。どの勢力も他人事だ」
「し、しかし、状況を見ると、必死で戦う島津軍を雄藩連合が見捨てて逃げたようにも見える。いや、島津はそう思い込むだろう。俺なら、怒る! 激怒する! ひょっとすると恨みに思い、雄藩連合を脱退するかもしれねーぞ。せめて歳久殿が無事なら良いが……」
「うむ、よし次の者」
「はっ! も、申し上げます。
わ、わた、私は、筑前方面の様子を見てまいりました。
新政府軍は、六番隊、七番隊が二部隊で二方面に別れ各五千人の部隊で攻めてきました。
海側と、山側に別れて進軍しました。
六番隊は山側を進み、七番隊は海沿いを進軍。
七番隊に対した雄藩連合軍は、まともにたたかう事も無く撤退。
六番隊には、筑前に領地を持つ安東常久様率いる二千の部隊が先陣に立ち奮戦しました。
ですが、雄藩連合は、次々撤退を開始し戦場には安東常久殿の部隊だけが取り残される形となりました」
「ふむ、さすがは常久殿だ。だが雄藩連合とは名ばかりで、頼みにならんなあ」
宗幸様が独り言のように言います。
「ご存じの通り、この前線が破られれば安東常久様の領地です。
七番隊は雄藩連合軍を追撃しながら、安東様の領地へ侵入。
侵入すると追撃をやめ、安東様の領地の守備部隊と戦闘を始めます。
雄藩連合軍はそれを幸いと全軍立花山城の砦へ撤退してしまいました」
「な、何だと。守備隊に協力しなかったのか!! 何と言う事だ」
これには、この場にいる人全員が驚きの声を上げた。
「安東様は居城からの知らせで、全軍を新政府軍七番隊と戦うべく筑前へ撤退を開始します。ですがそれは七番隊と六番隊に挟み撃ちに遭うと言う事です」
「ふーーむ!!」
ため息と共に、会議室の空気が一気に重くなりました。
「安東様の部隊は、それでも敵中を突破して居城にたどり着きました。
ですが、目の前にあったのは燃える居城です。
家族は全員新政府軍に捕まり生死すらわかりません。
安東常久様の生死も不明です」
筑前を見てきた配下も一礼をすると、部屋を出て行った。
「……」
安東常久様の最期を聞いて、全員無言になりました。
まあ、私は常久様が大殿のもとにいる事を知っていますけどね。
「次!!」
「はっ、も、申し上げます。私は、豊前の五番隊に対する、雄藩連合軍の後詰めを見てまいりました」
「うむ、続けよ」
「はっ! 後詰めは、島津家、肝属家、伊藤家、大友家からなる雄藩連合軍ですが、新政府軍五番隊が無傷で前線が崩壊したのを聞くと、早々に撤退を決定し撤退を始めました。
ですが、島津家久様率いる島津軍は撤退をしませんでした」
「ふむ、生死不明の歳久殿の帰還を信じていたのであろう」
宗幸様が少し晴れやかな顔になっています。
美しい兄弟愛に感動しているのでしょうか。
「島津家久様のもとには、前線で逃げ遅れた者達が集まり最期の砦となっておりました。
そこに新政府軍五番隊がやって来ます。
千数百人の島津家久軍と新政府軍五千はにらみ合いとなりました」
「ふむ」
宗幸様がゴクリと唾を飲みました。
「うわあーーー!!!」
配下の間者は突然大声を出しました。
「うおっ!!!!」
集中して聞いていた重臣達が驚きの声を上げると、全員ガタガタ音を立てて椅子から飛び上がりました。
「喚声が上がると、新政府軍の一角が騒然となります。
島津歳久様の部隊が突撃してきたのです。
三百ほどの少数でしたが、新政府軍を突き破り家久様の陣に合流を果たします」
「おお、さすがは歳久様じゃ!! やるのう!!」
配下の間者は一同を見回します。
何だかこの人が、講談師のように見えてきました。
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