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九州激闘編
第三百四十六話 激突
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「報告します!」
相良家の間者は普通の服を着ています。
まあ、その方が目立たないですよね。
国道を進軍する相楽軍の当主晴広へ伝令が到着したようです。
「ふむ、なんだ?」
「島津軍五百五十四名、鹿児島を出発本日中には、川内に到着する模様」
「ほう、五百五十四名とな。あの女忍者の言った通りの数字か」
「はっ」
私が嘘なんか言うもんですかー。
相良軍は、出水まで軍を進めるようです。
あわよくば、この戦いに勝利し出水を支配する事を考えているのかもしれません。
私には三千人で出陣すると言いながら四千人で来ています。
山の中の道を抜けると、出水の街の手前の関所が見えてきました。
「おお、関所だ!! 最初の戦いか?」
相楽家当主、相良晴広が言いました。
「相良軍だーー!! 逃げろーー!!」
番兵達は、相良軍の姿を見つけると一目散で逃げて行きます。
当然、無駄死にしないように指示を受けていますよね。
一目散に逃げるように見せて、ちゃんと相楽軍の様子はしっかり確認して逃げて行きました。したたかですね。
「よし! ここに退路を確保するため千人置いて行く。残り三千は俺に続けー!!」
島津の別働隊が、攻め込めないように守りを固めるようです。
陽が傾く頃には出水に到着し、間者を放ち、軍は食事の準備を始めました。
決戦の場所は、出水の街の東部、田園地帯に決めたようです。
島津隊もきっとそれに応じるでしょう。
翌日、相良軍が、物見櫓や本陣の設営をしていると、とうとう島津軍が到着しました。
島津は十分距離を取ると、陽が高いうちにと食事をはじめました。
私は、見てきた事を義弘様に報告しました。
「桃井さんも一緒にどうですか?」
「いえ、報告が終わりましたので、また相楽晴広様にへばりついて参ります」
「同行していると思ったのですが、戦場にいち早く来ておられたのですね。働き者です」
「ふふ、それが忍者というものです。では……」
夜が明けると両軍に食事の煙が上がり、一時間程の後に両軍が動き始めました。
島津軍は部隊を三つに分けると、右翼に真田信繁隊、左翼に安東常久隊、中央に島津義弘隊が陣取りました。
「ふむ、奴らは本当に五百五十四人だけで来たようだな」
「はっ、報告によりますと全軍で武器を所持していないと……」
「なにーー、義弘の野郎なめているのか!!」
相楽晴広は、物見櫓に駆け上がりました。
「うおおおおおおおおおーーーーーーーー!!!!! な、なんだ!! あの甲冑は、全員装備しているではないか。赤いロボまでいる!!」
「どうせ、張りぼてです。役には、たたんでしょう」
「おお、長任か」
「奴らの旗に、六文銭が書かれておりまする。六文銭と言えば、真田家の家紋。奴らは真田隊という事になります」
「うむ、わしらが相楽を名のるのと同じとするならば、奴は信州のはず」
「となると……考えられる事はただ一つ」
「うむ、島津のやつ、木田家の軍門にくだったか。九州人の面汚しめ」
「真田は我にお任せください。ひねり潰してやります」
「うむ、長任任せたぞ。相楽軍の恐ろしさを見せつけてやれ」
「はっ!!」
出水の草原に相楽軍は、千ずつ部隊を三隊に分け、真田隊の前に赤池長任隊を安東隊の前には深水長智隊を前進させました。
「我が、真田十勇士よ!! 攻撃は子猫を撫でるように優しくな!! 強くしすぎるなよ殺してしまうからな」
「おおーーっ!!」
「なっ、なにーー!! ふざけるなーー!! てめーらごとき……なっなにー!! 真田十勇士だと、本物かー?」
何なんでしょうか?
赤池が赤い顔をして鼻息が荒くなりました。
「ふふ、本物ですよ!! 強いからお覚悟ください!!」
真田様が丁寧に答えました。
ほ、本物は本物でしょうが、恐らくそういう意味では無いと思います。
「安東常久殿ですか? 生きておられたのですね」
深水が話しかけました。
「ふふふ、多くを失いましたがな。深水殿がお相手とはうれしい限りですな」
「お互い、全力を尽くしましょう」
深水は、そう言いましたが、その表情には勝ちを確信した笑みがあります。
恐らく安東隊の少なさに余裕を持っているのでしょう。
「お手柔らかに頼みます」
安東様は、弱者のように頭を下げました。
「みなのものーー!! 準備はよいかーー!!!!」
出水の草原に相楽の大音声が響きました。
その声が鳴り止むと、戦場は静まり返りました。
戦場は草が風で擦れる音と、旗がはためく音だけになりました。
相楽はほんの数秒間を取りました。
そして、大きく息を吸います。
「ぜんぐーーん!! かかれーーい!!!!!!」
「おおおおおおおおおーーーーーーーーつっっ!!!!!!」
相楽軍から喊声が上がりました。
全員腹の底からの気合いの入った喊声です。
喊声と共に相楽軍は、陣形を保ったまま走り出します。
「安東たーーい!! 真田たーーい!! すすめーー!!!!」
相楽隊が動くのを見ると、義弘様が号令をかけました。
「うおおおおーーーーーーーー!!!!」
安東隊と真田隊が喊声を上げます。
さすがに数が少ないので、相良軍の声には負けています。
島津軍は安東隊と真田隊だけを前に進めるようです。
そして両軍は激突しました。
相良家の間者は普通の服を着ています。
まあ、その方が目立たないですよね。
国道を進軍する相楽軍の当主晴広へ伝令が到着したようです。
「ふむ、なんだ?」
「島津軍五百五十四名、鹿児島を出発本日中には、川内に到着する模様」
「ほう、五百五十四名とな。あの女忍者の言った通りの数字か」
「はっ」
私が嘘なんか言うもんですかー。
相良軍は、出水まで軍を進めるようです。
あわよくば、この戦いに勝利し出水を支配する事を考えているのかもしれません。
私には三千人で出陣すると言いながら四千人で来ています。
山の中の道を抜けると、出水の街の手前の関所が見えてきました。
「おお、関所だ!! 最初の戦いか?」
相楽家当主、相良晴広が言いました。
「相良軍だーー!! 逃げろーー!!」
番兵達は、相良軍の姿を見つけると一目散で逃げて行きます。
当然、無駄死にしないように指示を受けていますよね。
一目散に逃げるように見せて、ちゃんと相楽軍の様子はしっかり確認して逃げて行きました。したたかですね。
「よし! ここに退路を確保するため千人置いて行く。残り三千は俺に続けー!!」
島津の別働隊が、攻め込めないように守りを固めるようです。
陽が傾く頃には出水に到着し、間者を放ち、軍は食事の準備を始めました。
決戦の場所は、出水の街の東部、田園地帯に決めたようです。
島津隊もきっとそれに応じるでしょう。
翌日、相良軍が、物見櫓や本陣の設営をしていると、とうとう島津軍が到着しました。
島津は十分距離を取ると、陽が高いうちにと食事をはじめました。
私は、見てきた事を義弘様に報告しました。
「桃井さんも一緒にどうですか?」
「いえ、報告が終わりましたので、また相楽晴広様にへばりついて参ります」
「同行していると思ったのですが、戦場にいち早く来ておられたのですね。働き者です」
「ふふ、それが忍者というものです。では……」
夜が明けると両軍に食事の煙が上がり、一時間程の後に両軍が動き始めました。
島津軍は部隊を三つに分けると、右翼に真田信繁隊、左翼に安東常久隊、中央に島津義弘隊が陣取りました。
「ふむ、奴らは本当に五百五十四人だけで来たようだな」
「はっ、報告によりますと全軍で武器を所持していないと……」
「なにーー、義弘の野郎なめているのか!!」
相楽晴広は、物見櫓に駆け上がりました。
「うおおおおおおおおおーーーーーーーー!!!!! な、なんだ!! あの甲冑は、全員装備しているではないか。赤いロボまでいる!!」
「どうせ、張りぼてです。役には、たたんでしょう」
「おお、長任か」
「奴らの旗に、六文銭が書かれておりまする。六文銭と言えば、真田家の家紋。奴らは真田隊という事になります」
「うむ、わしらが相楽を名のるのと同じとするならば、奴は信州のはず」
「となると……考えられる事はただ一つ」
「うむ、島津のやつ、木田家の軍門にくだったか。九州人の面汚しめ」
「真田は我にお任せください。ひねり潰してやります」
「うむ、長任任せたぞ。相楽軍の恐ろしさを見せつけてやれ」
「はっ!!」
出水の草原に相楽軍は、千ずつ部隊を三隊に分け、真田隊の前に赤池長任隊を安東隊の前には深水長智隊を前進させました。
「我が、真田十勇士よ!! 攻撃は子猫を撫でるように優しくな!! 強くしすぎるなよ殺してしまうからな」
「おおーーっ!!」
「なっ、なにーー!! ふざけるなーー!! てめーらごとき……なっなにー!! 真田十勇士だと、本物かー?」
何なんでしょうか?
赤池が赤い顔をして鼻息が荒くなりました。
「ふふ、本物ですよ!! 強いからお覚悟ください!!」
真田様が丁寧に答えました。
ほ、本物は本物でしょうが、恐らくそういう意味では無いと思います。
「安東常久殿ですか? 生きておられたのですね」
深水が話しかけました。
「ふふふ、多くを失いましたがな。深水殿がお相手とはうれしい限りですな」
「お互い、全力を尽くしましょう」
深水は、そう言いましたが、その表情には勝ちを確信した笑みがあります。
恐らく安東隊の少なさに余裕を持っているのでしょう。
「お手柔らかに頼みます」
安東様は、弱者のように頭を下げました。
「みなのものーー!! 準備はよいかーー!!!!」
出水の草原に相楽の大音声が響きました。
その声が鳴り止むと、戦場は静まり返りました。
戦場は草が風で擦れる音と、旗がはためく音だけになりました。
相楽はほんの数秒間を取りました。
そして、大きく息を吸います。
「ぜんぐーーん!! かかれーーい!!!!!!」
「おおおおおおおおおーーーーーーーーつっっ!!!!!!」
相楽軍から喊声が上がりました。
全員腹の底からの気合いの入った喊声です。
喊声と共に相楽軍は、陣形を保ったまま走り出します。
「安東たーーい!! 真田たーーい!! すすめーー!!!!」
相楽隊が動くのを見ると、義弘様が号令をかけました。
「うおおおおーーーーーーーー!!!!」
安東隊と真田隊が喊声を上げます。
さすがに数が少ないので、相良軍の声には負けています。
島津軍は安東隊と真田隊だけを前に進めるようです。
そして両軍は激突しました。
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