底辺おじさん、助けた異世界転生美少女の異世界魔法と異世界アイテムそして特殊能力ゴミ処理で世界を救う

覧都

文字の大きさ
383 / 428
夏休み編

第三百八十三話 出発

しおりを挟む
「めしだーー!!!!」

 ……って、おい!
「朝ご飯出来たわよーー!!」って、起こすのはお母さんのセリフだろ!
 自分で言って起きる奴を、俺ははじめてみるぜ!
 あずさがロビーで目覚めた。
 昨晩は宿舎のロビーで、あずさとヒマリは体を寄せ合い一緒に眠った。仲がいい。本当の姉妹のようだ。
 賊の親玉は、部屋に押し込んで拘束はとってやった。くつろいでいるはずだ。

「クザン、賊の親玉も朝食だ。拘束して連れてきてくれ」

「……」

 クザンは言葉をしゃべる事が出来ないので、無言でうなずいて親玉の部屋に向った。

「おはようございます!!」

 騒がしかったのか、もう一人の美少女ヒマリが目を覚ましてしまった。
 この子も美しい、聖女様のようだ。
 あずさが凜とした少し鋭さのようなものがある美しさなら、この子は柔らかい優しい感じのする美しさだ。
 そういうのが好きな人なら、ヒマリが世界一だと思うことだろう。

「おはよう。今朝食を用意しますからね」

 いかん、ヒマリの美しさにつられて、お母さんのような口調になってしまった。
 クザンに連れられて、親玉がロビーにやって来た。

「あずさ、そいつにゆで卵を食べさせてやってくれ」

 後ろ手に拘束された賊の親玉は、自分で食事が出来ないのであずさに頼んだ。
 賊の親玉は、ふてくされた顔をしているが、殻をむいたゆで卵を持って来た、あずさの顔を見ると少し頬が赤くなった。
 ふふふっ、可愛いだろう。
 世界一の美女が子供になったのがあずさだ。美しさの中に幼い可愛さがある。こんなもん最高としか表現のしようが無い。

「どうぞ、あーーんして下さい」

 くうぅぅーーっ!! あずさの「あーーん」だ!!

「……!?」

 賊の親玉が何も言わずに口を開けた。
 ふふ、素直じゃねえか。
 頬が真っ赤になっている。

 ――あっ!!

 あずさの奴、賊の親玉の口に入れる前に手に待ったゆで卵を離してしまった。
 ゆで卵はコロコロと床を転がった。
 あーそうだった。
 あずさは、人の口に何かを入れてやるのが致命的に下手だ。
 それは、トラウマがあって出来ないのだ。

 あずさが幼い時に、あめ玉やお菓子を「あーーん」と言って運んで来たとき、俺は必ずあずさの指ごと口の中に入れて、あずさの指をねぶってしまったのだ。
 骸骨だったあずさが可愛すぎて、少しいたずらをしたのだ。
 その時以来、口の前まで運んで口に入る前に、ビクンと体を揺らして手を離してしまうのだ。

 ――どんだけ、嫌なんだよーー!! なけるぜ!!

 あずさは、テーブルの上の箸をとると、落ちたゆで卵を箸で拾ってそのまま口を開いている賊の親玉の口の中に入れた。

「ぶーーっ!!!! 何しやあがる!! 床に落ちたもんをそのまま口に入れるんじゃねえ! 汚えじゃねえかーー!!!!」

 賊の親玉は口のゆで卵を、ポーーンと上手に飛ばした。
 飛ばした、よだれだらけのゆで卵があずさにあたった。
 あずさの顔に怒りの表情が出た。

「ハッポーー!!」

 あずさは、瞬間的に水平にチョップを出した。
 まるで、往年のジャイアント馬場のような華麗な水平チョップだ。

「ガッ! ゴッ! ゴハッゴハッ!! グエェェ!! ゲッ! ゲッ!」

 それが丁度、賊の親玉の喉に綺麗に決まった。
 賊の親玉は、咳き込んで苦しんでいる。
 あずさのチョップだ手加減はしているのだろうが、さぞかし苦しいだろう。

「まったく、もったいないことはいけません!」

 そう言うと、あずさは落ちたゆで卵を箸で拾って、当たり前のように口に入れようとした。
 あずさーー!! それはだめだーー!! そのゆで卵は賊の親玉のよだれでベチョベチョだーー!!!! 今のお前は骸骨じゃ無いんだからーーーー!!
 俺は両手を前に出してあせっていた。
 美少女が食べていいものではない!
 あずさの口の前でゆで卵が消えた。
 どうやら蜂蜜さんが、消してくれたようだ。

「あらっ????」

「あらっ、じゃ無いんだよ! お前はそろそろ、淑女としての作法を身につけろーー!!」

「うふふ、じゃあ、次からはとうさんのだけにします」

 そうそう、それでいいんだ。
 なんだか、あずさがとてもうれしそうに言った。

「……じゃっ、ねーんだよっ!! 俺のでもダメだー!! 人が吐き出した物は食うなーー!!」

 今日の朝食は、いつもの目玉焼きとキャベツの千切り、それではさみしいのでマグロの刺身を焼いてステーキにした物を付けた。

「……がっ…………ごっ……ごっ……ぇ」

 賊の親玉が何かを言いたいようだが、声がまともに出なくなったようだ。
 口の動きを見ると「俺にも食わせろ」と言っているようだ。

「しかたがない。クザン、賊の親玉の拘束をとってやってくれ」

 クザンが賊の親玉の拘束を外すと、親玉は走りだした。

「……がっ……ぇ……」

 口の動きを見ると「かかったな、娘を人質にしてやる」といっているようだ。
 優しそうなヒマリをターゲットにしたようだ。

「ゲェェェェーー……がっ……ぐっ…………」

 往年の佐山サトル、初代タイガーのローリングソバットをおもわせるヒマリのソバットが賊の親玉の喉に決まった。
 親玉は吹飛ばされてゴロゴロ転がった。

「……、……、……!」

 壁にぶつかって止まった親玉が、起き上がってこちらを見て口を動かしている。
 賊の親玉の口は「あれ、声が、出ないぞ!」と言っているようだ。
 どうやら、完全に声が出なくなったようだ。

「おいおい、可愛いからってこの二人をなめたらいかんぞ。なにしろ、昨晩のお前達のアジトで暴れていた奴らより強いからなあ。手加減してもらっていなければ、お前は今朝すでに二度死んでいるぞ」

「…………」

 どうやら、賊の親玉は「げーーっ」と言っているようだ。

「大人しく食事をしろ!! いいな!! ちなみに、十田家中でお前より弱い奴はいない。気を付けることだな」

 賊の親玉も大人しくテーブルに座ると静かに食事を始めた。
 そして、食事が終わった俺達はいよいよ札幌に向う。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

荷物持ちの代名詞『カード収納スキル』を極めたら異世界最強の運び屋になりました

夢幻の翼
ファンタジー
使い勝手が悪くて虐げられている『カード収納スキル』をメインスキルとして与えられた転生系主人公の成り上がり物語になります。 スキルがレベルアップする度に出来る事が増えて周りを巻き込んで世の中の発展に貢献します。 ハーレムものではなく正ヒロインとのイチャラブシーンもあるかも。 驚きあり感動ありニヤニヤありの物語、是非一読ください。 ※カクヨムで先行配信をしています。

魔道具頼みの異世界でモブ転生したのだがチート魔法がハンパない!~できればスローライフを楽しみたいんだけど周りがほっといてくれません!~

トモモト ヨシユキ
ファンタジー
10才の誕生日に女神に与えられた本。 それは、最強の魔道具だった。 魔道具頼みの異世界で『魔法』を武器に成り上がっていく! すべては、憧れのスローライフのために! エブリスタにも掲載しています。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

処理中です...