底辺おじさん、助けた異世界転生美少女の異世界魔法と異世界アイテムそして特殊能力ゴミ処理で世界を救う

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最終章 明と暗

第四百二十二話 最高のお粥

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「ふふふ。赤穂さん、気にしないでください」

 俺は、伊達と豊久を放置して赤穂さんに声をかけた。

「ひゃっ、はい! おっ、恐れ入ります」

 赤穂さんは、ほっとした顔をしている。

「では、ここは赤穂さんと古賀忍軍にお任せして、俺は札幌駅へ行きます」

「なっ!? あんたは食っていかないのか?」

 俺の横にいる元首相が驚いて声を出した。

「あーーっ、そう言えば少し小腹が空いたなあ、俺も少し何か腹に入れておくか」

 俺はマジシャンのように手を動かして一つの碗と箸を出した。
 もちろん収納魔法で収納してあったものを出しただけだ。説明が面倒なのでマジックのふりをしている。たいていこれで納得してくれる。
 あずさのうな重も、あずさが自分の収納魔法で収納しているものだ。

 この碗には、空腹の子供達の胃に優しい粥が入っている作り置きの碗だ。
 俺はこの碗を一口すすって、窓の外を見つめた。
 ほんのり明るくなっている中庭で大勢の人がうな重を食べている。
 その顔には良い笑顔がある。笑い声がここまで聞こえてくる。
 相変わらず、ノーパンしゃぶしゃぶの前の元政治家の先生方の表情は暗い。

「ふふふ、国民がご馳走を食べているときに食べる粥は最高だなあ。うまい!! 政治家が国民より贅沢なのはやはり間違っているよなあ。国民が贅沢をしている時にやっと粥を食べるくらいで丁度良いのじゃ無いかなあ。国民が一生懸命働いたおかげで、政治家が飯を食えるのだからなあ。俺には国民より贅沢をするなどとても出来ないなぁ。どう考えても、まずは国民の贅沢が先だ。あんたはそう思わねえか」

「ぐっ……」

 元首相は何も言い返さなかった。

「さあ、もと先生方、遠慮はいりませんノーパンしゃぶしゃぶを食べてください。国民が楽しそうなので、今日の飯はとびっきり美味いですよ。あーーっ、政治家の先生方は国民がつらくて苦労している方が、より飯が美味いのでしたねえ。間違えました」

「…………」

 元首相が何を考えているのかわからないが、黙って外を見つめている。

「さて、俺はそろそろ行くかなぁ。赤穂さん、後は頼みます」

「ま、まてっ!! 札幌駅で何をするんだ?」

 元首相が、さらに引き留めて質問をぶつけてきた。

「ふふふ、駅に行ってする事など決まっているじゃ無いですか。列車を走らせるんですよ。青函トンネルが無事使えるか調べないといけません。恐らく手入れをされていませんから水没しているでしょう。ここを使える様にも、しないといけません。時間がいくらあっても足りませんねぇ」

「なっ!?」

「米の収穫が終わったら、新潟で秋祭りです。北海道の人が列車で大勢来られるように整備するのを急がないといけません。皆つらい暮しをしてきたのだから、祭りはにぎやかで盛大でないといけませんからねぇ」

「まっ、祭りだと……」

「ふふふ、俺は幼い頃も貧乏だった。お金が無いから、祭りは遠くで見つめるだけだった。夜空を照らす光と人々の楽しそうな声をうらやましそうに見ているだけだったなぁ。だが、木田家の祭りは違うぞー、何もかも無料だ。金は必要ねえ。食べたい物を食べて、飲みたい物を飲んで、アイドルコンサートを見て、ヒーローショーも楽しめる。政治家なら国民を楽しませないとなあ。自分たちだけノーパンしゃぶしゃぶでヒャハーーッでは、いかんだろう」

「お、大殿!! 豊久感動いたしましたーー!! 一生忠誠を誓います」
「この伊達も、心服いたしました」

「ははは!! 豊久も伊達も、はやくうな重を食ってやってくれ、あずさが喜ぶ。じゃあ、本当に俺は行くからな」

 ふうっ! やれやれ!
 これで伊達と豊久の悪だくみを聞くことも無くごまかせた。
 俺は、窓から飛び出すと札幌駅に急いだ。

 少し走ると、人々の笑い声も聞こえなくなり、街が暗く静かになった。
 ただ、空には星も月も出ているので、走るのには不自由しなかった。
 だが札幌駅は、建物の中にあるので真っ暗だった。
 俺は、ただ一人でこういう広い場所にいるのが最近は特にお気に入りだ。
 静かで集中出来るし、独り占めしている様でワクワクする。

 数日間、俺は鉄道に集中した。

「大殿! よろしいですか?」

 何も無い暗闇から声がした。

「ああ、赤穂さんですか?」

「はい」

 赤穂さんは返事と共に姿を出してくれた。
 ついでに明かりを出してあたりを照らしてくれた。

「どうしました?」

「はい、ゲン様立ち会いのもと、北海道国の代表昇宮大臣と共和国軍の代表榎本様の間での協議が終わりました」

「ほう、そうですか? ちゃんと国民の為の協議が出来たのでしょうか」

「はい、それはもう。おそらく最高の選択をしたと言えると思います」

「そうですか…………ならよかった。北海道の人がよりよい暮しが出来るのならそれでいい」

「はい、うふふっ」

 赤穂さんが嬉しそうに笑っている。
 少し頬が赤くて、体が少しもじもじしている。
 なんだか、可愛いと思えるなあ。いい子だ。

「退屈でしょう? 報告が終わったら戻ってください」

「あの、私の報告は終わりましたが、他の方の報告が残っています」

「えっ??」

「おおぉとのぉぉぉぉぉーーーーーーーーーー!!!!!!」

 数人の男が近づいてきた。

「んっ!? あれは……昇宮大臣かな?」

 昇宮大臣の後ろには総さんと恐らく榎本さんと土方さんだろう。

「はっ!!!! 我ら北海道民は全て大殿の配下となりました。これよりよろしくお願いいたします」

 四人がひざまずき、臣下の礼をとった。

「ええっ!? いやいや、どうせ民主化するのだから、配下とかは関係ないですよ」

「ならば、民主化するまでの間でも、大殿配下として国民と共に精進していきたいと思います。これは道民の総意にございます」

 昇宮大臣がキラキラした目で見てくる。

「ふふふ、皆がうな重を食べている中で『この粥も国民の笑顔を見ながら食えば最高のご馳走だ!!』と言って粥をすすったという話には参りました」

 総さんが笑顔で言った。
 いやいや、そんなことを言った覚えはない。
 美化されとるぞーー!!

「道民の中には、もうこの話を知らない者がいないほど浸透いたしました」
「道民はみな感動して涙しました」

 榎本さんと土方さんが言った。
 胸にわかりやすいように大きな名札が付いている。
 北海道は、めでたく木田家の傘下になったようだ。やれやれだぜ。
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