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最終章 明と暗
第四百二十三話 心を込めた贈り物
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「さて、北海道の在来線の走行テストはもうすぐ終わります。俺はこれから、青函トンネルの中でモグラ生活をします。赤穂さん、子供達には三日後に列車で北海道から自宅へ帰ると伝えてください。残りの三日間、北海道を目一杯楽しむようにと、伝えてください」
「はい」
「ふふふ。赤穂さんも子供達と仕事を忘れて、一緒に楽しんじゃってください」
「はいっ!!」
赤穂さんの返事が少し元気になった。
赤穂さんの返事が終わると、青い車体の列車がホームに入って来た。
ゴーレムが運転する自動列車だ。
帯広でF-35が墜落していて、通行できない場所があり、治すのが大変だったのだが、あとはおおむね無事だった。
「すごい!!」
「すごーーい!!!!」
「すげーー!! 本当に電車だ」
ホームに入って来た列車を見て、皆が驚いている。
その中の誰かが電車と言った。
これは、電気で動いていないから、正確には電車じゃないんだよなあ。まあいいかー。
「じゃあ、皆さん、列車が来ました。俺はこれに乗って青函トンネルへ向います。危険なので一人でやります。三日後に、またお会いしましょうでは……」
俺はホームに入って来た列車に乗り込んだ。
見送る人達はそれぞれ手を振ってくれた。
だが、俺はまだ帰るわけじゃないからね。
青函トンネルは、案の定水没していた。
だが、水をぬいて、線路をメンテナンスしたら、無事使える事が分かり二日で作業は終わった。
ちなみに、青函トンネルを俺はなめていたが滅茶苦茶長い。
そのままだと、湿度がひどいので、送風用の装置と排水装置をゴーレムで新規に作ることになった。
驚いた事に青函トンネルの中に駅の名残のようなものが二カ所あった。
こんな所で、降りてどうするんだと心底おどろいた。
駅というのは、意外と驚くような所にあって何度も驚かされる。
――さて、一日余ってしまったなあ。
ということで、俺は札幌の美術館で北海道最後の一日を一人で楽しんだ。
翌日、のんびり鼻歌まじりで札幌の駅に行くと大勢の人がいる。
まるで、どこかのスターの出待ちのようだ。
「あのー、誰かすごい人でも来るのですか?」
近くの人に、聞いてみた。
「あんたやーーーーー!!!!!! おそーーい!!!!」
駅のホームにいたミサに素早く見つけられて怒られた。
遅いと言われても、時間とか決めてねーし、しらんがな。
駅には青い列車が止まっている。
ちゃんと、俺達を待っていてくれた。
列車の中には、来る時と同じメンバーが席に座って準備万端だ。
駅のホームには、大勢の人が見送りに来ていてくれる。
「あれ、イルナ!? お前は来ないのか?」
「うん、俺はあと半年ちょっとで中学生になる。そしたら、どうせ北海道にはいられないから、それまでの間はチビ達と一緒にこっちで過ごすよ」
「そうか、ならチビ達と全員で来たら良いじゃ無いか」
「ふふっ……、ありがとう……」
イルナは言いながら、笑顔で首を振っている。
子供達が心配そうな顔をしてイルナにしがみついている。
ふふふ、本当は俺がお前と別れたくないだけなんだよなーー!!
子供達は、必死で生きてきた札幌の街から出たくないんだろうなあ。
なんとなく分かる気がする。
「そうか。イルナが決めたことなら。それでいい」
「うん!!」
そう言うと、イルナが抱きついて来た。
なんだか、別れがつらい。
俺が、こんな気持ちになる日が来るとはなぁ。
「昇宮大臣!! イルナと子供達を頼む!!」
イルナ達の後ろで涙ぐんでいる昇宮大臣に子供達を頼んだ。
その横には娘さんと奥さんもいる。
三人で大きくうなずいてくれた。
その横でユキちゃんと、美人のお母さんも一緒になってうなずいてくれている。
「ユキちゃん、それとお母さんも、お元気で!」
「はい! 八兵衛さんもお元気で……」
お母さんがそう言うとユキちゃんがイルナの反対側で抱きついてくれた。
「おお、ばあさんもいるじゃないか!! 達者でな!!」
「……はじべえざーーん……ありがどぉーー……」
ばあさんが泣いてしまった。
そして、正面に抱きついて来た。
両サイドに子供二人。正面は、ばあさんだ。
まあ、八兵衛さんにはお似合いかぁー。
その光景を、楽しそうに総さんが笑いながら見ている。
「ふふふ、お邪魔しました。後はよろしくお願いします。榎本さん、土方さん、そして総さん」
総さんの横にいる。榎本さんと土方さんにも頭を下げた。
総さんは相変わらずニコニコしているだけだが、榎本さんと土方さんは慌てて頭を下げた。
そして、二人して総さんの頭を押さえつけた。
「は、はい!!」
榎本さんが代表をして返事をしてくれた。
「いやだなあ。硬くならないでください。俺は今、十田家の使用人の八兵衛なんですから。それとこの列車は、青森行きの交通機関として置いていきます。自由に乗ってください。むろん無料です。国有鉄道なので日本国民は無料です。税金から給料をもらう、政治家だけは有料ですけどね」
「もーーーー!!!! とーさんおそーーい!!!!」
待ちくたびれたのか、あずさが列車から出て来た
「あずさ姉ーちゃーーん!!」
あずさの姿を見ると、イルナの子供達が、あずさのまわりに集った。
「ふいぃーー!! がばんじでだのにーー!!!!」
あずさの目から大量の涙があふれ出した。
俺が驚いた顔をしていると、ヒマリが俺の横にちょこんと来た。
「昨日まで、一緒に一杯遊んだの、海水浴をしたりヒグマと戦ったり」
うんうん、微笑まし……
「ヒグマと戦ったーーーー!!!!!!」
「山でピクニックをしていたら、襲って来たから退治したのよ。おもに、あずさちゃんがひとりで……素手で……」
「にひっ」
あずさが笑顔をこっちに向けたが、その顔は涙でグチャグチャになり、鼻水まで出ている。
「ぎゃはははははーーーーーー!!!!!!」
その顔がおかしかったのか、子供達が笑っている。
「あのねえ、うふふ……とうさん! 海水浴でわかったのですけど……」
ヒマリがいたずらっぽく笑っているが、目には涙がたまっている。
きっとヒマリも別れがつらいのだろう、泣かないように我慢している。
「うん、なに??」
「イルナちゃんの方が、あずさちゃんより、胸が大きいのよ」
「なっ、なにーーーー!!!!!!」
俺は、あずさとヒマリとイルナが青い夏の空の下で、海水浴をしている姿を思い浮かべてしまった。
いつもの白いスライムの水着姿だ。
あーーいかん! 何故か、でかいおっぱいのミサの青いビキニ姿まで思い浮かべてしまった。
ミサが、俺の心を見たのか、恥ずかしそうにクネクネしている。
くそーー!! やってしまった!!!!
何故か強い敗北感に包まれた。
「ヒッ、ヒマリちゃーーん!!!!」
あずさが泣きながら怒っている。
あずさは、幼い時の栄養失調の影響なのか体の成長が遅いようだ。
「うふふ」
とうとう、ヒマリも笑いながら涙があふれ出した。
ひとしきり、ヒマリとあずさが別れのハグを終わらせると、俺達は列車に乗り込んだ。
列車が動き出すとホームの人達が手を振ってくれた。
見送りの人は、札幌駅の外にもいてくれて、ずっと手を振って見送ってくれた。
「あーーあーーっ!! 札幌ともお別れかーー!!」
あずさが名残惜しそうに、札幌駅を振り返りながら言った。
「一生忘れられない夏休みだわ」
ヒマリが笑顔で言った。
列車は、タタン、タタンと、リズムを刻みながら進んで行く。
外は真っ青な空に、真っ白な入道雲、そしてギラギラ輝く太陽がこれでもかといばっていた。
やがて列車は日本一のトンネルに入る。
光の加減から、窓の外に白い靄のようなものが見える。
良く見ると、それは全部手形だった。
強い日差しの下では見えなかったが、トンネルの中で見えるようになったのだ。
大きい手や小さい手、列車の窓中に付けてある。
「ぎええぇぇーーー!!!!」
あずさとヒマリがおびえている。
どうやら、一生忘れられないトラウマになったようだ。
ふふふ、札幌の皆さんが心を込めて付けてくれたものが、どうやら二人にはトラウマになるほど恐ろしかったようです。
「はい」
「ふふふ。赤穂さんも子供達と仕事を忘れて、一緒に楽しんじゃってください」
「はいっ!!」
赤穂さんの返事が少し元気になった。
赤穂さんの返事が終わると、青い車体の列車がホームに入って来た。
ゴーレムが運転する自動列車だ。
帯広でF-35が墜落していて、通行できない場所があり、治すのが大変だったのだが、あとはおおむね無事だった。
「すごい!!」
「すごーーい!!!!」
「すげーー!! 本当に電車だ」
ホームに入って来た列車を見て、皆が驚いている。
その中の誰かが電車と言った。
これは、電気で動いていないから、正確には電車じゃないんだよなあ。まあいいかー。
「じゃあ、皆さん、列車が来ました。俺はこれに乗って青函トンネルへ向います。危険なので一人でやります。三日後に、またお会いしましょうでは……」
俺はホームに入って来た列車に乗り込んだ。
見送る人達はそれぞれ手を振ってくれた。
だが、俺はまだ帰るわけじゃないからね。
青函トンネルは、案の定水没していた。
だが、水をぬいて、線路をメンテナンスしたら、無事使える事が分かり二日で作業は終わった。
ちなみに、青函トンネルを俺はなめていたが滅茶苦茶長い。
そのままだと、湿度がひどいので、送風用の装置と排水装置をゴーレムで新規に作ることになった。
驚いた事に青函トンネルの中に駅の名残のようなものが二カ所あった。
こんな所で、降りてどうするんだと心底おどろいた。
駅というのは、意外と驚くような所にあって何度も驚かされる。
――さて、一日余ってしまったなあ。
ということで、俺は札幌の美術館で北海道最後の一日を一人で楽しんだ。
翌日、のんびり鼻歌まじりで札幌の駅に行くと大勢の人がいる。
まるで、どこかのスターの出待ちのようだ。
「あのー、誰かすごい人でも来るのですか?」
近くの人に、聞いてみた。
「あんたやーーーーー!!!!!! おそーーい!!!!」
駅のホームにいたミサに素早く見つけられて怒られた。
遅いと言われても、時間とか決めてねーし、しらんがな。
駅には青い列車が止まっている。
ちゃんと、俺達を待っていてくれた。
列車の中には、来る時と同じメンバーが席に座って準備万端だ。
駅のホームには、大勢の人が見送りに来ていてくれる。
「あれ、イルナ!? お前は来ないのか?」
「うん、俺はあと半年ちょっとで中学生になる。そしたら、どうせ北海道にはいられないから、それまでの間はチビ達と一緒にこっちで過ごすよ」
「そうか、ならチビ達と全員で来たら良いじゃ無いか」
「ふふっ……、ありがとう……」
イルナは言いながら、笑顔で首を振っている。
子供達が心配そうな顔をしてイルナにしがみついている。
ふふふ、本当は俺がお前と別れたくないだけなんだよなーー!!
子供達は、必死で生きてきた札幌の街から出たくないんだろうなあ。
なんとなく分かる気がする。
「そうか。イルナが決めたことなら。それでいい」
「うん!!」
そう言うと、イルナが抱きついて来た。
なんだか、別れがつらい。
俺が、こんな気持ちになる日が来るとはなぁ。
「昇宮大臣!! イルナと子供達を頼む!!」
イルナ達の後ろで涙ぐんでいる昇宮大臣に子供達を頼んだ。
その横には娘さんと奥さんもいる。
三人で大きくうなずいてくれた。
その横でユキちゃんと、美人のお母さんも一緒になってうなずいてくれている。
「ユキちゃん、それとお母さんも、お元気で!」
「はい! 八兵衛さんもお元気で……」
お母さんがそう言うとユキちゃんがイルナの反対側で抱きついてくれた。
「おお、ばあさんもいるじゃないか!! 達者でな!!」
「……はじべえざーーん……ありがどぉーー……」
ばあさんが泣いてしまった。
そして、正面に抱きついて来た。
両サイドに子供二人。正面は、ばあさんだ。
まあ、八兵衛さんにはお似合いかぁー。
その光景を、楽しそうに総さんが笑いながら見ている。
「ふふふ、お邪魔しました。後はよろしくお願いします。榎本さん、土方さん、そして総さん」
総さんの横にいる。榎本さんと土方さんにも頭を下げた。
総さんは相変わらずニコニコしているだけだが、榎本さんと土方さんは慌てて頭を下げた。
そして、二人して総さんの頭を押さえつけた。
「は、はい!!」
榎本さんが代表をして返事をしてくれた。
「いやだなあ。硬くならないでください。俺は今、十田家の使用人の八兵衛なんですから。それとこの列車は、青森行きの交通機関として置いていきます。自由に乗ってください。むろん無料です。国有鉄道なので日本国民は無料です。税金から給料をもらう、政治家だけは有料ですけどね」
「もーーーー!!!! とーさんおそーーい!!!!」
待ちくたびれたのか、あずさが列車から出て来た
「あずさ姉ーちゃーーん!!」
あずさの姿を見ると、イルナの子供達が、あずさのまわりに集った。
「ふいぃーー!! がばんじでだのにーー!!!!」
あずさの目から大量の涙があふれ出した。
俺が驚いた顔をしていると、ヒマリが俺の横にちょこんと来た。
「昨日まで、一緒に一杯遊んだの、海水浴をしたりヒグマと戦ったり」
うんうん、微笑まし……
「ヒグマと戦ったーーーー!!!!!!」
「山でピクニックをしていたら、襲って来たから退治したのよ。おもに、あずさちゃんがひとりで……素手で……」
「にひっ」
あずさが笑顔をこっちに向けたが、その顔は涙でグチャグチャになり、鼻水まで出ている。
「ぎゃはははははーーーーーー!!!!!!」
その顔がおかしかったのか、子供達が笑っている。
「あのねえ、うふふ……とうさん! 海水浴でわかったのですけど……」
ヒマリがいたずらっぽく笑っているが、目には涙がたまっている。
きっとヒマリも別れがつらいのだろう、泣かないように我慢している。
「うん、なに??」
「イルナちゃんの方が、あずさちゃんより、胸が大きいのよ」
「なっ、なにーーーー!!!!!!」
俺は、あずさとヒマリとイルナが青い夏の空の下で、海水浴をしている姿を思い浮かべてしまった。
いつもの白いスライムの水着姿だ。
あーーいかん! 何故か、でかいおっぱいのミサの青いビキニ姿まで思い浮かべてしまった。
ミサが、俺の心を見たのか、恥ずかしそうにクネクネしている。
くそーー!! やってしまった!!!!
何故か強い敗北感に包まれた。
「ヒッ、ヒマリちゃーーん!!!!」
あずさが泣きながら怒っている。
あずさは、幼い時の栄養失調の影響なのか体の成長が遅いようだ。
「うふふ」
とうとう、ヒマリも笑いながら涙があふれ出した。
ひとしきり、ヒマリとあずさが別れのハグを終わらせると、俺達は列車に乗り込んだ。
列車が動き出すとホームの人達が手を振ってくれた。
見送りの人は、札幌駅の外にもいてくれて、ずっと手を振って見送ってくれた。
「あーーあーーっ!! 札幌ともお別れかーー!!」
あずさが名残惜しそうに、札幌駅を振り返りながら言った。
「一生忘れられない夏休みだわ」
ヒマリが笑顔で言った。
列車は、タタン、タタンと、リズムを刻みながら進んで行く。
外は真っ青な空に、真っ白な入道雲、そしてギラギラ輝く太陽がこれでもかといばっていた。
やがて列車は日本一のトンネルに入る。
光の加減から、窓の外に白い靄のようなものが見える。
良く見ると、それは全部手形だった。
強い日差しの下では見えなかったが、トンネルの中で見えるようになったのだ。
大きい手や小さい手、列車の窓中に付けてある。
「ぎええぇぇーーー!!!!」
あずさとヒマリがおびえている。
どうやら、一生忘れられないトラウマになったようだ。
ふふふ、札幌の皆さんが心を込めて付けてくれたものが、どうやら二人にはトラウマになるほど恐ろしかったようです。
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