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第114章『突入』
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第114章『突入』
持ち出していたトラックは全て出撃時に攻撃用の兵員を乗せる為の幌無しのもの、倉庫の鉄扉を最低限の隙間だけ開けてそこに荷台を突っ込んで装備を積み込む形をとるという事で、先ずは基地内を活骸を引き付けて走り回りつつ、幌付きのトラックを五台集めるところから作戦は始まった。
これには然して時間は掛からず、タカコと敦賀が乗り込んだトラック以外は一旦下がり、囮部隊の方へと合流する。
「よし、もう一度説明しておく。先ずは倉庫の鉄扉に掛けられた鍵の破壊だ、爆薬が無い以上銃で狙い撃ちして破壊するしか無い、これに関しては私に任せてくれ。この銃には散弾じゃなくて大型の単発弾を装填して有る、熊なんかの大型肉食獣を仕留めるのに使われる様な強力な弾薬だ、数発ブチ込めば鍵も破壊出来るだろう。鍵を破壊した後は後進して鉄扉を開けてそこに突っ込む、その後は降りて鉄扉を両側から閉めて封鎖、それから積み込みの開始だ。時間は十分きっかり、それ以上の遅延は活骸を引き寄せる事になる、良いな?」
「了解」
「了解です」
「了解!」
「私と敦賀は二台目以降の出入りの為に中に残る、戻ったら手順を二台目以降に――」
走り回りながらの概要説明、出撃当日という事で燃料を満タンにしていたのが幸いした、これなら車さえ有れば暫くは持ち堪えられる。その間に何とかして状況を好転させなければ、敦賀はそんな事を考えつつ説明を聞きながらタカコの横顔を見詰めていた。
普段とはまるで様子が違う、目付きも言葉遣いも、纏う空気も変わった。今のタカコは自分が知っている彼女ではない、その佇まいは何処か高根や黒川を感じさせ、何とも落ち着かない心持ちを敦賀へと齎している。
「行くぞ!」
説明を終えタカコが転進の指示を運転手へと出す、車列を離れ倉庫へと向けて進み始め、やがて前方にその姿を認めた事を運転手から告げられると、タカコは弾薬の装填を確認した銃を手に荷台の床の上に立ち上がった。
「――さぁ、始めようか」
見開かれた双眸、獰猛な笑みを小さく浮かべる唇、そこから漏れる言葉も声音も力強さに満ちていて、普段の気配は何処にも窺えない。求められる役割や立場が変わると人はここ迄変わるものなのか、敦賀がそんな妙な関心をしていると、倉庫前へと着いたトラックは今迄進んで来た方向へと向きを変え、倉庫の鉄扉の方へと荷台後部を向ける形で停止した。
「もう少し下げろ!もう少し斜めに!斜めだ!垂直に撃ち込んだら跳弾を自分で食らう羽目になる!もう少し……よし!」
鉄扉迄の距離は三m程、タカコは幌から顔を出し左右を見て活骸がいない事を確認すると、中へと戻り荷台の中央に立ち、銃をしっかりと構え銃口を鉄扉の鍵へと向ける。
「耳塞いでろ、鍵をブチ壊す迄連続でいくぞ……!」
この至近距離、しかも布製の幌とは言え半閉鎖空間で轟音を連続で聞かされては確かに耳が馬鹿になる、他の二人と同じ様に敦賀も素直に両手で耳を塞ぎ、タカコはそれを確認すると前に向き直り、引き金へと指を掛け、そして一気に引き絞った。
腹に響く発砲の轟音鉄扉の鍵に弾着し響き渡る鋭い金属音、耳を塞いでいても尚伝わる凄まじい不協和音に思わず目を閉じれば、やはり一度で破壊出来るものではなかったのか何度も何度も引き金が引かれ轟音と金属音が響き渡る。そして、装填した最後の一発を叩き込み、漸く鍵を吹き飛ばす事に成功した。
「ゆっくり下げろ!」
その指示でトラックは再び後進を開始し、幌と鉄扉をほぼ密着させた状態で四人がかりで扉を開け、トラックが通れるギリギリの広さを素早く通り車体を完全に倉庫内へと入れてしまう。そして
「早く閉めろ!」
というタカコの言葉に荷台から飛び降りた三人が一気に鉄扉を閉じ、五人はその閉め切られる重い音に朝起き出してから初めて脱力し、その場へと座り込んだ。
それでもいつ迄も脱力してはいられない、直ぐに各々で立ち上がり荷物へと向けて走り出す。
「トラックもうちょっと下げてくれ!」
「タカコ!持ち出すのどれだ、指示をくれ!」
「先ずは散弾銃と弾薬だ!この箱、これが全部銃でこっちが弾薬、一切合切積み込んで持ち出せ!」
「馬鹿女、他に持ち出す物はどれだ、優先度で振り分けろ」
あまり時間が無い、慌ただしく積み込みを始め、敦賀に代わりに積み込ませろと言われていたタカコも箱を幾つも抱えて装備とトラックの間を行き来し、予定の十分を目一杯使って荷台を満杯にすると敦賀と二人で鉄扉を開けてトラックを送り出した。
幸いにして今回は活骸はいなかったが動きを察知すれば少しずつ集まって来るだろう、出入りの際の戦闘は必ず発生する。扉を閉めながらタカコがそんな事を考えれば、反対側の扉を同じ様に閉めた敦賀がこちらへと歩み寄って来て、何か用かと思って見上げた直後、打ち合わせの時よりも強烈な拳を脳天へと落とされる。
「なっ……!」
「単独で無茶するんじゃねぇって何度言えば分かるんだこの空頭が……!」
「ってぇ……囮になった事か?だったらあの時他に何か方法が有ったってのか?まだ離脱も――」
「んな事ぁ分かってる!てめぇ迄真吾みてぇな事言うんじゃねぇ!するなと言ってるんじゃねぇ!俺がいねぇのに、てめぇ一人で無茶するなって言ってるんだろうが!!」
「はぁぁ!?お前がいてもいなくても――」
「傍にいなけりゃてめぇに何か有った時に俺が守ってやれねぇだろうが!俺が隣にいねぇのに飛び出して行くんじゃねぇこの馬鹿女!!」
愛の告白にも等しい言葉、お互いにそれに見事に固まり、声の反響の消えた倉庫内に静寂が訪れる。しまった、勢いに任せて何かとんでもない事を口走った気がする、こんな深刻な状況なのに何をやっているのか。とにかく今の発言をどうにか誤魔化そう、そんな風に外見は冷静なままに内心大いに狼狽える敦賀、その彼が相手の反応を見ようと見下ろしてみれば、そこには俯いて肩を震わせるタカコの姿が在った。
持ち出していたトラックは全て出撃時に攻撃用の兵員を乗せる為の幌無しのもの、倉庫の鉄扉を最低限の隙間だけ開けてそこに荷台を突っ込んで装備を積み込む形をとるという事で、先ずは基地内を活骸を引き付けて走り回りつつ、幌付きのトラックを五台集めるところから作戦は始まった。
これには然して時間は掛からず、タカコと敦賀が乗り込んだトラック以外は一旦下がり、囮部隊の方へと合流する。
「よし、もう一度説明しておく。先ずは倉庫の鉄扉に掛けられた鍵の破壊だ、爆薬が無い以上銃で狙い撃ちして破壊するしか無い、これに関しては私に任せてくれ。この銃には散弾じゃなくて大型の単発弾を装填して有る、熊なんかの大型肉食獣を仕留めるのに使われる様な強力な弾薬だ、数発ブチ込めば鍵も破壊出来るだろう。鍵を破壊した後は後進して鉄扉を開けてそこに突っ込む、その後は降りて鉄扉を両側から閉めて封鎖、それから積み込みの開始だ。時間は十分きっかり、それ以上の遅延は活骸を引き寄せる事になる、良いな?」
「了解」
「了解です」
「了解!」
「私と敦賀は二台目以降の出入りの為に中に残る、戻ったら手順を二台目以降に――」
走り回りながらの概要説明、出撃当日という事で燃料を満タンにしていたのが幸いした、これなら車さえ有れば暫くは持ち堪えられる。その間に何とかして状況を好転させなければ、敦賀はそんな事を考えつつ説明を聞きながらタカコの横顔を見詰めていた。
普段とはまるで様子が違う、目付きも言葉遣いも、纏う空気も変わった。今のタカコは自分が知っている彼女ではない、その佇まいは何処か高根や黒川を感じさせ、何とも落ち着かない心持ちを敦賀へと齎している。
「行くぞ!」
説明を終えタカコが転進の指示を運転手へと出す、車列を離れ倉庫へと向けて進み始め、やがて前方にその姿を認めた事を運転手から告げられると、タカコは弾薬の装填を確認した銃を手に荷台の床の上に立ち上がった。
「――さぁ、始めようか」
見開かれた双眸、獰猛な笑みを小さく浮かべる唇、そこから漏れる言葉も声音も力強さに満ちていて、普段の気配は何処にも窺えない。求められる役割や立場が変わると人はここ迄変わるものなのか、敦賀がそんな妙な関心をしていると、倉庫前へと着いたトラックは今迄進んで来た方向へと向きを変え、倉庫の鉄扉の方へと荷台後部を向ける形で停止した。
「もう少し下げろ!もう少し斜めに!斜めだ!垂直に撃ち込んだら跳弾を自分で食らう羽目になる!もう少し……よし!」
鉄扉迄の距離は三m程、タカコは幌から顔を出し左右を見て活骸がいない事を確認すると、中へと戻り荷台の中央に立ち、銃をしっかりと構え銃口を鉄扉の鍵へと向ける。
「耳塞いでろ、鍵をブチ壊す迄連続でいくぞ……!」
この至近距離、しかも布製の幌とは言え半閉鎖空間で轟音を連続で聞かされては確かに耳が馬鹿になる、他の二人と同じ様に敦賀も素直に両手で耳を塞ぎ、タカコはそれを確認すると前に向き直り、引き金へと指を掛け、そして一気に引き絞った。
腹に響く発砲の轟音鉄扉の鍵に弾着し響き渡る鋭い金属音、耳を塞いでいても尚伝わる凄まじい不協和音に思わず目を閉じれば、やはり一度で破壊出来るものではなかったのか何度も何度も引き金が引かれ轟音と金属音が響き渡る。そして、装填した最後の一発を叩き込み、漸く鍵を吹き飛ばす事に成功した。
「ゆっくり下げろ!」
その指示でトラックは再び後進を開始し、幌と鉄扉をほぼ密着させた状態で四人がかりで扉を開け、トラックが通れるギリギリの広さを素早く通り車体を完全に倉庫内へと入れてしまう。そして
「早く閉めろ!」
というタカコの言葉に荷台から飛び降りた三人が一気に鉄扉を閉じ、五人はその閉め切られる重い音に朝起き出してから初めて脱力し、その場へと座り込んだ。
それでもいつ迄も脱力してはいられない、直ぐに各々で立ち上がり荷物へと向けて走り出す。
「トラックもうちょっと下げてくれ!」
「タカコ!持ち出すのどれだ、指示をくれ!」
「先ずは散弾銃と弾薬だ!この箱、これが全部銃でこっちが弾薬、一切合切積み込んで持ち出せ!」
「馬鹿女、他に持ち出す物はどれだ、優先度で振り分けろ」
あまり時間が無い、慌ただしく積み込みを始め、敦賀に代わりに積み込ませろと言われていたタカコも箱を幾つも抱えて装備とトラックの間を行き来し、予定の十分を目一杯使って荷台を満杯にすると敦賀と二人で鉄扉を開けてトラックを送り出した。
幸いにして今回は活骸はいなかったが動きを察知すれば少しずつ集まって来るだろう、出入りの際の戦闘は必ず発生する。扉を閉めながらタカコがそんな事を考えれば、反対側の扉を同じ様に閉めた敦賀がこちらへと歩み寄って来て、何か用かと思って見上げた直後、打ち合わせの時よりも強烈な拳を脳天へと落とされる。
「なっ……!」
「単独で無茶するんじゃねぇって何度言えば分かるんだこの空頭が……!」
「ってぇ……囮になった事か?だったらあの時他に何か方法が有ったってのか?まだ離脱も――」
「んな事ぁ分かってる!てめぇ迄真吾みてぇな事言うんじゃねぇ!するなと言ってるんじゃねぇ!俺がいねぇのに、てめぇ一人で無茶するなって言ってるんだろうが!!」
「はぁぁ!?お前がいてもいなくても――」
「傍にいなけりゃてめぇに何か有った時に俺が守ってやれねぇだろうが!俺が隣にいねぇのに飛び出して行くんじゃねぇこの馬鹿女!!」
愛の告白にも等しい言葉、お互いにそれに見事に固まり、声の反響の消えた倉庫内に静寂が訪れる。しまった、勢いに任せて何かとんでもない事を口走った気がする、こんな深刻な状況なのに何をやっているのか。とにかく今の発言をどうにか誤魔化そう、そんな風に外見は冷静なままに内心大いに狼狽える敦賀、その彼が相手の反応を見ようと見下ろしてみれば、そこには俯いて肩を震わせるタカコの姿が在った。
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