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第127章『抗体』
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第127章『抗体』
「真吾ぉぉぉ!起きてるかぁぁぁ!」
深夜の博多、場所は高根の家、その玄関。鍵の掛かっていない玄関を弾き飛ばす勢いでタカコが開けて中へと向けて声を放る。先ず起き出して来たのは居候その一、海兵隊最古参の一人である藤田。
「って……何だよ、タカコじゃねぇか。何なんだよこんな時間に……司令なら今さっき帰って来て風呂入ってんぞ」
「そうか、上がる!」
袖無しのシャツに下着という格好で起き出して来た藤田が欠伸をする脇を摺り抜け、靴を脱いだタカコが奥へと入って行く、一体何なんだと頭を掻きながら玄関を閉めようと藤田が振り返れば、そこにいた二人の男の正体に気付いて彼の動きは物の見事に停止した。
「先任!何して……って黒川総監!こんな格好で大変失礼しました!」
「いや、構わない、楽にしてくれ。こちらこそ夜分の突然の訪問申し訳無い。高根総司令に話が有って来た、君はもう休んでくれ」
「いえ、しかし……」
「ヒデ、何だったら他の奴も起こせ、あの馬鹿がどうもとんでもねぇ事を――」
「真吾ぉ!物凄い事発見した!」
「何なんだよおめぇ!人が風呂入ってるのに――」
「そんなもんどうでもいい、とっととあがれ!何だったら洗うの手伝うぞ!」
「ざっけんな!とにかく出ろよ、閉めろ!」
「ほら早く!何だ、何処を洗えば良いんだ!」
「止めて!お婿に行けなくなっちゃう!」
玄関の三人の会話は奥の風呂場から聞こえて来たタカコと高根の掛け合いに掻き消され、深夜とは思えない騒々しさにこめかみをひくつかせた敦賀、その彼がもう一度藤田に他の三人を起こして来いと言えば、彼が動く前にあまりの騒々しさに何事かと三人揃って客間から起き出して来る。そして藤田と同じ様に敦賀と黒川の存在に慌て、せめて下だけは下着の上に何か着ようかと言って四人揃って夫々に割り当てられた部屋へと消えて行った。
「……で?純情な男子の入浴しているところに踏み込んで大事なもの奪った理由を聞こうか?」
「恋人も作らず嫁さんもいねぇ、女関係はと言えば花街で遊びまくってるおっさんが純情男子ねぇ……」
「うるせぇ!こんな夜中にいきなり来たんだ、大事な話なんだろうがよ、さっさと話せっつの」
体格の良い男が七人に女が一人集結し、黒川の家と比べればだいぶこぢんまりとした高根宅の居間は妙な圧迫感を覚える程。何も無いがと高根が焼酎の一升瓶とコップを八つ机の上に置き、中身の注がれたそれを各々が手に取るのを見て、タカコは中身を一口飲んでから話し始めた。
「活骸に変異させた方法が分からない、そう言ってたのを覚えてるか?」
「ああ、給水槽に病原体を混入させたとしたら変異してない奴としちまった奴が出るのがおかしい、他に方法がって話してたやつだろ?」
「そう。それなんだが、やはり汚染源は給水槽で間違い無いと思う、変異したのとしなかったのと、分かれた原因は私達の側に有ったんだと思う」
「……どういう事だ?」
突然のタカコの言葉に高根の眼差しに鋭さが戻り声音も低く固くなる、タカコはそれに直ぐには答えず、コップの中の焼酎を一気に飲み干してから口を開いた。
「活骸の母子を観察した時……最初人間だった赤ん坊は母親の母乳を飲む生活の中で活骸に変異していったよな……母乳は元は血液だ、高濃度に汚染された母乳を飲んで感染したとして、血液を大量に体内に取り込む事により感染するんじゃないかと思うんだ。後、恐らくは性交でも感染すると思う、男女どちらも分泌液は血液と同程度の感染源になるそうだから」
「それで?それが今回の俺達とどう関係が?」
「作成した名簿を見て所属と照らし合わせてみた、そうしたら、変異しなかった人間は全員が前線部隊に現在所属しているか過去に所属経験が有ったんだ……これは私の推論でしかないんだが、前線部隊は活骸の体液を全身に浴びまくるだろ?直ぐに洗い流しているから感染の危険はそれで低くなってるんだろうが、常に細菌に触れている事は間違い無い。医学的な話になるが、予防接種とか有るだろ、あれって、弱毒化させた原因細菌や弱めた毒素を注射して、体内に抗体を作る仕組みなんだと。つまりは、人為的に感染させて予め抵抗力を獲得しておくって事だ」
そこ迄言えば高根にも他の面々にも話は見えて来たのだろう、顔を見合わせて頷き合い、
「……俺達は知らず知らずの内に予防接種と同じ事をやってた、それで抗体を獲得していたから発症しなかったって事か」
高根が静かにそう口にする。
「……ああ」
確かに彼女の言う通り、名簿を見れば活骸に変異した戦死者は全員前線部隊の経験が無い、そして生き残った者は全員が前線部隊に在籍しているかその経験者だ。
「対活骸との直接の戦いに於いては然して意味は無ぇが、この原因菌を使って今回みてぇな攻撃を加えて来る勢力が有ってそいつ等と事を構えるのなら、この抗体を分離して量産出来る様になれば大きな武器になる……そういう事だな?」
「ああ、高根総司令、そういう事だ」
相手の正体は不明だが、海兵隊に、大和に害を為そうとしている悪意を持った勢力は確かに存在する、その彼等と事を構える為には先ずは統幕を始めとした味方陣営を黙らせ纏める事が必須且つ火急。味方との戦い、政争に於いてもこの抗体とタカコの持ち込んだ散弾銃と戦法は大きな武器になる、そう考えて強い笑みを浮かべるタカコもまた、内心でこの推測が的を射ている事を祈っていた。
これを大和が手にし、その技術を確立すれば、自分の心配が一つ減る、後は国内を取り纏める為に動けば良い、心の底からそう願っていた。
「真吾ぉぉぉ!起きてるかぁぁぁ!」
深夜の博多、場所は高根の家、その玄関。鍵の掛かっていない玄関を弾き飛ばす勢いでタカコが開けて中へと向けて声を放る。先ず起き出して来たのは居候その一、海兵隊最古参の一人である藤田。
「って……何だよ、タカコじゃねぇか。何なんだよこんな時間に……司令なら今さっき帰って来て風呂入ってんぞ」
「そうか、上がる!」
袖無しのシャツに下着という格好で起き出して来た藤田が欠伸をする脇を摺り抜け、靴を脱いだタカコが奥へと入って行く、一体何なんだと頭を掻きながら玄関を閉めようと藤田が振り返れば、そこにいた二人の男の正体に気付いて彼の動きは物の見事に停止した。
「先任!何して……って黒川総監!こんな格好で大変失礼しました!」
「いや、構わない、楽にしてくれ。こちらこそ夜分の突然の訪問申し訳無い。高根総司令に話が有って来た、君はもう休んでくれ」
「いえ、しかし……」
「ヒデ、何だったら他の奴も起こせ、あの馬鹿がどうもとんでもねぇ事を――」
「真吾ぉ!物凄い事発見した!」
「何なんだよおめぇ!人が風呂入ってるのに――」
「そんなもんどうでもいい、とっととあがれ!何だったら洗うの手伝うぞ!」
「ざっけんな!とにかく出ろよ、閉めろ!」
「ほら早く!何だ、何処を洗えば良いんだ!」
「止めて!お婿に行けなくなっちゃう!」
玄関の三人の会話は奥の風呂場から聞こえて来たタカコと高根の掛け合いに掻き消され、深夜とは思えない騒々しさにこめかみをひくつかせた敦賀、その彼がもう一度藤田に他の三人を起こして来いと言えば、彼が動く前にあまりの騒々しさに何事かと三人揃って客間から起き出して来る。そして藤田と同じ様に敦賀と黒川の存在に慌て、せめて下だけは下着の上に何か着ようかと言って四人揃って夫々に割り当てられた部屋へと消えて行った。
「……で?純情な男子の入浴しているところに踏み込んで大事なもの奪った理由を聞こうか?」
「恋人も作らず嫁さんもいねぇ、女関係はと言えば花街で遊びまくってるおっさんが純情男子ねぇ……」
「うるせぇ!こんな夜中にいきなり来たんだ、大事な話なんだろうがよ、さっさと話せっつの」
体格の良い男が七人に女が一人集結し、黒川の家と比べればだいぶこぢんまりとした高根宅の居間は妙な圧迫感を覚える程。何も無いがと高根が焼酎の一升瓶とコップを八つ机の上に置き、中身の注がれたそれを各々が手に取るのを見て、タカコは中身を一口飲んでから話し始めた。
「活骸に変異させた方法が分からない、そう言ってたのを覚えてるか?」
「ああ、給水槽に病原体を混入させたとしたら変異してない奴としちまった奴が出るのがおかしい、他に方法がって話してたやつだろ?」
「そう。それなんだが、やはり汚染源は給水槽で間違い無いと思う、変異したのとしなかったのと、分かれた原因は私達の側に有ったんだと思う」
「……どういう事だ?」
突然のタカコの言葉に高根の眼差しに鋭さが戻り声音も低く固くなる、タカコはそれに直ぐには答えず、コップの中の焼酎を一気に飲み干してから口を開いた。
「活骸の母子を観察した時……最初人間だった赤ん坊は母親の母乳を飲む生活の中で活骸に変異していったよな……母乳は元は血液だ、高濃度に汚染された母乳を飲んで感染したとして、血液を大量に体内に取り込む事により感染するんじゃないかと思うんだ。後、恐らくは性交でも感染すると思う、男女どちらも分泌液は血液と同程度の感染源になるそうだから」
「それで?それが今回の俺達とどう関係が?」
「作成した名簿を見て所属と照らし合わせてみた、そうしたら、変異しなかった人間は全員が前線部隊に現在所属しているか過去に所属経験が有ったんだ……これは私の推論でしかないんだが、前線部隊は活骸の体液を全身に浴びまくるだろ?直ぐに洗い流しているから感染の危険はそれで低くなってるんだろうが、常に細菌に触れている事は間違い無い。医学的な話になるが、予防接種とか有るだろ、あれって、弱毒化させた原因細菌や弱めた毒素を注射して、体内に抗体を作る仕組みなんだと。つまりは、人為的に感染させて予め抵抗力を獲得しておくって事だ」
そこ迄言えば高根にも他の面々にも話は見えて来たのだろう、顔を見合わせて頷き合い、
「……俺達は知らず知らずの内に予防接種と同じ事をやってた、それで抗体を獲得していたから発症しなかったって事か」
高根が静かにそう口にする。
「……ああ」
確かに彼女の言う通り、名簿を見れば活骸に変異した戦死者は全員前線部隊の経験が無い、そして生き残った者は全員が前線部隊に在籍しているかその経験者だ。
「対活骸との直接の戦いに於いては然して意味は無ぇが、この原因菌を使って今回みてぇな攻撃を加えて来る勢力が有ってそいつ等と事を構えるのなら、この抗体を分離して量産出来る様になれば大きな武器になる……そういう事だな?」
「ああ、高根総司令、そういう事だ」
相手の正体は不明だが、海兵隊に、大和に害を為そうとしている悪意を持った勢力は確かに存在する、その彼等と事を構える為には先ずは統幕を始めとした味方陣営を黙らせ纏める事が必須且つ火急。味方との戦い、政争に於いてもこの抗体とタカコの持ち込んだ散弾銃と戦法は大きな武器になる、そう考えて強い笑みを浮かべるタカコもまた、内心でこの推測が的を射ている事を祈っていた。
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