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第149章『綴り』
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第149章『綴り』
先程吐き出して段々と硬度を失いつつある自らの雄、余韻を味わう様にしてそれを中へと進めれば、腕の中の小さな身体が少し掠れた寝息を漏らす。力を緩めて覗き込んでみれば、そこには意識を飛ばしてしまったタカコの寝顔。汗で額と頬に張り付いた髪の毛を払ってやれば、背中に回された腕に力が込められ、胸板に頬を摺り寄せられた。
日中にタカコと言い争いをして、夜になり仕事を片付けると同時に彼女の腕を掴んで基地を出た。ついて来ようとしたカタギリには
「明日の朝には時間通りに戻る、ついて来るな」
と、そう言い捨てて中州へと向かい、入ったのは先日と同じ様な連れ込み宿。
それから食事も摂らずにタカコを寝台へと押し倒し服を剥ぎ取り、只管に求め、貫き、吐き出し続けた。その行為の中で想いを告げたわけでもない、昼間の話題が解決したわけでもない、それでも、胸中に湧き上がるのはタカコに対しての『愛しい』という感情。
その場の勢いで心にも無い事を言ってしまいはしたものの、結局自分の本心はタカコの身も心も求めていて、それは彼女の正体が明らかにされた後も変わりはしない。寧ろ、欲求はより強くなったと言っても良いだろう、他国の特殊部隊の指揮官、役目が終われば必ず帰国する、それをどうにかして繋ぎ止めて置けないかと、がむしゃらに彼女を抱き、精を注ぎ込んでいるのだ、孕んで、子と共にこの国に、自分の隣に留まれば良いと。
きっと黒川も同じ様に考えている、彼も避妊はしていないだろう。だから、タカコが孕んでも、その子が敦賀と黒川どちらの種なのかは分からない。それでも、彼女の子なのであればそれで良い、その事実さえ有れば我が子として愛し育める、その程度の覚悟は出来ている。その点に関しても黒川も同じだろう、簡単に勝てる相手だとは思わないが、今更引き下がる気は毛頭無い。
「……ま、どっちにしてもてめぇの気持ちをこっちに向けねぇとな……決めるのはてめぇなんだから」
そう呟いて汗の浮いた額へと口付ければ、深く抱き締めた拍子に胸板に何かが触れる、金属の感触にそれを手に取って見れば、それはタカコが肌身離さず身につけている認識票が二つ。タカコ自身と、そして彼女の亡夫のものだ。今迄も交わりの度に耳に入って来た軽い金属音と肌に触れる生温い感触、邪魔だと思わないでもないが、それでもそれが大きな意味を持つ事は敦賀にもよく分かっているから外せと思った事は無い。
今迄手に取る事も無かったそれ、今日は何故か心を惹かれ、掌に二つを並べて乗せて常夜灯の明かりの中でそこに刻まれた文字へと視線を向けてみる。
『U.S.W PROVIDENCE.CO
TAKAYUKI-SHIMIZU
XXX-XXX-XXXXX
BLOOD-TYPE A+』
『U.S.W PROVIDENCE.CO
TAKAKO-SHIMIZU
XXX-XXX-XXXXX
BLOOD-TYPE B+』
刻まれている文字の殆どは同じものだが少しずつ違っている、初めて目にする文字で何と書いてあるのかが皆目見当が付かず、どちらがタカコのものでどちらが亡夫のものなのかも判別が付かない。
一段目は全く同じ綴り、三段目は数字、四段目も最後の一文字以外は同じ。きっと一段目は所属部隊の表記だ、同じ部隊にいたというのだから、全く同じ表記になるだろう。三段目は恐らくは認識番号、四段目の意味は分からないが、最後の一文字以外は全く同じなのであれば、タカコと亡夫の何等かの違いを示す表記なのだろう。
「……二段目が名前か……」
後半が全く同じ綴りで前半が少し違っている、彼女が自分の名を名乗った時に『タカコ・シミズ』と言った事からも、後半が苗字に違い無い。すると、残った前半が名前という事になるが、と、敦賀はそこ迄考えてふと或る事に気が付いた。
記されているのは六文字と八文字、変則的な表記でなければ三文字の名前に八文字を割り振るよりも六文字の方が分かり易い、タカコという名前に割り振られている文字は六文字の筈だ。単純に考えれば一音に二文字が使われている事になる、『TAKA』という文字が大和語での『タカ』という表記に相当するのだろう。だとしたら、亡夫の名前も最初の二文字は『タカ』だという事になる。そして、解読は出来ないが残された四文字が自分の考えたとおりの規則性を有し、その通りに二音を表現しているのだとすれば、『タカ○○』という四文字の名前を亡夫は持っている事になる。
自分と同じだ、と、朧気ながらもそれに気付く。何と読むのかは分からない、それでも最初の二音は自分と亡夫の名前は同じ『タカ』で、そして、同じ四音、それは理解した。
何故かひどく嫌な感じがする、分からない事だらけだがそれだけははっきりと感じる。もしかしたら、と考えてそれを振り払いつつ、彼女が今迄頑なに自分の名前を呼ばなかった理由が理解出来た気がした。
「……まさか、な……」
そう独り言ち、認識票をタカコの胸元へと戻し小さな身体をきつく抱き締める。知識の無い自分の当て推量だ、きっと間違っている。高根や黒川ならばもしかしたらこの文字の知識が有って規則性も知っているかも知れない、それとなく聞いてみよう。自分一人で考えても正しい答えが出る事も無いだろう、この予感はきっと、きっと間違っている。
先程吐き出して段々と硬度を失いつつある自らの雄、余韻を味わう様にしてそれを中へと進めれば、腕の中の小さな身体が少し掠れた寝息を漏らす。力を緩めて覗き込んでみれば、そこには意識を飛ばしてしまったタカコの寝顔。汗で額と頬に張り付いた髪の毛を払ってやれば、背中に回された腕に力が込められ、胸板に頬を摺り寄せられた。
日中にタカコと言い争いをして、夜になり仕事を片付けると同時に彼女の腕を掴んで基地を出た。ついて来ようとしたカタギリには
「明日の朝には時間通りに戻る、ついて来るな」
と、そう言い捨てて中州へと向かい、入ったのは先日と同じ様な連れ込み宿。
それから食事も摂らずにタカコを寝台へと押し倒し服を剥ぎ取り、只管に求め、貫き、吐き出し続けた。その行為の中で想いを告げたわけでもない、昼間の話題が解決したわけでもない、それでも、胸中に湧き上がるのはタカコに対しての『愛しい』という感情。
その場の勢いで心にも無い事を言ってしまいはしたものの、結局自分の本心はタカコの身も心も求めていて、それは彼女の正体が明らかにされた後も変わりはしない。寧ろ、欲求はより強くなったと言っても良いだろう、他国の特殊部隊の指揮官、役目が終われば必ず帰国する、それをどうにかして繋ぎ止めて置けないかと、がむしゃらに彼女を抱き、精を注ぎ込んでいるのだ、孕んで、子と共にこの国に、自分の隣に留まれば良いと。
きっと黒川も同じ様に考えている、彼も避妊はしていないだろう。だから、タカコが孕んでも、その子が敦賀と黒川どちらの種なのかは分からない。それでも、彼女の子なのであればそれで良い、その事実さえ有れば我が子として愛し育める、その程度の覚悟は出来ている。その点に関しても黒川も同じだろう、簡単に勝てる相手だとは思わないが、今更引き下がる気は毛頭無い。
「……ま、どっちにしてもてめぇの気持ちをこっちに向けねぇとな……決めるのはてめぇなんだから」
そう呟いて汗の浮いた額へと口付ければ、深く抱き締めた拍子に胸板に何かが触れる、金属の感触にそれを手に取って見れば、それはタカコが肌身離さず身につけている認識票が二つ。タカコ自身と、そして彼女の亡夫のものだ。今迄も交わりの度に耳に入って来た軽い金属音と肌に触れる生温い感触、邪魔だと思わないでもないが、それでもそれが大きな意味を持つ事は敦賀にもよく分かっているから外せと思った事は無い。
今迄手に取る事も無かったそれ、今日は何故か心を惹かれ、掌に二つを並べて乗せて常夜灯の明かりの中でそこに刻まれた文字へと視線を向けてみる。
『U.S.W PROVIDENCE.CO
TAKAYUKI-SHIMIZU
XXX-XXX-XXXXX
BLOOD-TYPE A+』
『U.S.W PROVIDENCE.CO
TAKAKO-SHIMIZU
XXX-XXX-XXXXX
BLOOD-TYPE B+』
刻まれている文字の殆どは同じものだが少しずつ違っている、初めて目にする文字で何と書いてあるのかが皆目見当が付かず、どちらがタカコのものでどちらが亡夫のものなのかも判別が付かない。
一段目は全く同じ綴り、三段目は数字、四段目も最後の一文字以外は同じ。きっと一段目は所属部隊の表記だ、同じ部隊にいたというのだから、全く同じ表記になるだろう。三段目は恐らくは認識番号、四段目の意味は分からないが、最後の一文字以外は全く同じなのであれば、タカコと亡夫の何等かの違いを示す表記なのだろう。
「……二段目が名前か……」
後半が全く同じ綴りで前半が少し違っている、彼女が自分の名を名乗った時に『タカコ・シミズ』と言った事からも、後半が苗字に違い無い。すると、残った前半が名前という事になるが、と、敦賀はそこ迄考えてふと或る事に気が付いた。
記されているのは六文字と八文字、変則的な表記でなければ三文字の名前に八文字を割り振るよりも六文字の方が分かり易い、タカコという名前に割り振られている文字は六文字の筈だ。単純に考えれば一音に二文字が使われている事になる、『TAKA』という文字が大和語での『タカ』という表記に相当するのだろう。だとしたら、亡夫の名前も最初の二文字は『タカ』だという事になる。そして、解読は出来ないが残された四文字が自分の考えたとおりの規則性を有し、その通りに二音を表現しているのだとすれば、『タカ○○』という四文字の名前を亡夫は持っている事になる。
自分と同じだ、と、朧気ながらもそれに気付く。何と読むのかは分からない、それでも最初の二音は自分と亡夫の名前は同じ『タカ』で、そして、同じ四音、それは理解した。
何故かひどく嫌な感じがする、分からない事だらけだがそれだけははっきりと感じる。もしかしたら、と考えてそれを振り払いつつ、彼女が今迄頑なに自分の名前を呼ばなかった理由が理解出来た気がした。
「……まさか、な……」
そう独り言ち、認識票をタカコの胸元へと戻し小さな身体をきつく抱き締める。知識の無い自分の当て推量だ、きっと間違っている。高根や黒川ならばもしかしたらこの文字の知識が有って規則性も知っているかも知れない、それとなく聞いてみよう。自分一人で考えても正しい答えが出る事も無いだろう、この予感はきっと、きっと間違っている。
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