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第19章『同盟』
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第19章『同盟』
目の前で淡々と語るタカコ、その姿と語る内容に『やはりこの者を掌中に収めて良かった』と、高根はいつもの飄々とした面持ちで話を聞きながらそう思う。
大和に必要だったものは変革、彼女の存在はそれをきっとこの最前線へと齎してくれる。
何故対活骸戦はこんなにも人の命の値段の安い消耗戦なのかと、そう言った。接触して斬首によって無力化するという、そんな原始的な方法のみを主戦法とするのかと。
損害比率が一対一なんて無駄死に以外の何物でもない、もっと遠隔地点からの攻撃方法を考えろと、若干の呆れを含んだタカコの言葉。
「耳が痛いな、しかし、今の大和にはその技術が無い事は分かってんだろう?それで敢えてそんな事を言い出すのなら、何か腹案が有ると受け取って良いのか?」
「ああ、これだ」
とタカコが足元から机の上へと取り出し広げて見せたのは機体から回収された銃器の一部、一丁の散弾銃を持ちタカコは続けた。
「ここに来て銃器の類が一切戦線に出てない事を知って目眩がしたよ、私の国では銃器による攻撃が対活骸戦の主戦法だからな」
曰く、通常の銃では活骸の頭部に致命的打撃を与えるのは確かに難しい、それならばこれを使えと、彼女はそう言った。母国の軍で最も一般的な散弾銃で、軍事機密なぞ無いから好きに使えと、一丁しか無いから無理だと言うのならこれを研究し尽くして自分達で量産しろと。
「単に鉛や鉄の塊の弾頭を一発撃ち込んだところであの化け物への致命的打撃にならんのも理解している、しかし散弾なら上半身に向けて撃って散弾の広がる範囲内に活骸の頭部が入りさえすれば話は違って来る、悪い話じゃないだろ?」
いつもの笑顔よりも少しだけ覇気を帯びたそれに、高根は穏やかさは保ったまま僅かに目を細め言葉を返す。
「お前が求める、それに対する見返りは?」
「何も無い、純粋に活骸の駆逐に貢献したいだけだ。私はな、戦争続きの人生で決定的な敗北を喫した事はまだ無い、生きてるだけで勝ちだからな。母国から遠く離れた地で専門外のもんに蹂躙されてそれを終わりにしたくはないんだよ」
だから私を協力させろと、タカコはそう続けた。
これに関しては本気なのだろう、こちらへと向けられる真っ直ぐで強い視線を黙して受け止め、高根はそう考える。
タカコから銃を取り上げている間に徹底的に研究はした、それでも自分達には未知にも近い代物で分解と再組み立てすら難渋したのだ、それを人生の中でかなりの時間使いこなし生き延びて来たのであろうタカコが自発的に協力するというのなら、これ程の幸運もそうは無い。
タカコが話がしたいと言っていると敦賀が言って来た時、彼に対してこう尋ねた、
「彼女は何か企んでいる様に思うか?」
と。
それに対して敦賀は今のところはそうは思えないと返し、それで話を聞く事にした。彼も自分程ではなくともそれなりに人を見抜く目は持っている、そうでなければそもそもタカコの監視役にする事も無かったのだから。
自分の経験と直感、敦賀からの評価、これを元にこれから大きな決断を下す事になる、タカコも伝えたい事を全て言い終えたのか机を挟んだ向かい側で黙してこちらを見つめ、敦賀はその後ろで壁に凭れ掛かってやはりこちらを真っ直ぐに見ていた。
いや、恐らく自分の中でももう答えは出ているのだ、大和に残された知識と技術で活骸と戦い、そしてその経過はじり貧という言葉がぴったりの体たらく。それを打破する為には大きな変革が必要なのだというのが持論なのだから。
ただ、何も考えずに踏み出す程背負う物が無いわけでも軽いわでもなく、それを秤に掛けないといけないだけ。
答えは、最初から出ている。
「工兵部隊開発班と工廠に話をつけよう、内密に動いてもらえるだけの伝手は有る、資金も何とかしよう」
普段通りの落ち着いた声音でそう伝え、ゆっくりと立ち上がるとタカコへと正対し右手を差し出した。
「非公式ではあるが二国間での同盟の締結だ、よろしく頼む」
いきなりの目上からの申し出に若干戸惑う素振りを見せたタカコも、すぐに覇気を湛えた笑みを浮かべて立ち上がり、
「こちらこそ、最善を尽くさせてもらう」
とそう言って差し出された手をしっかりと握り返す。利害が一致している間だけの即席の俄か同盟、それを見ていた敦賀が抱いたのは『何とも奇妙な光景だ』という思い。
腹の中に一物隠した者同士がお互いに敬意を払い同盟の締結とは、どんな茶番なのかと、しかしそれと同時にこの二人は確かにお互いを尊重し敬意を払ってもいるのだという事もよく分かる。
清濁併せ呑み目的を達成する事を最優先にする者だからこそ到れる境地、それが人の上に立ち人を率いる者の、最高の素質なのだ。
目の前で淡々と語るタカコ、その姿と語る内容に『やはりこの者を掌中に収めて良かった』と、高根はいつもの飄々とした面持ちで話を聞きながらそう思う。
大和に必要だったものは変革、彼女の存在はそれをきっとこの最前線へと齎してくれる。
何故対活骸戦はこんなにも人の命の値段の安い消耗戦なのかと、そう言った。接触して斬首によって無力化するという、そんな原始的な方法のみを主戦法とするのかと。
損害比率が一対一なんて無駄死に以外の何物でもない、もっと遠隔地点からの攻撃方法を考えろと、若干の呆れを含んだタカコの言葉。
「耳が痛いな、しかし、今の大和にはその技術が無い事は分かってんだろう?それで敢えてそんな事を言い出すのなら、何か腹案が有ると受け取って良いのか?」
「ああ、これだ」
とタカコが足元から机の上へと取り出し広げて見せたのは機体から回収された銃器の一部、一丁の散弾銃を持ちタカコは続けた。
「ここに来て銃器の類が一切戦線に出てない事を知って目眩がしたよ、私の国では銃器による攻撃が対活骸戦の主戦法だからな」
曰く、通常の銃では活骸の頭部に致命的打撃を与えるのは確かに難しい、それならばこれを使えと、彼女はそう言った。母国の軍で最も一般的な散弾銃で、軍事機密なぞ無いから好きに使えと、一丁しか無いから無理だと言うのならこれを研究し尽くして自分達で量産しろと。
「単に鉛や鉄の塊の弾頭を一発撃ち込んだところであの化け物への致命的打撃にならんのも理解している、しかし散弾なら上半身に向けて撃って散弾の広がる範囲内に活骸の頭部が入りさえすれば話は違って来る、悪い話じゃないだろ?」
いつもの笑顔よりも少しだけ覇気を帯びたそれに、高根は穏やかさは保ったまま僅かに目を細め言葉を返す。
「お前が求める、それに対する見返りは?」
「何も無い、純粋に活骸の駆逐に貢献したいだけだ。私はな、戦争続きの人生で決定的な敗北を喫した事はまだ無い、生きてるだけで勝ちだからな。母国から遠く離れた地で専門外のもんに蹂躙されてそれを終わりにしたくはないんだよ」
だから私を協力させろと、タカコはそう続けた。
これに関しては本気なのだろう、こちらへと向けられる真っ直ぐで強い視線を黙して受け止め、高根はそう考える。
タカコから銃を取り上げている間に徹底的に研究はした、それでも自分達には未知にも近い代物で分解と再組み立てすら難渋したのだ、それを人生の中でかなりの時間使いこなし生き延びて来たのであろうタカコが自発的に協力するというのなら、これ程の幸運もそうは無い。
タカコが話がしたいと言っていると敦賀が言って来た時、彼に対してこう尋ねた、
「彼女は何か企んでいる様に思うか?」
と。
それに対して敦賀は今のところはそうは思えないと返し、それで話を聞く事にした。彼も自分程ではなくともそれなりに人を見抜く目は持っている、そうでなければそもそもタカコの監視役にする事も無かったのだから。
自分の経験と直感、敦賀からの評価、これを元にこれから大きな決断を下す事になる、タカコも伝えたい事を全て言い終えたのか机を挟んだ向かい側で黙してこちらを見つめ、敦賀はその後ろで壁に凭れ掛かってやはりこちらを真っ直ぐに見ていた。
いや、恐らく自分の中でももう答えは出ているのだ、大和に残された知識と技術で活骸と戦い、そしてその経過はじり貧という言葉がぴったりの体たらく。それを打破する為には大きな変革が必要なのだというのが持論なのだから。
ただ、何も考えずに踏み出す程背負う物が無いわけでも軽いわでもなく、それを秤に掛けないといけないだけ。
答えは、最初から出ている。
「工兵部隊開発班と工廠に話をつけよう、内密に動いてもらえるだけの伝手は有る、資金も何とかしよう」
普段通りの落ち着いた声音でそう伝え、ゆっくりと立ち上がるとタカコへと正対し右手を差し出した。
「非公式ではあるが二国間での同盟の締結だ、よろしく頼む」
いきなりの目上からの申し出に若干戸惑う素振りを見せたタカコも、すぐに覇気を湛えた笑みを浮かべて立ち上がり、
「こちらこそ、最善を尽くさせてもらう」
とそう言って差し出された手をしっかりと握り返す。利害が一致している間だけの即席の俄か同盟、それを見ていた敦賀が抱いたのは『何とも奇妙な光景だ』という思い。
腹の中に一物隠した者同士がお互いに敬意を払い同盟の締結とは、どんな茶番なのかと、しかしそれと同時にこの二人は確かにお互いを尊重し敬意を払ってもいるのだという事もよく分かる。
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