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第93章『制圧』
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第93章『制圧』
「……痛い目を見たくなれば抵抗はしない方が良い、対人制圧は私の専門だ」
「……タカコ……?」
抑揚の無い低く冷たい声音、普段とは全く様子が違うがそれでもそれは聞き慣れたタカコのもので、一体何が有ったのかと黒川が見上げようと顔を動かせば、それすらも押さえ込まれ床へと頬を押し付けられる。
「タカコ?何がどうなってこんな事になってんだ?」
「簡単だよ。タツさん、あんたは越えちゃいけない一線を越えた、それだけだ」
「……一線って……」
「私は大和海兵隊を離れる気は無い、それなのにあんたは私を引き離そうとしてる。それは非常に困るんだ。だったら、あんたを排除するしか無いよな?」
抑揚の無い低い、けれど獰猛な殺気に塗れた声音、そして言葉。排除という無機質な言葉に却って事態がそう穏やかではない事を感じ取り、何とか彼女を押し退けようと試みてはみるものの、普段軽々と抱き上げていた筈の彼女の身体は重くびくともしない。
「動かないだろ?力任せに押さえ込んでるわけじゃない、力の掛け方のコツが有るんだよ。対人技量では圧倒的に私が優位だ、あんたじゃ私には勝てないよ」
揶揄する様なタカコの言葉、自分よりも小柄な女に『お前では勝てない』と言われて一瞬頭に血が昇りかけるが、目の前の現実と冷たく獰猛な声音に黒川は急速に頭が冷えていった。
あれは活骸の博多侵攻の時、拳銃とナイフで活骸を軽々と殺して行ったタカコ、あれを見て遣り様によっては敦賀をも上回る力を持っている、そう感じた事を思い出す。そこで漸く理解出来たのは、今迄、彼女は自分を敵、ないしは排除すべき存在だとは認識していなかったから能力を発揮しなかっただけの事であり、一度敵性と認識されれば手加減をする理由は何処にも無いという事。
迂闊だった、警戒心を抱かせない外見に高い実力、斥候に最適な人材だと評したのは自分だったのにすっかりとそれを忘れていた。数十人単位の軍人の指揮官の立場に在るであろう人間に対して油断が過ぎた、特に彼女を愛しているのだと自覚してからこちら、そういった事はほぼ頭から消え去っていた自分に歯噛みする。
「選ばせてやるよ、私をここに留め置く事を放棄して今迄通りの付き合いを続けるか、自分の感情を優先させて私をここに留め置こうとして死体になるか。さぁ……どうする?」
「死体って……本気かよ?」
「……冗談だと思うか?」
「いや……参ったね、こりゃ」
冗談ではないだろう、彼女は恐らく本気だ、今自分の感情を優先させる事を選択すれば、本当に冷たくなって転がる羽目になるだろう。タカコ・シミズという人間の深さを全く理解していなかった、完敗だと身体の力を抜いて
「……分かった、俺が悪かったよ。今迄通りの付き合いで文句は無ぇ、身体だけの付き合い、干渉は無しだ」
そう言えば、それで漸く拘束が解かれて彼女の身体が上から退いて行く。
「分かってくれて良かったよ、私もタツさんの事は嫌いじゃない、今迄通りの付き合いが続けられるのは嬉しいね」
起き上がってみればいつもの様に屈託無い笑顔を向けられて、いつもの口調でそう言うタカコも今は底知れない恐ろしさを感じさせ、それでも尚捨てきれない彼女への感情に動かされて小さな身体を引き寄せ、腕の中に収め抱き締める。
「……おっさん、人の話聞いてた?」
「聞いてたぜ?お前のやる事に口出しはしないし敦賀とやるのも好きにしろよ。その代わり俺もお前の身体手放す気は無ぇからな?今迄通り俺の時間が有る時にはお前を迎えに行くし、抱くのも止めない。一つだけ認めて欲しいのは、俺はたまにしか会えねぇんだからそういう時には敦賀より俺を優先しろ、良いな?」
「嫌だって言っても聞く気無いでしょ?」
「無いよ?それ位の我儘は聞いてもらわねぇとな?」
「しょうがねぇおっさんだねぇ……馬鹿みたい、いや、馬鹿だな」
開き直った黒川の言葉にタカコが思わず噴き出して、黒川もそれに応じて笑いながら顎を掬い上げて口付けを落とす。
彼女に対して自分の真剣さを押し付けてはいけない、そうすれば全てを失う事になる、以前は確かにそう認識していた筈なのにいつの間にかそれすらも忘れていた、実際に失う前に彼女から機会を与えてもらったと言うべきなのだろう。
「……タツさん?」
「ん?何だ?」
「……勃ってるのは……気の所為だよね?」
「期待に添えなくて申し訳無いがしっかり勃ってるな、よし、話が纏まったところでもう一戦といくか」
「まだするの!?無理、もう無理!」
「認めませーん、聞こえませーん」
引き攣った面持ちになり慌てて腕の中から抜け出そうとしたタカコを抱き抱えて寝台へと二人で沈み込む、弱いところはもう熟知したと集中的に攻め立てれば濡れた喘ぎを漏らし始め、黒川自身もまたいつしかそれに溺れていった。
自分の距離の取り方が間違っていただけ、最終的にタカコを我が物として自分の傍へと繋ぎ止めておく事を諦めたわけではない。
初めて彼女を抱いてからこちら、一度たりとも避妊はした事が無い、昨夜数度口に吐き出して飲ませた以外は全て中へと出して来た。心を先に欲しがっても駄目なのであれば孕ませて縛り付ければ良い、自分の種だろうが敦賀の種だろうが彼女が産む子なのであれば受け止める自信も愛する自信も有る。
それが彼女の望む事ではないというのは理解している、けれど、それすら見ないふりをして自らの願望を優先させたいと、強く、強くそう思った。
「……痛い目を見たくなれば抵抗はしない方が良い、対人制圧は私の専門だ」
「……タカコ……?」
抑揚の無い低く冷たい声音、普段とは全く様子が違うがそれでもそれは聞き慣れたタカコのもので、一体何が有ったのかと黒川が見上げようと顔を動かせば、それすらも押さえ込まれ床へと頬を押し付けられる。
「タカコ?何がどうなってこんな事になってんだ?」
「簡単だよ。タツさん、あんたは越えちゃいけない一線を越えた、それだけだ」
「……一線って……」
「私は大和海兵隊を離れる気は無い、それなのにあんたは私を引き離そうとしてる。それは非常に困るんだ。だったら、あんたを排除するしか無いよな?」
抑揚の無い低い、けれど獰猛な殺気に塗れた声音、そして言葉。排除という無機質な言葉に却って事態がそう穏やかではない事を感じ取り、何とか彼女を押し退けようと試みてはみるものの、普段軽々と抱き上げていた筈の彼女の身体は重くびくともしない。
「動かないだろ?力任せに押さえ込んでるわけじゃない、力の掛け方のコツが有るんだよ。対人技量では圧倒的に私が優位だ、あんたじゃ私には勝てないよ」
揶揄する様なタカコの言葉、自分よりも小柄な女に『お前では勝てない』と言われて一瞬頭に血が昇りかけるが、目の前の現実と冷たく獰猛な声音に黒川は急速に頭が冷えていった。
あれは活骸の博多侵攻の時、拳銃とナイフで活骸を軽々と殺して行ったタカコ、あれを見て遣り様によっては敦賀をも上回る力を持っている、そう感じた事を思い出す。そこで漸く理解出来たのは、今迄、彼女は自分を敵、ないしは排除すべき存在だとは認識していなかったから能力を発揮しなかっただけの事であり、一度敵性と認識されれば手加減をする理由は何処にも無いという事。
迂闊だった、警戒心を抱かせない外見に高い実力、斥候に最適な人材だと評したのは自分だったのにすっかりとそれを忘れていた。数十人単位の軍人の指揮官の立場に在るであろう人間に対して油断が過ぎた、特に彼女を愛しているのだと自覚してからこちら、そういった事はほぼ頭から消え去っていた自分に歯噛みする。
「選ばせてやるよ、私をここに留め置く事を放棄して今迄通りの付き合いを続けるか、自分の感情を優先させて私をここに留め置こうとして死体になるか。さぁ……どうする?」
「死体って……本気かよ?」
「……冗談だと思うか?」
「いや……参ったね、こりゃ」
冗談ではないだろう、彼女は恐らく本気だ、今自分の感情を優先させる事を選択すれば、本当に冷たくなって転がる羽目になるだろう。タカコ・シミズという人間の深さを全く理解していなかった、完敗だと身体の力を抜いて
「……分かった、俺が悪かったよ。今迄通りの付き合いで文句は無ぇ、身体だけの付き合い、干渉は無しだ」
そう言えば、それで漸く拘束が解かれて彼女の身体が上から退いて行く。
「分かってくれて良かったよ、私もタツさんの事は嫌いじゃない、今迄通りの付き合いが続けられるのは嬉しいね」
起き上がってみればいつもの様に屈託無い笑顔を向けられて、いつもの口調でそう言うタカコも今は底知れない恐ろしさを感じさせ、それでも尚捨てきれない彼女への感情に動かされて小さな身体を引き寄せ、腕の中に収め抱き締める。
「……おっさん、人の話聞いてた?」
「聞いてたぜ?お前のやる事に口出しはしないし敦賀とやるのも好きにしろよ。その代わり俺もお前の身体手放す気は無ぇからな?今迄通り俺の時間が有る時にはお前を迎えに行くし、抱くのも止めない。一つだけ認めて欲しいのは、俺はたまにしか会えねぇんだからそういう時には敦賀より俺を優先しろ、良いな?」
「嫌だって言っても聞く気無いでしょ?」
「無いよ?それ位の我儘は聞いてもらわねぇとな?」
「しょうがねぇおっさんだねぇ……馬鹿みたい、いや、馬鹿だな」
開き直った黒川の言葉にタカコが思わず噴き出して、黒川もそれに応じて笑いながら顎を掬い上げて口付けを落とす。
彼女に対して自分の真剣さを押し付けてはいけない、そうすれば全てを失う事になる、以前は確かにそう認識していた筈なのにいつの間にかそれすらも忘れていた、実際に失う前に彼女から機会を与えてもらったと言うべきなのだろう。
「……タツさん?」
「ん?何だ?」
「……勃ってるのは……気の所為だよね?」
「期待に添えなくて申し訳無いがしっかり勃ってるな、よし、話が纏まったところでもう一戦といくか」
「まだするの!?無理、もう無理!」
「認めませーん、聞こえませーん」
引き攣った面持ちになり慌てて腕の中から抜け出そうとしたタカコを抱き抱えて寝台へと二人で沈み込む、弱いところはもう熟知したと集中的に攻め立てれば濡れた喘ぎを漏らし始め、黒川自身もまたいつしかそれに溺れていった。
自分の距離の取り方が間違っていただけ、最終的にタカコを我が物として自分の傍へと繋ぎ止めておく事を諦めたわけではない。
初めて彼女を抱いてからこちら、一度たりとも避妊はした事が無い、昨夜数度口に吐き出して飲ませた以外は全て中へと出して来た。心を先に欲しがっても駄目なのであれば孕ませて縛り付ければ良い、自分の種だろうが敦賀の種だろうが彼女が産む子なのであれば受け止める自信も愛する自信も有る。
それが彼女の望む事ではないというのは理解している、けれど、それすら見ないふりをして自らの願望を優先させたいと、強く、強くそう思った。
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