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第438章『援軍』
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第438章『援軍』
至近距離と言い切って良い程の距離からの機銃の掃射、周囲から響く重い衝撃に身を竦ませつつ、今度こそはとしっかりと抱え込んだタカコの身体を敦賀は強く抱き締めた。退避行動に転じたのが早かったお蔭か、それとも被弾した者は即死したのか、叫びは何処からも聞こえて来ない。十秒程掃射が続いた後、不意に訪れた静けさに顔を上げて周囲を窺えばあちこちの物陰に同じ様に伏せる仲間の姿が在り、その後腕の中を覗き込めば、そこには険しい顔付きをしつつも無事なタカコの姿が在った。
「おい、平気か」
「……ああ、大丈夫。今のところは、だがな」
敦賀に抱き締められ話し掛けられ、一瞬は顔と身体を強張らせたものの、今の状況で余計な我を張っても意味が無いと判断したのか、タカコは大和語で言葉を返す。
「状況!」
「死者負傷者無し!」
「こっちもです!!」
「こちらも無し!!」
漸く腕の中に収められた事を喜べる余裕は無く、それでも無事で良かったと思い頭を撫でながら声を張り上げれば、周囲からは無事を報告する声が上がった。上空からは見えない場所に全員が身を隠せたのだろう、追撃が加えられる事は無くかと言って飛び去る様子も無く、上空からは依然として不気味な羽音が響いて来る。
「これからどうするか、だな」
「何か良い手は有るのか?」
「無い。しかし、ここに隠れたままでもジリ貧だ……分散した上で森の中を通って市街地を目指すしか無いな」
腕の中のタカコへと問い掛ければ返されたのは簡潔且つ明確な返答、先程は機銃で済んだが対馬区に投下された爆弾を持ち出されたら一溜りも無いという事は敦賀にも理解出来、彼女の言葉の通りに動くしか無さそうだと顔を上げて声を張り上げる。
「このまま森の中を抜けて市街地を目指すぞ!絶対に密集するな、分散して――」
言い終わる前に再び地面に銃弾の雨が叩き付けられ、敦賀の声は掻き消される。命令の伝達すら思う様にならない状況に歯噛みをするが、しかしそれで事態が打開される事は当然無く、被弾しない様にと身体を限界迄竦ませるしか出来なかった。
どうにかして動かなければこのままでは――、胸中でそう吐き捨てた敦賀の腕の中でタカコが動き出す。先ずは自分を抱き締める敦賀の腕を解き抜け出すと、彼の身体の横に同じ様にして身を伏せ、その状態で木々の枝葉の間からちらちらと見える機体の様子を窺った。
「メインでもテールでも、ローターを破壊出来ればどうとでもなるんだがな……何の装備も持ってない現状じゃそれは無理だし、さて……どうするかね」
やはり分散して移動するしか無いか、そんな遣り取りを敦賀と交わしながらタカコが身体を起こせば、その程度の回避策は相手も分かっているのか今度は森の中目掛けての掃射が始まる。舌打ちをしながら再度伏せるタカコ、その彼女の身体を引き寄せて抱き締める敦賀、周囲もこうなってしまっては動く事も出来ず、事態は膠着状態へと陥った。
何とかこの場からの離脱を、そう考えた者が這いずって少しずつ動き始めるもそれは遅々として進まない中、敦賀の胸中には嫌な予感が湧き上がる。ヨシユキはタカコを可能な限り生かした状態で手中に収めようとしている、彼からそれをはっきり聞いたわけではないが、状況はそれを物語っている。上空にいる機体にも彼のその意志が伝わっているのだとしたら、そして、タカコがそれに気付いているのだとしたら。状況が絶望的であればある程、彼女はヨシユキの意に沿う様に動こうとするのではないだろうか、自分達や部下達を助ける為に。
その事に思い至り、させてなるものかと彼女の身体を更に深く抱え込む為に腕に力を込めようとした寸前、腕の中から気配が、消えた。
「タカコ!?戻って――」
「生きろよ、約束だ」
タカコのその言葉が耳朶を打ち、立ち上がり歩き始めた小さな背中が遠ざかって行く。後を追おうとすれば再度の掃射が周囲に浴びせられ、敦賀の直ぐ横に伏せていた藤田が半分起き上がっていた敦賀の体躯を無理矢理に地面へと捻じ伏せる。
「ヒデ!離せ!!」
「出来るワケ無ぇだろうがド阿呆!!」
声を張り上げ弾き飛ばそうとしても、藤田はそれ以上の声量と力で敦賀を押さえ込む。機体には敦賀が思ってい通りの命令が下っていたのだろう、森の中からタカコが姿を現し彼等へと向けてその姿を晒した直後、あれ程激しかった掃射はぴたりと止み、重い羽音が空気を震わせるだけとなった。
「ヒデ!!離せ!!タカコが――」
「分かってるんだよそんな事は!!でもな、お前はそれであいつが作ってくれた時間を無駄にするのか!!島津さん、早く移動しましょう!!」
「総員退避開始!!市街地に戻るぞ!!」
敦賀だけではなくタカコの部下達も敦賀と同様の反応を示したのか、あちこちで彼等の身体を周囲の海兵が押さえ込んでいる。島津はその様子に舌打ちをしながら身体を起こし、タカコが稼いでくれた時間を無駄にする事だけは有ってはならないと即時の退避を命令した。
背後で繰り広げられる修羅場、タカコはそれを感じながら、小さく笑う。動き出す直前に敦賀は自分を強く抱き締めようとした、あれは恐らく、ヨシユキの意図、そしてそれを読み取っていた自分の意図を察してそうはさせるまいと動こうとしたのだろう。
国も所属も違う、状況が少しでも違えば敵対していた関係だったかも知れない男。そんな人物とこうも繋がってしまうとは何とも皮肉な事だと思いながらその顔から笑みを消し、ポケットに入っていた晒しを取り出し、それを上空の機体へと向けて大きく振り敵意は無いと示してみせる。
この先どうなるかは分からない、それでも、時間を稼いでいる間に部下と海兵達はこの場から離脱してくれるだろう。自分の方はヨシユキの執着が有る以上は命の心配だけはしなくて良さそうだと思いながら、機体から投下されたロープの先端に付けられたカラビナへと手を伸ばした瞬間、上空から吹き付けた強い爆風にその場から弾き飛ばされ地面へと転がった。
一体何が――、状況が把握出来ずに顔を上げれば、そこに在ったのは機体から黒煙と火を噴かせながら錐揉み回転をしつつ落下を始めた機体の姿。このままでは押し潰されると起き上がったタカコが元来た方向へと走り出し
「逃げろ!逃げろ逃げろ走れ!!」
そう声を放れば、それを受けて部下も海兵も走り出す。一体全体何がどうなっているのか皆目分からないが助かった、そう思いながら走り続ければやがて背後から響いて来た大きな爆発音、金属片が飛んで来るのを身体で受け止めつつ、脚を止める事無く走り続けた。
「一体……何がどうなってるってんだ……?」
一行の歩みが緩んだのは五分程走り続けてから。上空に機体の追跡を受けている気配は有るがそこから攻撃が加えられる事は無く、そんな中、木々の枝の間から覗く機体の様子を窺っていたタカコの歩みが、突然止まった。
「タカコ?どうした?」
『……もしかして……』
双眸を見開き何事かを呟くタカコ、ワシントン語を理解出来ない敦賀が眉根を寄せつつ声を掛けた直後、上空から拡声器を通して男の声が周囲に響き渡った。
『ボス!俺です!チスネロスです!!南の平地部分に移動して下さい、迎えに来ました!!時間が有りません、急いで!!』
その言葉に急に活気付くタカコと部下達、言葉の意味が分からずに戸惑う大和海兵隊。その彼等にタカコの
「移動するぞ!!援軍だ!制圧艦隊が到着した!!」
という言葉が投げ掛けられ、それにより漸く海兵達も事の次第の何割かが飲み込めた按配となり、一行は負傷者を気遣いつつもタカコを先頭にして一気に南へと向かって移動し始める。
やがて辿り着いたのは山間部の中に在る小さな平野部、その中心には既に二機の機体が先行しており、そこから出て来た数名の男達は
「乗ルノ、人間ダケ!武器、後デ取リニ来テ!!捨テナイト全員乗セラレナイ!!早ク乗ッテ!!」
という片言の大和語で武器を放棄しろと呼び掛け、先ずは負傷者を、次に身軽になった者から次々と機内へと押し込み始めた。
『ボス、御無事で!!良かったです!!』
『よく来てくれた、直ぐに大和海兵隊基地に!!』
『了解!あの通り既に侵攻艦隊のホーネットも離艦してます、戦闘にならないとも限りません、しっかり掴まっていて下さいよ!!』
最後に乗り込んだタカコ、その彼女の腕を掴んで一気に引き上げたチスネロスとそんな言葉を交わし、その直後機体は地面へ空気を叩きつけながらゆっくりと上昇を開始する。そして、大和海兵隊基地へと向かって、低空を高速での移動を開始した。
至近距離と言い切って良い程の距離からの機銃の掃射、周囲から響く重い衝撃に身を竦ませつつ、今度こそはとしっかりと抱え込んだタカコの身体を敦賀は強く抱き締めた。退避行動に転じたのが早かったお蔭か、それとも被弾した者は即死したのか、叫びは何処からも聞こえて来ない。十秒程掃射が続いた後、不意に訪れた静けさに顔を上げて周囲を窺えばあちこちの物陰に同じ様に伏せる仲間の姿が在り、その後腕の中を覗き込めば、そこには険しい顔付きをしつつも無事なタカコの姿が在った。
「おい、平気か」
「……ああ、大丈夫。今のところは、だがな」
敦賀に抱き締められ話し掛けられ、一瞬は顔と身体を強張らせたものの、今の状況で余計な我を張っても意味が無いと判断したのか、タカコは大和語で言葉を返す。
「状況!」
「死者負傷者無し!」
「こっちもです!!」
「こちらも無し!!」
漸く腕の中に収められた事を喜べる余裕は無く、それでも無事で良かったと思い頭を撫でながら声を張り上げれば、周囲からは無事を報告する声が上がった。上空からは見えない場所に全員が身を隠せたのだろう、追撃が加えられる事は無くかと言って飛び去る様子も無く、上空からは依然として不気味な羽音が響いて来る。
「これからどうするか、だな」
「何か良い手は有るのか?」
「無い。しかし、ここに隠れたままでもジリ貧だ……分散した上で森の中を通って市街地を目指すしか無いな」
腕の中のタカコへと問い掛ければ返されたのは簡潔且つ明確な返答、先程は機銃で済んだが対馬区に投下された爆弾を持ち出されたら一溜りも無いという事は敦賀にも理解出来、彼女の言葉の通りに動くしか無さそうだと顔を上げて声を張り上げる。
「このまま森の中を抜けて市街地を目指すぞ!絶対に密集するな、分散して――」
言い終わる前に再び地面に銃弾の雨が叩き付けられ、敦賀の声は掻き消される。命令の伝達すら思う様にならない状況に歯噛みをするが、しかしそれで事態が打開される事は当然無く、被弾しない様にと身体を限界迄竦ませるしか出来なかった。
どうにかして動かなければこのままでは――、胸中でそう吐き捨てた敦賀の腕の中でタカコが動き出す。先ずは自分を抱き締める敦賀の腕を解き抜け出すと、彼の身体の横に同じ様にして身を伏せ、その状態で木々の枝葉の間からちらちらと見える機体の様子を窺った。
「メインでもテールでも、ローターを破壊出来ればどうとでもなるんだがな……何の装備も持ってない現状じゃそれは無理だし、さて……どうするかね」
やはり分散して移動するしか無いか、そんな遣り取りを敦賀と交わしながらタカコが身体を起こせば、その程度の回避策は相手も分かっているのか今度は森の中目掛けての掃射が始まる。舌打ちをしながら再度伏せるタカコ、その彼女の身体を引き寄せて抱き締める敦賀、周囲もこうなってしまっては動く事も出来ず、事態は膠着状態へと陥った。
何とかこの場からの離脱を、そう考えた者が這いずって少しずつ動き始めるもそれは遅々として進まない中、敦賀の胸中には嫌な予感が湧き上がる。ヨシユキはタカコを可能な限り生かした状態で手中に収めようとしている、彼からそれをはっきり聞いたわけではないが、状況はそれを物語っている。上空にいる機体にも彼のその意志が伝わっているのだとしたら、そして、タカコがそれに気付いているのだとしたら。状況が絶望的であればある程、彼女はヨシユキの意に沿う様に動こうとするのではないだろうか、自分達や部下達を助ける為に。
その事に思い至り、させてなるものかと彼女の身体を更に深く抱え込む為に腕に力を込めようとした寸前、腕の中から気配が、消えた。
「タカコ!?戻って――」
「生きろよ、約束だ」
タカコのその言葉が耳朶を打ち、立ち上がり歩き始めた小さな背中が遠ざかって行く。後を追おうとすれば再度の掃射が周囲に浴びせられ、敦賀の直ぐ横に伏せていた藤田が半分起き上がっていた敦賀の体躯を無理矢理に地面へと捻じ伏せる。
「ヒデ!離せ!!」
「出来るワケ無ぇだろうがド阿呆!!」
声を張り上げ弾き飛ばそうとしても、藤田はそれ以上の声量と力で敦賀を押さえ込む。機体には敦賀が思ってい通りの命令が下っていたのだろう、森の中からタカコが姿を現し彼等へと向けてその姿を晒した直後、あれ程激しかった掃射はぴたりと止み、重い羽音が空気を震わせるだけとなった。
「ヒデ!!離せ!!タカコが――」
「分かってるんだよそんな事は!!でもな、お前はそれであいつが作ってくれた時間を無駄にするのか!!島津さん、早く移動しましょう!!」
「総員退避開始!!市街地に戻るぞ!!」
敦賀だけではなくタカコの部下達も敦賀と同様の反応を示したのか、あちこちで彼等の身体を周囲の海兵が押さえ込んでいる。島津はその様子に舌打ちをしながら身体を起こし、タカコが稼いでくれた時間を無駄にする事だけは有ってはならないと即時の退避を命令した。
背後で繰り広げられる修羅場、タカコはそれを感じながら、小さく笑う。動き出す直前に敦賀は自分を強く抱き締めようとした、あれは恐らく、ヨシユキの意図、そしてそれを読み取っていた自分の意図を察してそうはさせるまいと動こうとしたのだろう。
国も所属も違う、状況が少しでも違えば敵対していた関係だったかも知れない男。そんな人物とこうも繋がってしまうとは何とも皮肉な事だと思いながらその顔から笑みを消し、ポケットに入っていた晒しを取り出し、それを上空の機体へと向けて大きく振り敵意は無いと示してみせる。
この先どうなるかは分からない、それでも、時間を稼いでいる間に部下と海兵達はこの場から離脱してくれるだろう。自分の方はヨシユキの執着が有る以上は命の心配だけはしなくて良さそうだと思いながら、機体から投下されたロープの先端に付けられたカラビナへと手を伸ばした瞬間、上空から吹き付けた強い爆風にその場から弾き飛ばされ地面へと転がった。
一体何が――、状況が把握出来ずに顔を上げれば、そこに在ったのは機体から黒煙と火を噴かせながら錐揉み回転をしつつ落下を始めた機体の姿。このままでは押し潰されると起き上がったタカコが元来た方向へと走り出し
「逃げろ!逃げろ逃げろ走れ!!」
そう声を放れば、それを受けて部下も海兵も走り出す。一体全体何がどうなっているのか皆目分からないが助かった、そう思いながら走り続ければやがて背後から響いて来た大きな爆発音、金属片が飛んで来るのを身体で受け止めつつ、脚を止める事無く走り続けた。
「一体……何がどうなってるってんだ……?」
一行の歩みが緩んだのは五分程走り続けてから。上空に機体の追跡を受けている気配は有るがそこから攻撃が加えられる事は無く、そんな中、木々の枝の間から覗く機体の様子を窺っていたタカコの歩みが、突然止まった。
「タカコ?どうした?」
『……もしかして……』
双眸を見開き何事かを呟くタカコ、ワシントン語を理解出来ない敦賀が眉根を寄せつつ声を掛けた直後、上空から拡声器を通して男の声が周囲に響き渡った。
『ボス!俺です!チスネロスです!!南の平地部分に移動して下さい、迎えに来ました!!時間が有りません、急いで!!』
その言葉に急に活気付くタカコと部下達、言葉の意味が分からずに戸惑う大和海兵隊。その彼等にタカコの
「移動するぞ!!援軍だ!制圧艦隊が到着した!!」
という言葉が投げ掛けられ、それにより漸く海兵達も事の次第の何割かが飲み込めた按配となり、一行は負傷者を気遣いつつもタカコを先頭にして一気に南へと向かって移動し始める。
やがて辿り着いたのは山間部の中に在る小さな平野部、その中心には既に二機の機体が先行しており、そこから出て来た数名の男達は
「乗ルノ、人間ダケ!武器、後デ取リニ来テ!!捨テナイト全員乗セラレナイ!!早ク乗ッテ!!」
という片言の大和語で武器を放棄しろと呼び掛け、先ずは負傷者を、次に身軽になった者から次々と機内へと押し込み始めた。
『ボス、御無事で!!良かったです!!』
『よく来てくれた、直ぐに大和海兵隊基地に!!』
『了解!あの通り既に侵攻艦隊のホーネットも離艦してます、戦闘にならないとも限りません、しっかり掴まっていて下さいよ!!』
最後に乗り込んだタカコ、その彼女の腕を掴んで一気に引き上げたチスネロスとそんな言葉を交わし、その直後機体は地面へ空気を叩きつけながらゆっくりと上昇を開始する。そして、大和海兵隊基地へと向かって、低空を高速での移動を開始した。
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