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第498章『ずっと、呼んで欲しかった』
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第498章『ずっと、呼んで欲しかった』
一回目と二回目の射精は、一年以上もの間生身の女には触れずに一人だけを想い続けていた結果なのか、ひどく早かった。一回目は挿入から一分ももたず、その勢いのまま突き進んだ二回目も、動き出してから五分も掛からなかった。しかしそれで昂ぶり続けていた気持ちは多少は落ち着いたのか行為を続けながらも言葉を交わす余裕が出来、その後はたっぷりと時間を掛けながら抱く事が出来た。
そうして何度吐き出し果てさせたかも分からなくなる程に行為とタカコに溺れ、最後はぐったりとしてましったタカコの寝顔を見ながら、敦賀自身も眠りへと落ちていった。
その眠りからゆっくりと浮上を始める意識、高い気温と窓の外から聞こえて来る蝉の声、そして汗と体液がべったとりと纏わりついた感触が何とも不快だが、それでも満ち足りた幸福感を感じながら口元を緩め、腕の中の身体を抱き締めようと力を込める。
「……!!」
しかし、穏やかな気持ちでいられたのは、そこ迄だった。
腕に力を込めてもそこに感触は無く、その事を認識した瞬間に双眸を見開いて跳ね起きる。室内は無人、昨夜行為の途中に脱がせて寝台脇へと放った筈の、タカコが来ていた自分の下着と肌着も無く、それを目にした敦賀の意識はあの別れの日の朝に一瞬にして立ち戻る。どれだけ走り回っても探し回っても、どれだけタカコの名前を呼んでも、彼女が姿を現す事も返事が返って来る事も無かった。あの日も、眠りに落ちる時にずっと傍にいると約束したのに、彼女は何も言わずに姿を消し、そして帰って来なかった。今日もまたそうなのかと敦賀は寝台から転げ落ち、それでも何とか気持ちと体勢を立て直し、タカコを探しに行こうと脱ぎ捨てていた肌着と下着へと手を伸ばす。
またか、またなのか――、心でそう思い口に出そうとしても、寝起きだという事に加えて緊張の為か喉はからからで、引き攣った様な呼吸音が口から漏れるだけ。先ずは基地に探しに行こう、そう思って箪笥から服を引っ掴んで取り出すと、階下へと降りようと走り出した。
「あれ?慌ててどうした?基地から呼び出しか?」
玄関に向かおうと階段を転げ落ちる様にして降りて一階の床に足をついた時、玄関の引き戸が開きその向こうからタカコが姿を現す。昨日着ていた敦賀の服を着て左手にはヤスコとトルゴの引き紐、右手には何か買い物でもして来たのかビニールの袋が下げられており、随分と必死な様子の敦賀に驚いたのか、ヤスコとトルゴには庭にいる様に命令し自らは中へと玄関へと入り扉を閉め、靴を脱いで室内へと上がって来る。
消えたわけではなかった――、何をしていたのか何処に行っていたのかは分からずとも何とかそれだけは把握した敦賀、タカコがいるという事に安堵し途端に身体から力が抜け、床へと崩れ落ちる様に座り込んだ様を見て、タカコは何事かと思い彼へと駆け寄り傍らに膝を突き顔を覗き込む。
「どうした?何か――」
「……何処に、行ったのかと……また消えたのかと、思った」
「私を探してたのか?いなくなったと思って?」
「……ああ……頼むから、何も言わずに俺の視界から消えないでくれ……頼むから」
俯いてそう呟く敦賀の身体は小さく震えていて、彼は決して恐怖を克服したわけではない事にタカコは漸く気付く。色々な理由が有ったにせよ自分はこの男を酷く傷付け、そして彼は今でもその傷と恐怖を抱えたままなのだという事に思い至り僅かに顔を歪め、タカコは目の前で小さく震える大きな身体へと、そっと腕を伸ばし優しく抱き締めた。
「ごめんな。もう、何処にも行かないから、約束する。だから、もう怖がらないで……貴之」
耳朶を打つ聞き慣れない言葉――、それが、タカコが自分の事を呼んでいるのだと敦賀が認識するのには、少々の時間を要した。驚きに顔を上げてみればそこには少し照れ臭そうなタカコの顔、
「へへ……やっと、呼べた」
そう言って笑う彼女の笑顔に熱いものが込み上げ、僅かも堪える事が出来なかったそれを双眸から溢れさせながら、敦賀は目の前の身体を強く、強く抱き締め返す。
「……ずっと」
「うん」
「ずっと……そうやって、名前を呼んで欲しかった」
「……うん、幾らでも呼んであげる……この先、ずっと、一緒だから」
敦賀の声は震えていて、彼が顔を埋めた肩の辺りに温かな湿りが広がるのを感じながらタカコは微笑み彼の背中へと腕を伸ばし、いつ迄も、宥める様にあやす様に優しく撫で摩っていた。
布団の中で目を開けてみれば、腕の中には寝息を立てるタカコ、今度はちゃんといる、ぼんやりとそう思った敦賀が彼女の頬へと口付けて寝台脇の机の上に置かれた時計へと視線を向ければ、時刻は六時を指していた。窓の外を見てみれば夕暮れ時、結局今日は彼女を抱く以外の事は何もしなかったなと身体を起こせば、その気配でタカコも目を覚ましもぞもぞと動いた後、敦賀の腰へと腕を回し抱き付いてくる。
「……お腹空いた……」
「また中洲に出るか、買い物もしてねぇし」
「朝ご飯用に買って来たおにぎりが下に置いたままになってるけど、それ食べ――、あ、そうだ」
「その程度じゃ足りねぇだろう……って、どうした」
流石に数時間程度の休憩しかとらずにほぼ一日中抱かれていたのでは身体もだるいのか、のろのろと起き上がるタカコ、どうしたのかという敦賀の問い掛けに応える事は無く着ていた服へと手を伸ばし、ズボンのポケットから一通の封書を取り出し、
「ん」
と、敦賀へと向かってそれを差し出してくる。
「何なんだよ」
「今朝にでも渡そうと思って忘れてた。親父さんから預かった、とにかく読め」
「内容は何なんだよ。つーか、お前、ここに来る前に親父に会ったのか」
「大阪から上陸してそのまま京都入りして、その時にな。とにかく、読め、内容は知らん」
向こうからは色々と歩み寄りの姿勢を示してき来てはいたものの、敦賀が明確にそれに応じる事は無く、結局タカコとの別れの時から今迄、親子の間には会話は全くと言って良い程に無かった。今更何を伝えたいのかと一度はタカコに押し返そうとするものの強い力でそれを返され、結局受け取ってしまい暫くはその封書を見下ろし、どうしたものかと考え込む。それでも様子を窺っていたタカコの催促に負けて封を切り、三つ折りにされた一枚の便箋を手にし、数分の間は躊躇したものの、
「早く読めって。絶対に渡して読ませてくれって、親父さんにも頼まれてるんだから」
というタカコの言葉と軽い肘鉄に負け、折り畳まれていた便箋を広げ、そこに記された文字列へと視線を落とす。
『一人前の男が結婚するというのに親に挨拶も無しか。休みをとってタカコさんを連れて帰って来い』
便箋の真ん中に書かれていたのは、たったそれだけ。
あの気難しい父の事だ、あれこれと体裁を取り繕う文章も考えたに違いないのに、色々と考え込んでしまいどうにもならなくなったのだろう。そして最終的に単純が一番だと思い直し、こうして言いたい事だけを突っ慳貪にも感じる様な文面にしてタカコに託したのであろうと思い至り、敦賀は口角を僅かに上げると、手にしていた便箋の内容をタカコへと示して見せる。
「挨拶に来いってよ、親父が」
「え、挨拶って」
「そりゃ、俺とお前が結婚するんだから、俺の親への挨拶はしねぇとなぁ?」
途端に挙動不審になるタカコ、肚の据わっているこいつもこういう時には狼狽えるものなのか、敦賀はそんな事を考えながら目を細め、再び彼女へと覆い被さった。
「腹減った、飯食いに行くぞ。明日は朝から京都に出発だ。着くのは明日の夜だな」
顔を覗き込んでそう言えば彼女の顔は真っ赤になっており、普段は本当に分かり易いとまた小さく笑い、出掛ける前にもう一度、そう思いながら彼女の首筋へと吸い付いた。
一回目と二回目の射精は、一年以上もの間生身の女には触れずに一人だけを想い続けていた結果なのか、ひどく早かった。一回目は挿入から一分ももたず、その勢いのまま突き進んだ二回目も、動き出してから五分も掛からなかった。しかしそれで昂ぶり続けていた気持ちは多少は落ち着いたのか行為を続けながらも言葉を交わす余裕が出来、その後はたっぷりと時間を掛けながら抱く事が出来た。
そうして何度吐き出し果てさせたかも分からなくなる程に行為とタカコに溺れ、最後はぐったりとしてましったタカコの寝顔を見ながら、敦賀自身も眠りへと落ちていった。
その眠りからゆっくりと浮上を始める意識、高い気温と窓の外から聞こえて来る蝉の声、そして汗と体液がべったとりと纏わりついた感触が何とも不快だが、それでも満ち足りた幸福感を感じながら口元を緩め、腕の中の身体を抱き締めようと力を込める。
「……!!」
しかし、穏やかな気持ちでいられたのは、そこ迄だった。
腕に力を込めてもそこに感触は無く、その事を認識した瞬間に双眸を見開いて跳ね起きる。室内は無人、昨夜行為の途中に脱がせて寝台脇へと放った筈の、タカコが来ていた自分の下着と肌着も無く、それを目にした敦賀の意識はあの別れの日の朝に一瞬にして立ち戻る。どれだけ走り回っても探し回っても、どれだけタカコの名前を呼んでも、彼女が姿を現す事も返事が返って来る事も無かった。あの日も、眠りに落ちる時にずっと傍にいると約束したのに、彼女は何も言わずに姿を消し、そして帰って来なかった。今日もまたそうなのかと敦賀は寝台から転げ落ち、それでも何とか気持ちと体勢を立て直し、タカコを探しに行こうと脱ぎ捨てていた肌着と下着へと手を伸ばす。
またか、またなのか――、心でそう思い口に出そうとしても、寝起きだという事に加えて緊張の為か喉はからからで、引き攣った様な呼吸音が口から漏れるだけ。先ずは基地に探しに行こう、そう思って箪笥から服を引っ掴んで取り出すと、階下へと降りようと走り出した。
「あれ?慌ててどうした?基地から呼び出しか?」
玄関に向かおうと階段を転げ落ちる様にして降りて一階の床に足をついた時、玄関の引き戸が開きその向こうからタカコが姿を現す。昨日着ていた敦賀の服を着て左手にはヤスコとトルゴの引き紐、右手には何か買い物でもして来たのかビニールの袋が下げられており、随分と必死な様子の敦賀に驚いたのか、ヤスコとトルゴには庭にいる様に命令し自らは中へと玄関へと入り扉を閉め、靴を脱いで室内へと上がって来る。
消えたわけではなかった――、何をしていたのか何処に行っていたのかは分からずとも何とかそれだけは把握した敦賀、タカコがいるという事に安堵し途端に身体から力が抜け、床へと崩れ落ちる様に座り込んだ様を見て、タカコは何事かと思い彼へと駆け寄り傍らに膝を突き顔を覗き込む。
「どうした?何か――」
「……何処に、行ったのかと……また消えたのかと、思った」
「私を探してたのか?いなくなったと思って?」
「……ああ……頼むから、何も言わずに俺の視界から消えないでくれ……頼むから」
俯いてそう呟く敦賀の身体は小さく震えていて、彼は決して恐怖を克服したわけではない事にタカコは漸く気付く。色々な理由が有ったにせよ自分はこの男を酷く傷付け、そして彼は今でもその傷と恐怖を抱えたままなのだという事に思い至り僅かに顔を歪め、タカコは目の前で小さく震える大きな身体へと、そっと腕を伸ばし優しく抱き締めた。
「ごめんな。もう、何処にも行かないから、約束する。だから、もう怖がらないで……貴之」
耳朶を打つ聞き慣れない言葉――、それが、タカコが自分の事を呼んでいるのだと敦賀が認識するのには、少々の時間を要した。驚きに顔を上げてみればそこには少し照れ臭そうなタカコの顔、
「へへ……やっと、呼べた」
そう言って笑う彼女の笑顔に熱いものが込み上げ、僅かも堪える事が出来なかったそれを双眸から溢れさせながら、敦賀は目の前の身体を強く、強く抱き締め返す。
「……ずっと」
「うん」
「ずっと……そうやって、名前を呼んで欲しかった」
「……うん、幾らでも呼んであげる……この先、ずっと、一緒だから」
敦賀の声は震えていて、彼が顔を埋めた肩の辺りに温かな湿りが広がるのを感じながらタカコは微笑み彼の背中へと腕を伸ばし、いつ迄も、宥める様にあやす様に優しく撫で摩っていた。
布団の中で目を開けてみれば、腕の中には寝息を立てるタカコ、今度はちゃんといる、ぼんやりとそう思った敦賀が彼女の頬へと口付けて寝台脇の机の上に置かれた時計へと視線を向ければ、時刻は六時を指していた。窓の外を見てみれば夕暮れ時、結局今日は彼女を抱く以外の事は何もしなかったなと身体を起こせば、その気配でタカコも目を覚ましもぞもぞと動いた後、敦賀の腰へと腕を回し抱き付いてくる。
「……お腹空いた……」
「また中洲に出るか、買い物もしてねぇし」
「朝ご飯用に買って来たおにぎりが下に置いたままになってるけど、それ食べ――、あ、そうだ」
「その程度じゃ足りねぇだろう……って、どうした」
流石に数時間程度の休憩しかとらずにほぼ一日中抱かれていたのでは身体もだるいのか、のろのろと起き上がるタカコ、どうしたのかという敦賀の問い掛けに応える事は無く着ていた服へと手を伸ばし、ズボンのポケットから一通の封書を取り出し、
「ん」
と、敦賀へと向かってそれを差し出してくる。
「何なんだよ」
「今朝にでも渡そうと思って忘れてた。親父さんから預かった、とにかく読め」
「内容は何なんだよ。つーか、お前、ここに来る前に親父に会ったのか」
「大阪から上陸してそのまま京都入りして、その時にな。とにかく、読め、内容は知らん」
向こうからは色々と歩み寄りの姿勢を示してき来てはいたものの、敦賀が明確にそれに応じる事は無く、結局タカコとの別れの時から今迄、親子の間には会話は全くと言って良い程に無かった。今更何を伝えたいのかと一度はタカコに押し返そうとするものの強い力でそれを返され、結局受け取ってしまい暫くはその封書を見下ろし、どうしたものかと考え込む。それでも様子を窺っていたタカコの催促に負けて封を切り、三つ折りにされた一枚の便箋を手にし、数分の間は躊躇したものの、
「早く読めって。絶対に渡して読ませてくれって、親父さんにも頼まれてるんだから」
というタカコの言葉と軽い肘鉄に負け、折り畳まれていた便箋を広げ、そこに記された文字列へと視線を落とす。
『一人前の男が結婚するというのに親に挨拶も無しか。休みをとってタカコさんを連れて帰って来い』
便箋の真ん中に書かれていたのは、たったそれだけ。
あの気難しい父の事だ、あれこれと体裁を取り繕う文章も考えたに違いないのに、色々と考え込んでしまいどうにもならなくなったのだろう。そして最終的に単純が一番だと思い直し、こうして言いたい事だけを突っ慳貪にも感じる様な文面にしてタカコに託したのであろうと思い至り、敦賀は口角を僅かに上げると、手にしていた便箋の内容をタカコへと示して見せる。
「挨拶に来いってよ、親父が」
「え、挨拶って」
「そりゃ、俺とお前が結婚するんだから、俺の親への挨拶はしねぇとなぁ?」
途端に挙動不審になるタカコ、肚の据わっているこいつもこういう時には狼狽えるものなのか、敦賀はそんな事を考えながら目を細め、再び彼女へと覆い被さった。
「腹減った、飯食いに行くぞ。明日は朝から京都に出発だ。着くのは明日の夜だな」
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