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第247章『土下座』
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第247章『土下座』
「……何してんの?」
「……土下座」
「うん、それは見れば分かる。何で土下座してんの?」
「……先々代の大切な孫娘且つ優秀な部下の可愛い妹を手篭めにして孕ませたからです」
朝の海兵隊総司令執務室、黒川に送られて基地へと戻って来たタカコに警衛が声を掛け、司令が呼んでいると言われてそちらへと向かった彼女が見たものは、壁に向かって土下座をしている高根の姿、その先の壁には先々代の島津中将の写真が掛けられている。いったい何をしているのかと問い掛ければ、それに返された言葉にタカコは動きを失った。
「え、じゃあ本当に凛ちゃん――」
「……ああ、島津凛、祖父は先々代の海兵隊総司令の島津義弘中将、兄は現役海兵隊士官の島津仁一少佐、間違い無いってよ」
そう言いながら起き上がりソファへと身を埋める高根、タカコもそれに合わせて向かいへと腰を下ろせば、高根は浮かない面持ちのままがしがしと短い髪を掻く。そう言えば昨晩は帰ってから話をしたからこそ事実が分かったのだろうが、何故そんなに浮かない様子なのかとタカコが問い掛ければ、高根は少々遠い眼差しで空中を見詰めて口を開く。
「……じゃあおめぇよ……島津にどんなツラ下げてどう言えば良いんだよ俺は……中洲の花街でふらふらしてたところをナンパしてその日の内に家に連れ込んで、最初は家政婦扱いしてその後は好き放題に抱いてその上最初の一発で孕ませちゃいましたとか……言えねぇだろ、常識的に考えて……」
「……お前……本当に腐った屑だったんだな……」
「……それは否定しねぇ……」
「いや、否定しろよそこは」
初めて聞く高根と凛の今迄の経緯、多少の自虐や誇張は入っているのだろうが、それを差し引いたとしても想像していた以上の屑な内容に流石にタカコも唖然としてしまう。
「で?いつ頃出会ったのよお前等二人」
「お前が旧営舎爆破しただろ、あの日の夜に帰ってからよ、久し振りに吐き出すかと思って花街出向いたのよ。その時に店の前に突っ立っててな、最初はガキが何でこんな時間にこんなところにって思ったんだよな、こっちに背中向けてたからよ。で、店入る時にひょいと顔見たらガキじゃなくて、泣き出しそうな顔しててよ、それでよ、入るの止めていつもの飲み屋に連れて行って飯食わせて話聞いたんだよ。そうしたらよ、嫁ぎ先で子供出来なくて離縁されて叩き出されて、実家に戻ったら近所の奴に家族全員一昨年の博多曝露で死んだって聞かされたんだと。まぁ、兄貴は生きてたから、近所の勘違いだったんだろうけど。それでもう一度婚家に戻って身の振り方決まる迄置いて欲しいって頼んだら、だったら身体売って金稼いで来いって言われて中洲の花街ふらふらしてたんだとさ、それを俺が見つけたと」
「……うわぁ……絵に描いた様な屑一家だなその婚家……お前が最悪の屑だと思ってたけど、下には下がいるな……」
その時に何とも庇護心を擽られ、住み込みの家政婦として家に招きいれたのが同棲の切っ掛けなのだと聞かされ、タカコはその内容に相槌を打ちながら煙草に火を点ける。そうして一緒に暮らす様になって、妊娠の時期を考えると三ヶ月程は男女の仲になる事も無く過ごしていた事になる。いきなりの同棲はどうかと思うものの、それでも節度の有る態度を一定期間は崩さなかったのであろう事を考えれば、そう憂鬱になる事も無いのではと思いはするものの、島津が妹を可愛がっていたという事は聞いた事が有るし、そうなると事実を知れば彼もやはり複雑な思いを抱いてしまうのだろうなと思い至った。
「んで?私を呼び出したのは?」
「ああ、今から島津に話すからよ、凛連れて来てくれねぇか?聞いたら直ぐに会いたがると思ってよ、島津が生きてる事はまだ話してねぇんだよ。俺が先に島津に話しておくから、お前はそこに凛を連れて来てくれや」
「あー……修羅場になる可能性有るからね、妊婦さんには見せられないよね……」
「……お願いします……」
「はいはい、分かったよ。それじゃあ早速行って来るから、お前はさっさと死刑宣告受けておけ」
益々げんなりした面持ちになる高根、タカコはそれを見て灰皿に煙草を押し付けて立ち上がる。そう簡単に済む話でもないだろうから、取り敢えずは急ぎの仕事を片付けてから出ると言えば高根はそれを首肯し、
「ま、頑張れよ」
と、笑ってそう言って執務室を出た。
「……てめぇ……昨日は――」
さて、仕事を片付けてしまうかと歩き出せばそこに現れたのは敦賀、昨日病院に放置して帰ったのを未だ根に持っているのか、器の小さい男だとそんなかれを横目で見て鼻で笑えば、それに更に苛立ちを増幅させたのか脳天に敦賀の拳が落とされる。
「痛いし!」
「当たり前だ。お前、当事者があの状況で逃げるってどういうこった」
「えー、私、あんまり関係無くない?」
「……元凶が俺の親父なのは認める。だがよ、龍興と俺を放置とか、お前の立場でそれは無ぇんじゃねぇのか?」
「いや、私あんな空気の悪いところにいたくないし」
「……最低だな、お前……」
本気で怒っていたわけではないのか大きく溜息を吐いて今度はそっとタカコの頭を撫でる敦賀、高根と何を話していたのかと問い掛けられ、凛を連れて来てくれと言われたのだとだけ答えタカコは曹長の大部屋へと向かって歩き出す。
「嫁を?何でまた」
「ふふふ、秘密。もう直ぐ分かるよ」
「何なんだよ」
「なーいしょー。さ、お仕事片付けたら凛ちゃん迎えに行こうっと」
内容が内容だけに敦賀相手でも自分からは言わない方が良いだろう、軽く修羅場を迎えるであろう島津は多少気の毒だが、凛にとびきりの喜びと幸せを与えてやれるのだからそう悪いものではない筈だ、と、タカコは小さく笑って階段を降り始めた。
「……何してんの?」
「……土下座」
「うん、それは見れば分かる。何で土下座してんの?」
「……先々代の大切な孫娘且つ優秀な部下の可愛い妹を手篭めにして孕ませたからです」
朝の海兵隊総司令執務室、黒川に送られて基地へと戻って来たタカコに警衛が声を掛け、司令が呼んでいると言われてそちらへと向かった彼女が見たものは、壁に向かって土下座をしている高根の姿、その先の壁には先々代の島津中将の写真が掛けられている。いったい何をしているのかと問い掛ければ、それに返された言葉にタカコは動きを失った。
「え、じゃあ本当に凛ちゃん――」
「……ああ、島津凛、祖父は先々代の海兵隊総司令の島津義弘中将、兄は現役海兵隊士官の島津仁一少佐、間違い無いってよ」
そう言いながら起き上がりソファへと身を埋める高根、タカコもそれに合わせて向かいへと腰を下ろせば、高根は浮かない面持ちのままがしがしと短い髪を掻く。そう言えば昨晩は帰ってから話をしたからこそ事実が分かったのだろうが、何故そんなに浮かない様子なのかとタカコが問い掛ければ、高根は少々遠い眼差しで空中を見詰めて口を開く。
「……じゃあおめぇよ……島津にどんなツラ下げてどう言えば良いんだよ俺は……中洲の花街でふらふらしてたところをナンパしてその日の内に家に連れ込んで、最初は家政婦扱いしてその後は好き放題に抱いてその上最初の一発で孕ませちゃいましたとか……言えねぇだろ、常識的に考えて……」
「……お前……本当に腐った屑だったんだな……」
「……それは否定しねぇ……」
「いや、否定しろよそこは」
初めて聞く高根と凛の今迄の経緯、多少の自虐や誇張は入っているのだろうが、それを差し引いたとしても想像していた以上の屑な内容に流石にタカコも唖然としてしまう。
「で?いつ頃出会ったのよお前等二人」
「お前が旧営舎爆破しただろ、あの日の夜に帰ってからよ、久し振りに吐き出すかと思って花街出向いたのよ。その時に店の前に突っ立っててな、最初はガキが何でこんな時間にこんなところにって思ったんだよな、こっちに背中向けてたからよ。で、店入る時にひょいと顔見たらガキじゃなくて、泣き出しそうな顔しててよ、それでよ、入るの止めていつもの飲み屋に連れて行って飯食わせて話聞いたんだよ。そうしたらよ、嫁ぎ先で子供出来なくて離縁されて叩き出されて、実家に戻ったら近所の奴に家族全員一昨年の博多曝露で死んだって聞かされたんだと。まぁ、兄貴は生きてたから、近所の勘違いだったんだろうけど。それでもう一度婚家に戻って身の振り方決まる迄置いて欲しいって頼んだら、だったら身体売って金稼いで来いって言われて中洲の花街ふらふらしてたんだとさ、それを俺が見つけたと」
「……うわぁ……絵に描いた様な屑一家だなその婚家……お前が最悪の屑だと思ってたけど、下には下がいるな……」
その時に何とも庇護心を擽られ、住み込みの家政婦として家に招きいれたのが同棲の切っ掛けなのだと聞かされ、タカコはその内容に相槌を打ちながら煙草に火を点ける。そうして一緒に暮らす様になって、妊娠の時期を考えると三ヶ月程は男女の仲になる事も無く過ごしていた事になる。いきなりの同棲はどうかと思うものの、それでも節度の有る態度を一定期間は崩さなかったのであろう事を考えれば、そう憂鬱になる事も無いのではと思いはするものの、島津が妹を可愛がっていたという事は聞いた事が有るし、そうなると事実を知れば彼もやはり複雑な思いを抱いてしまうのだろうなと思い至った。
「んで?私を呼び出したのは?」
「ああ、今から島津に話すからよ、凛連れて来てくれねぇか?聞いたら直ぐに会いたがると思ってよ、島津が生きてる事はまだ話してねぇんだよ。俺が先に島津に話しておくから、お前はそこに凛を連れて来てくれや」
「あー……修羅場になる可能性有るからね、妊婦さんには見せられないよね……」
「……お願いします……」
「はいはい、分かったよ。それじゃあ早速行って来るから、お前はさっさと死刑宣告受けておけ」
益々げんなりした面持ちになる高根、タカコはそれを見て灰皿に煙草を押し付けて立ち上がる。そう簡単に済む話でもないだろうから、取り敢えずは急ぎの仕事を片付けてから出ると言えば高根はそれを首肯し、
「ま、頑張れよ」
と、笑ってそう言って執務室を出た。
「……てめぇ……昨日は――」
さて、仕事を片付けてしまうかと歩き出せばそこに現れたのは敦賀、昨日病院に放置して帰ったのを未だ根に持っているのか、器の小さい男だとそんなかれを横目で見て鼻で笑えば、それに更に苛立ちを増幅させたのか脳天に敦賀の拳が落とされる。
「痛いし!」
「当たり前だ。お前、当事者があの状況で逃げるってどういうこった」
「えー、私、あんまり関係無くない?」
「……元凶が俺の親父なのは認める。だがよ、龍興と俺を放置とか、お前の立場でそれは無ぇんじゃねぇのか?」
「いや、私あんな空気の悪いところにいたくないし」
「……最低だな、お前……」
本気で怒っていたわけではないのか大きく溜息を吐いて今度はそっとタカコの頭を撫でる敦賀、高根と何を話していたのかと問い掛けられ、凛を連れて来てくれと言われたのだとだけ答えタカコは曹長の大部屋へと向かって歩き出す。
「嫁を?何でまた」
「ふふふ、秘密。もう直ぐ分かるよ」
「何なんだよ」
「なーいしょー。さ、お仕事片付けたら凛ちゃん迎えに行こうっと」
内容が内容だけに敦賀相手でも自分からは言わない方が良いだろう、軽く修羅場を迎えるであろう島津は多少気の毒だが、凛にとびきりの喜びと幸せを与えてやれるのだからそう悪いものではない筈だ、と、タカコは小さく笑って階段を降り始めた。
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