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リューシャ編
3話
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家の外に出ているリリエは突然、開いた両手を前に出し、呟くように言った。
「…【ユニバーサリィ・ウィンド】」
すると、ささやかな風が開いた両手を中心として起こり、リリエの髪をふわりと揺らした。
「わ…本当に風が…」
「きゅるるるぅっ!!」
リリエの驚きの声に、リューシャも飛べない代わりに跳ねて喜ぶ。この力は、つい一週間ほど前に見つけた、《4つの古の力》という題の本のお陰だった。そして、横で喜んでくれているリューシャを見てリューシャに言った。
「ありがとうリューシャ。喜んでくれて」
そうやさしくリューシャの頭を撫でると嬉しそうにまたピョンピョンとリューシャは跳ねた。
「…でも、リューシャを守るためにはもっと強い力が出せるようにならないと…」
「きゅ?」
リリエの呟きが聞こえたのか、首をかしげるリューシャに笑いかけ、抱き上げるとリリエは言った。
「大好きだよ、リューシャ。ずっとずっと大好き」
「きゅう!!」
『…私もだよ…』
「えっ…?」
リューシャの声のあとに微かに聞こえた声に驚くリリエ。辺りを見回すも、近くには誰もいない。
「誰…?」
聞いたことのない声なのに、どこか聞きなれているような気がして、誰の声かもわかっていないのに、気にしなくても大丈夫だと感じ、リューシャに笑いかけて言った。
「気にしててもきりないし、とりあえず帰ろっか」
「きゅー!」
そして家に帰り、のんびりとリューシャの頭を撫でていた時、家のドアを誰かがノックした。反射的にリューシャを見えないところへ隠し、ドアを開ける。
「はい」
「すいません、私たちは人の使いの者なのですが…」
玄関先に立っていたのは、人の使いの者だった。使いの者は言葉を続ける。
「リリエ・レスタナー様ですね。皇女様と皇子様がお呼びです。これから、竜の子を連れ、城まで来て欲しいとのことです。」
「…!」
その竜というワードに少しだけ反応するリリエ。
「…リューシャを、どうして連れていかなければならないのですか?」
リリエのちょっとだけ威圧の入った言葉に少し黙る使い。しかし使いはすぐに困ったような顔で返した。
「その理由は、我々にも知らされていないのです。ただ、皇女様と皇子様はリリエ様を竜と共に連れてきてくれとおっしゃっただけですので…」
「…そうですか。分かりました、今から城へ参ります。」
そのリリエの言葉に微笑み一礼すると、使いの者は帰っていった。
「…さて。リューシャ、城に…ってリューシャ?どこに行ったの?リューシャ!」
リューシャは隠したはずの場所からいなくなっており、リリエが半狂乱状態になりかけたその時。
「…きゅぅぅぅぅぅ…」
弱々しい声が近くから聞こえた。リューシャの鳴き声だ。
「リューシャっ?!良かった…ほら、城に行きましょ?」
その言葉にふるふると首を横に振るリューシャ。
「城に行きたくないの?なんで?」
「…きゅぅ…」
悲しそうに目線を下へ向け、縮こまるリューシャ。
「でも…皇女様と皇子様の呼び出しにもう応じちゃったし…もしかしてリューシャ、嫌な予感がするんじゃないの?私と離されるような。」
その問いに小さく頷くリューシャ。
「…リューシャ、大丈夫だよ。私も今、おんなじ不安があるから。でも、リューシャと私を引き離すようなことをする気なら、私が絶対にリューシャを離さない。ねぇ、リューシャは私と離れるのが恐いんでしょ?それは、私も同じ。だから、リューシャは死んでも離す気はないよ。だってずっと私たちは一緒だもん!」
そのリリエの満面の笑みを見て、リューシャはこわごわながらも頷いた。そしてリリエは笑うと、リューシャをひょいと抱き上げ、言った。
「行こっか。リューシャ!」
「…きゅうっ!!」
そして2人は城へと向かった。
城で、リリエとリューシャがレイナ、ヴェイスから聞いたのは。
「え…竜の皇女、リレーニ・フルスティア様がいなくなられたのですか?!それも、2年前に?!」
「きゅあ?!」
リリエと、リリエが腕に抱いたリューシャが驚きの声をあげる。
「ああ。皇子であるアレフト・フルスティア殿はいるが…な。」
「それ以前に2年も帰ってこないなんておかしいのです。リレーニ殿は己のすべきことを理由もなく放棄するような者ではないのに…」
そうとても心配そうな顔をするレイナ。
「人、竜、神のどの種族にも皇女と皇子の存在は必須だ。そのどちらか片方でも欠けてしまえば、いずれその種族は荒れていってしまう。だから…」
そこでディスアが言葉を切る。リューシャを抱く腕に自然と力がこもる。
「リリエ、お前にはリューシャと共にリレーニ殿の捜索を頼みたい。」
「…へ?」
「…きゅ?」
ディスアの口から発せられた言葉に唖然とするリリエとリューシャ。
「…リューシャのことではないのですか…?」
その問いに、レイナはくすりと笑うと答える。
「もちろん、私たちもその線は考えました。しかし、まだリューシャは子供。無理があると思ったのですよ。だから、あなたたち2人でリレーニ殿を探してもらえば、小さな手がかりくらいは見つかると思ったのです。…頼んでもよいですか?」
レイナの問いかけにリリエは笑顔で頷き、答えた。
「はい!もちろん、その頼みを引き受けさせていただきます!」
「きゅるぁ!!」
その2人の返答にレイナとディスアは笑う。
「では、頼みますよ。」
そしてリリエはリューシャをだいて家へと戻った。
「リューシャ、頑張ろうね!」
「きゅう!」
そう、リリエとリューシャは互いに笑い合った。
「…【ユニバーサリィ・ウィンド】」
すると、ささやかな風が開いた両手を中心として起こり、リリエの髪をふわりと揺らした。
「わ…本当に風が…」
「きゅるるるぅっ!!」
リリエの驚きの声に、リューシャも飛べない代わりに跳ねて喜ぶ。この力は、つい一週間ほど前に見つけた、《4つの古の力》という題の本のお陰だった。そして、横で喜んでくれているリューシャを見てリューシャに言った。
「ありがとうリューシャ。喜んでくれて」
そうやさしくリューシャの頭を撫でると嬉しそうにまたピョンピョンとリューシャは跳ねた。
「…でも、リューシャを守るためにはもっと強い力が出せるようにならないと…」
「きゅ?」
リリエの呟きが聞こえたのか、首をかしげるリューシャに笑いかけ、抱き上げるとリリエは言った。
「大好きだよ、リューシャ。ずっとずっと大好き」
「きゅう!!」
『…私もだよ…』
「えっ…?」
リューシャの声のあとに微かに聞こえた声に驚くリリエ。辺りを見回すも、近くには誰もいない。
「誰…?」
聞いたことのない声なのに、どこか聞きなれているような気がして、誰の声かもわかっていないのに、気にしなくても大丈夫だと感じ、リューシャに笑いかけて言った。
「気にしててもきりないし、とりあえず帰ろっか」
「きゅー!」
そして家に帰り、のんびりとリューシャの頭を撫でていた時、家のドアを誰かがノックした。反射的にリューシャを見えないところへ隠し、ドアを開ける。
「はい」
「すいません、私たちは人の使いの者なのですが…」
玄関先に立っていたのは、人の使いの者だった。使いの者は言葉を続ける。
「リリエ・レスタナー様ですね。皇女様と皇子様がお呼びです。これから、竜の子を連れ、城まで来て欲しいとのことです。」
「…!」
その竜というワードに少しだけ反応するリリエ。
「…リューシャを、どうして連れていかなければならないのですか?」
リリエのちょっとだけ威圧の入った言葉に少し黙る使い。しかし使いはすぐに困ったような顔で返した。
「その理由は、我々にも知らされていないのです。ただ、皇女様と皇子様はリリエ様を竜と共に連れてきてくれとおっしゃっただけですので…」
「…そうですか。分かりました、今から城へ参ります。」
そのリリエの言葉に微笑み一礼すると、使いの者は帰っていった。
「…さて。リューシャ、城に…ってリューシャ?どこに行ったの?リューシャ!」
リューシャは隠したはずの場所からいなくなっており、リリエが半狂乱状態になりかけたその時。
「…きゅぅぅぅぅぅ…」
弱々しい声が近くから聞こえた。リューシャの鳴き声だ。
「リューシャっ?!良かった…ほら、城に行きましょ?」
その言葉にふるふると首を横に振るリューシャ。
「城に行きたくないの?なんで?」
「…きゅぅ…」
悲しそうに目線を下へ向け、縮こまるリューシャ。
「でも…皇女様と皇子様の呼び出しにもう応じちゃったし…もしかしてリューシャ、嫌な予感がするんじゃないの?私と離されるような。」
その問いに小さく頷くリューシャ。
「…リューシャ、大丈夫だよ。私も今、おんなじ不安があるから。でも、リューシャと私を引き離すようなことをする気なら、私が絶対にリューシャを離さない。ねぇ、リューシャは私と離れるのが恐いんでしょ?それは、私も同じ。だから、リューシャは死んでも離す気はないよ。だってずっと私たちは一緒だもん!」
そのリリエの満面の笑みを見て、リューシャはこわごわながらも頷いた。そしてリリエは笑うと、リューシャをひょいと抱き上げ、言った。
「行こっか。リューシャ!」
「…きゅうっ!!」
そして2人は城へと向かった。
城で、リリエとリューシャがレイナ、ヴェイスから聞いたのは。
「え…竜の皇女、リレーニ・フルスティア様がいなくなられたのですか?!それも、2年前に?!」
「きゅあ?!」
リリエと、リリエが腕に抱いたリューシャが驚きの声をあげる。
「ああ。皇子であるアレフト・フルスティア殿はいるが…な。」
「それ以前に2年も帰ってこないなんておかしいのです。リレーニ殿は己のすべきことを理由もなく放棄するような者ではないのに…」
そうとても心配そうな顔をするレイナ。
「人、竜、神のどの種族にも皇女と皇子の存在は必須だ。そのどちらか片方でも欠けてしまえば、いずれその種族は荒れていってしまう。だから…」
そこでディスアが言葉を切る。リューシャを抱く腕に自然と力がこもる。
「リリエ、お前にはリューシャと共にリレーニ殿の捜索を頼みたい。」
「…へ?」
「…きゅ?」
ディスアの口から発せられた言葉に唖然とするリリエとリューシャ。
「…リューシャのことではないのですか…?」
その問いに、レイナはくすりと笑うと答える。
「もちろん、私たちもその線は考えました。しかし、まだリューシャは子供。無理があると思ったのですよ。だから、あなたたち2人でリレーニ殿を探してもらえば、小さな手がかりくらいは見つかると思ったのです。…頼んでもよいですか?」
レイナの問いかけにリリエは笑顔で頷き、答えた。
「はい!もちろん、その頼みを引き受けさせていただきます!」
「きゅるぁ!!」
その2人の返答にレイナとディスアは笑う。
「では、頼みますよ。」
そしてリリエはリューシャをだいて家へと戻った。
「リューシャ、頑張ろうね!」
「きゅう!」
そう、リリエとリューシャは互いに笑い合った。
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