5 / 74
リューシャ編
4話
しおりを挟む
レイナとディスアから頼み事をされた同日、リリエは1度家へ帰ったものの、ルクトの家を訪ねていた。
「皇女様と皇子様が直々に竜の皇女様を探してくれと頼まれた?!」
家に声が響いた。
「うん。小さな手がかりでも良いから、2人なら見つけられる気がするって。」
リリエの膝の上ですやすやと眠るリューシャの頭を話しながら撫でるリリエ。
「しかし、なんでリレーニ様はいなくなったんだろうな?あくまでも1種族の皇女様だろ?」
「うーん、でもレイナ様によれば、リレーニ様は自分のすべきことを理由もなく放棄するなんて今まで全くなかったし、まずそんなことしないって感じだったけど…」
そう小さく首をかしげていると、ルクトは言った。
「だったら、皇女である自分がいなくなってしまったら、種族間の関係がどう変わっていくか考えて、怖れることはなかったんだろうか…?」
「下手をすれば、神竜大戦以上の争いが始まるなんてことも想像できたはずだけどね…」
そのリリエの言葉に頷きながらルクトは言う。
「そうなれば、いくらかつて神竜大戦を治めたセ…王妃様でも手に負えなくなるだろうな…」
ルクトの言葉を聞いて、リリエは俯いて呟くように言った。
「…そんなこと、絶対にさせたくない…」
そう言ったリリエの肩に手を置くルクト。
「そうだな。それは僕も同意だ。だったら僕にも手伝えることがあれば言ってくれ。力になれるように頑張るから。僕も。」
ルクトの言葉にリリエは顔を上げ、ニコッと笑うと嬉しそうに返した。
「うん!ありがとう、ルクト」
「どういたしまして」
そして、その日から密かに竜の皇女リレーニの捜索が始まった。ただ、ルクトにも軽く注意されたのだが、リリエとリューシャでは行ける場所が限られてしまうし遠くに行きすぎると危険なために近くの森を探すことになった。
そして、日々に何かしらの変化もなく、リレーニも今だ全く見つからない、普通の毎日を過ごしていたリリエとリューシャ。リレーニの捜索を始めてから数十日がたったある日、その変わらない毎日は突如として崩れ去って行った。
「リューシャ。ルクトのとこへ行きましょ?なにか手がかりが見つかってないか聞きに行きたいし。」
そうリューシャに声をかけたのだが、リューシャは床に丸まったまま、動こうとしない。
「リューシャ?どうしたの?リューシャ…?」
ゆっくりとリューシャに近付いていく。すると、リューシャの声が聞こえてくる。
「…きゅるっ…きゅるぁっ…」
小さく、聞こえないぐらいの声で鳴いているため、近くによらなければ声が聞こえなかった。が、リリエはすぐに分かった。リューシャがなぜか苦しんでいると。
「リューシャ、どうしたの?!」
慌ててリューシャを抱き上げ、聞くが返ってくるのは苦しげに息をする声のみ。
「リューシャ!ねぇ、何かあったの!?リューシャっ!」
「…きゅ、きゅあ…」
苦しげにはあはあと息をするリューシャを見て、再びあの不安を感じ、しっかりとリューシャを抱くと家を飛び出した。
「…ルクト…!」
しかし、ルクトの家に行こうと家から出て走りだしたその瞬間、世界中の時が止まった。
「っ?!」
自分やリューシャは動けるし、他に人はいないのになぜ時が止まったことが理解できたのか、リリエにも全く分からなかったがそんな気がして、とても強烈な嫌な予感を感じて、リリエはリューシャを強く抱いた。すると、辺りに霧が漂いはじめる。
″な、なに…なにが起ころうとしてるの…?″
そう思ったそのとき、霧の奥から何者かがゆっくりとこちらへ歩いてきた。
″…誰…?″
目を凝らして霧の奥を見つめるが、人影の顔はいまだによく見えない。しばらくしてその人影の顔がぼんやりとだが、見えた。
「…っ?!!」
その人物の顔に見覚えのあったリリエはとてつもなく驚いた。その歩いてきた人物は、あの日リリエとリューシャに視線を向けた竜の使いだったから。
「あなた…なんでこんなところに…?」
少し後ずさりながら、リリエは聞く。しかし、その質問には答えず使いはなおも近づいてくる。
「…っ!あなたは何者?!答えて!」
「…私はスヴール。種族と種族とを結ぶ姫を助けにきた。」
「姫…?」
そう首をかしげたそのとき、腕にしっかりと抱いていたリューシャがいつのまにかスヴールの伸ばした手へと移動しており、それを確認すると、スヴールはなにも言わずもと来た道を帰り始める。
「っ!?リューシャっ?!待って!リューシャをどこへ連れていく気?!返して!!」
リリエの返しての言葉に少しだけ反応するスヴール。
「…返せ、だと…?それはこちらの台詞だ人よ。姫をさらっておいてよく、そうも我が物顔でいられるな…」
「…!?」
スヴールは振り向きざまにリリエを睨み付けるように見た。その目にあの違和感を強く感じたが、リリエはどこかその違和感に矛盾を覚えた。スヴールはそのままリューシャを持って、霧の奥深くへ消えていった。
「…リューシャをさらっているのはあなたでしょうに…!」
リリエは感じた違和感の矛盾をなかったことにしてそう呟いた瞬間、リリエを中心として突風が巻き起こり、霧を全て吹き飛ばした。
「…リューシャ…絶対、連れ戻すから…!」
そう言い、リリエはスヴールが消えていった方向を強く睨んだ。
「皇女様と皇子様が直々に竜の皇女様を探してくれと頼まれた?!」
家に声が響いた。
「うん。小さな手がかりでも良いから、2人なら見つけられる気がするって。」
リリエの膝の上ですやすやと眠るリューシャの頭を話しながら撫でるリリエ。
「しかし、なんでリレーニ様はいなくなったんだろうな?あくまでも1種族の皇女様だろ?」
「うーん、でもレイナ様によれば、リレーニ様は自分のすべきことを理由もなく放棄するなんて今まで全くなかったし、まずそんなことしないって感じだったけど…」
そう小さく首をかしげていると、ルクトは言った。
「だったら、皇女である自分がいなくなってしまったら、種族間の関係がどう変わっていくか考えて、怖れることはなかったんだろうか…?」
「下手をすれば、神竜大戦以上の争いが始まるなんてことも想像できたはずだけどね…」
そのリリエの言葉に頷きながらルクトは言う。
「そうなれば、いくらかつて神竜大戦を治めたセ…王妃様でも手に負えなくなるだろうな…」
ルクトの言葉を聞いて、リリエは俯いて呟くように言った。
「…そんなこと、絶対にさせたくない…」
そう言ったリリエの肩に手を置くルクト。
「そうだな。それは僕も同意だ。だったら僕にも手伝えることがあれば言ってくれ。力になれるように頑張るから。僕も。」
ルクトの言葉にリリエは顔を上げ、ニコッと笑うと嬉しそうに返した。
「うん!ありがとう、ルクト」
「どういたしまして」
そして、その日から密かに竜の皇女リレーニの捜索が始まった。ただ、ルクトにも軽く注意されたのだが、リリエとリューシャでは行ける場所が限られてしまうし遠くに行きすぎると危険なために近くの森を探すことになった。
そして、日々に何かしらの変化もなく、リレーニも今だ全く見つからない、普通の毎日を過ごしていたリリエとリューシャ。リレーニの捜索を始めてから数十日がたったある日、その変わらない毎日は突如として崩れ去って行った。
「リューシャ。ルクトのとこへ行きましょ?なにか手がかりが見つかってないか聞きに行きたいし。」
そうリューシャに声をかけたのだが、リューシャは床に丸まったまま、動こうとしない。
「リューシャ?どうしたの?リューシャ…?」
ゆっくりとリューシャに近付いていく。すると、リューシャの声が聞こえてくる。
「…きゅるっ…きゅるぁっ…」
小さく、聞こえないぐらいの声で鳴いているため、近くによらなければ声が聞こえなかった。が、リリエはすぐに分かった。リューシャがなぜか苦しんでいると。
「リューシャ、どうしたの?!」
慌ててリューシャを抱き上げ、聞くが返ってくるのは苦しげに息をする声のみ。
「リューシャ!ねぇ、何かあったの!?リューシャっ!」
「…きゅ、きゅあ…」
苦しげにはあはあと息をするリューシャを見て、再びあの不安を感じ、しっかりとリューシャを抱くと家を飛び出した。
「…ルクト…!」
しかし、ルクトの家に行こうと家から出て走りだしたその瞬間、世界中の時が止まった。
「っ?!」
自分やリューシャは動けるし、他に人はいないのになぜ時が止まったことが理解できたのか、リリエにも全く分からなかったがそんな気がして、とても強烈な嫌な予感を感じて、リリエはリューシャを強く抱いた。すると、辺りに霧が漂いはじめる。
″な、なに…なにが起ころうとしてるの…?″
そう思ったそのとき、霧の奥から何者かがゆっくりとこちらへ歩いてきた。
″…誰…?″
目を凝らして霧の奥を見つめるが、人影の顔はいまだによく見えない。しばらくしてその人影の顔がぼんやりとだが、見えた。
「…っ?!!」
その人物の顔に見覚えのあったリリエはとてつもなく驚いた。その歩いてきた人物は、あの日リリエとリューシャに視線を向けた竜の使いだったから。
「あなた…なんでこんなところに…?」
少し後ずさりながら、リリエは聞く。しかし、その質問には答えず使いはなおも近づいてくる。
「…っ!あなたは何者?!答えて!」
「…私はスヴール。種族と種族とを結ぶ姫を助けにきた。」
「姫…?」
そう首をかしげたそのとき、腕にしっかりと抱いていたリューシャがいつのまにかスヴールの伸ばした手へと移動しており、それを確認すると、スヴールはなにも言わずもと来た道を帰り始める。
「っ!?リューシャっ?!待って!リューシャをどこへ連れていく気?!返して!!」
リリエの返しての言葉に少しだけ反応するスヴール。
「…返せ、だと…?それはこちらの台詞だ人よ。姫をさらっておいてよく、そうも我が物顔でいられるな…」
「…!?」
スヴールは振り向きざまにリリエを睨み付けるように見た。その目にあの違和感を強く感じたが、リリエはどこかその違和感に矛盾を覚えた。スヴールはそのままリューシャを持って、霧の奥深くへ消えていった。
「…リューシャをさらっているのはあなたでしょうに…!」
リリエは感じた違和感の矛盾をなかったことにしてそう呟いた瞬間、リリエを中心として突風が巻き起こり、霧を全て吹き飛ばした。
「…リューシャ…絶対、連れ戻すから…!」
そう言い、リリエはスヴールが消えていった方向を強く睨んだ。
0
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
処刑された王女、時間を巻き戻して復讐を誓う
yukataka
ファンタジー
断頭台で首を刎ねられた王女セリーヌは、女神の加護により処刑の一年前へと時間を巻き戻された。信じていた者たちに裏切られ、民衆に石を投げられた記憶を胸に、彼女は証拠を集め、法を武器に、陰謀の網を逆手に取る。復讐か、赦しか——その選択が、リオネール王国の未来を決める。
これは、王弟の陰謀で処刑された王女が、一年前へと時間を巻き戻され、証拠と同盟と知略で玉座と尊厳を奪還する復讐と再生の物語です。彼女は二度と誰も失わないために、正義を手続きとして示し、赦すか裁くかの決断を自らの手で下します。舞台は剣と魔法の王国リオネール。法と証拠、裁判と契約が逆転の核となり、感情と理性の葛藤を経て、王女は新たな国の夜明けへと歩を進めます。
老聖女の政略結婚
那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。
六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。
しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。
相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。
子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。
穏やかな余生か、嵐の老後か――
四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる