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リューシャ編
5話
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リューシャがスヴールに連れていかれた次の日のこと。
「リリエ?!何を言っているのですか?!」
人の皇都にある城で、レイナの声が響いた。
「お2人に仰った通りです。リューシャを連れ戻すために、私は竜の皇都へ行き、城に乗り込むのです。」
「そうは言っても無理があるぞ、リリエ。いくら魔法を少し使えるようになったとしても、城へ乗り込むということは、竜という種族全体を敵に回すということになるのだからな。」
「…それでも、私は行きます。リューシャを連れ戻すために。」
ディスアの冷静な言葉にも全く応じる気のないリリエ。
「…どうして、そんなにもあなたはリューシャにこだわるのです?リリエ…」
「…どうして、ですか……リューシャが、私に初めて出来た友達だから、かも知れないですね。」
「初めて…?」
リリエの言葉に首をかしげるレイナ。だが、リリエはそんなことも気にせず言葉を続ける。
「…絶対に失いたくない、私にとって大切な存在だから、連れ戻しに行くんです。もしその行動のせいで、竜という種族全体を敵に回そうとも。」
そう言ったリリエの目には本気の覚悟が宿っていた。その目を見たディスアはリリエに問いかけた。
「…お前の覚悟は分かった、リリエ。だが、竜の城に赴いてもリューシャがいなければどうする気なのだ?」
「…リューシャは必ず竜の城にいます。」
「…なぜ、そう言い切れる?」
「…2年前、竜の城から竜の皇女様がいなくなられました。私とリューシャが出会ったのは2年前。そしてリューシャが今、皇女様の極秘捜索中につれていかれてしまった。…そうなれば、自ずと結論にたどり着きます。」
そのリリエの言葉に唖然とするレイナ。
「まさか…リューシャが竜の皇女、リレーニ殿…?」
「…そうなりますね。他にいなくなった者がいない限り。」
そう言ったそのとき、リリエの後方にある扉が勢いよく放たれた。
「皇女様!皇子様!大変です!2年前から行方不明になられていたのは竜の皇女様だけならずその娘のフニカ様と、あろうことか王妃様の傍付きルーナ様もいなくなられていたそうです!」
「な…?!」
その言葉にレイナは唖然とする。普段冷静なディスアさえも少しだけ驚いていた。だが、こんなことで取り乱していては皇子と皇女など務まらない。
「…そうか。…どうする?リリエ。」
「…こうなれば、王妃様の元へ乗り込むしかないですね。」
その言葉にレイナとディスアは一瞬言葉を失った。
「王妃様の元へ乗り込むなんて、《白亜の城》へ行くということですか?!それは人、竜、神の全種族への反抗です!そうなれば、リューシャを連れ戻せたとしても、今まで通り一緒に暮らすなんてことは絶対にできませんよ?!」
「…それでも、私はリューシャを連れ戻します。必ず。」
リリエはレイナの制止の言葉に聞く耳すら持たずに、立ち上がり、城を出ようと立ち去っていく。
「…リリエっ!」
「レイナ、やめておけ。」
そんなリリエを止めようとレイナが走り出そうとするが、ディスアがレイナを止めた。
「しかしディスア!」
「…あれが、彼女の判断なのだ…どんな結末だったにしても、今の彼女にはそれを受け入れる絶対の覚悟がある…そんな彼女を止められるのは、今はリューシャしかいないだろうな…」
「…そう、なのですね…」
「…ただ、なぜ今になってフニカ殿やルーナ様がいなくなったことが知らされたのだ…?」
レイナは悲しげで心配そうな目を城から去っていくリリエの背中へ向け、ディスアは1人浮かんだ疑問を呟いていた。そして、城を出たリリエは、家に帰らずにとある場所へと向かった。そこはリリエとリューシャが出会った、森の奥深い場所。
「…リューシャ…あなたが何者であったとしても、あなたは私に出来た初めての友達なんだから…絶対、連れ戻しに行くよ…私自身がどんな目に遭ったとしても…」
そう意気込んで、木々の間から見える青空に向かって手を伸ばすリリエ。
「あなたが私のところに戻ることを望まないとしても、無駄だったとしても、私は行くんだから。誰にもこの意思は邪魔されたくない。それに、ずっと一緒にいるって約束もしたしね…」
そう呟き、空に伸ばした手をぎゅっと握った時。
「誰…?誰か、いるの…?」
後ろからそんな声が聞こえ、振り向く。そこには、膝ほどまで伸びた灰色の髪を持つ女性が立っていた。
「…え?」
「…あなた、何者?人はこの森の奥には来てはいけないと言われているはず…どうして、こんなところに?」
女性の言葉に首をかしげるリリエ。
「来てはいけない…?そんな話、聞いたこともないけど…ここは、私にとって大切な場所…たった1人の友達に初めて会った場所…」
そう遠くを見るような目で森の景色を見つめるリリエ。そして目を閉じ、深呼吸を1つすると目を開け呟いた。
「…リューシャのところに、行かなくちゃ…」
「…その、リューシャという子があなたの友達?」
「…うん。でも、連れ去られて…今から、連れ戻しに行くの。」
そう言ったそのとき。
「連れ戻しに行くって、そもそも誰に連れていかれたの?その友達は。」
少し子供感の残る声で言ったのは、灰色の髪の女性の後ろから出てきた、リリエよりまだ年下ぐらいの少女。
「誰に?……竜の使いに、だよ。」
「…っ!」
その一言で息をのむ女性。
「でも、竜を恨むだなんてことはしないよ。ただ、これから友達の居場所を突き止めるために、ある場所に行こうって思っているの。」
そう、リリエは2人に笑いかけた。
「…その、ある場所ってどこ?」
「……え?」
少女のその言葉にリリエは唖然とした。
「リリエ?!何を言っているのですか?!」
人の皇都にある城で、レイナの声が響いた。
「お2人に仰った通りです。リューシャを連れ戻すために、私は竜の皇都へ行き、城に乗り込むのです。」
「そうは言っても無理があるぞ、リリエ。いくら魔法を少し使えるようになったとしても、城へ乗り込むということは、竜という種族全体を敵に回すということになるのだからな。」
「…それでも、私は行きます。リューシャを連れ戻すために。」
ディスアの冷静な言葉にも全く応じる気のないリリエ。
「…どうして、そんなにもあなたはリューシャにこだわるのです?リリエ…」
「…どうして、ですか……リューシャが、私に初めて出来た友達だから、かも知れないですね。」
「初めて…?」
リリエの言葉に首をかしげるレイナ。だが、リリエはそんなことも気にせず言葉を続ける。
「…絶対に失いたくない、私にとって大切な存在だから、連れ戻しに行くんです。もしその行動のせいで、竜という種族全体を敵に回そうとも。」
そう言ったリリエの目には本気の覚悟が宿っていた。その目を見たディスアはリリエに問いかけた。
「…お前の覚悟は分かった、リリエ。だが、竜の城に赴いてもリューシャがいなければどうする気なのだ?」
「…リューシャは必ず竜の城にいます。」
「…なぜ、そう言い切れる?」
「…2年前、竜の城から竜の皇女様がいなくなられました。私とリューシャが出会ったのは2年前。そしてリューシャが今、皇女様の極秘捜索中につれていかれてしまった。…そうなれば、自ずと結論にたどり着きます。」
そのリリエの言葉に唖然とするレイナ。
「まさか…リューシャが竜の皇女、リレーニ殿…?」
「…そうなりますね。他にいなくなった者がいない限り。」
そう言ったそのとき、リリエの後方にある扉が勢いよく放たれた。
「皇女様!皇子様!大変です!2年前から行方不明になられていたのは竜の皇女様だけならずその娘のフニカ様と、あろうことか王妃様の傍付きルーナ様もいなくなられていたそうです!」
「な…?!」
その言葉にレイナは唖然とする。普段冷静なディスアさえも少しだけ驚いていた。だが、こんなことで取り乱していては皇子と皇女など務まらない。
「…そうか。…どうする?リリエ。」
「…こうなれば、王妃様の元へ乗り込むしかないですね。」
その言葉にレイナとディスアは一瞬言葉を失った。
「王妃様の元へ乗り込むなんて、《白亜の城》へ行くということですか?!それは人、竜、神の全種族への反抗です!そうなれば、リューシャを連れ戻せたとしても、今まで通り一緒に暮らすなんてことは絶対にできませんよ?!」
「…それでも、私はリューシャを連れ戻します。必ず。」
リリエはレイナの制止の言葉に聞く耳すら持たずに、立ち上がり、城を出ようと立ち去っていく。
「…リリエっ!」
「レイナ、やめておけ。」
そんなリリエを止めようとレイナが走り出そうとするが、ディスアがレイナを止めた。
「しかしディスア!」
「…あれが、彼女の判断なのだ…どんな結末だったにしても、今の彼女にはそれを受け入れる絶対の覚悟がある…そんな彼女を止められるのは、今はリューシャしかいないだろうな…」
「…そう、なのですね…」
「…ただ、なぜ今になってフニカ殿やルーナ様がいなくなったことが知らされたのだ…?」
レイナは悲しげで心配そうな目を城から去っていくリリエの背中へ向け、ディスアは1人浮かんだ疑問を呟いていた。そして、城を出たリリエは、家に帰らずにとある場所へと向かった。そこはリリエとリューシャが出会った、森の奥深い場所。
「…リューシャ…あなたが何者であったとしても、あなたは私に出来た初めての友達なんだから…絶対、連れ戻しに行くよ…私自身がどんな目に遭ったとしても…」
そう意気込んで、木々の間から見える青空に向かって手を伸ばすリリエ。
「あなたが私のところに戻ることを望まないとしても、無駄だったとしても、私は行くんだから。誰にもこの意思は邪魔されたくない。それに、ずっと一緒にいるって約束もしたしね…」
そう呟き、空に伸ばした手をぎゅっと握った時。
「誰…?誰か、いるの…?」
後ろからそんな声が聞こえ、振り向く。そこには、膝ほどまで伸びた灰色の髪を持つ女性が立っていた。
「…え?」
「…あなた、何者?人はこの森の奥には来てはいけないと言われているはず…どうして、こんなところに?」
女性の言葉に首をかしげるリリエ。
「来てはいけない…?そんな話、聞いたこともないけど…ここは、私にとって大切な場所…たった1人の友達に初めて会った場所…」
そう遠くを見るような目で森の景色を見つめるリリエ。そして目を閉じ、深呼吸を1つすると目を開け呟いた。
「…リューシャのところに、行かなくちゃ…」
「…その、リューシャという子があなたの友達?」
「…うん。でも、連れ去られて…今から、連れ戻しに行くの。」
そう言ったそのとき。
「連れ戻しに行くって、そもそも誰に連れていかれたの?その友達は。」
少し子供感の残る声で言ったのは、灰色の髪の女性の後ろから出てきた、リリエよりまだ年下ぐらいの少女。
「誰に?……竜の使いに、だよ。」
「…っ!」
その一言で息をのむ女性。
「でも、竜を恨むだなんてことはしないよ。ただ、これから友達の居場所を突き止めるために、ある場所に行こうって思っているの。」
そう、リリエは2人に笑いかけた。
「…その、ある場所ってどこ?」
「……え?」
少女のその言葉にリリエは唖然とした。
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