10 / 74
リューシャ編
9話
しおりを挟む
「…助けて…」
口から漏れた心の声が神にほんの微かに聞こえた。
「…ん?今こいつ、なんか言ったか?」
「気のせいじゃないか?とにかく、こいつは捕まえ…」
そこから、神たちの声は突然聞こえなくなってしまう。
″…あれ…?声が、聞こえなくなった…?私は…なにも、されてないし…何が…起こったの…?″
そう、痛みを我慢して起き上がろうかと思ったそのとき。
「…大丈夫?」
「…っ?!」
少し少年ぽさの残る声が聞こえ、固まってしまうリリエ。
″…これはこのまま倒れたふりしてた方がいいのかな…なんか、すっごく恐いんだけど…!″
「…あー、警戒してるのなら安心して良いよ。俺、真面目にルクト兄さんに頼まれたから色々と。」
「っ!ルクトに?!」
その言葉で足の痛みを完全に忘れ、飛び起きるリリエ。近くには声のまんまの、リリエと同い年ぐらいの藍色の髪の少年が立っていた。
「うん。というか、大丈夫?城の見張りにやられかけてたけど」
「あ、うんそれは大丈夫だけど…!」
リリエはふと少年越しに後ろの方を見て、目を見開いた。そこには、全員氷漬けにされた見張りたちがいた。
「見張りが…全員…これ、君が…?」
「そうに決まってるでしょ。俺以外の誰が出来るっていうの?」
そう言うと、少年はリリエを一瞥して一言言った。
「…想像以上に強いね。あんな挟み撃ちされかかってる状態で魔法行使するなんて、なかなか勇気あると思うよ。」
「いや…あれ、とっさにやったものだから成功するかも怪しかったし…それにすぐまたピンチになっちゃったからたいしてすごいことでもないよ。多分。あ、いい忘れてたね、ありがとう。偶然なのか、私のためかは全然わかんないけど。」
その言葉に少年は下を向くと、小さく呟いた。
「〔・・・の・・だよ〕」
「え?今、なにか言った?」
「なにも言ってない。」
リリエの問いかけに少年は素っ気なく返した。
「あ、助けてくれたのは嬉しいんだけど、君も私の迷惑に巻き込むわけには…」
「いや、もう思いっきり巻き込まれてるから、今更止めなくても大丈夫。」
そう、少年が後ろをちらりと向いたそのとき、少年の後方の遠くから神たちが集団で走ってくるのが見えた。
「…!あ、…あの数を相手に…?!」
その言葉で少年は後ろを向き、神たちを目で確認すると言った。
「あー、あんなの相手してたらきりないから、行くよ。」
すると少年は戸惑いなくリリエをお姫様抱っこで持ち上げると、地面である雲を思いきり蹴った。そのとたん、2人の体は空高くまで飛び上がる。
「へ…ちょ、ちょっと…高いってぇぇ!」
「捕まっててよ。下手したら落ちるから。」
少年は空中で少し滞空すると、城がある方とは逆方向へ飛び始める。
「え、ま、待って!城は逆じゃないの?君、逆に行ってる気が…」
「…〔・・…か…〕」
何かを呟いたような呟いていないような、そもそもこちらの話を聞いているのかわからない少年にリリエは声をかける。
「?ちょ、ちょっと君?聞いてる?おーい?」
「聞いてるよ。あの城はフェイク。幻だよ。普通の奴には見分けられないから仕方ないけど。」
少年はそう言うと、言葉を続ける。
「…あとそれと、俺はスカイ・レーシェード。……名前の後に〈くん〉とか余計なものつけないでよ。俺そういうの嫌いだから。」
「え?あ、うん。あ、私はリリエ・レスタナー。よろしくね。スカイ。」
「…うん、よろしく。」
″…なんだか、ちょっと不思議な子だな…スカイって。″
リリエはふとそう感じた。それからしばらくして、未だ見えない城に向かって飛んでいる途中、リリエが呟くようにスカイに言った。
「…スカイ…やっぱり、歩かない…?」
「…なんで?」
「いや、なんか…この体勢、私慣れないし…場所が分かってたら飛ばなくてもいいんじゃないかと…」
そうリリエは自分がスカイに、否、初対面の子にお姫様抱っこされて上空を飛んでいる事実を再認する。が、それにスカイは冷たく言った。
「悪いけど、歩いていったら城は絶対見つけられないし、君怪我してるでしょ。足と腕。それなのに歩かせるわけにはいかない。」
「あ…」
そこで、自分が足と腕を怪我していたことを思い出す。
「私…腕と足のどこか怪我してたんだった…」
「どこかって、自分で分かってないんだ?」
スカイの言葉に軽く頷くリリエ。
「…じゃあ、悪いけど城の前に着いたら怪我みるから、飛んでる途中痛くなったとしても、ちょっと我慢してよ。」
「あ、う、うん」
リリエは若干戸惑いながらも頷く。そしてしばらく飛んで、皇都から出て少しした、大きな空き地の上でスカイは止まった。
「どうしたの?スカイ?」
「…着いたよ。」
そう言いながら、スカイは地面に降り立った。
「あれ?でも城ってここは…」
「待って。怪我してるんだからじっとしてて。」
怪我をしていることも忘れ、空き地の真ん中をスカイが抱く腕から身を乗り出してまで見るリリエを優しく下ろすと、しばらくリリエの足をスカイは見つめていたが、スカイはそっとリリエの右足の膝に触れた。
「…いっ…」
少しだけスカイの触れた膝に痛みが走った。その反応を見て、スカイはすぐ右手をその右膝にかざす。
「…【ヒーリンス・キェリアー】」
その詠唱を唱えると、少し痛みの残っていた膝が痛くなくなり、同時に一緒に治したのか、腕の傷もきれいに消えていた。
「うわ…すごい…全然痛くなくなった。」
「傷はほとんど癒えたから、もう戦っても支障はないと思うけど…」
スカイはそこで言葉を切った。
「?どうしたの?スカイ」
「…戦い方に支障がありすぎてかわいそうに見えてくるね…」
「…は?」
リリエはそこで生まれて初めて目の前の人物を殴りたい衝動に駆られたが、その衝動を初対面の人だからという理由で限界まで押さえ込み、リリエは言った。
「…じゃあ、戦い方教えてよ。そう言うくらいなら!」
「え?戦い方…?」
「そうっ!」
リリエの言葉にスカイはしばし考えて、言った。
「戦い方って言っても…戦闘時に魔法を効果的に使ってるから、そこは良いと思う。じゃあ、なにがダメかっていうと…それは、多分攻撃の避け方。」
「あ…そういえば、私避け方分かんなくて腕怪我したんだった…」
そっとリリエは腕を怪我していたところに触れた。
「でも、避け方なんて自分で見つけるものだから、教えられることなんてない。」
「そっか…」
″うーん…だったら、これから怪我することが増えそうだなぁ…その度にスカイに治してもらうなんてことできないし…″
そういろいろ考えていたその時、リリエの耳にかすかに何らかの音が聞こえてきた。
口から漏れた心の声が神にほんの微かに聞こえた。
「…ん?今こいつ、なんか言ったか?」
「気のせいじゃないか?とにかく、こいつは捕まえ…」
そこから、神たちの声は突然聞こえなくなってしまう。
″…あれ…?声が、聞こえなくなった…?私は…なにも、されてないし…何が…起こったの…?″
そう、痛みを我慢して起き上がろうかと思ったそのとき。
「…大丈夫?」
「…っ?!」
少し少年ぽさの残る声が聞こえ、固まってしまうリリエ。
″…これはこのまま倒れたふりしてた方がいいのかな…なんか、すっごく恐いんだけど…!″
「…あー、警戒してるのなら安心して良いよ。俺、真面目にルクト兄さんに頼まれたから色々と。」
「っ!ルクトに?!」
その言葉で足の痛みを完全に忘れ、飛び起きるリリエ。近くには声のまんまの、リリエと同い年ぐらいの藍色の髪の少年が立っていた。
「うん。というか、大丈夫?城の見張りにやられかけてたけど」
「あ、うんそれは大丈夫だけど…!」
リリエはふと少年越しに後ろの方を見て、目を見開いた。そこには、全員氷漬けにされた見張りたちがいた。
「見張りが…全員…これ、君が…?」
「そうに決まってるでしょ。俺以外の誰が出来るっていうの?」
そう言うと、少年はリリエを一瞥して一言言った。
「…想像以上に強いね。あんな挟み撃ちされかかってる状態で魔法行使するなんて、なかなか勇気あると思うよ。」
「いや…あれ、とっさにやったものだから成功するかも怪しかったし…それにすぐまたピンチになっちゃったからたいしてすごいことでもないよ。多分。あ、いい忘れてたね、ありがとう。偶然なのか、私のためかは全然わかんないけど。」
その言葉に少年は下を向くと、小さく呟いた。
「〔・・・の・・だよ〕」
「え?今、なにか言った?」
「なにも言ってない。」
リリエの問いかけに少年は素っ気なく返した。
「あ、助けてくれたのは嬉しいんだけど、君も私の迷惑に巻き込むわけには…」
「いや、もう思いっきり巻き込まれてるから、今更止めなくても大丈夫。」
そう、少年が後ろをちらりと向いたそのとき、少年の後方の遠くから神たちが集団で走ってくるのが見えた。
「…!あ、…あの数を相手に…?!」
その言葉で少年は後ろを向き、神たちを目で確認すると言った。
「あー、あんなの相手してたらきりないから、行くよ。」
すると少年は戸惑いなくリリエをお姫様抱っこで持ち上げると、地面である雲を思いきり蹴った。そのとたん、2人の体は空高くまで飛び上がる。
「へ…ちょ、ちょっと…高いってぇぇ!」
「捕まっててよ。下手したら落ちるから。」
少年は空中で少し滞空すると、城がある方とは逆方向へ飛び始める。
「え、ま、待って!城は逆じゃないの?君、逆に行ってる気が…」
「…〔・・…か…〕」
何かを呟いたような呟いていないような、そもそもこちらの話を聞いているのかわからない少年にリリエは声をかける。
「?ちょ、ちょっと君?聞いてる?おーい?」
「聞いてるよ。あの城はフェイク。幻だよ。普通の奴には見分けられないから仕方ないけど。」
少年はそう言うと、言葉を続ける。
「…あとそれと、俺はスカイ・レーシェード。……名前の後に〈くん〉とか余計なものつけないでよ。俺そういうの嫌いだから。」
「え?あ、うん。あ、私はリリエ・レスタナー。よろしくね。スカイ。」
「…うん、よろしく。」
″…なんだか、ちょっと不思議な子だな…スカイって。″
リリエはふとそう感じた。それからしばらくして、未だ見えない城に向かって飛んでいる途中、リリエが呟くようにスカイに言った。
「…スカイ…やっぱり、歩かない…?」
「…なんで?」
「いや、なんか…この体勢、私慣れないし…場所が分かってたら飛ばなくてもいいんじゃないかと…」
そうリリエは自分がスカイに、否、初対面の子にお姫様抱っこされて上空を飛んでいる事実を再認する。が、それにスカイは冷たく言った。
「悪いけど、歩いていったら城は絶対見つけられないし、君怪我してるでしょ。足と腕。それなのに歩かせるわけにはいかない。」
「あ…」
そこで、自分が足と腕を怪我していたことを思い出す。
「私…腕と足のどこか怪我してたんだった…」
「どこかって、自分で分かってないんだ?」
スカイの言葉に軽く頷くリリエ。
「…じゃあ、悪いけど城の前に着いたら怪我みるから、飛んでる途中痛くなったとしても、ちょっと我慢してよ。」
「あ、う、うん」
リリエは若干戸惑いながらも頷く。そしてしばらく飛んで、皇都から出て少しした、大きな空き地の上でスカイは止まった。
「どうしたの?スカイ?」
「…着いたよ。」
そう言いながら、スカイは地面に降り立った。
「あれ?でも城ってここは…」
「待って。怪我してるんだからじっとしてて。」
怪我をしていることも忘れ、空き地の真ん中をスカイが抱く腕から身を乗り出してまで見るリリエを優しく下ろすと、しばらくリリエの足をスカイは見つめていたが、スカイはそっとリリエの右足の膝に触れた。
「…いっ…」
少しだけスカイの触れた膝に痛みが走った。その反応を見て、スカイはすぐ右手をその右膝にかざす。
「…【ヒーリンス・キェリアー】」
その詠唱を唱えると、少し痛みの残っていた膝が痛くなくなり、同時に一緒に治したのか、腕の傷もきれいに消えていた。
「うわ…すごい…全然痛くなくなった。」
「傷はほとんど癒えたから、もう戦っても支障はないと思うけど…」
スカイはそこで言葉を切った。
「?どうしたの?スカイ」
「…戦い方に支障がありすぎてかわいそうに見えてくるね…」
「…は?」
リリエはそこで生まれて初めて目の前の人物を殴りたい衝動に駆られたが、その衝動を初対面の人だからという理由で限界まで押さえ込み、リリエは言った。
「…じゃあ、戦い方教えてよ。そう言うくらいなら!」
「え?戦い方…?」
「そうっ!」
リリエの言葉にスカイはしばし考えて、言った。
「戦い方って言っても…戦闘時に魔法を効果的に使ってるから、そこは良いと思う。じゃあ、なにがダメかっていうと…それは、多分攻撃の避け方。」
「あ…そういえば、私避け方分かんなくて腕怪我したんだった…」
そっとリリエは腕を怪我していたところに触れた。
「でも、避け方なんて自分で見つけるものだから、教えられることなんてない。」
「そっか…」
″うーん…だったら、これから怪我することが増えそうだなぁ…その度にスカイに治してもらうなんてことできないし…″
そういろいろ考えていたその時、リリエの耳にかすかに何らかの音が聞こえてきた。
0
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
婚約破棄の代償
nanahi
恋愛
「あの子を放って置けないんだ。ごめん。婚約はなかったことにしてほしい」
ある日突然、侯爵令嬢エバンジェリンは婚約者アダムスに一方的に婚約破棄される。破局に追い込んだのは婚約者の幼馴染メアリという平民の儚げな娘だった。
エバンジェリンを差し置いてアダムスとメアリはひと時の幸せに酔うが、婚約破棄の代償は想像以上に大きかった。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】毒を飲めと言われたので飲みました。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃シャリゼは、稀代の毒婦、と呼ばれている。
国中から批判された嫌われ者の王妃が、やっと処刑された。
悪は倒れ、国には平和が戻る……はずだった。
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
私は、夫にも子供にも選ばれなかった。
その事実だけを抱え、離縁を突きつけ、家を出た。
そこで待っていたのは、最悪の出来事――
けれど同時に、人生の扉がひらく瞬間でもあった。
夫は愛人と共に好きに生きればいい。
今さら「本当に愛していたのは君だ」と言われても、裏切ったあなたを許すことはできない。
でも、子供たちの心だけは、必ず取り戻す。
妻にも母にもなれなかった伯爵夫人イネス。
過去を悔いながらも、愛を手に入れることを決めた彼女が辿り着いた先には――
さようなら、お別れしましょう
椿蛍
恋愛
「紹介しよう。新しい妻だ」――夫が『新しい妻』を連れてきた。
妻に新しいも古いもありますか?
愛人を通り越して、突然、夫が連れてきたのは『妻』!?
私に興味のない夫は、邪魔な私を遠ざけた。
――つまり、別居。
夫と父に命を握られた【契約】で縛られた政略結婚。
――あなたにお礼を言いますわ。
【契約】を無効にする方法を探し出し、夫と父から自由になってみせる!
※他サイトにも掲載しております。
※表紙はお借りしたものです。
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる