ツムギ ツナグ

みーな

文字の大きさ
12 / 74
リューシャ編

11話

しおりを挟む
スカイはリリエの異変に気づかずに戦っていた。


「な…形のない雷を凍らせた…だと?!」
「…あれ、雷って言うの?ただの電気の塊でしょ。それに、あれを凍らせる原理なんて簡単だし。」


雷の魔法を扱う神はスカイに自分の作り出した雷の球が凍らされたことに驚いていた。そんな神の発した言葉に、スカイは人指し指を前につきだした。すると指先から氷が突然出現し、地面に落ちた。


「…?!何もないところから氷が…?!」
「…ま、分かんないか。見たくらいだったら。…簡潔に言って空気中の微量な水分を凍らせた。…それくらいわかるもんだと思うけど、俺の常識は氷のことになると偏ってるって言われるから分かんないのが普通かな。…【ランスムーン・グレイド】」


指をならして、唖然とする神の下から氷を出現させるスカイ。


「な…?!くっ!」


神は慌てて後ろへ飛んだため、どうにか攻撃が直撃するのは免れたが、かすり傷は出来ていた。


「俺が勝手に説明してる間に攻撃すれば、ちょっとは有利になったと思うけどね。バカみたいにぼけっと俺の説明聞いてるからそんなことになるんだよ」
「なんだと…っ!」


スカイの一言で神は苛立ったのか、魔法の詠唱を始める。


「【ルメスニエ・インパクト】!」
「やっと真面目に戦うんだ。俺、真剣にやってくれないと飽きるから。」


神はスカイに向かって雷を放った。








「【ボルケニック・ヒーテミスト】!」


神はリリエに熱を放った。そのせいか、少しずつあたりの温度が上がっていく。


「…熱を発生させて、なにがしたいの?【ルーニクムト・ブリーズ】」


リリエはすぐに風で熱を払った。しかし、リリエのその行動で神はしめたというように笑った。


「…はまったな」
「なにが、おかしいの?」
「残念だな。俺は熱が操れる。しかし、風で熱を払ったとしても熱自体は消えない。ということは、熱があるだけで俺は攻撃が可能なのだ!」
「!しまっ…」
「【ヒレステリック・アゲンド】!」


広範囲に分散した熱がリリエに向かって集まってくる。いくら炎ほど熱くはない熱であっても、広範囲に広がっているものを集中させれば炎の温度などゆうに越えてしまうだろう。


「…っ!…」


しかしリリエは少し目を細めると、右手を上空にかざした。







 神はスカイに向かって、雷を放射状に放つ。が、スカイはそれをひらりひらりとかわして避ける。


「そんなので俺にダメージを与えられるとか思ってるの?俺もそこそこなめられてるね。」


するとスカイは左手を横に伸ばす。


「【レグティスヌ・ルニテクタ】」


神の横から氷が出現して神を貫こうとする。


「くっ?!…」


それを間一髪でどうにかかわしていく神。


「…やっぱり、つまんなくなってきた」


そう呟くと、スカイは飛び上がって上空に滞空する。そして上空からスカイは右手を神にかざして、呟いた。


「【ヘニレフス・アシュレン】」


スカイの右手から、つららのような氷の塊が神に降り注ぐように放たれる。


「な?!」
「……悪いけど、こんなとこで俺は苦戦してる暇もないし、やっぱり飽きてきたから、もう終わらせるよ。【エレスネアル・ウィンター】」


相手に防御する間も与えずに、スカイは神を一瞬で凍らせた。そしてスカイは地面に着地し、氷漬けになった神を一瞥してなぜかふと、スカイは突然呟いた。


「……………は…この戦いに、なにを期待して…なにを目指しているんだろう…」


スカイはそう遠くを見つめながらほんのかすかに目の奥に悲しみをにじませた。







「これでは、もう防ぎようもない…なにをしようとも…俺の…勝ちだ…!」


そう呟き、ほくそ笑んだその時、右手を上空にかざしたままのリリエが言った。


「【コルクド・ラーケッドレイン】」


その言葉とともに右手からなにかが上空に打ち上がり、美しく太陽に反射されながら降り注いできた。


「…?!…これは…雨…?いや、ここは雲の上…雨なんてものは降らない…では、まさかこれは…」


リリエが降らせたのは、雨ではなく、だと判断すると、神はリリエを見た。


「…熱なんて、水があればすぐに消え去っていくはかないもの。そして、あなたの存在も同様に小さく、はかなく、…いずれ消え去ってゆく物。」
「なん…だと…?」


リリエは微笑を浮かべて言った。


「あなたはここで負けるの。反逆者を倒すことも、捕らえることも出来ずに…」
「それはこちらの台詞だ。城に1歩も入れないまま、貴様は負ける!」


その言葉に動揺の1つすら見せず、リリエは唱えた。


「【ファエリルナ・フォーレリーヌ】」
「?!」


すると、神の下から水の渦が巻き起こり始める。


「…これでも、まだ戦うというの?その渦に反抗する力も出てこないでしょ?」
「そんなわけ……?!…力が…入らない…?なぜだ…?ほとんど、魔法も放っていないというのに…?!」


リリエの言葉で、自分がなぜか魔法を放つこともできず、動くこともできないと知った神は驚いていた。それを見て、リリエは呟くように神に言った。


「……はかない存在にしては、派手な終わりかた。」
「それは…人である貴様もそうだろう…」
「…?どういうこと?」


渦が少しずつ大きくなっていくなか、身動きのとれない神はリリエにそう言った。


「人こそ…限られた命で短い一生だ…人である貴様こそ、俺よりもはかない存在ではないか…?」
「……それでも、その短い一生をどう生きるかが、その自分の存在のはかなさを左右するんじゃない?」
「…?!…雰囲気が…?」


神がリリエを見ると、リリエはついさっきまでとは打って代わり、優しい笑みでこちらを見ていた。


「私は、自分の存在をはかないものにしたくないから、リューシャを…友達を、助けに行っているのかも知れない…」


微笑んだその目に悲しみが宿ったのを見て、神の視界は水に覆われた。それと同時に神の意識も水のなかに沈んでいくように消えた。渦はすぐに弾け、地面には気を失った神が倒れていた。


「…やっと、倒した…」


そうフラりと倒れかかったリリエの体を支えたのは、スカイだった。


「…スカイ…ありがとう」


リリエはスカイにそう笑いかける。


「…べつに、お礼を言われるようなことじゃないと思うけど。」
「違うよ。スカイ、雷使いと戦いながら、私の相手も攻撃してたでしょ?こっそりと体のどこかを凍らせて、誰にも気付かれないようにじわじわと体力を奪って。」


笑って言うリリエにため息をついて返すスカイ。


「はぁ…分かってたんだ。」
「だって、私があんなに早くほとんど攻撃を受けずに勝てるなんて、有り得ないもん。」


にこにことそう言うリリエに内心でため息をつくスカイ。


″はぁ…あれは俺のもあっただろうけど、大半は君のスイッチが入ってたからじゃないの?…。″


「…回復させるから、じっと…「あ、回復しなくてもいいよっ!」…なんで?」


スカイの言葉の途中で入ってきたリリエはスカイの問いかけに笑みを崩さずに返す。


「だって、ちょっと疲れたくらいだし、スカイにわざわざ回復してもらわなくても大丈夫!そんなことより、ずっと気になってたんだけど、城ってどこ?ここ、ただの空き地でしょ?ここのどこに…」
「【ミラージュ・ディストロイ】」


そう呟いた瞬間、空間が歪むかのように景色がグニャリと曲がり、歪みのようなものができると、円のようにかなり大きなサイズ(まるで城1つすっぽりはいるくらい)まで広がる。すると、歪みは一気に円の中心に集まり、まばゆい光を放った。


「…っ!まぶしっ…」


あまりの眩しさに一度目を閉じ、リリエが次に目を開けた時、そこには神の城と思われる巨大な城がそびえ立っていた。


「…うわ…すごく大きい…」


リリエはそう立ち尽くしていると、スカイがリリエの手を引いて城に近づいていく。


「え、スカイ…正面から入って、大丈夫なの…?」
「…さぁ。でも、どこから入ろうとも一緒でしょ。」
「ぜ…絶対一緒じゃないよー!」


リリエは叫んだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

婚約破棄の代償

nanahi
恋愛
「あの子を放って置けないんだ。ごめん。婚約はなかったことにしてほしい」 ある日突然、侯爵令嬢エバンジェリンは婚約者アダムスに一方的に婚約破棄される。破局に追い込んだのは婚約者の幼馴染メアリという平民の儚げな娘だった。 エバンジェリンを差し置いてアダムスとメアリはひと時の幸せに酔うが、婚約破棄の代償は想像以上に大きかった。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】毒を飲めと言われたので飲みました。

ごろごろみかん。
恋愛
王妃シャリゼは、稀代の毒婦、と呼ばれている。 国中から批判された嫌われ者の王妃が、やっと処刑された。 悪は倒れ、国には平和が戻る……はずだった。

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
私は、夫にも子供にも選ばれなかった。 その事実だけを抱え、離縁を突きつけ、家を出た。 そこで待っていたのは、最悪の出来事―― けれど同時に、人生の扉がひらく瞬間でもあった。 夫は愛人と共に好きに生きればいい。 今さら「本当に愛していたのは君だ」と言われても、裏切ったあなたを許すことはできない。 でも、子供たちの心だけは、必ず取り戻す。 妻にも母にもなれなかった伯爵夫人イネス。 過去を悔いながらも、愛を手に入れることを決めた彼女が辿り着いた先には――

さようなら、お別れしましょう

椿蛍
恋愛
「紹介しよう。新しい妻だ」――夫が『新しい妻』を連れてきた。  妻に新しいも古いもありますか?  愛人を通り越して、突然、夫が連れてきたのは『妻』!?  私に興味のない夫は、邪魔な私を遠ざけた。  ――つまり、別居。 夫と父に命を握られた【契約】で縛られた政略結婚。  ――あなたにお礼を言いますわ。 【契約】を無効にする方法を探し出し、夫と父から自由になってみせる! ※他サイトにも掲載しております。 ※表紙はお借りしたものです。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

処理中です...