ツムギ ツナグ

みーな

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リューシャ編

11話

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スカイはリリエの異変に気づかずに戦っていた。


「な…形のない雷を凍らせた…だと?!」
「…あれ、雷って言うの?ただの電気の塊でしょ。それに、あれを凍らせる原理なんて簡単だし。」


雷の魔法を扱う神はスカイに自分の作り出した雷の球が凍らされたことに驚いていた。そんな神の発した言葉に、スカイは人指し指を前につきだした。すると指先から氷が突然出現し、地面に落ちた。


「…?!何もないところから氷が…?!」
「…ま、分かんないか。見たくらいだったら。…簡潔に言って空気中の微量な水分を凍らせた。…それくらいわかるもんだと思うけど、俺の常識は氷のことになると偏ってるって言われるから分かんないのが普通かな。…【ランスムーン・グレイド】」


指をならして、唖然とする神の下から氷を出現させるスカイ。


「な…?!くっ!」


神は慌てて後ろへ飛んだため、どうにか攻撃が直撃するのは免れたが、かすり傷は出来ていた。


「俺が勝手に説明してる間に攻撃すれば、ちょっとは有利になったと思うけどね。バカみたいにぼけっと俺の説明聞いてるからそんなことになるんだよ」
「なんだと…っ!」


スカイの一言で神は苛立ったのか、魔法の詠唱を始める。


「【ルメスニエ・インパクト】!」
「やっと真面目に戦うんだ。俺、真剣にやってくれないと飽きるから。」


神はスカイに向かって雷を放った。








「【ボルケニック・ヒーテミスト】!」


神はリリエに熱を放った。そのせいか、少しずつあたりの温度が上がっていく。


「…熱を発生させて、なにがしたいの?【ルーニクムト・ブリーズ】」


リリエはすぐに風で熱を払った。しかし、リリエのその行動で神はしめたというように笑った。


「…はまったな」
「なにが、おかしいの?」
「残念だな。俺は熱が操れる。しかし、風で熱を払ったとしても熱自体は消えない。ということは、熱があるだけで俺は攻撃が可能なのだ!」
「!しまっ…」
「【ヒレステリック・アゲンド】!」


広範囲に分散した熱がリリエに向かって集まってくる。いくら炎ほど熱くはない熱であっても、広範囲に広がっているものを集中させれば炎の温度などゆうに越えてしまうだろう。


「…っ!…」


しかしリリエは少し目を細めると、右手を上空にかざした。







 神はスカイに向かって、雷を放射状に放つ。が、スカイはそれをひらりひらりとかわして避ける。


「そんなので俺にダメージを与えられるとか思ってるの?俺もそこそこなめられてるね。」


するとスカイは左手を横に伸ばす。


「【レグティスヌ・ルニテクタ】」


神の横から氷が出現して神を貫こうとする。


「くっ?!…」


それを間一髪でどうにかかわしていく神。


「…やっぱり、つまんなくなってきた」


そう呟くと、スカイは飛び上がって上空に滞空する。そして上空からスカイは右手を神にかざして、呟いた。


「【ヘニレフス・アシュレン】」


スカイの右手から、つららのような氷の塊が神に降り注ぐように放たれる。


「な?!」
「……悪いけど、こんなとこで俺は苦戦してる暇もないし、やっぱり飽きてきたから、もう終わらせるよ。【エレスネアル・ウィンター】」


相手に防御する間も与えずに、スカイは神を一瞬で凍らせた。そしてスカイは地面に着地し、氷漬けになった神を一瞥してなぜかふと、スカイは突然呟いた。


「……………は…この戦いに、なにを期待して…なにを目指しているんだろう…」


スカイはそう遠くを見つめながらほんのかすかに目の奥に悲しみをにじませた。







「これでは、もう防ぎようもない…なにをしようとも…俺の…勝ちだ…!」


そう呟き、ほくそ笑んだその時、右手を上空にかざしたままのリリエが言った。


「【コルクド・ラーケッドレイン】」


その言葉とともに右手からなにかが上空に打ち上がり、美しく太陽に反射されながら降り注いできた。


「…?!…これは…雨…?いや、ここは雲の上…雨なんてものは降らない…では、まさかこれは…」


リリエが降らせたのは、雨ではなく、だと判断すると、神はリリエを見た。


「…熱なんて、水があればすぐに消え去っていくはかないもの。そして、あなたの存在も同様に小さく、はかなく、…いずれ消え去ってゆく物。」
「なん…だと…?」


リリエは微笑を浮かべて言った。


「あなたはここで負けるの。反逆者を倒すことも、捕らえることも出来ずに…」
「それはこちらの台詞だ。城に1歩も入れないまま、貴様は負ける!」


その言葉に動揺の1つすら見せず、リリエは唱えた。


「【ファエリルナ・フォーレリーヌ】」
「?!」


すると、神の下から水の渦が巻き起こり始める。


「…これでも、まだ戦うというの?その渦に反抗する力も出てこないでしょ?」
「そんなわけ……?!…力が…入らない…?なぜだ…?ほとんど、魔法も放っていないというのに…?!」


リリエの言葉で、自分がなぜか魔法を放つこともできず、動くこともできないと知った神は驚いていた。それを見て、リリエは呟くように神に言った。


「……はかない存在にしては、派手な終わりかた。」
「それは…人である貴様もそうだろう…」
「…?どういうこと?」


渦が少しずつ大きくなっていくなか、身動きのとれない神はリリエにそう言った。


「人こそ…限られた命で短い一生だ…人である貴様こそ、俺よりもはかない存在ではないか…?」
「……それでも、その短い一生をどう生きるかが、その自分の存在のはかなさを左右するんじゃない?」
「…?!…雰囲気が…?」


神がリリエを見ると、リリエはついさっきまでとは打って代わり、優しい笑みでこちらを見ていた。


「私は、自分の存在をはかないものにしたくないから、リューシャを…友達を、助けに行っているのかも知れない…」


微笑んだその目に悲しみが宿ったのを見て、神の視界は水に覆われた。それと同時に神の意識も水のなかに沈んでいくように消えた。渦はすぐに弾け、地面には気を失った神が倒れていた。


「…やっと、倒した…」


そうフラりと倒れかかったリリエの体を支えたのは、スカイだった。


「…スカイ…ありがとう」


リリエはスカイにそう笑いかける。


「…べつに、お礼を言われるようなことじゃないと思うけど。」
「違うよ。スカイ、雷使いと戦いながら、私の相手も攻撃してたでしょ?こっそりと体のどこかを凍らせて、誰にも気付かれないようにじわじわと体力を奪って。」


笑って言うリリエにため息をついて返すスカイ。


「はぁ…分かってたんだ。」
「だって、私があんなに早くほとんど攻撃を受けずに勝てるなんて、有り得ないもん。」


にこにことそう言うリリエに内心でため息をつくスカイ。


″はぁ…あれは俺のもあっただろうけど、大半は君のスイッチが入ってたからじゃないの?…。″


「…回復させるから、じっと…「あ、回復しなくてもいいよっ!」…なんで?」


スカイの言葉の途中で入ってきたリリエはスカイの問いかけに笑みを崩さずに返す。


「だって、ちょっと疲れたくらいだし、スカイにわざわざ回復してもらわなくても大丈夫!そんなことより、ずっと気になってたんだけど、城ってどこ?ここ、ただの空き地でしょ?ここのどこに…」
「【ミラージュ・ディストロイ】」


そう呟いた瞬間、空間が歪むかのように景色がグニャリと曲がり、歪みのようなものができると、円のようにかなり大きなサイズ(まるで城1つすっぽりはいるくらい)まで広がる。すると、歪みは一気に円の中心に集まり、まばゆい光を放った。


「…っ!まぶしっ…」


あまりの眩しさに一度目を閉じ、リリエが次に目を開けた時、そこには神の城と思われる巨大な城がそびえ立っていた。


「…うわ…すごく大きい…」


リリエはそう立ち尽くしていると、スカイがリリエの手を引いて城に近づいていく。


「え、スカイ…正面から入って、大丈夫なの…?」
「…さぁ。でも、どこから入ろうとも一緒でしょ。」
「ぜ…絶対一緒じゃないよー!」


リリエは叫んだ。
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