ツムギ ツナグ

みーな

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リューシャ編

28話

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「勝てる…って本当に?」


リリエが首をかしげるが、スカイは迷いなく頷く。


「…これなら、絶対に勝てる。負ける可能性なんてほぼゼロに近い。」
「ほんと?!どんな作戦?!」


スカイは作戦が聞こえないようにするためかリリエの耳元で囁いた。


「なんでもいいからとりあえず魔法を辺りに放って。もうなんでもいい。適当でいいから魔法を使いまくって。」
「…はぁ?!」


やけくそになっているとしか思えない作戦。


「そ…!そんなのいわゆる愚策でしょ?!選択間違ってるよ!そんなの、逆に絶対負けるよ?!」


一度叫びかけたもののどうにか小さい声で言ったリリエの言葉に首を振るスカイ。


「いや、絶対に勝てる。絶対に。」


スカイの真剣な目に、嘘ではないと感じたリリエはすぐに諦めたかのように言った。


「……まあ、スカイが言うなら信じるよ。まだ負けるとしか考えられない策だけど、他に考えも出ないわけだしね。」


リリエは両手を前につきだした。


「とにかく、スカイの作戦通りにすればいいんでしょ?魔法は風だけでもいい?」


リリエの問いかけに頷くスカイ。


「むしろ風だけにしてくれた方がいいよ。」
「分かった。」


リリエは意識を集中させると、詠唱を唱えた。


「【シレニエス・フィールド】」


すると風がリリエを中心として辺り全体に起こった。ミレアの声は距離的な問題か、自分の起こした風のせいか聞こえなくなっていた。


「…と………も…と…」
「?」


微かに聞こえてくるミレアとは違う声に、リリエは耳を澄ませた。が、そんなことをする必要もなく半ば叫ぶような声が耳に届いた。


「もっと!!」


その声がスカイだとすぐさま理解し、言葉の意味もすぐに理解できた。


″もっと魔法を強くしろって言いたいんだね!″


「【エクレセンデット・ストーム】!」


リリエがそう叫ぶと、先程よりも辺り全体に起こっていた風が強まった。


″…風は強くしたけど…スカイはなにをするつもりなんだろう?風と氷で出来ることはないと思うけど…″


そうリリエが考え始めたその時、スカイの詠唱の声が聞こえてきた。


「【アイシェリング・コールディン】!」


そうスカイの詠唱が聞こえたリリエの目の前に氷の欠片がキラリと輝いたかと思うと、一瞬にして目の前が氷に包まれた。


「…え?…待って。私、凍らされた…?」


どうしてとリリエの中に疑問が浮かびかけたが、ふととある結論にたどり着いた。


「あ、私火が使えるからなにも問題なかった…」


そう独り言を言ってリリエは魔法を使おうとしたが、その前に氷が砕け散った。


「?!」


リリエは身構えるが、目の前に立つ人物を見て気を軽くした。


「なんだスカイか…ビックリした」
「あのまま置いといて、リリエに出てもらうこともできたけど、それだと俺の作戦が崩れるからね。」


その作戦と言う言葉を聞いてリリエはそういえばと言うようにスカイに問いかけた。


「ねえスカイ。作戦は分かったんだけど、この作戦でなにを狙ってるの?攻撃の意味も見えないし…」
「あの俺の使った氷の欠片は風に乗るほど軽くて、風が障害物にぶつかるとそれに反応して欠片が集まっていって、障害物を氷で覆うんだ。」
「あ、だから私に魔法を使いまくれって?」


スカイはリリエに頷く。


「本当はリリエの放った風を集めて、あの辺りが風で包まれたのを俺が作ろうと思ってたんだけど、リリエが勝手にやってくれたから手間が省けたよ」
「へー!…で、それにはなんの意味があったの?」
「…補助魔法ほじょまほうの[ハイド・アピュレンス]は姿を消すことができる。でもそれには負けを導く弱点がある。」
「負けを?」
「そう。まぁ基本、弱点のない魔法なんてないと思うけど、その魔法はただ光の反射で姿を消しているに過ぎない。だから無闇に攻撃されれば当たってしまうこともあるし、俺の使った魔法のような特性を理解してないと避けることが難しい魔法は、ああいう風に見事に当たるんだ」
「ああいう風?」


スカイが見る方向をリリエも見つめるとそこには氷が浮いており、その中にはミレアがいた。


「!」
「俺のこの氷の魔法はかなり強い魔法で氷を割るか、火で溶かすかじゃないと氷からは抜け出せない。…さて、今のうちに倒そう。」


スカイの説明を聞いて、リリエは頷く。


「…私ももっとスカイみたいに強くていい作戦が立てられたらなぁ…」
「…リリエなら、俺くらい余裕で越えられる。それに今できないものをやりたいって願ってもなかなか出来はしないよ。」
「ありがとう」


リリエはスカイのフォローの言葉に笑うと、両手を前へと伸ばした。


「俺が氷を解除するから、氷がなくなったその瞬間にリリエは使えるなかで1番威力の高い火の属性魔法ぞくせいまほうを使って」


リリエはスカイに頷き、リリエが魔法の体勢に入ったのを確認してスカイは言った。


「【キャスティンド・リラーズ】」


するとミレアを覆う氷が一欠片の水も残さず溶けていく。そしてリリエは叫んだ。


「【フェンディクタ・フレイムス】!」


ミレアは気付けば目の前に飛んできていた火の玉に目を丸くした。スカイの時はギリギリで偽物を作り出して避けたが今度はそうも行かなかったようで、成す術なくミレアは火に包まれた。


「いやぁ…この作戦聞いたときは絶対愚策だと思ってたけど、まさかの奇策だったよ」
「だから言ったでしょ。絶対勝てるって。」


スカイにリリエは苦笑いを向けると、地面に落ちて気絶したミレアに近寄りリリエは言った。


「…怪我は火傷くらいで済むと思いますけど、しばらくは意識が戻らないです。進ませてもらいますよこの先に。」
「そうは言っても、気絶してるから聞こえないよ」
「それもそっか」


リリエはスカイの言葉に笑みをこぼした。
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