ツムギ ツナグ

みーな

文字の大きさ
36 / 74
リューシャ編

35話

しおりを挟む
「はぁぁぁぁ…」


リリエは心底疲れたのか、その場に尻餅をついた。


「リリエ大丈夫?」


スカイのその言葉にリリエは笑って返す。


「そう言うスカイこそ大丈夫なの?」


スカイはそう返したリリエに言葉を返さず立ち上がると、出現させていた氷に手を伸ばし、呟いた。


「【アイシクル・リターン】」


その詠唱で、出現していた氷が全て弾け、細かい輝く粒子になると、粒子はスカイの伸ばした手に集まっていく。


「何してるの?スカイ。」
「何って、あの氷に溜めてた魔力を回収してるんだよ。疲れてても魔力が残ってたらある程度は動けるしね。…まぁ、これほんとはあのやられかけたときに、逆転するつもりで置いてたんだけど、誰かさんが割り込んできたから無駄になったからね。」


スカイのその言葉はリリエの心にぐさりと刺さる。


「う…ごめんなさい…」
「ま、上手いことリリエが倒してくれたから良かったんだけど。…でも、そういえばリリエ、土の魔法は使えないって言ってたよね?」


スカイのその言葉に、リリエは思い出したように言った。


「あ、それは…誤解?語弊?だったのかな…?」
「どういうこと?」


首をかしげてそう言うリリエをスカイは訝しげに見つめた。


「えっと…かなり短く要約するとその、私が魔法を覚えた本には、土の魔法がAcquire already修得済って書かれてて。正直、よくわからなかったんだけど覚えられないのかな?ってなって……だから、覚えられなくて使えないって思ってたんだけど」
「今回どうしてか使えたってことね。…でも、Acquire already修得済?リリエは覚えてすらいなかったのにその文字が?」
「分からない…けど、それ以前になんで本が私の知らないことすらも知ってたのかが謎なんだけど…」


そう苦笑いするリリエにスカイは言った。


「リリエって、本当に魔法系の知識が皆無だよね。〔…他の知識も皆無なのかも知れないけど。〕」
「…魔法の知識無くてすいませんでしたね。後、最後に言った他の知識も皆無って言ったのも全部聞こえてますからね」
「まあ冗談だけど、魔法が記されている本はどれもそんなものが多いよ。開く者によって何の魔法を覚えているのか分かりやすくするために、そういう仕様になってるんだよ」
「…ふーん」


リリエは少し不機嫌そうに返した。スカイは出現させていた氷を魔力に変えて回収し終わると、扉の方へ進みながらリリエに言う。


「さて、行くよ。」
「え?ちょっと待ってよ!」


スカイを追いかけ、リリエは扉の先へ進んだ。


″…リリエが、今使っているのは、元素魔法げんそまほうじゃない気がする…それに極似した魔法の、地面の物質魔法ぶっしつまほうのような気が……いや、まさかね…″


スカイはその信じられない考えを頭の中から振り払った。


″…そんなはずない。俺でも、のに″


スカイとリリエは、白亜はくあの城を進んで行った。







「…【クリエート・フラッシュ】」


その一言で真っ暗な部屋が光に満たされる。明るくなった部屋の入り口に佇む深緑の髪。言わずともわかるだろう、その佇む人物はルクト。ルクトは、部屋の壁に沿って置かれている棚から綺麗で小さな黄緑色のたまを手に取り、ズボンのポケットに入れた。するとふとなにかに気づいたように呟いた。


「…そういえば、あの2人は今どこまで進んでるんだ?どこにいるのか分からないと行こうにも行けないんだけどな……あのスカイが、ちゃんと俺の渡してるやつを持ってるとも限らないけど、ダメもとで試してみるしかないか。」


ルクトはそう言うと家の外へ出た。そして手を広げ、掌を空に向ける。


「【マップレスト・シャイン】」


ルクトの開く掌から眩い光が放たれ、どこかの建物の道だけが書かれた、地図のようなものが出現した。


「ここは、白亜はくあの城…?そんなところまで行ってるのかあの2人は。…まあリューシャが連れていかれるとは俺もリリエも、リューシャ自身も思ってなかっただろうし、本気で連れ戻す気なんだろうけど……、そこは心配するほどのことでもないか。」


ルクトはそう呟いて笑う。


「…まさかリューシャがあいつだったことには驚いたけど、それ以上に逆になついてたことに笑いが止まらないな。あの様子なら説得なんかするもしないも同じだな。」


それでしばらく微笑むと、ルクトは表情を引き締める。


「ただ、1つ気になるのは神の城も同じ話になるが白亜はくあの城の敵が少ないこと…なにかがあるのか、わざとなのか…こればっかりは行ってみないと分からないな。」


ルクトは1人そう言うと辺りに人がいないことを確認した。


「さて…行くか。スカイの反応が楽しみだ。【レデスニータ・フラインド】」


ルクトは空に飛び上がると、空に浮かぶ巨大な雲に向かって飛んでいった。







 スカイとリリエは相変わらず城の中を進んでいた。が、スカイがなにかにピクリと反応した。


「?スカイ?何かあった?」
「…いや、なんでもないよ。」


″…この上ない嫌な予感がするんだけど…まさか、来るわけないよね…?″


スカイはそう心の中で呟いた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処刑された王女、時間を巻き戻して復讐を誓う

yukataka
ファンタジー
断頭台で首を刎ねられた王女セリーヌは、女神の加護により処刑の一年前へと時間を巻き戻された。信じていた者たちに裏切られ、民衆に石を投げられた記憶を胸に、彼女は証拠を集め、法を武器に、陰謀の網を逆手に取る。復讐か、赦しか——その選択が、リオネール王国の未来を決める。 これは、王弟の陰謀で処刑された王女が、一年前へと時間を巻き戻され、証拠と同盟と知略で玉座と尊厳を奪還する復讐と再生の物語です。彼女は二度と誰も失わないために、正義を手続きとして示し、赦すか裁くかの決断を自らの手で下します。舞台は剣と魔法の王国リオネール。法と証拠、裁判と契約が逆転の核となり、感情と理性の葛藤を経て、王女は新たな国の夜明けへと歩を進めます。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

老聖女の政略結婚

那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。 六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。 しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。 相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。 子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。 穏やかな余生か、嵐の老後か―― 四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。

復讐のための五つの方法

炭田おと
恋愛
 皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。  それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。  グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。  72話で完結です。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

処理中です...