ツムギ ツナグ

みーな

文字の大きさ
37 / 74
リューシャ編

36話

しおりを挟む
「…そういえば、あのさっきの私が倒した相手、スヴールの部下は3人いるって言ってたよね?」


唐突にリリエはそうスカイに訊ねる。


「あぁ、言ってたねそんなこと。」
「ってことはさ、まだ2人いるんだよね…?」
「そういうことになるね。」
「後スヴールもいるでしょ、それともしかしたら王妃様と戦うかも知れないんでしょ?…絶対圧倒的に魔力がお互い足りないと思うんですけど…」


リリエは若干引きつった表情で言うが、スカイは涼しげにとんでもないことを言った。


「足りないっていうか、…王妃様なんて俺たちが全快だったとしても勝てないよ。絶対に。」
「え…!?」


スカイのその言葉にリリエは固まった。


「なんで?」
「なんでって、王妃様だよ。あの神竜大戦しんりゅうたいせんを治めたっていう存在に俺たちが勝てるわけないでしょ。」
「それもそうだけど、もし戦うことになんてなったら…」


神竜大戦しんりゅうたいせんを治めた王妃と戦う。それだけで体が震えてくる。


「それの件に関しては大丈夫だよ。王妃様は基本温厚で全然怒らないし、魔法はどんなことに関しても使わない主義だから戦うなんてことは絶対にしないから。」
「ほんと?スカイよく知ってるね」
「…俺は、色々小さいときに聞いてたから…」
「へぇ…でも、どうして勝てないってそうも断言できるの?」
「リリエもそこは知ってるでしょ。王妃様は超魔法が使える。その上に、無の属性魔法ぞくせいまほうも扱うんだ。」
「無の…属性魔法ぞくせいまほう?」
「不思議だよね。無、なんて属性じゃない。でも魔法を使った王妃様を見たかつての神竜大戦しんりゅうたいせんの戦士たちは口々にこう言ったらしい。…あれは、属性のない属性魔法ぞくせいまほうだ…って。その言葉から無の属性魔法ぞくせいまほうなんて言われてるらしいね。」
「属性のない属性魔法ぞくせいまほうかぁ…」


遠くを見つめるような目でそう呟くリリエにスカイはため息をついて言う。


「はぁ…妙な好奇心で見たい、戦いたいとか言い出さないでよ。」
「言うわけないでしょ?スカイがそれだけ勝てないって言うのに。」
「だったらいいんだけどね。」
「でも、気になるのは、スヴールの部下の存在だね…後2人もいるんでしょ?そのうち1人はミスト…だったよね?」
「リリエ戦えそう?」
「うーん…分からない…どこまで魔力が続くか全然検討もつかないし…相手の使う魔法なんて分かるわけないし…もし元素魔法わたしのでも対応出来ない魔法だったらきついよね…」


不安げにそういうリリエにスカイは返す。


「まあ、魔力は一度切れたとしてもしばらく休憩すれば魔法1回打てるくらいは回復するし、元素魔法リリエの魔法は4つで1つ。基本的には対応できると思うよ」


″ただ、心配なのはあくまで属性が土の時に魔力が発動したから、他の3つの属性でも魔力で使用できるのかどうなのか…なんだよね…そういう前例、聞いたことないからなんとも言えないけど…″


そんなスカイの心の中での心配も露知らず、リリエは笑顔でスカイに言う。


「そうなの?だったら、魔力は休憩しつつだったら大丈夫かな?」
「うん、今はとりあえず、魔力の残りや魔法のことも気にしなくて大丈夫だと思うよ。」


スカイの言葉にじゃあスカイに頼りっぱなしにならないね!と笑うリリエにスカイは心の中で返した。


″俺からすればもっと頼ってほしいって思うんだけどね…″


もちろんそれは心の呟き。リリエに聞こえるはずなどなく、リリエとスカイは先へと進んで行った。
が、しばらく進んだとき、どこからともなく2人に声が聞こえてきた。


『…まさか、もうこんなところまで来ているとはな?』
「?!」
「今の声…どこから?!」


辺りを見回すスカイとリリエに再び声が聞こえる。


『そんな近くにおるわけなかろう?妾の姿など今のお主たちには見えんし、そもそも敵の近くに身を潜めるような自滅行為などせぬ』
「くっ…!」


リリエは悔しそうに拳を握る。それが見えたのか、声は笑いを含んだ声で言う。


『その悔しそうな顔…妾にとっては最高の表情だ。だが…氷の属性魔法ぞくせいまほうの使い手…だったか?お主は表情が固いのう?』
「…表情?別に俺の場合、感情があんまり表に出ないだけ。それに、表情が固くて何か不都合なことでもあるの?」


リリエとは反対に表情が欠片も動いていないスカイは声にそう返した。


『不都合なことはないが、面白味に欠けると思ってな?』


すると、リリエとスカイの目の前の床から、黒い霧か雲のようなものがもくもくと立ち上ぼり、それがリリエとスカイをすっぽり覆えるほど大きくなったと思うと、黒い霧のようなものは勢いよく弾け飛んだ。


「っ!」
「!」


とっさに腕で目を覆ったスカイとリリエの足元を見る目の視界に、少しだけ、黒いヒールブーツが入った。


「そんなに防御せずとも、まだ攻撃はせぬ。…、の話だがな。」


腕を下ろしたスカイとリリエの前に立っていたのは、紺色の髪をポニーテールした女性だった。


「知っておるとは思うが、妾はスヴール様に遣える部下、ミスト・アルシューだ。牢獄への土産として持っていくが良いぞ?反逆者のお主らを捕らえた者としてな。」
「その台詞を言うのは俺たちが負けてからにしてくれるかな。」
「今からでも間に合うぞ?それが嫌ならば、そうだな……30分。戦闘がそれ以上長引けば、本当にお主らが負けるまで言わないことにしてやっても良いがな。」
「もう言ってるけどね。」


ミストとスカイはそんな会話を交わすと睨み合った。


「私のことも、忘れないでね…?」


1人会話に入れないリリエはそう聞こえないと分かっていながらも呟いた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

婚約破棄の代償

nanahi
恋愛
「あの子を放って置けないんだ。ごめん。婚約はなかったことにしてほしい」 ある日突然、侯爵令嬢エバンジェリンは婚約者アダムスに一方的に婚約破棄される。破局に追い込んだのは婚約者の幼馴染メアリという平民の儚げな娘だった。 エバンジェリンを差し置いてアダムスとメアリはひと時の幸せに酔うが、婚約破棄の代償は想像以上に大きかった。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】毒を飲めと言われたので飲みました。

ごろごろみかん。
恋愛
王妃シャリゼは、稀代の毒婦、と呼ばれている。 国中から批判された嫌われ者の王妃が、やっと処刑された。 悪は倒れ、国には平和が戻る……はずだった。

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
私は、夫にも子供にも選ばれなかった。 その事実だけを抱え、離縁を突きつけ、家を出た。 そこで待っていたのは、最悪の出来事―― けれど同時に、人生の扉がひらく瞬間でもあった。 夫は愛人と共に好きに生きればいい。 今さら「本当に愛していたのは君だ」と言われても、裏切ったあなたを許すことはできない。 でも、子供たちの心だけは、必ず取り戻す。 妻にも母にもなれなかった伯爵夫人イネス。 過去を悔いながらも、愛を手に入れることを決めた彼女が辿り着いた先には――

さようなら、お別れしましょう

椿蛍
恋愛
「紹介しよう。新しい妻だ」――夫が『新しい妻』を連れてきた。  妻に新しいも古いもありますか?  愛人を通り越して、突然、夫が連れてきたのは『妻』!?  私に興味のない夫は、邪魔な私を遠ざけた。  ――つまり、別居。 夫と父に命を握られた【契約】で縛られた政略結婚。  ――あなたにお礼を言いますわ。 【契約】を無効にする方法を探し出し、夫と父から自由になってみせる! ※他サイトにも掲載しております。 ※表紙はお借りしたものです。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

処理中です...