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リューシャ編
37話
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「妾がここに立つ理由、お主らには分かっておるのだろう?」
「分かってなかったら、さっきの相手、倒してきてないから。」
やはり変わらないスカイの淡々とした言いように、ケラケラとミストは笑う。
「そうか、それもそうだな。では覚悟なんぞは要らんか」
そう言うとミストは笑みを浮かべながらスカイとリリエの方へ腕を伸ばした。
「【ダークネス・レネスト】」
その言葉を呟いた瞬間、ミストの伸ばす腕から黒い靄が放たれ、それを見たスカイはリリエを引き寄せ抱き抱え、技が来ないと思われる右側へと飛びのいた。
「え?ちょ、ちょっとスカイ?!」
リリエを抱えるスカイの横を黒い靄のレーザーの様なものが通りすぎる。
「リリエあれ避けられたの?」
驚くリリエがなんで抱き抱えるのか聞きたがっているのを感じたためスカイは質問が出るよりも先にリリエに答えた。
「無理だよ!無理だけど…!」
″…そんなこと、スカイはよく平気でできるよ…″
リリエはそう心で呟いた。そんなリリエを気にもかけず、スカイは攻撃を無事避けれたのを確認するとリリエを下ろした。
「仲が良いのだな。お主たち」
「それが、どうかしたの。」
スカイはそう言うと横に立つリリエと視線を交わす。
〝俺が魔法を打ったら、リリエも続けて魔法を打って。〟
〝分かった。〟
アイコンタクトで会話を成立させ、スカイは駆け出した。
「【ヘニレフス・アシュレン】」
スカイが氷を放ち、ミストがそれを防ごうと黒い霧を出現させる。それと同時にリリエが動く。
「【レンドオブ・ローズ】!」
地面を変形させて薔薇の花を作り出し、出現させる黒い霧を避けてミストへ攻撃を仕掛ける。
「!」
リリエの不意打ちに驚いたのかミストは一瞬ばかり固まり、ギリギリに攻撃をよけた。
「なかなか息の合った攻撃だな。もし妾がこの魔法を使っていなければ、きっともう攻撃を受けてしまっていただろうな」
そう言うとミストは手に黒い霧を発生させた。
「…ずっと気になってるんだけど、その霧に何の効果があるの?ただ空中に浮いてるだけで何の意味もないものに見えるんだけど。」
「これか?これは、闇だ。妾の扱う魔法は闇の属性魔法でな。ある程度の魔法は闇に吸い込めるのだ。便利であろう?」
笑うミストにリリエは何かに気づいたように言う。
「!吸い込める…?じゃあ、スカイの氷が無くなってるのは…闇で吸い込んだってこと?」
「そうだ。」
手に黒い霧、もとい闇を纏わせ、ミストはリリエの言葉に頷く。ただ、闇で吸い込めると言えども、無限に吸い込めるわけでは到底ないだろう。
「でも。」
スカイが口を開く。
「その吸い込んだものはどこに行くわけ?」
「何が言いたいのだ?」
「だから、その吸い込んだものをどこに放って行ってるのか聞いてんの。」
スカイのその言葉に、ミストは目に怪しげな光を灯す。
「どこ…か。…特別に教えてやろう。妾が吸い込んだ魔法を、どう使っているのか…な。」
左手を前にかざし、ミストはブラックホールのようなものを出現させた。
「闇で攻撃し、闇で魔法を吸い込み、吸い込んだ魔法さえも攻撃に使う。妾はそうしてずっと戦ってきたのだ。」
そう言った瞬間、先程吸い込んだと思われる氷を二人に向かって放った。リリエはそれを見た瞬間にスカイよりも早く動いた。
「【ウォールス・アレスド】!」
地面を腕の動き1つで壁に変形させ、氷を防ぐ。
″私の土じゃ、恐らく火や風のように強力なダメージは与えられないし、多分闇に吸い込まれちゃう…だから火や風で対抗したいところだけど、正直吸い込まれない確証も無いんだよね…″
リリエは不安そうに自分の手を見つめる。
″でも、やっぱり今一番良いのは残りの3つの元素で戦うこと…スカイの氷だとまた吸い込まれてしまうだろうし、スカイの魔力の浪費にも繋がる……けど、かといってどこまでまだ戦えるかもわからない私が出しゃばるのもどうかとは思うけど…″
少しばかりリリエは悩み、ひとつの結論を導きだした。
″…うん。失敗してもいい、とにかく出来ることはやろう。スカイが攻撃を無効化されてしまう今は、私しか戦えないも同然。…出しゃばっててもいい。失敗してもいい。それで勝ちへの道が見えたら、ダメージを与えられなくてもラッキー。うん。それで、十分。″
そう己を鼓舞させ、リリエは前を向いた。先にはミストが立っている。
「悩みは解決できたか?」
「お陰で、しっかりと。」
リリエが笑うと、ミストも笑みを浮かべた。
「そうか。なら、もう待つ必要は無いな!」
ミストは手に闇を纏いリリエに一直線に向かってくる。
″…出来るなら、やってみてください。私の元素をその闇に吸い込んでみて下さい!″
リリエは右手を前に伸ばして叫んだ。
「【エクレセンデッド・ストーム】!」
リリエの右手から、風は放たれなかった。
「っ?!」
″失敗…した…?″
「…もらった。」
ミストは不適な笑みを浮かべ、リリエに闇を纏った右手を伸ばす。
「【エンディース・】…」
景色がスローモーションのようにゆっくり動いて見える。少しずつ大きくなるミストの纏う闇は、リリエの方へしっかりと狙いを定めている。
″ここまで来て、魔法の不発なんかでやられるなんて…スカイ…″
スカイの姿はちょうど見えない。でもスカイがこちらに手を伸ばして、無効化されるのは目に見えているが魔法を放とうとしているのは容易に想像できる。
″やっぱり、出しゃばらなきゃ良かったかな…?″
そう心の中で呟いたその時、視界が眩い光に包まれ、リリエは思わず目を閉じた。
「分かってなかったら、さっきの相手、倒してきてないから。」
やはり変わらないスカイの淡々とした言いように、ケラケラとミストは笑う。
「そうか、それもそうだな。では覚悟なんぞは要らんか」
そう言うとミストは笑みを浮かべながらスカイとリリエの方へ腕を伸ばした。
「【ダークネス・レネスト】」
その言葉を呟いた瞬間、ミストの伸ばす腕から黒い靄が放たれ、それを見たスカイはリリエを引き寄せ抱き抱え、技が来ないと思われる右側へと飛びのいた。
「え?ちょ、ちょっとスカイ?!」
リリエを抱えるスカイの横を黒い靄のレーザーの様なものが通りすぎる。
「リリエあれ避けられたの?」
驚くリリエがなんで抱き抱えるのか聞きたがっているのを感じたためスカイは質問が出るよりも先にリリエに答えた。
「無理だよ!無理だけど…!」
″…そんなこと、スカイはよく平気でできるよ…″
リリエはそう心で呟いた。そんなリリエを気にもかけず、スカイは攻撃を無事避けれたのを確認するとリリエを下ろした。
「仲が良いのだな。お主たち」
「それが、どうかしたの。」
スカイはそう言うと横に立つリリエと視線を交わす。
〝俺が魔法を打ったら、リリエも続けて魔法を打って。〟
〝分かった。〟
アイコンタクトで会話を成立させ、スカイは駆け出した。
「【ヘニレフス・アシュレン】」
スカイが氷を放ち、ミストがそれを防ごうと黒い霧を出現させる。それと同時にリリエが動く。
「【レンドオブ・ローズ】!」
地面を変形させて薔薇の花を作り出し、出現させる黒い霧を避けてミストへ攻撃を仕掛ける。
「!」
リリエの不意打ちに驚いたのかミストは一瞬ばかり固まり、ギリギリに攻撃をよけた。
「なかなか息の合った攻撃だな。もし妾がこの魔法を使っていなければ、きっともう攻撃を受けてしまっていただろうな」
そう言うとミストは手に黒い霧を発生させた。
「…ずっと気になってるんだけど、その霧に何の効果があるの?ただ空中に浮いてるだけで何の意味もないものに見えるんだけど。」
「これか?これは、闇だ。妾の扱う魔法は闇の属性魔法でな。ある程度の魔法は闇に吸い込めるのだ。便利であろう?」
笑うミストにリリエは何かに気づいたように言う。
「!吸い込める…?じゃあ、スカイの氷が無くなってるのは…闇で吸い込んだってこと?」
「そうだ。」
手に黒い霧、もとい闇を纏わせ、ミストはリリエの言葉に頷く。ただ、闇で吸い込めると言えども、無限に吸い込めるわけでは到底ないだろう。
「でも。」
スカイが口を開く。
「その吸い込んだものはどこに行くわけ?」
「何が言いたいのだ?」
「だから、その吸い込んだものをどこに放って行ってるのか聞いてんの。」
スカイのその言葉に、ミストは目に怪しげな光を灯す。
「どこ…か。…特別に教えてやろう。妾が吸い込んだ魔法を、どう使っているのか…な。」
左手を前にかざし、ミストはブラックホールのようなものを出現させた。
「闇で攻撃し、闇で魔法を吸い込み、吸い込んだ魔法さえも攻撃に使う。妾はそうしてずっと戦ってきたのだ。」
そう言った瞬間、先程吸い込んだと思われる氷を二人に向かって放った。リリエはそれを見た瞬間にスカイよりも早く動いた。
「【ウォールス・アレスド】!」
地面を腕の動き1つで壁に変形させ、氷を防ぐ。
″私の土じゃ、恐らく火や風のように強力なダメージは与えられないし、多分闇に吸い込まれちゃう…だから火や風で対抗したいところだけど、正直吸い込まれない確証も無いんだよね…″
リリエは不安そうに自分の手を見つめる。
″でも、やっぱり今一番良いのは残りの3つの元素で戦うこと…スカイの氷だとまた吸い込まれてしまうだろうし、スカイの魔力の浪費にも繋がる……けど、かといってどこまでまだ戦えるかもわからない私が出しゃばるのもどうかとは思うけど…″
少しばかりリリエは悩み、ひとつの結論を導きだした。
″…うん。失敗してもいい、とにかく出来ることはやろう。スカイが攻撃を無効化されてしまう今は、私しか戦えないも同然。…出しゃばっててもいい。失敗してもいい。それで勝ちへの道が見えたら、ダメージを与えられなくてもラッキー。うん。それで、十分。″
そう己を鼓舞させ、リリエは前を向いた。先にはミストが立っている。
「悩みは解決できたか?」
「お陰で、しっかりと。」
リリエが笑うと、ミストも笑みを浮かべた。
「そうか。なら、もう待つ必要は無いな!」
ミストは手に闇を纏いリリエに一直線に向かってくる。
″…出来るなら、やってみてください。私の元素をその闇に吸い込んでみて下さい!″
リリエは右手を前に伸ばして叫んだ。
「【エクレセンデッド・ストーム】!」
リリエの右手から、風は放たれなかった。
「っ?!」
″失敗…した…?″
「…もらった。」
ミストは不適な笑みを浮かべ、リリエに闇を纏った右手を伸ばす。
「【エンディース・】…」
景色がスローモーションのようにゆっくり動いて見える。少しずつ大きくなるミストの纏う闇は、リリエの方へしっかりと狙いを定めている。
″ここまで来て、魔法の不発なんかでやられるなんて…スカイ…″
スカイの姿はちょうど見えない。でもスカイがこちらに手を伸ばして、無効化されるのは目に見えているが魔法を放とうとしているのは容易に想像できる。
″やっぱり、出しゃばらなきゃ良かったかな…?″
そう心の中で呟いたその時、視界が眩い光に包まれ、リリエは思わず目を閉じた。
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