ツムギ ツナグ

みーな

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リューシャ編

34話

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「ダメ…っ!」


スカイと青年の間に入った人物。それはリリエだった。青年はリリエもろとも蹴りを放とうとし、リリエの悲しげな顔を見て視界に何かがフラッシュバックした。




『やめて!』
自分の前に1人の幼い少女が小さいからだを盾のようにして立ちふさがる。少女はこちらに背を向け、そして振り向いた。
『大丈夫?』




「…っ?!」


少女の悲しそうな顔、そしてリリエの悲しげな顔、その2つの顔が重なり、蹴りをリリエに触れる寸前で止めてしまった。


「…っ……あ、あれ…?」


リリエは攻撃が来なかったことに対して不思議そうにする。


「……っ…なんで、ここで…」


青年は足を戻して呟くと、少し後ずさりフラッシュバックした記憶を振り払うように頭を手で押えて、軽く左右に振る。


″思い出したくないんです…貴女のことは……どうして、今こんなときに…″


「…え…?」


不思議そうにするリリエの後ろから、突然呟き声が聞こえた。


「【ランスムーン・グレイド】」


氷が青年の横から現れ、青年を狙ったが、青年はとっさに手を払うように動かし木を出現させ、氷を弾いた。


「…っ…」
「…終わりでも、なかったみたいだね」


スカイはそう言うと立ち上がった。


「スカイ…!大丈夫?」
「大丈夫だけど、俺でもあれはやばいって思ったのに、あそこでリリエが出てくるとは思わなかったよ。」
「ごめん…つい、とっさに…」
「怒ってないからそんなにしょげなくても良いよ。無事ならそれでよかったしね。…さて、思ってもないミスだね。まさか間に入ってきた少女相手に攻撃を止めるなんて。」


スカイの言葉に、青年は顔を手で押さえて俯かせたまま答える。


「そうですね…僕自身驚きましたよ…まさか、昔の記憶がフラッシュバックして、攻撃の邪魔をされたなんてはじめてのことですから」
「昔の記憶?」
「はい。スカイさんにはどうでもいいことだと思いますが、俺は昔大切な人を失ったんですよ。…けど、失ったとは言っても、いなくなっただけの話なんですけどね。」
「へぇ。」


″大切な人…ね…″


スカイは意味深にそう心の中で呟く。その時リリエは俯き、どこを見ているのか分からないような目で床を見つめていた。


「こんな話、興味ないですね。」


″…でも、やっぱり、彼女は僕にとって危険な存在みたいですね。″


青年はそう言って心の中で呟くと、駆け出した。


「っ!」


″まさか…リリエ…?!″


リリエが狙われたことを察したスカイは、攻撃させまいと青年の前に立ち塞がろうとしたが、間に合わないと名前を叫んだ。


「リリエ!」
「!」


スカイの声に我に返ったリリエは、なぜか目の前に迫ってくる青年を視界に捉えた。


「え…?」
「あまり、傷つけたくは無いんですけど…ね!」


青年は、リリエに今度は迷うことなく蹴りを放った。


「…っ!?」




『ねぇリリエ。もし自分の身が危険にさらされたときはこう言って叫んで。〔レンドオブ・ローズ〕…って。リリエを、必ず守ってくれるから。』




「っ!…【レンドオブ・ローズ】!」
「!」
「?!」


リリエを中心として、波動のようなものが一気に辺りに広がったと思うと、地面が巨大な薔薇の花となり、青年を弾き返した。


「ぐっ!」
「…魔法が…使えた…?」


″!?…この魔法、この…まさか…?″


スカイはリリエの発動させたと思われる魔力に、何かを感じていた。


「なんで…それに、土の魔法…」
「…多分、魔力が使えるようになってるんだよリリエ。」


考えるのを止めて言ったスカイのその一言にリリエは自分の手を見つめる。


「私が、魔力を…?なんだか少し現実味がないような気もするけど、魔法が使えたってことはそういうことなんだよね…!」


リリエはそう笑うと青年の方を見据えた。


「すごくあっさり使えるようになっちゃったけど、使えるようになった以上はスカイに負担がかからないようにしないとね。」


″…これもきっと、あなたのお陰なのかな…?″


「…やっぱり、あなたは僕にとっての危険な存在なんですね。…もう、あんなミスはしませんから」


青年は力強く床を駆け、リリエの方へと向かってきた。


″でも、いくら魔力で、使えないはずの土の魔法が使えたと言ってもこれで調子に乗ったらダメだよね。慎重に行かないと…″

「【レイディング・アースム】!」


その言葉で、地面が強く波のようにウェーブし、青年の足場を悪くさせる。


「っ!地面を動かして来るなんて…でも、その魔法の性質なら当然と言えば当然ですかね…!」


青年はスカイの作り出している氷と、波打つ大地を避けてリリエの真後ろへ回り込んだ。


「でも、スカイさんのように僕の攻撃を器用に避けることは出来ませんよね!」
「【ウォールス・アレスド】!」


とっさに地面を壁に変化させ出現させると青年の蹴りを防いだ。


「くっ…」


リリエは青年が地面の壁に攻撃をした間に、青年から距離をとる。


″このまま攻撃し続けたら、多分倒せる。でも、いつまでこの魔力の発動状態が続くかわからないからなるべく早く倒したいところなんだけど…″


青年が壁を蹴り壊し、そのせいで辺りの視界は一気に悪くなる。そしてそれを見たリリエは心の中で青ざめる。


″脚力恐るべし…″


しかしそんなことで退くわけにもいかない。リリエは右腕を前へと伸ばす。


『…リリエ、魔法1つ打つのに緊張しすぎだよ』
「!」


そんな声がして、両肩に手が置かれる感覚がする。


『肩の力を抜いて、落ち着いて。』


言われるがままにリリエは肩の力を抜く。


『そうそう。で、ちゃんと狙いを定めて…』


声の指示に従い、青年にしっかりと狙いを定めた。


『「【アースディア・ソニレーフ】」』


リリエの声と、リリエに指示をしていた声が重なると、地面が大きく隆起し、青年に向かっていった。


「…!こんなもの……?!」


青年は向かってくる地面を先程と同じ壁のように蹴り壊わそうとした。が、なぜか攻撃を放つリリエが少女と再び重なって、いや、リリエが、少女本人が成長した姿に見えた。そのせいか、蹴りを放つ勢いが一気に弱まってしまった。


″…これだけ、威力が弱まってしまえば、壁を壊すことなんて出来ない…諦める…しかないでしょうね…これは…。我ながら、情けない……。ただ…リリエさん、って言いましたね…。あなたは、一体、何者なんですか…?………そして…エリナ様…今、貴女はどこに…″


青年は予想した通り、迫る地面を壊すことは出来ずに弾き返された。


「今、命中…したよね…?倒した…のかな?」
『…流石リリエ。倒せたよ。』


声が聞こえ、リリエは笑いながら声に言葉を返した。


「ううん。あなたが指示してくれたお陰だよ。ありがとう。マイ」
『どういたしまして。』


笑うようにそう言われ声はそれから聞こえなくなった。
青年の見た少女の姿は、リリエの聞いた声は、真実だったのか、幻だったのか。それはまだ、誰一人として知るよしもない。
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