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リューシャ編
33話
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スカイの呟いた詠唱、その言葉1つで床から氷柱が幾つも出現する。が、床に氷は張られていない。
「なんで…今まで氷柱とかは、張られた氷から…」
「あんた、自分で言ったよね?魔法は使い方次第でも勝ち負けが決まるって。」
「言いましたよ。それがどうかしたんですか」
スカイは苛立ったようにため息をついた。
「…分かんないかな。床ギリギリで空気を一気に凍らせて今こうしてるんだけど。」
「なるほど…細やかな説明ありがとうございます」
不敵な笑みを浮かべる青年に、スカイは心の中で呟く。
″…ほんとはあんたに説明したいんじゃないんだけど。″
そしてスカイは、チラリとリリエを見た。
″…!私の、為の説明だったってこと…?でも、意味が理解できてないよ…どうすれば…″
リリエは、困ったように、辺りを見回した。
「はぁっ!」
恐ろしいとも思えるほどのスピードで青年から蹴りが放たれる。スカイは青年の攻撃で疲れているわけではないと言い張ったが、それは嘘の部分が多かった。
″…リリエに、視線はさっき送ったけど、あれだってほとんどリリエへの他力本願だし…リリエにいい案が浮かばなかったら、俺はそろそろ…詰むね…″
スカイは内心焦りを感じていた。リリエに頼ってしまったため、リリエが詰んでしまえば己も詰んでしまうピンチに陥り、そのピンチの打開策すらも浮かばないこの状況に。
「スカイさん、疲れていないなんて、嘘ですよね?もう、詰みなんじゃないですか?この出現させた氷柱だって、大した効果は無いみたいですし、ただの魔力の無駄遣いとしか感じられません。…詰みだとスカイさんも薄々感じているんじゃないですか?」
攻撃を放ちながら青年は問いかけてくる。
「別に、大して詰みだとは思わないけど。」
スカイは攻撃をかわし、受け流しながらそう言葉を返す。
「強がらないでください。スカイさん。絶対にあなたは疲れてます。それに魔力もずっと発動しているし、疲れるのは当然のことです。…早く諦めてください。でないと、僕はあなたを戦えなくなるぐらいまで攻撃しないといけませんから。」
青年の言葉に、スカイは目に鋭さを宿す。
「そうすることが目的なんでしょ。脅しのつもりかなんなのかは知らないけど、俺だってあんたを戦えなくなるまで攻撃するつもりだけど。…それに疲れてないっていってるんだけどね。」
「そうですね。でも、そこまで諦めないで戦うことに意味はあるのですか?勝敗の見えた戦いを続けても結果は変わらない。今だって、スカイさんは疲れているけど、僕は疲れていない。これだけでももうどちらが勝つかなんて明白です。なのに諦めないんですか?」
「そんなの、当たり前でしょ。諦めるわけにはいかない。」
「どうして、勝敗の見えた戦いでさえも諦めようとしないんです?下手をすれば致命傷を受けてしまうことだってあり得ないことではないはずです。」
スカイは少し黙ると、口を開く。
「…俺は、諦めたらそれこそ負けだって思ってる。だから、諦めない。どれほどピンチでも、チャンスが来るかもしれないから。」
スカイの言葉に青年は一瞬ばかり目を見開くと、口元に笑みを浮かべていった。
「往生際が悪いタイプなんですね」
「諦めが悪いって言ってくれた方がまだましかな」
青年の蹴りをスカイは手で受け止めるかと思うと、青年の足ごと凍らせる。
「?!…やっぱり、往生際が悪いタイプですよっ!」
「…!…ぐっ!」
青年は凍らされた足を戻さずにスカイの方へ押し込み、それを予想していなかったスカイは、青年の蹴りによって部屋の壁へと吹き飛ばされた。
「スカイっ!」
その一部を見ていたリリエの叫び声が響く。
「…大丈夫。…まあそこそこは痛いけど。」
スカイは壁に飛ばされたながらも立ち上がった。
″怪我を治す暇は無さそう…か…″
そう結論を出すと、スカイは青年に向かって駆けていき、蹴りを放った。それを見るリリエは、思考を巡らせていた。
″…早く、何らかの案を出さないと……あの人の言っているように、きっとスカイは疲れてるけどあの人はまだ疲れてない…このままじゃあ、負けちゃう…″
リリエはスカイと青年のぶつかり合いを見つめながら、必死に考える。だが、いい案など浮かぶに浮かばない。
″どうしよう…負けるわけにはいかない。でも私が今戦えない以上、スカイにこれ以上戦わせるわけにもいかない…でもどうすればいいの?私が出来ることなんて、ある…?″
そう考えている間にもスカイはやはり疲労のせいなのか青年の攻撃を受け、かわしきれずにダメージを受けてしまっていく。スカイは、青年から距離をとった場所で、床に手と膝をついた。
「…くっ…」
「スカイさん、だんだん、攻撃をかわしきれなくなってますよ。本当に、ここからチャンスなんてやって来るんですかね?」
青年は、スカイを小馬鹿にしたような笑みを向ける。
「………」
下を向いて、何も言わないスカイに、青年は言葉を続ける。
「けど、もうチャンスなんて来ませんよ。残念ながら。…だって、これで終わりにしますから…!」
青年は床を強く蹴り飛ばし、離れたところにいるスカイへ駆けていく。
「諦めなくても、負ける戦いは負けるんです。早く諦めた方が、得なんですよ。」
そしてスカイに回し蹴りを放とうとしたその時。
「ダメ…っ!」
その少し小さな声と共にスカイの前に人影が割って入った。
「なんで…今まで氷柱とかは、張られた氷から…」
「あんた、自分で言ったよね?魔法は使い方次第でも勝ち負けが決まるって。」
「言いましたよ。それがどうかしたんですか」
スカイは苛立ったようにため息をついた。
「…分かんないかな。床ギリギリで空気を一気に凍らせて今こうしてるんだけど。」
「なるほど…細やかな説明ありがとうございます」
不敵な笑みを浮かべる青年に、スカイは心の中で呟く。
″…ほんとはあんたに説明したいんじゃないんだけど。″
そしてスカイは、チラリとリリエを見た。
″…!私の、為の説明だったってこと…?でも、意味が理解できてないよ…どうすれば…″
リリエは、困ったように、辺りを見回した。
「はぁっ!」
恐ろしいとも思えるほどのスピードで青年から蹴りが放たれる。スカイは青年の攻撃で疲れているわけではないと言い張ったが、それは嘘の部分が多かった。
″…リリエに、視線はさっき送ったけど、あれだってほとんどリリエへの他力本願だし…リリエにいい案が浮かばなかったら、俺はそろそろ…詰むね…″
スカイは内心焦りを感じていた。リリエに頼ってしまったため、リリエが詰んでしまえば己も詰んでしまうピンチに陥り、そのピンチの打開策すらも浮かばないこの状況に。
「スカイさん、疲れていないなんて、嘘ですよね?もう、詰みなんじゃないですか?この出現させた氷柱だって、大した効果は無いみたいですし、ただの魔力の無駄遣いとしか感じられません。…詰みだとスカイさんも薄々感じているんじゃないですか?」
攻撃を放ちながら青年は問いかけてくる。
「別に、大して詰みだとは思わないけど。」
スカイは攻撃をかわし、受け流しながらそう言葉を返す。
「強がらないでください。スカイさん。絶対にあなたは疲れてます。それに魔力もずっと発動しているし、疲れるのは当然のことです。…早く諦めてください。でないと、僕はあなたを戦えなくなるぐらいまで攻撃しないといけませんから。」
青年の言葉に、スカイは目に鋭さを宿す。
「そうすることが目的なんでしょ。脅しのつもりかなんなのかは知らないけど、俺だってあんたを戦えなくなるまで攻撃するつもりだけど。…それに疲れてないっていってるんだけどね。」
「そうですね。でも、そこまで諦めないで戦うことに意味はあるのですか?勝敗の見えた戦いを続けても結果は変わらない。今だって、スカイさんは疲れているけど、僕は疲れていない。これだけでももうどちらが勝つかなんて明白です。なのに諦めないんですか?」
「そんなの、当たり前でしょ。諦めるわけにはいかない。」
「どうして、勝敗の見えた戦いでさえも諦めようとしないんです?下手をすれば致命傷を受けてしまうことだってあり得ないことではないはずです。」
スカイは少し黙ると、口を開く。
「…俺は、諦めたらそれこそ負けだって思ってる。だから、諦めない。どれほどピンチでも、チャンスが来るかもしれないから。」
スカイの言葉に青年は一瞬ばかり目を見開くと、口元に笑みを浮かべていった。
「往生際が悪いタイプなんですね」
「諦めが悪いって言ってくれた方がまだましかな」
青年の蹴りをスカイは手で受け止めるかと思うと、青年の足ごと凍らせる。
「?!…やっぱり、往生際が悪いタイプですよっ!」
「…!…ぐっ!」
青年は凍らされた足を戻さずにスカイの方へ押し込み、それを予想していなかったスカイは、青年の蹴りによって部屋の壁へと吹き飛ばされた。
「スカイっ!」
その一部を見ていたリリエの叫び声が響く。
「…大丈夫。…まあそこそこは痛いけど。」
スカイは壁に飛ばされたながらも立ち上がった。
″怪我を治す暇は無さそう…か…″
そう結論を出すと、スカイは青年に向かって駆けていき、蹴りを放った。それを見るリリエは、思考を巡らせていた。
″…早く、何らかの案を出さないと……あの人の言っているように、きっとスカイは疲れてるけどあの人はまだ疲れてない…このままじゃあ、負けちゃう…″
リリエはスカイと青年のぶつかり合いを見つめながら、必死に考える。だが、いい案など浮かぶに浮かばない。
″どうしよう…負けるわけにはいかない。でも私が今戦えない以上、スカイにこれ以上戦わせるわけにもいかない…でもどうすればいいの?私が出来ることなんて、ある…?″
そう考えている間にもスカイはやはり疲労のせいなのか青年の攻撃を受け、かわしきれずにダメージを受けてしまっていく。スカイは、青年から距離をとった場所で、床に手と膝をついた。
「…くっ…」
「スカイさん、だんだん、攻撃をかわしきれなくなってますよ。本当に、ここからチャンスなんてやって来るんですかね?」
青年は、スカイを小馬鹿にしたような笑みを向ける。
「………」
下を向いて、何も言わないスカイに、青年は言葉を続ける。
「けど、もうチャンスなんて来ませんよ。残念ながら。…だって、これで終わりにしますから…!」
青年は床を強く蹴り飛ばし、離れたところにいるスカイへ駆けていく。
「諦めなくても、負ける戦いは負けるんです。早く諦めた方が、得なんですよ。」
そしてスカイに回し蹴りを放とうとしたその時。
「ダメ…っ!」
その少し小さな声と共にスカイの前に人影が割って入った。
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