ツムギ ツナグ

みーな

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リューシャ編

43話

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ルクトが現在もミストと戦うその頃、リリエとスカイは城を真っ直ぐに進んでいた。



「……」
「……」



2人の間に会話はないが、それも当然のこと。(ここまで来れば、会話のネタが尽きたことも1つの要因だが)その大きな理由が、スカイとリリエが今進むこの場所に、ものものしい雰囲気が漂っているのだ。スカイはそれほどでもないのだが、リリエはその雰囲気に言葉が出ないほど圧されていた。



″なんだろうこの雰囲気…どことなく違和感も感じるような気がするけど…″



そんなことを思いながらもリリエはスカイの後ろをついて歩いていく。このものものしい雰囲気が漂い始めたのはつい先程から。スカイはずっと黙ったままのせいで気づいているのかいないのか分からないが、リリエはすぐに気づき、歩きながら気を辺りに配っていた。あのスカイが襲撃に気づかないはずもないがもしいざというときに自分の身を、スカイを守れるようにとずっと気を張って歩いていた。



「…リリエ。」



その時、スカイが唐突にリリエの名を呼んだ。スカイはリリエを方を少しばかり振り返る。その目に真剣さを感じ取る。



「?…どうしたの?」
「気づいてるよね?」



そのリリエへの質問は、この雰囲気のことだと言わずとも理解できた。リリエはスカイに向かって頷く。



″この雰囲気で話しかけられるなんてスカイは凄いな…″



大袈裟だ。と、思う者もいるかもしれないが、本当にこの場所の雰囲気は異様なほどだった。口を開くことすらも躊躇われるような雰囲気を、リリエは感じたこともなかったせいでより一層口を開きづらくなっていた。




″…こんな雰囲気、白亜はくあの城に元々は無かった筈…″



一方、雰囲気に圧されてはいないようなスカイでもそんな疑問はあった。



″…全く…の仕業なんだか…″



半ば呆れ、半ば察しが入ったようにスカイは心の中でそう呟いた。



″リリエも気づいてるって言うし、多分雰囲気を感じたときからずっと気を張ってる…″



このままだと、逆に気を張る方に意識が行き過ぎて、本当にいざというときにちょっときついかもしれないとスカイは案じ、早くこの雰囲気が壊れないかと思っていた。そんな時、リリエには異変が起こっていた。



″……?なんだか、霧が出てきた…?″



リリエの視界はぼんやりと霞がかったようになっていて、先が見えづらい。眠たいなんて言うわけでもなく、少しじめっとしているから霧が出ているのではないのかと判断したのだ。その判断は正しく、リリエのには霧が出ていた。霧、と言ってリリエが思い出すのはただひとつ。



″まさか…スヴール?!スカイはこの霧に気づいてないの?…ううん。スカイが気づかない訳がない。…って言うことは、私のまわりにだけ出てるってこと…?″



心の中で呟いたその時、リリエの耳に声が聞こえた。



『よく分かったな。まさか一度見せた魔法1つで私が放ったものだと理解し、他の者にはその霧がかかってないことまで見破るとは。』
「…あ…」



その声の主は、スヴールであった。リリエは当たり前じゃない。と、言葉を続けようとしたが、言葉が続かなかった。いや、続けられなかった。スヴールの声が聞こえて、立ち止まりかけたリリエは唐突に体が後ろへ戻されたからだった。それも誰かに引っ張られたのではなく、まるで吸い込まれるかのように。そのせいで、その事に驚いたせいで声が出せなかった。



「……っ…ス……カイ……」



リリエの異変におかしいほどに全く気づかず、前に進むスカイの背中へ右手を伸ばしながら、何とかして気づいてもらおうと声を出すが、後ろに吸い込まれる力の強さで大きな声は出ず、スカイも離れているため声が届かない。



″気づいて……、スカイ…!″



後ろへ引っ張られていくほど霧が濃くなっていき、リリエの視界も狭くなっていく。そんな中、心の中でそう叫んだ。するとスカイが立ち止まり、こちらをゆっくりと向く。それと同時にリリエの前は霧で一気に覆われ、スカイがこちらをちゃんと向く前に、リリエの視界は霧でいっぱいになる。そしてリリエは床に尻餅をついた。



「っ……痛っ………?あれ…?」



その痛みに顔を少し歪めたが、その景色の変化に痛みも消えた。そこは霧の中ではなく、ちゃんとした部屋だったから。



「私…スヴールの霧に飲み込まれて…誰かが、助けて…?」



そう考えたが、その考えは間違っていると瞬時に判断する。



″私を助けてくれる人なんて、今はルクトかスカイだけだと思うけど、ルクトは今戦っているし、スカイはいくら早くてもあれは助けるなんて出来なかった…じゃあここは…!″



すると、どこからともなく床をコツコツと歩く音が聞こえてくる。



「残念だが、今貴様を助けてくれる者はいないな。」
「…いないこともないですよ。スカイが、あの時私がいなくなったことにもうすでに気づいているでしょうし、霧が消えていくのも見たはずです。スカイなら、私のところに絶対来てくれます。それに私だって魔法は使えます。あなたに勝てなかったとしてもスカイが来るまでの時間稼ぎくらいは出来ますよ」



リリエの強い瞳と言葉に、スヴールは口角を少しだけ上げる。



「その者が、私に絶対勝てるという自信と信頼があるのだな。…良いことだ。……それが、その信頼が崩れるのは…」



スヴールの目が、一瞬狂気じみた目に変わったのをリリエは見逃さなかった。だがそれより、スヴールの言った言葉が引っ掛かった。



「信頼が…崩れる…?」



スヴールの言う言葉の意味が分からない。ただ、一瞬だけ嫌な、不安な気持ちがよぎったが、それよりも疑問の方が気持ち的には大きく出た。



「分かっていないようだな。…事実を見せつけた方が早そうだな。」



スヴールの狂気じみた目はいつの間にか元に戻っており、本人はそんなリリエを見て、右手を勢いよく上へと伸ばした。
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